古村治彦です。

 アメリカ中間選挙が終わった。現在のところ、いくつかの州や選挙区で結果が確定していないが、連邦下院では共和党が過半数を奪取し、連邦上院では民主党が過半数を保持する可能性が高い。ジョー・バイデン政権発足から2年間、ホワイトハウスと連邦上下両院の過半数を民主党が保持するという状態が続いてきたが、連邦下院は共和党が握るということになりそうだ。

 今回の中間選挙において、ドナルド・トランプ前大統領が支持した候補者たちが150名上連邦議員に当選した。トランプのスローガンは、「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」と「アメリカ・ファースト(America First)」である。トランプの外交政策の基本は「アイソレイショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)」とも言われるが、これは簡単に言えば、「アメリカの国内問題解決に集中しよう、海外の問題は海外に任せておけばよい」ということになる。トランプ支持を鮮明にしている連邦議員たちはこれまで、連邦議会においてウクライナへの軍事支援に対して反対票を投じている。民主党側では、進歩主義派の議員たちが反対票を投じている。

 トランプとウクライナの関係で言えば、トランプが大統領在任中に、ウクライナと当時のジョー・バイデン副大統領と息子ハンター・バイデンの関係、スキャンダルについて、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に対して捜査を行うように要請し、それをゼレンスキーが拒絶したということが思い起こされる。ハンター・バイデンがほとんど何も仕事をしていないのに多額の報酬をウクライナのエネルギー企業から受け取っていたことがアメリカ国内でも報じられていたが、その本丸はバイデン副大統領(当時)とウクライナの関係である。はっきり言えば、ウクライナの中立政策(EUとロシアの間でどちらにも肩入れしすぎない)を放棄させ、ロシアの危機感を煽り、ウクライナとの間で紛争を引き起こさせることになった。

 トランプ派が多く連邦議員に当選したことで、バイデン政権は政権運営に苦慮することになる。特にウクライナ問題に関しては、お手盛りの軍事支援が難しくなることが予想される。ウクライナ側としては攻勢を続けている状況ではあるが、これはアメリカの手厚い支援があってこそである。トランプ派が増えればアメリカからの支援が削られることになる可能性がある。そこで、「良識派(トランプ派ではない、エスタブリッシュメント派)が多く当選して欲しい」というのがウクライナ側の本音ということになる。

 アメリカの支援が先細りということになれば、停戦交渉が実施され、現状が固定される可能性がある。ロシアとしては守備を固めてウクライナ側の攻勢を迎え撃つという戦略になる。ロシアとしてはそのような状態になることを待つということになるだろう。アメリカの中間選挙の結果がウクライナ戦争にも影響を与えることになる。

(貼り付けはじめ)

トランプ氏の通話記録を公表 ウクライナにバイデン氏捜査を働きかけ

2019926日 BBC日本語版

https://www.bbc.com/japanese/49834824

トランプ氏は「就任の誓いと憲法と安全保障を裏切った」 ペロシ下院議長

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、政敵について捜査するよう働きかけていたことが、25日にホワイトハウスが公表した通話記録で明らかになった。野党・民主党からは、政敵潰しのために外交を利用したと批判が上がっている。

公表された通話記録によると、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、ジョー・バイデン前副大統領とその息子のウクライナでの活動について捜査するよう促していた。

バイデン前副大統領は、来年の大統領選で民主党候補に選ばれる可能性がある。

民主党は24日、このウクライナ疑惑をめぐり、弾劾調査を正式に開始すると発表していた。

「協力をしてくれるとありがたい」

公表された通話記録によると、トランプ氏はゼレンスキー氏との電話で、ウクライナのヴィクトール・ショーキン検事総長の解任について話し合った。

トランプ氏は、「ウクライナには非常に優秀な検事総長がいたのに、解任されたと聞いた。本当に不公平だ」、「ウクライナの非常に優秀な検事総長の解任方法についてや、非常に悪い人間が複数関与していたと、多くの人がうわさしている」と述べたという。

さらに、「それからもうひとつ、バイデンが(自分の息子の)捜査を止めさせたなどといった、バイデンの息子に関するうわさがたくさんある。多くの人が何があったのか知りたがっている。あなた(ゼレンスキー氏)がアメリカの司法長官と何らかの協力をしてくれるとありがたい」と続け、ウィリアム・バー米司法長官やルドルフ・ジュリアーニ米大統領顧問弁護士と連携して捜査するよう要請したという。

「バイデンは息子の捜査を止めたと自慢して回っていたので、調べてもらえれば。(中略)私にはひどい話に思える」と述べたトランプ氏に対し、「われわれはこの件の捜査に取り組む方針だ」とゼレンスキー氏は答えたという。

ゼレンスキー氏は、過去にアメリカを訪問した際、ニューヨークのトランプ・タワーに滞在したと伝え、トランプ大統領に感謝を述べた。

援助の重要性を強調

通話記録ではまた、トランプ氏がゼレンスキー氏に対し、軍事支援の実行はバイデン氏に関する捜査次第だとは明言していないことも明らかになった。

しかし、バイデン氏について言及する前に、トランプ氏はこう述べて、アメリカからの援助の重要性を強調していた。

「われわれは、ウクライナのために多くのことをしている」

ゼレンスキー大統領との電話の数日前、トランプ氏はウクライナへの39100万ドル(約420億円)の軍事支援を延期した。

トランプ氏は、ゼレンスキー氏に圧力をかけるためのものではなかったとしている。

「米史上最大の魔女狩り」

トランプ大統領はツイッターで、「完全に機密解除された未編集の通話記録」を25日に公表すると約束していた。しかし、ホワイトハウスが25日朝に公表したのは、政府職員が会話の内容を聞いて書き起こした文書だった。

トランプ大統領は25日朝、米ニューヨークで開かれた国連総会に出席。弾劾調査は「アメリカ史上唯一最大の魔女狩り」だと反発し、7月の電話はなんでもない内容だったと述べた。

一方、トランプ氏と共に国連総会に出席したゼレンスキー氏は記者団に対し、「われわれが電話でいい協議をしたということが、あなた方にもわかっただろう。普通の電話だった。さまざまなことを話し合った。誰も私に圧力をかけていなかったことが、通話記録を読んで分かったと思うが」と述べた。

「言い換えれば、圧力はなかった」と、トランプ氏は口を挟んだ。

一方、米下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党、カリフォルニア州選出)は、記者団に対し、通話記録を見れば「古典的なマフィアがやるようなゆすり」があったと分かると述べた。

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キエフは中間選挙で共和党の「良心派が勝利する」ことを希望しているようだ(Kyiv Is Hoping the Republican Party’s Better Angels Prevail in the U.S. Midterms

-共和党の親トランプ派は少数派だが声は大きい。彼らはアメリカによるウクライナ支援に公然と疑問を呈している。

エイミー・マキノン筆

2022年10月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/14/ukraine-military-aid-midterms-republicans-gop-trump/?tpcc=recirc_latest062921

「党派間で消耗するだけの議論をするべきではない分野が存在する(Politics stops at the water’s edge)」、あるいは1947年、連邦上院外交委員会委員長だったアーサー・バンデンバーグ連邦上院議員(当時)が初めてそう発言したとき、そうであったかもしれない。しかし、近年、党派政治(partisan politics)がアメリカの外交政策に益々影響を及ぼしているため、来月の中間選挙では、ロシアとの戦いが冬に突入する中、アメリカのウクライナ支援に選挙がどのように影響するかが懸念されている。

連邦下院では共和党が過半数を奪還するとの予測が大勢を占めており、連邦上院の行方は依然不透明である。共和党の主流派は開戦以来、超党派でキエフを強く支持してきたが、ドナルド・トランプ前米大統領と連携する議員たちや、フォックスニューズなど右派のエコーチャンバー(反響室現象)の有力なコメンテーターたちは、ワシントンによる軍事援助の程度に疑問を呈し始めている。

ウクライナを更に武装化するという決定は、海外介入をためらわないタカ派のエスタブリッシュメント保守派と、トランプ政権で目立つようになったアイソレーショニストの合唱の間で共和党内で深まる亀裂の上に描かれている。

連邦下院軍事委員会委員長である民主党所属のアダム・スミス連邦議員は、「ウクライナを強く支持し、政権にもっと努力してほしいと思っている共和党議員たちはたくさんいる」と述べた。

しかし、共和党員、民主党員、そしてウクライナ人の間には、声の大きい少数派に圧倒されてしまうのではないか、という不安が忍び寄るようになった。5月には共和党所属の連邦下院議員57名と連邦上院議員11名が400億ドルのウクライナ支援策に反対票を投じ、極右議員を代表する議員連盟である「連邦下院フリーダム・コーカス」のメンバー数名もウクライナへの追加支援に明確に反対を表明している。8月には、メキシコとの国境に壁を建設するまでウクライナにこれ以上連邦資金を送らないよう求める法案を、フリーダム・こーカスのメンバーが共同提案した。

アトランティック・カウンシルのユーラシア・センター副所長のメリンダ・ヘリングは、「アメリカ第一を主張するアイソレイショニズム(America First isolationism)を信じるこれらの声は、全ての主要右翼メディアを支配している。彼らは最も騒がしく、最も声が大きく、最も注目されている」と述べた。

2月24日にロシアがウクライナに侵攻した日以来、影響力の強いフォックスニューズの司会者タッカー・カールソンなどは、この戦争をバイデン政権の失敗、2016年の大統領選挙に対するロシアの干渉に復讐するための努力として描いてきた。時には、カールソンは戦争に関するロシアの論調に同調している。

他の保守系論客たちは、カールソンらが共和党全体に及ぼした影響を否定した。アメリカン・エンタープライズ研究所の外交・防衛担当上級研究員ダニエル・プレトカは、「マット・ゲーツ連邦下院議員やタッカー・カールソンを引き合いに出すのは、いつでも背後に何らかの意図があるように聞こえる」と述べた。プレトカは、連邦上下両院の共和党幹部がいずれも、ウクライナへの支援を強化するよう政権に働きかけていると指摘した。

この件について匿名を条件に取材に応じたある共和党所属の連邦議会補佐官は「フォックスニューズのコメンテーターたちの影響については、多くのことが誇張されていると思う」と述べた。この補佐官は、軍事援助に関する共和党の懸念は、主に予算計上をめぐる官僚的な争いや、重火器をウクライナ軍の手に早く渡したいという思惑が中心になっていると指摘した。9月下旬の連邦上院議会での演説で、連邦上院少数派(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル連邦上院議員は、バイデン政権に対し、ウクライナへの武器納入を早めるよう促した。

この補佐官は加えて、「ウクライナへの資金提供に対するもう1つの逡巡は、ウクライナそのものというよりも、バイデン政権が外国のパートナーに提供される非常に大きな金額の資金に対する適切な監督と説明責任を果たしていないことだ」と述べた。

バイデン政権のウクライナへの軍事援助の扱い方に対する共和党の批判にはほとんど中身がないとの見方もある。前述のヘリングは「バイデン政権に対する共和党の批判は、ウクライナに関してはナンセンスだ。私はこれまで共和党員であるが、ウクライナの専門家としてこのように断言する」と述べている。

しかし、2020年の大統領選は不正選挙であったという主張を軸に党が結束していることからも明らかなように、党の周辺にある意見が近年、主流派に移行する可能性があることを証明されている。11月の選挙に立候補した共和党の候補者の大多数は、投票結果に疑問を呈し、あるいは否定している。

スミスは「その小さな集団が、ケビン・マッカーシー連邦下院議員の選択する方向性に不釣り合いなほどの影響を及ぼしていることは確かだ」と述べた。

各種世論調査では、共和党支持の有権者の間で、アメリカのウクライナ支援に対する疲労感が高まっていることが既に明らかになっている。「モーニング・コンサルト」社が月曜日に発表した世論調査によると、「アメリカにはウクライナをロシアから守り抜く責任がある」と考える共和党員はわずか32%、民主党員の58%であった。へリングは「共和党の主流派は、ワシントンやニューヨークを離れ、アメリカ人と話をする義務があると思う。「そして、何故ウクライナを支援することがアメリカの国益に適うのかを説明する必要がある」と述べた。

キール世界経済研究所のウクライナ支援トラッカーによると、1月から10月の間に、アメリカは268億ドルの軍事支援を約束し、第2位のイギリスの数倍を提供した。

キエフへの米軍援助が削減されれば、ウクライナに存亡の危機をもたらすことになる。

ウクライナの独立した防衛反汚職委員会NAKO事務局長オレナ・トレグブは「ウクライナの人々はウクライナへの支援は超党派の問題であると信じている」と語っている。

オレナ・トレグブは続けて次のように述べた。「しかし、ここウクライナでは、ドナルド・トランプやタッカー・カールソンの発言に強い反発がある。これらはウクライナ人にとって本当に衝撃的な発言であり、ロシアのプロパガンダがどうしてこれほどまでにアメリカの共和党に浸透しているのか、ウクライナ人は困惑している」。

エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障・諜報分野担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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