古村治彦です。
2024年7月15日から共和党全国大会が始まった。ドナルド・トランプ前大統領が共和党の大統領選挙候補者に正式に指名された。トランプは相棒となる副大統領候補に、J・D・ヴァンスを指名した。これまで、アメリカのメディアでも、ヴァンスの名前が取りざたされてきたが、正式に副大統領候補となった。ヴァンスは現在、オハイオ州選出の連邦上院議員を務めている。高校卒業後に、アメリカ海兵隊に入隊し、広報担当・従軍記者としてイラクに派遣されたこともある。その後はオハイオ州立大学に進学し、その後はイェール大学法科大学院に進学した。オハイオ州立大学からイェール大学法科大学院に進学するということは、大学時代の成績は日本風に言えば「全優」、「ストレートA」だったと考えられる。その後は投資会社で社長を務め成功するなど、優秀なビジネスマンとなった。
ヴァンスの名前を一躍有名にしたのは、2016年に発表した『ヒルビリー・エレジー(Hillbilly
Elegy)』(邦訳は2017年に光文社刊)だ。これは、ヴァンスが成長したオハイオ州も含まれる、アパラチア山脈地方の貧しい白人の人々の生活を描いた階層だ。2016年の米大統領選挙でドナルド・トランプが下馬評を覆し、ヒラリー・クリントンに勝利した後に、「どうして労働組合が強い工場地帯である五大湖周辺州で民主党のヒラリーが負けて、トランプが勝利したのか」という疑問を多くの人々が持ったが、ヴァンスの回想録がその答えとなるということで、『ヒルビリー・エレジー』はベストセラーになった。ラストベルトの貧しい白人労働者たちがトランプを支持したこと、その理由がこの本で分かる。
2016年当時、ヴァンスはドナルド・トランプを激しく非難していた。「文化的ヘロイン」「アメリカのヒトラー」と呼んでいた。しかし、2022年のオハイオ州連邦上院議員選挙に出馬する際には、謝罪し、トランプ支持を表明した。トランプは「自分に敵対しても、最後には自分のところに戻ってくる」と言って、ヴァンス支持を表明し、ヴァンスは上院議員選挙で勝利した。上院ではトランプ支持派の代表として、激しい言葉遣いで物議を醸すことも多かった。ウクライナ戦争ではウクライナ支援に反対してきている。しかし、一方で、バイデン政権が行った、インシュリンの価格の上限設置といった、貧しい人々向けの政策では政権を支持している。
今回の銃撃事件を受けて、トランプこそが「神に選ばれた私たちのリーダーだ」と受け取る人が多く出るだろう。トランプ自身も激しい言葉遣いを止め、穏やかな表情となっている。彼自身も期するところがあるだろう。思い切った言葉を使えば「回心」ということになるだろう。ヴァンスの方が激しい言葉遣いを行って、トランプのお株を奪っている。これは、前回のトランプ政権では、トランプの激しさと、マイク・ペンス副大統領の穏やかさと堅実さがコントラストとなったが、今回は批判をヴァンスが引き受けるということになりそうだ。
ヴァンスの個人生活において重要なのは、イェール大学法科大学院時代の同級生のインド系のウーシャ夫人と結婚していること、そして、ヴァンスは2016年にプロテスタントの福音派からカトリックに改宗していることだ。インド系はアメリカでも社会的に上昇し、重要な役割を果たすようになっている。政界でも、カマラ・ハリス副大統領、ニッキー・ヘイリー元国連大使がインド系である。インド太平洋を重視するアメリカにとって、インドとの関係は重要である。この点から、副大統領候補にヴァンスが選ばれたことの意味は大きい。また、マイノリティにもウイングを広げるということにもなる。また、ヴァンスがカトリック(で保守派)ということも大きい。マイノリティでもヒスパニックはカトリックが多い。ヒスパニック票にアピールができるということの意味は大きいイ。バイデン大統領もアイルランド系のカトリックの家系(でリベラル派)であり、中絶問題などで保守派とリベラル派で分裂するカトリックであるが、トランプ・ヴァンスへの投票に結びつくどうかが注目される。
ヴァンスの副大統領候補指名は今回の選挙戦、更に若手のヴァンスが登場したことは、2024年以降の選挙にも影響を与えることになる。
(貼り付けはじめ)
トランプがJ・D・ヴァンスを副大統領に選出:知っておくべき5つのこと(Trump picks JD Vance for VP: 5 things
to know)
キャロライン・ヴァキール筆
2024年7月15日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/4774018-jd-vance-vp-things-to-know/
ドナルド・トランプ前大統領は月曜日、副大統領候補をめぐる数カ月にわたる憶測に終止符を打ち、副大統領候補にJ・D・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)を正式に指名した。
トランプ前大統領は共和党全国大会初日、共和党副大統領候補にヴァンスを指名した。オハイオ州出身の共和党員であるヴァンスは、最終候補3人のうちの1人と広く見られていた。マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出、共和党)とノースダコタ州知事のダグ・バーガムも候補に加わった。
ヴァンスはトランプ前大統領の忠実な同盟者だが、オハイオ州選出の共和党所属の連邦上院議員とトランプとの関係は複雑だ。
トランプの2024年の副大統領候補について知っておくべき5つのことは次のとおりだ。
(1)彼は熱烈なトランプ支持者だ(He’s an ardent Trump
supporter)
ヴァンスは連邦議会議事堂内部で最も著名なトランプ元大統領支持者の1人で、連邦上院でトランプとその政策を主張している。
2月には、イスラエルとウクライナへの資金援助を含む対外援助案に反対票を投じるよう同僚の共和党議員に呼びかけた。当時「法案本文の中には、次期トランプ大統領がウクライナ戦争への資金援助を止めようとすれば、トランプ大統領の弾劾が行われる、そんな時限爆弾が埋まっている」と主張した。
ヴァンスは5月、ニューヨークの口止め料捜査におけるトランプ大統領の緘口令(gag order)の合憲性(constitutionality)を調査するようメリック・ガーランド司法長官に要請した。
彼は日曜のテレビ番組などのメディア出演でも効果的な代理人として活躍している。先週のNBCの「ミート・ザ・プレス」のインタヴューで、ヴァンスは2024年の選挙が「自由で公正(free and fair)」である限り結果を受け入れると述べた。
ヴァンスは次のように述べている。「自由で公正な選挙である限り、もちろんそうするだろう。問題があると思われる場合には、憲法上の手続きを利用して問題に異議を申し立てる。しかし、自由で公正な選挙であれば、私たちは憲法が要求することを実行する。私たちは結果を尊重する。そして、その結果によってドナルド・トランプが再選されるだろうと私は予想している」。
(2)しかし、以前は批判者だった(But he used to be a critic)
しかし、ヴァンスは常にトランプ支持者だった訳ではなく、以前はトランプ前大統領を「愚か者(idiot)」で「有害(noxious)」と呼んでいた。
オハイオ州選出の共和党所属の連邦上院議員は2016年、トランプ大統領の悪名高き「アクセス・ハリウッド」テープに関する暴露の最中にソーシャルメディアに次のように投稿した。「親愛なるクリスチャンの皆さん、みんなが私たちを見ている。この男のことについて謝罪するとき、主は、私たちを助けてくださる」。
2016年の『ジ・アトランティック』誌への寄稿で、ヴァンスはトランプ元大統領を「文化的ヘロイン(cultural heroin)」と呼んで痛烈に非難した。
ヴァンスは「トランプは一部の人の気分を少し良くさせてくれる。しかし、彼は彼らを悩ませているものを解決することはできず、いつか彼らはそれに気づくだろう」と書いた。
彼はまた、トランプを「冷笑的な嫌な奴(cynical asshole)」、「アメリカのヒトラー(America’s Hitler)」とも評した。
これらの過去の発言の多くは、特に2022年の連邦上院議員選挙に出馬中に、ヴァンスを悩ませるようになった。ヴァンスはこれまでの発言について謝罪し、トランプ前大統領について「間違っていた(wrong)」と述べた。
ヴァンスは、5月にCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、トランプに対するこれまでの発言について質問され次のように答えた。「私はこれについてはっきりと述べた。私はトランプについて間違っていた。私は彼が良い大統領になると考えていなかった。そして、それが間違っていたことが証明されてとても誇りに思う。私が彼を当選させるために一生懸命努力している理由の1つはこれだ」。
(3)彼はベストセラー作家だ(He’s a bestselling writer)
ヴァンスは2016年に出版された回顧録『ヒルビリー・エレジー(Hillbilly
Elegy)』を執筆したことで一躍脚光を浴びた。『ヒルビリー・エレジー』はオハイオ州で育った彼の数年間を振り返り、貧困やアルコール依存症といった問題が身近にある労働者階級の白人たちのアメリカに触れながら、イェール大学のロースクールに通うなどして何とか自分の未来を切り開いた様子を描いた。
この本は、2016年のトランプ大統領の台頭を理解しようとする政治オブザーバーたちの間で人気のある本となった。
ヴァンスは2016年、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタヴューで、「この本は2つのことを物語っていると思う。第一に、人々が白人労働者階級(white working class)の怒りとフラストレーションに強い関心を抱いていること、第二に、白人労働者階級の人々が自分たちの物語を誰かに語ってもらうことに飢えていることだ」と語った。
この本はニューヨーク・タイムズのベストセラーとなり、その後2020年に映画化された。
(4)勝利した場合、彼は最も若い副大統領の1人となるだろう(He would be one of the youngest vice presidents to win)
11月にトランプ・ヴァンスのコンビが当選すれば、ヴァンスはアメリカ史上最年少の副大統領の1人となる。8月に40歳になるヴァンスは、ミレニアル世代(Millennial)として初めて副大統領となる。
ジョン・C・ブレッキンリッジ元副大統領は、1857年に副大統領に就任したとき36歳だった。リチャード・ニクソン元大統領は1953年に副大統領に就任したとき40歳だった。彼の誕生日はヴァンスの誕生日より早い。
(5)彼は共和党内のアイソレーショニスト派を代表している(He represents
the isolationist faction of the GOP wing)
オハイオ州選出の共和党所属の連邦上院議員であるヴァンスの外交政策に関する見解は共和党のアイソレーショニスト派を代表しており、ロシアのウクライナ侵攻問題がその姿勢を浮き彫りにさせている。
ヴァンスは4月にニューヨーク・タイムズに掲載した論説の中で次のように書いた。「ホワイトハウスはロシアのウラジーミル・プーティン大統領とは交渉できないと何度も言ってきた。これは不合理だ。バイデン政権には、ウクライナ人がこの戦争に勝つための実行可能な計画はない。アメリカ国民がこの真実に早く直面すればするほど、この混乱をより早く解決し、平和を仲介することができる」。
ヴァンス上院議員は、ウクライナ支援に反対を表明し、大統領は「ウクライナが何を必要としているのか、そしてこの支援が現場の現実をどのように変えるのかについて、基本的な事実すら明確に述べていない」と論説の中で書いている。
こうした見解は、ウクライナ支持者のリンゼイ・グラム上院議員(サウスカロライナ州選出。共和党)など共和党の同僚の一部を時折苛立たせており、外国の紛争への対処方法を巡って党内に亀裂が生じていることを示している。
(6)中絶に対する彼の立場は進化した(His position on abortion
has evolved)
ヴァンスはこれまで、2022年連邦上院議員選挙に立候補する際に妊娠15週間後の制限を支持するなど、中絶へのアクセスに関する連邦政府の制限を支持してきた。
しかし、ヴァンスは、この問題に関するトランプの最近の発言を反映しており、トランプは中絶へのアクセスは各州に委ねられるべきだと述べている。
ヴァンスは先週、NBCの「ミート・ザ・プレス」で中絶と中絶薬の問題について語り、「ドナルド・トランプはここでは現実的なリーダーだ」と語った。
ヴァンスは「トランプは、中絶政策のほとんどは州によって決定されるだろうと述べている。私たちは、若い女性やその親たちが、そもそも家族を持つことをより簡単かつ手頃な価格にしたいと考えている。私たちは住宅費を削減し、多くの家族が出産後に目にする驚くべき医療費をなくしたいと考えている。それがこの問題に対するトランプと共和党のアプローチだ」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)


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