古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ国民の間で、「アメリカで内戦が起きる」「アメリカで第二次南北戦争が起きる」という不安感が漂っている。このブログでも既に紹介したが、今年の4月に全米で「シヴィル・ウォー(Civil War)」(アレックス・ガーランド監督作品)という映画が公開され、ヒットした。「そんな馬鹿な」という思いもありつつも、「アメリカ国内の内戦はもしかして本当になるかもしれない」という不安が存在する。

 世界の内戦の研究を専門にしている政治学者(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)バーバラ・F・ウォルターの著作『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars StartAnd How to Stop Them)』(井坂康志訳、東洋経済新報社、2023年)が日本でも刊行された。アメリカでは2022年に刊行されている。

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バーバラ・F・ウォルター

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アメリカは内戦に向かうのか

 ウォルターはアメリカ国内で内戦が勃発する可能性に警鐘を鳴らしている。ウォルターによれば、内戦が発生するのは、「完全に民主政体でもなく、完全に独裁政体でもない」アノクラシー(anocracy)状態にある時だと述べている。そして、人種、民族、宗教の線で分断が起きるアイデンティティ政治(identity politics)に戻っている場合に、2つ以上のアイデンティティ(例えば、経済各社と人種)が結びついて発生したグループである「超派閥(super faction)」が政治的暴力を主導するということになる。こうした場合に、元々支配的な地位にあったグループがその地位を失い(「格下げ[downgrade]」と呼ばれる)、その憤激によって暴力に走るということになる。総体的には、「希望」が失われて、最後に武器を取るということになる。

 アメリカは民主政体の総本山である。民主政体の素晴らしさをアメリカの価値観とし、世界中に拡散しようとしてきた(そして、失敗してきた)。アメリカの観点からすれば、近代化とは民主化と資本主義化である。しかし、アメリカ国内で、民主政治、民主政体に対する疑義が出ている。2020年の選挙では、トランプ陣営と支持者たちは、「選挙は盗まれた」と主張した。彼らからすれば、アメリカの民主政体は傷つけられ、機能しないようになっている。「国の状態を良くしよう」という思いで、選挙という手段を使っても、選挙結果が不正であれば、どうしようもないではないかということになる。「希望」は失われ、「憤激」が生じる。ここに、内戦ぼっ発の可能性が生まれる。また、経済各社と人種が結びつき(トランプを支持した、貧しい白人[経済格差と人種])、暴力を主導するグループである超派閥が生まれる。

 私は、もしアメリカが内戦状態になるとするならば、選挙後だと思う。選挙までは、まだ希望があると考える人たちは多いだろう。しかし、ジョー・バイデン、ドナルド・トランプのどちらが勝利しても、負けた方は不満を持つ。これまでだって、負けた方は不満を持ってきた訳だが、暴力に至るまでの怒りや悲しみ、絶望の程度がかなり上がると私は考える。アメリカで内戦まで進まなくても、政治的暴力は各地で起きるだろう。それだけでも、アメリカの民主政治体制を毀損するものになるし、アメリカ経済にも悪影響が出るだろう。アメリカ国債の金利は上昇し、ドル安に振れるだろう。そうなれば、アメリカ国内の人々の生活は厳しいものとなる。そうなれば、益々不安、不満が募るということになる。アメリカ政治の見通しは暗いものとなる。アメリカ国債の世界第債の保有国は日本だ。このような不安な米国債については、保有量を減らすこと、「貸したお金を返してもらう(現金化)」ことをして、国内に還流する方が良いのではないか。

(貼り付けはじめ)

アメリカは本当に第二次内戦に向かっているのか?(Is the US really heading for a second civil war?

-国内が分極化し、共和党が権威主義(authoritarianism)を支持する中、一部の専門家は北アイルランド型の反乱(Northern Ireland-style insurgency)を懸念しているが、他の専門家たちは、武力衝突(armed conflict)は依然としてありそうにないと主張している。

デイヴィッド・スミス筆

2022年1月9日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/us-news/2022/jan/09/is-the-us-really-heading-for-a-second-civil-war

ジョー・バイデンは、アメリカが正常に戻ることを願って1年を過ごした。しかし、先週の木曜日、連邦議会議事堂での暴動から1周年を迎えたこの日、大統領はついにアメリカの民主政治体制(American democracy)に対する現在の脅威の規模を認識した。

バイデンは、1年前に暴徒が群がったスタチュアリーホールで次のように語った。「この瞬間、私たちは決断しなければならない。私たちの国は、どのような国家になるだろうか? 政治的暴力を規範として受け入れる国になるのか?」。

アメリカ国内外を問わず、多くの人々が今、この問いを投げかけている。1月6日のような国家的な悲劇でさえも、人々を更に分裂させるだけであるような、深く分断された社会では、あの日が不安(unrest)、紛争(conflict)、国内テロ(domestic terrorism)の波の始まりに過ぎないのではないかという恐れがある。

最近の複数の世論調査の結果を見ると、政府に対する暴力という考えを堅持しているアメリカ人はかなり少数派であることが分かる。第二次アメリカ内戦(第二次南北戦争)の話さえ、フリンジ・ファンタジーからメディアの主流になりつつある。

今週、『ニューヨーカー』誌に掲載された記事の見出しは、「南北戦争が目前に迫っている?(Is a Civil War ahead?)」だった。金曜日の『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムのタイトルは「私たちは本当に第二次南北戦争(内戦)に直面しているのか?(Are We Really Facing a Second Civil War?)」だった。『ワシントン・ポスト』紙の最近のコラムでは、3人の退役したアメリカ軍将軍が、もう1回クーデターの試み(coup attempt)が起きれば「内戦に発展しかねない」と警告している。

そのような概念が、公の場での話題になりつつあるという単なる事実は、たとえそれが依然としてあり得ないと主張する人もいるとしても、かつては考えられなかったことが考えられるようになったということを示している。

バイデンの超党派協力への願望(Biden’s desire for bipartisanship)が、共和党の急進的な反対によって衝突している。そうした状況の中で、ワシントンでのわだかまりによって、内戦が起きるのではないかという懸念が大きくなっている。木曜日のバイデン大統領の発言は、「私は誰に対しても、民主政体の喉元に短剣を突き立てるような行為をすることを許さない(I will allow no one to place a dagger at the throat of our democracy)」というもので、アメリカの主要政党の1つが権威主義を受け入れている以上、通常通りにはいかないことを認めているように見えた。

この点を例示すると、共和党はトランプ大統領の選挙敗北を覆そうとした暴徒を民主政体のために戦った殉教者(martyrs fighting for democracy)に仕立て直し、歴史を書き換えようとしているため、記念式典に出席した共和党議員はほとんどいなかった。保守的なフォックス・ニューズネットワークで最も注目されている司会者であるタッカー・カールソンは、バイデンの演説の映像を再生することを拒否し、2021年1月6日は歴史的に「脚注の程度にすぎない(barely rates as a footnote)」のは「その日は本当に多くのことが起きなかった(really not a lot happened that day)」からだと主張した。

共和党内ではトランプ崇拝がかつてないほど優勢であり、オース・キーパーズやプラウド・ボーイズといった過激な右翼グループが台頭していることから、民主政治体制に対する脅威は1年前よりも大きくなっていると見ている人たちもいる。そうした人々の中に、カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者で、新著『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars StartAnd How to Stop Them)』という新著の著者であるバーバラ・ウォルターがいる。

ウォルターは以前、CIAの諮問委員会である「政治的不安定性タスクフォース(political instability taskforce)」の委員を務めていたが、このタスクフォースは、アメリカ本国を除く、世界中の国々での政治的暴力(political violence)を予測するモデルを持っていた。しかし、トランプ大統領の人種差別的煽動が台頭する中、30年間内戦を研究してきたウォルターは、自宅の玄関先(doorstep)のすぐそばに、証拠となる兆候があることに気づいた。

1つは、完全に民主的でも完全に独裁的でもない政府、つまり「アノクラシー(anocracy)」の出現である。もう1つは、政党がイデオロギーや特定の政策(ideology or specific policies)を中心に組織されるのではなく、人種や民族、宗教の線(racial, ethnic or religious lines)に沿ったアイデンティティ政治(identity politics)に戻っていく光景である。

ウォルターは『ジ・オブザーバー』紙に次のように語っている。「2020年の選挙までには、共和党員の90%が白人になっている。もし、二大政党制(two-party system)を採用している他の多民族・多宗教の国(multiethnic, multi-religious country)でこのような現象が起きるとしたら、これは超派閥(super faction)と呼ばれるもので、超派閥は特に危険である」。

最も悲観的な人でさえ、北軍と南軍が激戦を繰り広げた1861年から1865年の内戦(南北戦争)の再現を予測してはいない。ウォルターは続けて次のように語った。「それは北アイルランドやイギリスが経験したような、より反乱(insurgency)のようなものになるだろう。私たち国アメリカは非常に大きな国であり、国中に非常に多くの民兵組織(militias)が存在するため、おそらく北アイルランドよりも拡散化(decentralized)が進むことになるだろう」。

ウォルターは次のように述べている。「反乱を起こす人々は、連邦政府の建物、シナゴーグ、大勢の人が集まる場所を標的とする、通常では考えられない戦​​術、特にテロ戦術、場合によっては、小規模のゲリラ戦に目を向けるだろう。この戦略は脅迫の一形態であり、連邦政府が彼らに対処する能力がないとアメリカ国民に恐怖を感じさせることになるだろう」。

2020年、民主党所属のミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーを誘拐する計画が、起きる可能性の高い事態の兆しかもしれない。ウォルターは、野党の有力者、穏健な共和党の政治家、反乱を考える人々に対して同情的ではないと見なされる裁判官などが、暗殺のターゲットになる可能性があることを示唆している。

ウォルターは次のように語った。「ここアメリカでは、権力が分断されているため、民兵組織がその地域の法執行機関(law enforcement)と連携して、それが可能な地域で小さな白人の民族国家を作る状況も想像できる。それは確かに1860年代に起こった内戦とはまったく似ていないものとなるだろう」。

ウォルターは、内戦(civil wars)は貧しい人や虐げられた人が起こすものだと考えられやすいと指摘する。しかし、そうではない。アメリカの場合は、2008年のバラク・オバマの当選に象徴されるように、2045年頃にはマイノリティになる運命にある白人マジョリティからの反動なのだ。

ウォルターは次のように説明している。「内戦を起こす傾向を持つグループがあるのは、かつて政治的に支配的であったが、衰退しているグループである。彼らは政治権力を失ったか、政治権力を失いつつあり、国が自分たちのものは自分たちの正当な権利であり、体制がもはや自分たちのために機能しないため、支配権を取り戻すために武力を行使することが正当化されると本気で信じている」。

1月6日の暴動から1年が経った今も、礼儀正しさ、信頼、共有規範が崩壊し、連邦議事堂の雰囲気は有害なままだ。共和党所属の連邦議員の中からは、トランプ大統領が反対した超党派のインフラ法案に賛成票を投じた後、殺害の脅迫を含む脅迫的なメッセージを受け取った人たちが出た。

1月6日のテロを調査する連邦下院特別委員会の2人の共和党議員、リズ・チェイニーとアダム・キンジンガ―は、共和党からの追放を求められている。ソマリア出身のイスラム教徒であるミネソタ州選出の民主党所属の連邦下院議員イルハン・オマルは、イスラム嫌悪な嫌がらせに苦しんでいる。

しかし、トランプ大統領の支持者たちは、民主政治体制を救うために戦っているのは自分たちだと主張している。ノースカロライナ州のマディソン・コーソーン連邦下院議員は昨年、「選挙制度が不正操作(rigged)され続け、盗まれ(stolen)続ければ、ある1つの場所に行きつくことになるだろう。それは流血の惨事(bloodshed)だ」と語った。

先月、ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は、テロに関与したとして収監された1月6日事件の被告6人の処遇について嘆き、ブルーステイト(blue states、共和党優勢州)とレッドステイト(red states、共和党優勢州)の間の「国家的別離(national divorce)」を呼びかけた。民主党所属のルーベン・ガレゴ連邦下院議員は力強く次のように反論した。「『国家間の離婚』などありえない。内戦に賛成か反対かだ。内戦を望むならば、そう言って、正式に自分たちは裏切り者だと宣言せよ(There is no ‘National Divorce’. Either you are for civil war or not. Just say it if you want a civil war and officially declare yourself a traitor)」。

トランプが2024年の大統領選に再出馬する可能性もある。共和党が主導する各州は、共和党に有利になるよう計算された有権者制限法(voter restriction laws)を課す一方、トランプ支持者たちは、選挙運営の主導権を握ろうとしている。大統領選挙が紛糾すれば、煽動的なカクテル(incendiary cocktail)になりかねない。

ヴァージニア工科大学平和研究・暴力防止センター所長ジェイムズ・ホウドンは、「私は人騒がせな人(alarmist)になるのは好きではないが、この国は暴力から遠ざかるどころか、ますます暴力に向かっている。再び争点となった選挙は悲惨な結果をもたらす可能性がある」と述べている。

ほとんどのアメリカ人は安定した民主政治体制を当然のことだと思って育ってきたが、アメリカ先住民の大量虐殺(genocide of Native Americans)から奴隷制度、内戦(南北戦争)から4度の大統領暗殺、そして、アメリカ国内で銃による暴力によって年間4万人が殺害されていることから海外で数百万人の命を奪っている軍産複合体(military-industrial complex)まで、アメリカは、暴力が例外なく常態化している社会でもある

ミネソタ大学政治・ガヴァナンス研究センターのラリー・ジェイコブス所長は次のように述べている。「アメリカは暴力に慣れていない訳ではない。非常に暴力的な社会であり、私たちが話しているのは、暴力に明確な政治的意図が与えられている(violence being given an explicit political agenda)ということだ。これはアメリカにおける恐ろしい新しい方向性だ」。

現在のところ、政治的暴力が風土病(endemic)になるとは予見していないが、ジェイコブスは、そのような崩壊はまた、北アイルランドの紛争に似ている可能性が高いことに同意している。

ジェイコブスは続けて次のように述べている。「このような物語的で、散発的なテロ攻撃を私たちは目撃することになるだろう」。彼は加えて、「北アイルランドモデルは、率直に言って最も恐れられているモデルだ。なぜなら、これを行うのに膨大な数の人員が必要ではなく、現在、こうした反乱を実行するのに、非常に意欲的で、十分な武装をしたグループが存在するからだ。問題は、彼らがテロ活動を開始する前に、FBIが彼らをノックアウトできるほど十分に潜入できるのかということだ」と述べた。

ジェイコブスは更に「もちろん、アメリカでは銃が蔓延していて、FBIの捜査も役に立たない。誰でも銃を手に入れることができ、爆発物にもすぐにアクセスできる。これら全てが、私たちが今置かれている不安定な立場を更に悪化させている」と述べた。

しかし、避けられないものなど何もない。

バイデンはまた、2020年の選挙について、新型コロナウイルス感染拡大にもかかわらず、過去最高の1億5000万人以上が投票し、アメリカ史上最大の民主政治体制のデモンストレーションになったと賞賛した。この結果に対するトランプ大統領の偽りの異議申し立ては、依然として強固な裁判制度によって退けられ、依然として活気のある市民社会やメディアによって精査された。

ハーヴァード大学の政治学者ジョシュ・カーツァーは、現実を確認して、「内戦を研究している学者をたくさん知っているが、アメリカが内戦勃発の瀬戸際にいると考えている人はほとんどいない」とツイートした。

しかし、「ここでは起こりえない」という思い込みは、政治そのものと同じくらい古い。ウォルターは、内戦に至るまでについて多くの生存者にインタヴューしてきた。ウォルターは次のように述べている。「バグダッドにいた人も、サラエヴォにいた人も、キエフにいた人も、みんな口をそろえて言ったのは、こんなことになるとは思わなかった、ということだった。実際、丘の中腹で機銃掃射を聞くまで、私たちは何かが間違っていることを受け入れようとはしなかった。その時にはもう遅かったのだ」。

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南北戦争が目前に迫っている?(Is a Civil War Ahead?

-連邦議事堂襲撃事件から1年経過し、アメリカは民主政治体制(democracy)と独裁政治(autocracy)の間で宙ぶらりんの状態にある。

デイヴィッド・レムニック筆

2022年1月5日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/is-a-civil-war-ahead

アメリカ例外主義(American exceptionalism)の体系は、自己幻想(self-delusion)という粗末な基盤の上で常にぐらつき続けてきたが、それでもほとんどのアメリカ人は、アメリカが世界最古の継続的な民主政治体制国家(the world’s oldest continuous democracy)であるという常識を疑わずに受け入れてきた。その冷静な主張は今や崩れ去った。

2021年1月6日、白人至上主義者(white supremacists)、民兵、MAGA信者たちがトランプ大統領からインスピレーションを得て、2020年大統領選挙の結果を覆すために連邦議事堂を襲撃し、議員たちと副大統領が実質的に人質になった状態で、私たちは完全な民主政治体制国家としての活動を中止した。その代わりに、私たちは現在、学者たちが「アノクラシー」と呼ぶ限界的な状況に住んでいる。つまり、この200年で初めて、私たちは民主政治と専制政治の間で板挟みになっている。そして、その不確実性(uncertainty)の感覚は、アメリカでの突発的な流血の可能性を根本的に高め、さらには内戦の危険さえも高めている。

これが、カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者バーバラ・F・ウォルターの新著『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars Start)』の説得力ある主張である。ウォルターは、スリランカから旧ユーゴスラビアまでの国々における政治的暴力の根源を研究する「政治的不安定性タスクフォース」と呼ばれるCIAの諮問委員会の委員を務めた。ウォルターは、このタスクフォースが外国の政治力学を分析するために使用している「センター・フォ・システミック・ピース(Center for Systemic Peace、システム平和センター)」がまとめたデータを引用しながら、民主政体が最も古くから続いているという「栄誉(honor)」は、現在スイスが持ち、ニュージーランドがそれに続いていると説明している。アメリカでは、侵食されつつある不安定さ(instability)と非自由主義的な流れ(illiberal currents)が悲しい状況を呈している。ウォルターが書いているように、「私たちはもはやカナダ、コスタリカ、日本のような国々と肩を並べる存在ではない」のである。

ウォルターは著書と今週の「ニューヨーカー・ラジオ・アワー」での対談の中で、「恐怖を煽る行為(an exercise in fear-mongering)」は避けたいと明言した。彼女は扇情主義者(センセーショナリスト、sensationalist)だと思われることを警戒している。実際、彼女は過熱する憶測を避けるために苦労しており、臨床的な観点から内戦の可能性について警告を伝えている。しかし、数十年前に地球温暖化の危険性について明確に声を上げた人々と同様に、ウォルターは重大なメッセージを伝えているが、それを無視すると危険が伴う。依然として、多くのことが流動的だ(So much remains in flux)。ウォルターは、21世紀のアメリカの内戦は、1860年代の戦場で繰り広げられた、消耗的で対称的な紛争(symmetric warfare)とは似ても似つかないだろう、と注意深く言っている。むしろ、最悪の事態が起こった場合、爆弾テロ、政治的暗殺、ソーシャルメディアを介して結集した過激派グループによって実行される非対称戦争(asymmetric warfare)の不安定化行為など、散在的かつ持続的な暴力行為の時代が到来すると彼女は予想している。これらは比較的小規模で、緩やかに連携した、自己拡大を目指す戦士の集まりであり、「加速主義者(accelerationists、アクセレイショニスツ)」と呼ぶこともある。彼らは、救いようのない非白人社会主義共和国(non-white, socialist republic)の崩壊を早める唯一の方法は、暴力やその他の超政治的手段によるものだと自分たちに確信させている。

ウォルターは、この国が民主的制度を強化しない限り、冒頭のような脅威に耐えることになるだろうと主張する。2020年、ミシガン州の民兵組織「ウルヴァリン・ウォッチメン」がグレッチェン・ウィットマー知事を誘拐しようとした事件である。ウルヴァリン・ウォッチメンは、ウィットマー知事がミシガン州で新型コロナウイルス感染対策(公衆衛生を守るためではなく、自分たちの自由を侵害する耐えがたい行為と見なした規制)を実施したことを軽蔑していた。トランプが公言したウィットマーへの軽蔑は、こうした狂人たちを思いとどまらせることはできなかっただろう。FBIは幸いにもウルヴァリン・ウォッチメン一味を阻止したが、必然的に、このような企てが十分な数存在し、十分な武器があれば、標的を見つける組織が複数出てくるだろう。

アメリカは常に政治的暴力行為、つまりKKKのテロ行為に悩まされてきた。1921年のタルサの黒人コミュニティで虐殺が起きた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺は、全てのアメリカ人にとって民主政体が決して定着し、完全に安定した状態ではなかったが、それでもトランプ時代は、移民に「取って代わられる」ことを恐れた多くの右翼の田舎の白人たちの激しい憤りによって特徴づけられている。有色人種だけでなく、最も独裁的な扇動者に屈し、もはや民主主義の価値観や制度を擁護するつもりはないようである共和党指導部も同様である。他の学者と同様、ウォルターも、168人が死亡した1995年のオクラホマシティのアルフレッド・P・ムラー記念連邦ビル爆破事件など、現在の反乱の初期の兆候があったと指摘している。しかし、多民族民主政体(multiracial democracy)の台頭を最も鮮明に浮き彫りにしたのはバラク・オバマの選挙であり、過半数の地位を失うことを恐れた多くの白人アメリカ人にとって脅威と受け止められた。ウォルターは、オバマが当選した2008年当時、アメリカではおよそ43の民兵組織が活動していた、と書いている。 3年後、その数は300以上に増加した。

ウォルターは世界中の内紛の前提条件(preconditions)を研究してきた。そして。ウォルターは、自己満足と7月4日の神話を取り去り、現実的なチェックリストを見直し、「内戦の可能性を高める各条件を評価(assessing each of the conditions that make civil war likely)」すれば、アメリカは「非常に危険な領域に入った(has entered very dangerous territory)」と結論づけざるを得ないと言う。この結論は彼女だけではない。ストックホルムの民主政体・選挙支援国際研究所は最近、アメリカを「後退している」民主政体国家(“backsliding” democracy)としてリストアップした。

1月6日以降の数週間ほど、後退が憂鬱にはっきりと表れたことはなかった。ミッチ・マコーネルは当初、反乱におけるドナルド・トランプの役割を批判した後、2024年の大統領選挙で党の候補者になれば、トランプを支持すると述べた。深淵を見つめながら、彼は闇を追い求めた(Having stared into the abyss, he pursued the darkness)。

少し前までは、ウォルターは人騒がせな人物だと思われていたかもしれない。2018年、スティーヴン・レビツキーとダニエル・ジブラットは、トランプ時代の研究『民主主義はいかにして滅びるか(How Democracies Die)』を出版した。この本は、アメリカの読者に法の支配が、アメリカの多くの時代と同様に攻撃に晒されているという現実を目覚めさせようとした数多くの本の1つである。しかし、レヴィツキーが私に語ったように、「私たちでさえ1月6日を想像することはできなかった。」レヴィツキーは、ウォルターやこのテーマに関する他の高く評価されている学者の著書を読むまでは、内戦の警告は行き過ぎだと思っていただろうと語った。

ロシアやトルコとは異なり、アメリカは、たとえどれほど欠陥があったとしても、民主政体統治の深い経験に恵まれている。裁判所、民主党、両党の地方選挙管理者、アメリカ軍、メディアは、たとえどれほど重大な欠陥があったとしても、独裁的な大統領の最も暗い野望に抵抗することが可能であることを2020年に証明した。民主政体と安定のガードレールは決して突破できないものではないが、ウラジーミル・プーティン大統領やレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領が立ち向かわなければならないものよりも強力である。実際、トランプは再選を目指して共和党史上最大の票を集めたが、それでも700万票の差で落選した。それも諦観が支配する運命論(fatalism)を阻害することになる。

レヴィツキーは私に次のように語った。「私たちは、ファシズムやプーチニズムに向かうわけではない。しかし、憲法上の危機が繰り返され、権威主義的な、もしくは少数派による支配が拮抗し、爆弾テロや暗殺、集会で人々が殺されるなど、かなり重大な暴力のエピソードが起こる可能性はあると思う。2020年には、政治的な理由で人々が路上で殺された。これは黙示録(apocalypse)ではないが、恐ろしいことが起きたのだ」。

アメリカの民主政治体制を守るための戦いは、対称的(symmetrical)ではない。一方の政党である共和党は現在、反主流主義(anti-majoritarian)、反民主的を装っている。そして、伝統的な政策的価値観にはあまり焦点を当てず、部族的所属(tribal affiliation)や怨恨(resentments)を重視する党になっている。リズ・チェイニーやミット・ロムニーをはじめとする少数の人物は、これが権威主義的な党のレシピであることを知っているが、最も憂慮すべき傾向を逆転させるために必要なこと、すなわち、共和党指導者たちが立ち上がり、民主的価値の再認識に基づく連合に民主党や無党派層とともに参加するための広範な努力の兆候は見られない。

反乱の記念日を迎えるにあたり、より大きなドラマが起こっていることは明らかだ。私たちはバラク・オバマを、そしてその8年後にはドナルド・トランプを選出することができる国だ。私たちは、ジョージア州がアフリカ系アメリカ人とユダヤ人の2人の連邦上院議員を選出した1月5日と、馬鹿馬鹿しい陰謀論の名のもとに数千人が連邦議事堂を襲撃した1月6日のことを思い浮かべることができる。

レヴィツキーは次のように語っている。「同じ国で2つの全く異なる運動が同時に起きている。この国は初めて多民族民主政体(multiracial democracy)に向かって進んでいる。21世紀において、私たちは多様な社会と平等の権利を保証する法律を持つことを支持する多民族の民主的な多数派(multiracial democratic majority)を持っている。多民族による民主的な多数派が存在しており、それが普通選挙で勝利する可能性がある。そして少数派の共和党員もいるが、危険な過激派が共和党員のために行動しているのを見て見ぬふりをすることがあまりにも多い。新しい種類の内戦についての警告が無駄になり、ウォルターのような本が警鐘を鳴らしたものとして振り返ることができることを祈ろう。しかし、私たちが気候の危機的な状況で学んだように、願うだけではそれは叶うことはない」。

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私たちは本当に第二次南北戦争(内戦)に直面しているのか?(Are We Really Facing a Second Civil War?

ミッシェル・ゴールドバーグ筆

2022年1月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/01/06/opinion/america-civil-war.html

カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者バーバラ・F・ウォルターは、内戦を経験した多くの人々にインタヴューしてきたが、内戦が起こるとは誰もが思っていなかったと言っていると語った。ウォルターは「彼らは全員、驚いたと述べている。それを研究している人にとっては、何年も前からそれが明らかだったとしても、実際に経験した人たちには驚きだった」と述べた。

アメリカが再び内戦に陥るかもしれない、という考えを否定したい衝動に駆られるなら、このことは心に留めておく価値がある。今でも、この国の、殴られ過ぎてフラフラな状態になっている、崩壊に常に恐怖を感じているにもかかわらず、私は完全なメルトダウン(meltdown)という考えにはなかなか納得がいかない。しかし、ウォルターのように内戦を研究している一部の人々にとっては、アメリカの崩壊は、明白ではないにせよ、1月6日の事件以降は、可能性ははるかに低い状態ではないということである。

今月発売された2冊の本は、ほとんどのアメリカ人が理解している以上にこの国は内戦に近づいていると警告している。ウォルターは、『アメリカは内戦に向かうのか』の中で次のように書いている。「私は内戦がどのように始まるかを見てきた。私は人々が見過ごす兆候について知っている。そして、その兆候がここでは驚くほどの速さで現れているのを目撃している」。カナダの小説家で評論家のスティーヴン・マルシェは、著書『次の南北戦争:アメリカの未来からの警告(The Next Civil War: Dispatches From the American Future)』の中でより率直に述べている。マルシェは「アメリカは終わりに近づいている。問題はそれがどのように実現するかである」と書いている。

トロントの『グローブ・アンド・メール』紙において、暴力紛争を研究する研究者トーマス・ホーマー=ディクソンは最近、カナダ政府にアメリカの崩壊に備えるよう促した。ホーマー・ディクソンは次のように書いている。「2025年までにアメリカの民主政体は崩壊し、広範な市民暴力を含む極度の国内政治的不安定を引き起こす可能性がある。早ければ2030年までに、アメリカは右翼の独裁政権に支配されるかもしれない」。ジョン・ハリスが『ポリティコ』誌で書いているように、「真剣に考えてエイル人々は今、比喩としてではなく、文字通りの前例として『南北戦争(Civil War)』を持ち出している」。

もちろん、全員が真剣に懸念している人ばかりではない。ハーヴァード大学の政治学者ジョシュ・ケルツァーは、多くの内戦研究をしている学者を知っているが、「アメリカが内戦の瀬戸際にあると考えている学者はほとんどいない」とツイッターに書いた。しかし、内戦の話に抵抗する人たちでさえ、アメリカがどれほど危険な状況にあるのかを認識する傾向がある。『ジ・アトランティック』誌でフィンタン・オトゥールは、マルシェの本について書いて、内戦の予言は自己実現(self-fulfilling)する可能性があると警告している。アイルランドでの長い紛争中、双方は相手が動員している(mobilizing)のではないかという恐怖に駆られていた、とオトゥールは述べている。オトゥールは続けて、「アメリカが分裂し、暴力的に分裂する可能性があるという現実の可能性を認めることは1つのことだ」と書いている。その可能性を必然性として捉えるのはまったく別のことだ(It is quite another to frame that possibility as an inevitability)」と書いている。

内戦を当然の結論として扱うのは馬鹿げているというオトゥールの意見に私も同意するが、内戦発生の可能性が明らかにあるように見えるのは、やはりかなり酷い状態にあるということだ。内戦に関する憶測が偏屈な末端から主流に移ったという事実自体が、市民の持つ危機感の兆候であり、我が国がいかに崩壊しているかを示している。

ウォルターやマルシェが懸念しているような内戦は、北軍と南軍が戦場で対峙するようなものではないだろう。もし起こるとすれば、ゲリラの反乱(guerrilla insurgency)ということになるだろう。ウォルターが私に語ったように、彼女はマルシェと同様、年間少なくとも1000人の死者を出す紛争を「大規模な武力紛争(major armed conflict)」と学術的に定義している。「小規模な武力紛争(minor armed conflict)」とは、年間25人以上の死者を出す紛争である。この定義によれば、マルシェが主張するように、「アメリカは既に内紛状態にある(America is already in a state of civil strife)」ということになる。名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation LeagueADL)によれば、過激派(その多くは右翼)は2018年に54人、2019年に45人を殺害した。(2020年には17人を殺害したが、これは新型コロナウイルス感染拡大のためか、過激派の銃乱射事件がなかったため低い数字となった)

ウォルターは、内戦には予測可能なパターンがあると主張し、著書の半分以上を費やして、そうしたパターンが他の国々でどのように展開したかを整理している。内戦は、ウォルターや他の学者たちが「アノクラシー(anocracy)」と呼ぶ、「完全な独裁国家でも民主主義国家でもない、その中間のような国(neither full autocracies nor democracies but something in between)」においてよく起こる。警告の兆候としては、イデオロギー(ideology)よりもむしろアイデンティティ(identity)に基づく激しい政治的分極化の台頭(the rise of intense political polarization)、特に、それぞれが他方に押しつぶされることを恐れる、ほぼ同規模の2つの派閥間の分極化が挙げられる。

内乱を引き起こすのは、自分たちの地位が失墜していくのを目の当たりにした、以前は支配的だった集団である。戦争を始める民族は、その国が「自分たちのものである、あるいはそうあるべきだと主張する集団だ」とウォルターは書く。左翼にも暴力的な行為者はいるが、彼女もマルシェも左翼が内戦を起こすとは考えていない。マルシェが書いているように、「左翼の急進主義(left-wing radicalism)が重要なのは、それが右翼の急進化(right-wing radicalization)の条件を作り出すからである」ということである。

右派の多くが内戦を空想し、計画していることは周知の事実だ。1年前に連邦議事堂に押し寄せた人々の中には、「MAGA内戦・南北戦争(MAGA Civil War)」と書かれた黒いトレーナーを着ていた人もいた。超現実的で暴力的、ミームに取り憑かれた反政府運動「ブーガルー・ボワ」は、南北戦争の続編についてのジョークからその名を得た。共和党はますます武力衝突のアイデアを投げかけている。8月、ノースカロライナ州選出のマディソン・コーソーン連邦下院議員は、「選挙システムが不正に操作され、盗まれ続ければ、行き着く先は1つ、それは流血の惨事だ」と述べ、消極的ではあるが、武装する意向を示唆した。

ウォルターは、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事の誘拐を計画した男たちを引き合いに出して、現代の内戦は「こうした自警団(vigilantes)、つまり国民に直接暴力を振るう武装好戦派から始まる」と書いている。

ウォルターの議論には、私が完全に納得できない部分がある。たとえば、アノクラシーとしてのアメリカの状況を考えてみよう。アメリカの民主政体の後退の憂慮すべき範囲を示すために彼女が依存している政治学の尺度に私は異論を唱えない。しかし、彼女は権威主義から民主政体に向かう国々と、その逆の道を進む国々の違いを過小評価していると考える。ユーゴスラビアのような国が、国をまとめていた独裁体制が消滅したときになぜ爆発するのかが分かるだろう。新たな自由と民主的競争により、ウォルターが「民族主義仕掛人(ethnic entrepreneurs)」と呼ぶ人々の出現が可能になる。

しかし、民主政体から権威主義への移行が同じように不安定化するかどうかは分からない。ウォルターも認めているように、「自由民主政体国家の衰退は新しい現象であり、全面的な内戦に陥った国はまだない」ということだ。私にとっては、アメリカが共和党大統領のもとでハンガリー型の右翼独裁政治国家(Hungarian-style right-wing autocracy)へと硬化する脅威の方が、大規模な内戦よりも差し迫っているように思える。彼女の理論は、権力を失った右派が反旗を翻すというものだ。しかし、右派はますます、有権者が望むと望まざるとにかかわらず権力を維持できるよう、硬直化したシステムを不正に操作している。

内戦の可能性がまだ低いとすれば、多くのアメリカ人が慣れ親しんだ民主的な安定に戻るよりは可能性が高いように私には思える。

マルシェの本では、アメリカがどのように崩壊するかについて、現在の動きや傾向から推測した5つのシナリオが示されている。そのうちのいくつかは、完全にもっともらしいとは私にはとても思えない。例えば、ウェーコ、ルビー・リッジ、マルヒア国立野生生物保護区での極右勢力との連邦政府の対立の歴史を考えると、主権市民の野営地を壊滅させようと決意したアメリカ大統領は、対反乱ドクトリンに頼る陸軍大将ではなく、FBIを派遣するであろう。

※ミッシェル・ゴールドバーグ:2017年から論説コラムニストを務めている。政治、宗教、女性の権利に関する数冊の著書を持ち、2018年には職場のセクシャルハラスメントに関する報道でピューリッツァー賞(公共サービス部門)を受賞したティームの一員でもある。ツイッターアカウント:@michelleinbklyn

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