古村治彦です。

 日本でも様々な物品で値上げラッシュが続いている。世界規模で食料価格とエネルギー価格の高騰が続いている。今年の夏の電気代を見て驚いた人も多いだろう。ヨーロッパ諸国とアメリカは、ウクライナ戦争勃発後に、対ロシア制裁を行い、ロシアを早期に屈服させる意図があったがこれに失敗し、戦争は続き、世界各国で深刻な物価高が起きている。ヨーロッパ諸国はロシアからの天然ガス輸入に依存していたところに、それが途絶してしまったために、厳しい状況になっている。そして、よりエネルギーを必要とする冬はより厳しい状況になると予想されている。
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天然ガスの価格の推移

 以下の記事によると、ヨーロッパ諸国は通常よりも10倍も高い価格で天然ガスを購入している。そして、通常であれば夏の時期に天然ガス貯蔵施設を満杯にして冬に備えることになっているのが、それができない状況になっている。そこで、ロシア以外の国々からの輸入を企図しているが、それもうまくいっていないということだ。

 ヨーロッパ諸国では、ネクタイをしない、エアコンをかけている店のドアを開けっぱなしにしないといった、涙ぐましい努力がなされている。今年の冬はエアコンに頼らないということで、薪を貯蔵している人々も出ているようだ。

 こうした厳しい状況の中で、「ウクライナ戦争を早く止めるべきだ」「アメリカが停戦に持っていくか、天然ガスの供給を行うかをすべきだ」という声がヨーロッパ諸国で大きくなっている。ウクライナ戦争がこのまま継続すれば、エネルギー価格高騰のままで冬を迎えることになれば、ヨーロッパ諸国に住む人々にとっては自分たちの生活や生命が脅かされる事態となる。そうなればウクライナのことに構っていられるか、という考えが出てくるのは自然なことだ。

 ヨーロッパ諸国が天然ガスの供給を世界規模に拡大すれば、世界のエネルギー価格は高騰したままだ。天然資源を輸入に依存している日本にとっても他人事ではない。ヨーロッパ諸国と天然ガスをめぐって競争しなければならない状況になる。中国やインドといった国々はヨーロッパに向かうはずだったロシアからの天然ガスを手に入れることが出来るので、この競争に参加しないだろうからこれはまだ救いとなる。しかし、現状が続けば、日本もまた厳しい冬を迎えねばならない。

 ウクライナ戦争は一刻も早く停戦すべきだ。そして、対ロシア制裁を解除して、ロシアからの天然資源(肥料の原材料も含む)が世界規模で流通するようにすべきだ。これは善悪の問題ではない。貧困に苦しむ世界中の多くの人々の生存に関わる問題だ。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパのエネルギー危機がどれほど深刻かをあなたは知らない(You Have No Idea How Bad Europe’s Energy Crisis Is

-天然ガスの価格は通常よりも10倍になっており、産業界は停滞し、消費者たちは怒り、政治家たちはパニックに陥っている。

クリスティーナ・ルー筆

2022年8月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/08/26/europe-energy-crisis-natural-gas-economy-winter/

世界のほとんどの国がエネルギー価格の上昇に苦しんでいるとすれば、ヨーロッパは、冬の到来とともに消費者たちに大きな経済的苦痛を与えないために、緊急の救済策や対策を講じなければならないほど、窮地に追い込まれている。

最大の問題は天然ガス価格の高騰で、ヨーロッパ全域に大打撃を与え、インフレを加速させ、産業を停滞させ、一般市民が電気料金の請求書を手にしたときに戦慄するような事態を引き起こしている。ヨーロッパの天然ガス価格は現在、過去10年間の平均の約10倍で、アメリカの約10倍の価格になっている。コンサルタント会社「ラピダン・エネルギー・グループ」のグローバル・ガス市場の専門家であるアレックス・マントンは、ヨーロッパの天然ガスは非常に高価で、原油1バレルに500ドル払っているようなものだと言う。しかも、これはまだましな時期の話だ。

マントンは「事態は危機的状況にある。ガス需要がピークを迎える冬まで、あと数カ月しかない。冬の間、需要に見合うだけのガスが確保できるかどうか、本当に不安だ」と述べた。

天然ガス問題は、ロシアのウクライナ戦争によるところが大きい。ウクライナ戦争によって、ロシア産ガスのヨーロッパへの輸出が途絶え、他の地域でも価格が上がっている。しかし、戦争だけが原因ではない。気候変動によって河川が枯渇し、ヨーロッパ各地の原子力発電所の多くが停止している。また、ヨーロッパの政策立案者たちの間では、システムにショックアブソーバーを組み込む方法について、10年以上にわたって混乱が続いている。ドイツとフランスの電力価格は今週再び記録的な水準に達し、大陸の電力危機がますます深刻化していることを反映している。各国が経済的な圧力に屈する中、絶望的な時間が絶望的な手段を求めている。イギリスは家庭用エネルギーコストの上限を80%引き上げると発表し、ドイツは約500ユーロの値上げを行った。

ドイツのロベルト・ハーベック経済大臣は、「ドイツのエネルギー市場は崩壊し、それに伴ってヨーロッパのエネルギー市場の大部分も崩壊してしまうだろう」と述べた。

通常、ヨーロッパでは、夏の間にガス貯蔵量を補充し、使用量の多い冬に賄うことができる。しかし、寒さに向かう時期を控え、ロシアが天然ガスの流れを制限している今、ヨーロッパは時間との戦いに突入している。専門家たちによれば、これまでのところ、ヨーロッパ諸国はほぼ計画通りに進んでいるが、だからといって冬になったら困るというわけではないということだ。

マントンは次のように述べている。「冬になると、ヨーロッパは通常、「貯蔵しているガスを大量に使い、同時に他の供給源から大量のガスを輸入する。その両方が必要だ。しかし、今年の冬を考えると、ロシアのガスがまったく供給されなくなるという現実的な脅威がある」。平時には、ロシアは、ヨーロッパの天然ガス輸入の約40パーセントを供給している。

冬にロシアの天然ガス供給がなければ、ヨーロッパ諸国はアメリカなどからの液化天然ガス(LNG)の輸入に更に頼らざるを得なくなるだろうとマントンは付け加えた。問題は、液化天然ガスの大口需要先であるアジアが、同じように液化天然ガスの供給を競っていることだ。つまり、ヨーロッパ東部からの古いパイプ式ガスよりも常に価格が高くなる。

マントンは更に「それが、ヨーロッパと世界が直面している危機だ」と述べた。

ヨーロッパがモスクワのエネルギー供給を放棄したため、多くの指導者たちが他の国との代替取引と供給の確保を急いだ。イタリアはアルジェリアからより多くの天然ガスを確保し、他の国々はアゼルバイジャン、ノルウェー、カタールに目を向けている。ドイツはカナダとの新たな液化天然ガス取引に期待を寄せているが、カナダはあまり楽観的でない。また、ドイツは5つの浮体式液化天然ガス基地を建設中であり、オランダ、フィンランド、イタリアも浮体式液化天然ガス基地を建設してガス輸入の準備を進めているなど、液化天然ガスインフラへの投資がかなり進んでいる。

しかし、当面の間、エネルギー専門家は、各国が供給を補強するためにできることは限られていると指摘する。コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターの創設者であり、バラク・オバマ前米大統領の元特別補佐官であるジェイソン・ボードフは、「ヨーロッパへの追加供給には当面限界がある」と述べている。

ヨーロッパの指導者たちも内向きになり、電力使用量を抑制するための広範囲な省エネ策を制定している。スペインは以前、節電のために労働者にネクタイをしないよう勧告していたが、今週、消費を抑えるための冷暖房規則を含む新しい節電計画を承認した。フランスは、冷房の効いた店舗がドアを閉めない場合、罰金を科すと圧迫し、ドイツはベルリンのモニュメント脇のスポットライトを消した。また、一部のドイツ人は自らの手で、来るべき冬に備え、薪を備蓄している。このような動きは、ドイツが現在進行中の危機を理由に最後の原子力発電所の段階的廃止を延期することを議論している時に起こったものである。

ボードフは次のように語っている。「ヨーロッパが過去に経験したことのないような最悪のエネルギー危機の最中に、更に原子力発電所を廃止するのは見当違いに思える。それは、失われた原子力の供給を補い、人々のために電力を供給し続けるために、天然ガスのような代替エネルギーの供給量を見つける必要があり、穴を少しばかり深くするだけのことだ」。

ラピディアン・エネルギー・グループのグローバルなガス市場の専門家であるマントンは、施設を稼働させ続けることは口で言うほど簡単なことではないと言う。マントンは「これらの原子力発電所を運営する企業は、特定の時点、つまり今年の年末に運転を終了する計画で動いており、すでにそれに基づいて発電所を管理している。今、“継続させたい”と言えば、状況はより複雑になる」と述べている。

技術者たちが奔走する一方で、政治家たちは集まって協議しようとしている。金曜日、チェコのヨゼフ・シケラ産業相は、チェコ共和国がヨーロッパ連合のエネルギー理事会に臨時会合を開くよう要請すると述べた。

産業界と家庭がどれだけ持ちこたえられるかは不明である。コンサルタント会社オックスフォード・エコノミクスによれば、エネルギー価格の高騰とGDPの大幅な下方修正により、英国は2桁のインフレイションに見舞われているという。ヨーロッパもそれほど良い状況にない。オックスフォード・エコノミクスは報告書の中で次のように書いている。「ヨーロッパの製造業は今後複数の四半期にわたって景気後退を経験すると思われるが、家計にも影響が及ぶだろう。ガソリンと電気料金の値上げは消費者に大きな打撃を与え、値上げ幅が大きいため、政府の更なる介入の実施可能性は高いと考えられる」。

今のところ、ヨーロッパ大陸は長く辛い道のりを歩んでいるように見える。マントンは「ヨーロッパは、事態が好転する前に悪化することを覚悟しているようなものだ。大きな問題は、事態がどの程度悪化するかだ」と述べた。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌編集員。ツイッターアカウントは@christinafei
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(終わり)

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