古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』4月20日号にて、佐藤優(さとうまさる)先生の書評コーナー「名著、再び」にてご高評いただきました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 映像配信サーヴィスであるディズニー+とNetflixで、「ショーグン」と「三体」が公開されて話題になっている。「ショーグン」は1980年にNBCがドラマ化したものがあったが(原作はジェームズ・クラヴェル)、今回、再び映像化された。「三体問題[三体]」は、中国のSF小説で、英訳された後に世界で大ヒットとなった。「三体問題」とは物理の問題で、三質点間の運動がどうなるかという問題で、明確な方程式が存在しないものとされる。二体問題までは明確な公式があるのだそうだが、質点が1つ増えるだけで大きく変わるものらしい。小説はなかなか面白かったが、全部を読み通すのは大変だ。

 私事で恐縮だが、私は現在、中国語を勉強している(遅々として知識は増えないが)。そのクラスで小説『三体』と今回のドラマ化は話題になっている。先生が中国生まれの方で、小説を読んだ感想を聞くと「難しくてよく分からなかった」、ドラマについては「原作とはだいぶ違っていてまたよく分からなかった」と述べていた。受講生は日本人ばかりで、その中にドラマ好きの方がいて、いつも色々なドラマの話をしてくれるのだが、「三体」に関してはまぁまぁということだった。
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 「ショーグン」はかなり評価が高い。西洋人が作る日本物は、日本人から見ると珍妙なものになるということは事実としてあったが、今回の「ショーグン」はそのようなことがないようだ。主演の真田広之が制作陣のプロデューサーに入って、かなり意見を述べたそうだ。渡辺謙もそうだが、意見を述べて作品の質を上げることに貢献する日本人俳優が出てきているようだ。

 アメリカ人や西洋人は「字幕がついているものは見ない(苦痛に感じる)」ということで、これまでの非西洋を舞台にした作品でも、英語が使われたり、舞台が大きく返られたりということはあった。「王様と私」でタイの王様をユル・ブリンナーが演じたこともあった。しかし、これからはそのようなことも減っていくだろう。また、技術の進歩で、英語吹替、中国語吹替と言ったこともできるようになっているので、こうした面での障壁は低くなっていくだろう。なんでも亜アメリカの衰退に結び付けるな、ということを言われそうだが、エンターテインメント業界、そして、アメリカのソフトパワーという面でも変化は起きつつあるようだ。

(貼り付けはじめ)

アメリカのソフトパワーの新しい表出(America’s New Expression of Soft Power

-「ショーグン(Shogun)」と「三体問題(3 Body Problem)」は、ヨーロッパ人やアメリカ人を前面に、また中心に据えなくても、アメリカのポップカルチャーが人気を集めることを示している。

ハワード・W・フレンチ筆

2024年4月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/06/us-soft-power-shogun-pop-culture/

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「三体問題」のオープニングシーンから

この件について議論しようとする人にとって、アメリカの衰退の推定される過程を描くために使用できるデータポイントは不足することなどない。

まずはこの国(アメリカ)の政治の腐敗から始めよう。今年11月、有権者は現職か、2度の弾劾を受けた前大統領のどちらかを選ばねばならない。前大統領トランプは、それまでの歴代大統領たちと異なり、民事と刑事の両面で法廷において深刻な問題を抱えている。ジョー・バイデンは、超大国級の深刻な問題が山積しているアメリカを統治するには高齢すぎると多くの人は考えている。最近の予備選の結果が示しているように、バイデンは長年の同盟国であり、保護国でもあるイスラエルに対して、イスラエルの継続的な攻撃によって膨大な数の死者数が出ていること、ガザ地区で飢餓が発生する恐れがあることについて、それらを抑えることに消極的であるとして、民主党支持層の一部からの造反にも直面している。

現在、アメリカは環境保護への移行を進めようとしているが、手厚い保護なしには、外国製品と競争できるソーラーパネルも電気自動車も作れない。また、先進的なマイクロプロセッサーを製造するリーダーでありたいという希望を持っているが、巨大な補助金以外に、誰もその実現方法を考え出すことできないように見える。軍事面でも優位を維持したいが、軍事費は、アメリカに続く10カ国の合計よりも多く使っているにもかかわらず、艦船やその他の先進兵器システムの建造率では中国に大きく遅れをとっている。

このように悲観的な出だしではあるが、これはアメリカの衰退を嘆くために書いたコラムではない。実際、悲観的な兆候と同じくらい、アメリカのパワーの持続性に関する明るい兆候も多い。世界のGDPに占めるアメリカのシェアは、今世紀のほとんどをほぼ一定に保っており、現在は25%弱と、世界人口の5%にも満たない国としては驚くべき好成績である。アメリカの大学は、不可解なことに国内では熾烈な文化戦争(culture wars)の激戦地となっているが、依然として世界の羨望の的である。もう1つの国内紛争の原因であり、そのほとんどが醜く非合理的なものである、移民のおかげで、今世紀の残りの期間、高齢化(aging)や人口減少(population decline)による人口減少圧力に直面する可能性は、他の競争相手の国々よりもはるかに低いだろう。

ここ数週間、私はアメリカの力のこれらのどの特徴よりも、更に注目に値するものに感銘を受けてきた。そしてその証拠は、夜に10フィートの距離から私を楽しませる、力を測定する珍しい情報源から来た。私のリヴィングルームにある大画面のスマートテレビがその情報源だ。

このどこにでもある乗り物から発せられ、私に強烈な衝撃を与えたのは、これまでにない、そして素晴らしいという言葉を口から出したくなる、文化的産物であり、ソフトパワーの決定的に新しい表出であることの証拠だ。より明確に言うと、私は2つの新しいテレビシリーズである、「ショーグン(Shogun)」と「三体問題(Three Body Problem)」について話す。どちらも、慣れない規模と野心を持っている。慣習的な西洋の歴史や文化とは対照的に、アジアに根ざした壮大な物語を採用している。そして、アメリカのエンターテイメントでは非常にまれなことに、時代の詳細と言語の信憑性を維持することに努めている。

ヨーロッパが作った、非西洋文化に根ざした大衆向けの時代叙事詩の作品で、非西洋の登場人物や非西洋言語のためにこれほど多くのスペースが確保されている類似の例があるかどうか、私はよく知らない。そして私は、中国、日本、インド、あるいはその他の非西洋の主要な映画産業やテレビ産業についても、あえて同じことを言いたいと思う。ほとんど知らない。彼らは、文化的細部への同じくらい献身的な感覚を持って、現在を更に大きく超えて、彼らの文化的快適さと親近感のゾーンの外に到達する何かを試みているだろうが、私は彼らのことについて知識を持たない。

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「ショーグン」の1シーン

叩かれる前に言っておくが、「ショーグン」はオーストラリア生まれのイギリス人作家、ジェームズ・クラヴェルが1975年に発表した小説が原作として作成されたものであることは十分承知している。このことが、私がこれまでに言ったことを無効にしていると感じる人もいるかもしれない。しかし、今回の「ショーグン」は、1980年にNBCで放送された過去のドラマのミニシリーズとは異なり、自国の時代劇を得意とする日本の俳優と作家を中心に据え、信憑性にも驚くほどの注意を払っている。これは、記者として5年間日本に滞在した経験を持つ、まともな日本語話者としての私の意見だ。アメリカのテレビ視聴者は字幕付きのコンテンツにはあまり興味を示さないと考えられてきたが、私は字幕で使われる英語と、400年前に遡る、日本の宮廷用語の、絶妙にフォーマルな(そして複雑な)スタイルで表現される話し言葉の台詞を合わせて理解しようとしながらも、画面にうっとりとなって見入ってしまった。

このコラムは、テレビのレヴューや批評家による記事というよりも、むしろ文化的な解説であるが、アメリカのエンターテインメント業界の野心と、アメリカのソフトパワーの能力において、この2つの模範を分けているいくつかの点についても、ここではっきりとしておかなければならない。持続するだけでなく拡大しているようだ。原作となる小説が西洋人によって書かれた「ショーグン」とは異なり、「三体問題」は中国の小説、具体的には SF の最近の作品が原作となっている。私は、Netflix で放映されている、この作品の演出が、日本の歴史小説である「ショーグン」ほどには魅力的だとは思えない。その理由については、後ほど説明する。

しかしながら、「三体問題」は、私がこれまで見た中国の文化大革命(Cultural Revolution)の最も強力なシーンの1つから始まる。文化大革命は、1966年から1976年までの間、毛沢東とその最も卑劣な取り巻きたちがこの国に解き放った、公式に認可された準無政府状態(quasi-anarchy)の10年間だった。理論研究がマルクス・レーニン主義・毛沢東主義の思想に沿わない、高名な物理学者に対する、恐ろしい大衆の暴力(hazing)、または「批判闘争(struggle session、批斗)」を描いた冒頭シーンは、オール中国語で、セットが作られて撮影され、本物らしさがあふれ出す中国人の群衆が配置された。私は中国語も話し、中国(そして日本の歴史)についての本を書いた者としてこのように断言する。政権に卑屈にこびへつらい、政権の基盤を強化するのではなく、純粋な知識の追求に努めた中国の科学者たちに対するイデオロギー十字軍(ideological crusades)の懲罰の描写は、あたかも『中国で最も指名手配された男:科学者から敵への私の旅(The Most Wanted Man in China: My Journey From Scientist to Enemy of the State)』のページからそのまま出てきたように感じられる。この本は、亡命を余儀なくされるまでは、かつて祖国中国を代表する天体物理学者だった方励之(ほうれいし、Fang Lizhi)の力強い回想録である。

「三体問題」の冒頭シーンに対する中国の一部の人々のネット上での激しく敵対的な反応は、作家ラ・ロシュフーコーの有名な言葉を思い出させる。「偽善とは、悪徳が美徳に払う敬意である(Hypocrisy is the homage that vice pays to virtue)」。これらの一般的な批判は、政治的な理由で「三体問題」が中国で公開されておらず、おそらく今後も公開されることはないため、別のストリーミング配信方法を探している人たちによるものだろう。それはネットフリックスのミニシリーズが何か間違っているからではなく、むしろこの中国のシーンを正しく描いているからだ。もちろん、最良の対応は、推定200万人が殺されたこの歴史上重要な時期について、中国が独自にリアルなドラマや正確なドキュメンタリーを制作することだろうが、もちろん公式検閲(official censorship)がこれを容認するはずがない。

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「三体問題」の中での白沐霖[Bai Mulin](ヤン・ヒーウエン、Yang Hewen)と若き日の叶(葉)文潔[Ye Wenjie](ザイン・ツェン、Zine Tseng)の1シーン

中国のソーシャルメディア上で、Netflixが中国の物語を流用したとされることへの怒りに満ちた騒ぎが起きたことについて、あるコメンテーターが次のように述べた。「あの時代は巨大な傷跡であり、不条理なジョークだ。もし私たちが歴史に正面から向き合わなければ、どうやって未来を望むことができるだろうか?」

私にとって、Netflixのミニドラマシリーズ「三体問題」の最大の問題は、平板なキャラクターと生気のない台詞に加え、キャスティングの大規模なごまかしである。これは、西洋のエンターテインメント・ビジネスに深く浸透している、厄介なほどに伝統的な失敗であり、非西洋的なストーリーを採用したことによる信用を損なうものだ。「三体問題」の原作者である劉慈欣(Liu Cixin)は、原作では登場人物を中国人として書いている。Netflixは、商業的な理由から、欧米諸国の視聴者は中国語の登場人物を何話も何話も見ることに耐えられないと判断し、物語の大半をロンドンに設定し、欧米人キャストを通して物語を伝えるよう工夫したようだ。

「ショーグン」のクリエイターが行ったデザインの選択と比較してみよう。このシリーズでも、西洋人のキャラクターが重要な役割を占めている。これは原作であるクラヴェルの50年近く前の小説に沿ったものだ。しかし、「ショーグン」の原作とは異なり、現在のFX版ではこのキャラクターはほとんど脇役(middle background)に追いやられている。飢えた視聴者としての私の経験が、より広い観客の反応を少しでも反映しているとすれば、「ショーグン」のストーリーテリングは、「三体問題」の製作者たちが暫定的に投げかけた問いに答えていることになる。その問いとは、「西洋の観客は、主役を独占する西洋人以外の俳優に乗せられるのだろうか?」

アメリカのエンターテインメント業界が、この人種的な臆病さや田舎臭さを克服できれば、進み行く先に限界はないと思う。欧米人を前面に出す必要のほとんどない、あるいは全くない歴史における劇的な時代について真正面から語られる物語を作成して、あらゆる大陸で新たな観客を獲得することができる。

※ハワード・H・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)
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