古村治彦です。

 ウクライナ戦争は10カ月を迎え、状況は大きな変化を見せていない。ウクライナ領土(1991年当時)の約20%はロシアが掌握している。東部には新ロシア勢力もおり、これからウクライナ東部、クリミア半島をウクライナ側が再奪取するには大きな労力が必要となる。人命とお金と資源がどれだけ消耗するのかは計り知れない。しかし、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領率いるウクライナ政府は、ロシアに占領された全領土の奪還を目指している。2014年にロシアがクリミア半島を奪取して以降、ウクライナは自国ではクリミア半島を奪還できなかったし、東部の新ロシア勢力を懐柔することもできなかった。今回のウクライナ戦争で、「いくらでも武器を貰える」ということで、火事場泥棒的に、西洋諸国の武器と金を利用してロシアと戦っている。ukrainewarmap20221214501

昨年まで、NATO諸国、特にアメリカがウクライナに重要な武器を送り、軍事顧問団を送り、ウクライナ軍を増強させた(ウクライナを実質的にNATOの加盟国と同様に遇した)ことが、ロシアの不安を掻き立て、最終的に安全保障に対する脅威に対処するということで、ウクライナに侵攻した。ロシア軍としては、ウクライナ国内で情勢を探り、ウクライナ軍の練度や強度の情報を収集し分析して、これ以上看過すれば、ウクライナがロシアに侵攻する可能性も高まるということで、ロシア軍の侵攻となった。ウクライナ側はこれを逆手にとって、西洋諸国からの無尽蔵の支援が受けられることを前提にして反撃し、現在はウクライナ軍が押し戻すという形ではあるが大きくは膠着状態になっている。

 今年の春ごろに、ゼレンスキーが世界各国の議会で、支援を行うように命令するかのような演説を行った。支援しない国は不正義の国だ、ロシアの仲間だと言わんばかりの偉そうな演説だった。西側諸国はウクライナに大規模な支援をせざるを得なくなった。しかし、実質的にはアメリカがほとんどの支援を行っている。国連の常任理事国だと威張っている英仏は両国合わせてようやくドイツと同程度、アメリカの6分の1という状態だ。そして、ウクライナへの支援はいつまで続けられるのか、先行きは不透明だ。西側諸国の金蔵も無尽蔵ではない。結局は税金で国債であり、一般国民が支払っているのだ。人々は物価高もあり、どこまで負担に耐えられるかは分からない。

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 西側各国の武器製造が消費に追いつかず、各国の武器備蓄が減少しており、自国の安全保障にも影響が出ている。各国の防衛産業に増産を求めても、戦争が終われば無用の長物になる武器製造拡大は難しい。ウクライナに武器を送れなくなれば、ウクライナ軍は現在構成から一転して守勢に回らざるを得なくなる。そうなってから停戦協議をロシア側に求めても、ウクライナ側にとって望ましい条件での交渉成立は難しくなる。やはり停戦協議を一日も早く始めるべきだ。しかし、現在のウクライナ政府の姿勢ではそれは難しいだろう。子のような状況で2022年は暮れていく。戦争は1年近く続いていくことになり、人々の苦しみは続く。

(貼り付けはじめ)

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ウクライナの武器を求める姿勢が西側諸国の武器備蓄を歪めている(Ukraine’s Appetite for Weapons Is Straining Western Stockpiles

-あるNATO高官は「皆が大変に心配していると思う」と述べた。

ジャック・ディッチ、エイミー・マキノン筆

2022年11月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/16/ukraine-weapons-military-aid-stockpiles-nato-low-industry/

ウクライナでの戦争が収まる兆候がない中で、キエフの西側パートナー諸国は、自国の準備レヴェルを危うくするほど備蓄を減らさずに、戦場で決定的な役割を果たした武器・弾薬の供給をどう維持するかで悩みを抱えている。

あるNATO当局者は匿名を条件に、「誰もが今、深刻に心配していると思う」と述べ、同盟諸国は戦争を受けて西側諸国の防衛関係各社に生産を増やすよう呼びかけたと語っている。「備蓄の重要性が戻ってきた」とこの人物は述べた。

NATOは現在、加盟国の備蓄が北大西洋条約の下での防衛義務を果たすのに必要なレヴェルを下回った場合、ウクライナに対してどのように支援するかを議論していると前出の高官は述べた。ウクライナへの軍事支援に関する決定はNATOの各加盟国に委ねられているが、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ウクライナへの支援継続の必要性について繰り返し発言している。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は侵攻に先立ち、「NATOの同盟諸国やパートナー諸国に対して、ウクライナ支援への関与を過小評価する」など、いくつかの「戦略的ミス」を犯したとストルテンベルグは月曜日に発言している。

しかし、ワシントンでは、ジョー・バイデン政権とNATOの同盟諸国がもっと早くロシアからのメッセージを受け取っていればと考えている元アメリカ政府関係者たちもいる。これらの人々は、ロシアの本格的な侵攻以来急増している国防費に関して、当分の間継続して増加させて欲しいという希望を持っている。ドナルド・トランプ政権時代の元米国防副次官補(産業政策担当)のジェブ・ナダナーは「ウクライナの戦いがなかったとしても、私たちの備蓄は少なすぎる。22世紀の兵器を発明する必要はないが、産業界には安定した需要シグナルが必要だ」と述べた。

冷戦中、アメリカは、ソヴィエト連邦との戦闘に巻き込まれた場合に備えて、武器、レアアース、およびその他の材料を大量に備蓄していた。しかし、アメリカとヨーロッパの同盟諸国は、ソ連の崩壊後、ワシントンがテロとの戦争(war on terrorism)に軸足を移し、精密兵器と新技術への依存度を高めるにつれて、これらの備蓄を削減し始めた。

アメリカン・エンタープライズ研究所の上級研究員であるフレデリック・ケーガンは次のように語った。「NATOは実際にはこのような戦争を戦う意図は持っていない。私のノベル戦争とは、砲兵システムと大量の戦車と銃の弾丸を非常に集中的に使用する戦争を意味する。そもそも、この種の戦争に備えることはできていなかったのだ」。

このことは、すでに減少している兵器の備蓄に更に大きな影響を及ぼしている。ナダナーによれば、米国防総省の備蓄は、ハープーンやトマホークなどの海上発射ミサイル、共同直接攻撃弾、ジャヴェリン対戦車ミサイルや高機動砲ロケットシステムなど、ウクライナ側が多用する弾薬が少なくなっているとのことだ。ウクライナは20基のロケットランチャーを受領し、これらに加えて約18基のロケットランチャーを受領する予定だ。

ナダナーは「アメリカは、場合によっては、数週間の弾薬の在庫を持っていて、それが空になるという考えは、本当に抑止力を害することになる」と語っている。

アメリカや他のNATO諸国は、2014年のロシアによるクリミア併合を契機に、欧米諸国の防衛企業に生産量を増やすよう働きかけている。しかし、現職や元職の高官やアナリストによると、防衛関連企業は、武器に対する欲望が高まる時代が今後も続くという確証を待てないために、対応が遅れているとのことだ。

2015年まで米国防総省の戦力構造・投資部門のチーフを務めたマーク・カンシアンは、「彼らが言うのは、基本的に金を見せてくれということだ。彼らは、戦争が終わり、注文がなくなり、拡張された工場が注文に応じられなくなることを恐れているのです」。生産のボトルネックになっているのは、重要な原材料の価格上昇と熟練労働者不足だ。

ウクライナへの軍事援助がアメリカの比ではなく、ドイツなど一部の国はウクライナに送る古い戦車の整備さえも渋っているヨーロッパ本土では、防衛産業を戦争状態に戻すような動員を指導者たちは望んでいない。また、高校で学んだ技術者、設計者、安全や環境の専門家などの熟練労働者たちは、不況になれば真っ先に切り捨てられることを恐れ、防衛産業に就職したがらないことが多い。

欧州外交評議会の名誉研究員で、今月までNATOの副事務総長を務めたカミーユ・グラン「第二次世界大戦に戻って、1分間に1機の飛行機や1分間に1台の戦車を生産する必要があるとは誰も考えていない」と述べた。

例えば、フランスはこの夏、ウクライナに16基のCAESAR榴弾砲を送った後、大砲の在庫を補充することを議論しているが、生産能力の限界に直面している。グランは「単純に、ヨーロッパには砲身を製造できる企業がそれほど多くないのです」と述べている。

この問題は、6月に開催された前回の同盟国防相会議を含め、数カ月にわたってNATO諸国の軍備担当者を悩ませてきた。米国防総省は、ウクライナ軍によって使用された軍需品の備蓄を再構築し始めている。月曜日に米陸軍は、ウクライナが使用した誘導多連装ロケットの在庫を補充するために、10月末と11月初旬にロッキード・マーチン社に52千万ドル以上を発注したと発表した。しかし、アメリカが大砲の生産を拡大し、携帯式ミサイルの生産を開始する動きを見せているにもかかわらず、米国防総省はヨーロッパから、この取り組みが遅すぎると批判されているのだ。

交渉に詳しいある米連邦議会補佐官は、現在進行中の交渉について話すために匿名を条件に次のように語っている。「産業界が望んでいるのは署名された契約だ。ヨーロッパから聞こえてきたのは、『君たちがやっていることに便乗したいだけだ』というようなことだった。彼らは待ちたくないのだ。待ちくたびれている」。

そして、ウクライナ側も待ちくたびれた様子だ。ウクライナは4カ月近くに及ぶ攻勢で、ハリコフ周辺のロシア支配地域を解放し、南部の重要都市ケルソンからの撤退をクレムリンに余儀なくさせるなど大きな成果を上げている。ウクライナ当局は、スティンガー、ジャヴェリン、NLAWとして知られるイギリスとスウェーデンの次世代軽戦車兵器システムなど、軽火器と携帯式ミサイルシステムといった最も必要な武器さえ不足していることを懸念している。

ロシアとの全面的な砲撃戦は、クレムリンが4月にドンバス地方への攻勢を宣言して以来、ほとんど続いている。ウクライナは、兵器の約60%を占めるソ連標準の大砲を事実上使い果たしており、キエフでは、戦闘を維持できるほどのスピードで生産できないNATO標準の大砲に頼ることを余儀なくされたのである。

ウクライナ議会議員のサーシャ・ウスティノヴァは、「文字通り152ミリ砲をほとんど使い果たした。「そのため、155ミリ砲に完全に依存しており、その155ミリ砲にも限りがある」と語っている

ウクライナ政府当局者たちは、ウクライナはまた、攻勢によって前線がどこまで伸びているかという課題も抱えていると指摘する。ウクライナはドンバス地方東部とミコライフ南部での戦闘を維持するのに十分な弾薬と装備を保有しているが、ロシアによる北部攻撃で補給線が手薄になる可能性がある。

同時に、モスクワは自国ロシアの備蓄問題にも取り組んでおり、減少する物資を補強するためにイランや北朝鮮に頼らざるを得ない状況にある。ケーガンは次のように語っている。「GDPが事実上ゼロで、第二次世界大戦時代のシステムを主力戦車として使っている国(北朝鮮など)から物を買えば痛い目に遭う。ロシアが前線に大砲を配給しなければならなくなったという様々な兆候も見られる」。ウクライナ政府当局は、ロシア軍が保有する短距離ミサイル「イスカンダル(Iskander)」は120発程度にとどまると考えている。

しかし、アメリカとNATOの当局者は、約9カ月に及ぶ戦争に明確な終わりが見えず、ウクライナが2月以降、かつてロシアに占領された領土の半分以上を取り戻したとしても、西側の軍隊は長期間の変化に備えようとしている。

前出のグランは「私たちは長期戦に臨んでいる。ヨーロッパの安全保障環境は、2月24日以降、大きく変化している。これは一夜にして消える問題ではない」と述べている。

※ジャック・ディッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障分野担当記者・ツイッターアカウント:@JackDetsch

※エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障分野・情報諜報分野担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

(貼り付け終わり)

(終わり)

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