古村治彦です。

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するイスラエル過激派ハマスのイスラエルに対する攻撃、人質連れ去りとイスラエルのガザ地区への報復攻撃はまだ継続している。停戦交渉も行われているようだが、まだ厳しい状態だ。ガザ地区での民間人犠牲者が増加していること、イスラエルから連れ去られた人質たちの解放が進まないことに対して、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する批判が大きくなっている。

 今回のイスラエル・ハマス紛争に対しては、イスラエル北部国境を接するレバノンの過激派民兵組織ヒズボラ、イエメンのフーシ派がハマスを支援する形で、攻撃を行っている。イスラエルはヒズボラとも戦闘状態にある。イスラエルは南部ガザ地区でハマス、北部国境地帯でヒズボラと二正面作戦を展開しなければならない。ヒズボラはイランからの支援を受けやすく、装備や訓練がハマスに比べて上回っている。また、ヒズボラがレバノンの北部に撤退しながらの戦闘ということになれば、イスラエルはレバノン国内に入っての戦闘を行うことになり、そうなれば、戦争はどんどんエスカレートしてしまう危険がある。
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 イスラエルはハマスとヒズボラとの戦闘を、イランのとの戦争の一部と見なしている。この二正面作戦はイランとの戦争における2つの戦線ということになる。二正面作戦はあまり得策ではない。各個撃破が戦術の基本だ。ハマスもヒズボラもイスラエル国防軍にしてみれば強敵という訳ではない。将兵の人数や装備で言えばイスラエル国防軍が圧倒している。しかし、これまで殲滅できなかったのは、ハマスやヒズボラが正規軍ではないからだ。イスラエルが戦線を拡大し、ヒズボラとも激しい戦いということになれば、イスラエル国内も不安定になり、また、中東全体も不安定になる。今のところ、全ての当事者がエスカレートを望んでいないようであるが、戦闘で予想外の出来事が起きればどうなるか分からない。まずは、停戦が何よりも重要である。

(貼り付けはじめ)

イスラエルとヒズボラの間の戦争はどのようなものになるのか(What a War Between Israel and Hezbollah Might Look Like

-レバノンの武装集団はハマスよりもかなり優れた訓練と装備を備えている。

エイミー・マキノン筆

2024年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/18/israel-hezbollah-lebanon-conflict-war-border-gaza/?tpcc=recirc_latest062921

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イスラエル軍とヒズボラ戦闘員の間で国境を越えた衝突が続く中、6月16日、レバノンとの国境に近いイスラエル北部の町キルヤット・シュモナで、ヒズボラのロケット弾が当たった家を確認するイスラエル兵士

ガザ地区でのイスラエルとハマスとの戦争は過去8カ月間、世界の多くの注目を集めてきたが、第二前線(second front)、つまりレバノンとの北部国境での戦闘は現在激化している。

レバノンの過激派組織ヒズボラは先週、ヒズボラ幹部を殺害したイスラエルの空爆への報復として、これまでで最も大規模なロケット攻撃をイスラエルに対して開始し、紛争が急速に悪化する可能性があるとの懸念が高まった。

イランの支援を受けるヒズボラが数千発のロケット弾、対戦車ミサイル、無人機をイスラエルに発射し、イスラエル空軍も数千回の空爆で対抗しており、北部国境での戦闘は何か月も継続している。国境の両側で約14万人が家を追われている。

火曜日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イスラエルもヒズボラもより広範な戦争を求めていないと信じているが、それでも「潜在的にその方向への勢い(momentum potentially in that direction)」があると述べた。イスラエル側のカウンターパートであるイスラエル・カッツ外相は火曜日、イスラエルが開戦するかどうかの決定に近づいていると指摘し、「総力戦になればヒズボラは破壊され、レバノンは大きな打撃を受けるだろう(in a total war, Hezbollah will be destroyed and Lebanon will be hit hard)」と警告した。

しかし、イスラエルも血にまみれることになるだろう。国際戦略研究センター(Center for International and Strategic StudiesCISS)によると、ヒズボラはハマスよりもはるかに手強い敵である。ヒズボラは世界で最も重武装した非国家主体であると考えられているからだ。このグループはイラン、シリア、ロシアの援助を受けて洗練された兵器を獲得している。

オバマ政権時代に駐米イスラエル大使を務めたマイケル・オーレンは「ハマスはイスラエル国家に対する戦術的脅威(tactical threat)を表している。ヒズボラはイスラエル国家にとって戦略的脅威(strategic threat)だ」と語った。

ヒズボラは約13万発のロケットとミサイルを保有していると推定されており、これらはすぐに国の高度な防空システムを制圧し、最大都市を攻撃する可能性がある。

オーレンは「ヒズボラが3日間で私たちに何をするかという試算を読んだことがあるが、それはまさに恐ろしいことだ」と語った。オーレンは、イスラエルの核研究施設の敷地について言及し、「我が国の重要なインフラ、製油所、空軍基地、ディモナの全てを破壊することについて話している」と語った。

火曜日、ヒズボラは、レバノン国境から27マイル離れたイスラエルのハイファ港のドローン映像を公開したが、これは明らかにイスラエルの防空網を突破して国内奥深くまで到達する能力を実証する目的で行われた。

イスラエルとヒズボラは、2006年に34日間の戦争を戦い、緊迫した膠着状態に終わった。それ以来、ヒズボラは兵器を強化し、シリアで重要な戦場経験を積み、内戦中に窮地に陥ったシリアの指導者バッシャール・アル・アサドを支援するために、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)と共闘した。ヒズボラの司令官は2016年にヴォイス・オブ・アメリカに対し、この紛争は次のイスラエルとの戦争に向けた「予行演習(dress rehearsal)」だったと語った。

ハマスと同様、ヒズボラもレバノン地下を通るトンネル網を開発したと考えられており、イスラエルのアナリストの一部は、そのトンネル網はハマスが使用したものよりも、更に広範囲であると主張している。そして、テヘランの支援者から地理的に孤立しているガザ地区とは異なり、イランは、全面戦争の際にヒズボラ軍を維持するために使用できる、イラクとシリアを経由してレバノンに至る地上および空からの補給ルートを確立している。

イスラエルがレバノンの首都ベイルートやその他の都市を標的にする可能性が高く、ヒズボラが「国家の中の国家(state within a state)」を運営していると評されているレバノンにとっても、エスカレーションは壊滅的な打撃となるだろう。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防大臣は、戦争が起きた場合、イスラエルは「レバノンを石器時代に戻す(return Lebanon to the Stone Age)」だろうと警告を発した。

ガザ地区のハマスと同様、ヒズボラはレバノンの民間人に深く浸透している。2006年の戦争中、イスラエルは過剰な武力行使を行い、銀行、学校、政治事務所などヒズボラに関連する各種の非軍事目標を攻撃し、国の民間インフラを攻撃したとして、人権団体から広く批判された。

シンクタンクの民主政治体制防衛財団の研究担当上級副会長ジョナサン・シャンツァーは、「その計画は、ヒズボラが支配するこの国におけるヒズボラの支配の見せかけをすべて破壊することを目的とするだろう。私たちは多大なる被害について懸念している」と語った。

2006年の戦争後の数年間の比較的平穏な日々は、2023年10月7日の攻撃を受けてヒズボラが明らかにハマスとの団結を示し、イスラエルにロケット弾とミサイルを一斉射撃したことで突然終わった。ジョージタウン大学外交学部のダニエル・バイマン教授は、イスラエル北部国境の危機を緩和する道は、ガザ地区を通る可能性が高いと述べた。

バイマンは、「ハマスが停戦に同意すれば、ヒズボラもそれを尊重すると思う。ヒズボラは、全体として、ハマスの動きに合わせようと努めてきた」と語った。ヒズボラの幹部たちはエスカレーションを望まないとも述べた。

イスラエル内外の当局者やアナリストの多くは、ガザ地区をイランとの広範な戦争における前線の1つにすぎないと見ており、ヒズボラとの衝突激化はほぼ避けられないと確信している。イスラエルの元国家安全保障問題担当補佐官エヤル・フラタは、「彼ら(イラン)が核開発で前例のない進歩を遂げる一方で、ヒズボラとの衝突はそれから目を背けさせるものではないかと心配している」と語った。

ジョー・バイデン米大統領の世界エネルギー担当特使であるエイモス・ホッフスタインは、先月カーネギー基金が主催したイヴェントで、両国が戦争を回避することを望んでいたとしても、戦争に至る可能性があると述べた。ホッフスタインは、「イスラエルとヒズボラはほぼ毎日のように銃撃戦を続けており、事故やミスによって状況が制御不能になる可能性がある」と述べた。

ホッフスタインは、国境沿いの緊張緩和を目指すバイデン政権の交渉の中心人物となった。ホッフスタインは今週、レバノンとイスラエルの代表者らと会談する予定だ。

ホッフスタインは次のように述べている。「私が毎日心配しているのは、計算ミスや事故、目標を狙った誤ったミサイルが目標を外したり、他のものに衝突したりすることだ。そうなれば、どちらかの国の政治体制が、私たちを戦争に引きずり込む形で報復せざるを得なくなる可能性がある」。

イスラエル政府は、9月の新学期開始に合わせて、戦闘によって家を追われた約6万人が北部国境沿いのコミュニティに戻れるような解決策を見出すよう圧力を強めている。

バイマンは「双方向に政治的圧力がある。国中のイスラエル人を避難所に強制収容するような、終わりの見えない大規模な全面戦争は、政治的にもあまり魅力的ではない」と述べた。

アナリストたちは、10月7日のハマス主導の攻撃をヒズボラの戦略の1ページと評し、ハマスがイスラエルへの地上侵攻に備えて何年にもわたって訓練を行っていたことを指摘した。たとえ交渉がロケット弾発射の阻止に成功したとしても、ヒズボラによる更なる攻撃への懸念により、イスラエル国民の安全感を回復する取り組みは困難になる可能性が高い。

ホッフスタインはカーネギー財団のイヴェントで、「双方が発砲を止めただけでは、基本的に10月6日の現状に戻ることだけのことになり、イスラエルの人々が安全に自宅に戻ることはできない」と述べた。ホッフスタインは、民間人が国境の両側の故郷に戻れるようにするためには、より広範な合意が必要だと述べた。

※エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障・情報諜報担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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