古村治彦です。
ジョー・バイデン大統領の選挙戦撤退と、カマラ・ハリス副大統領への後継指名があり、ご紹介しようと思っていた、共和党全国大会最終日に関する記事をご紹介できないでいた。今回、間隙を縫って、ご紹介したいと思う。最終日のクライマックスは、何と言っても、共和党大統領選挙候補者指名受諾演説だった。1時間以上もある大演説であった(通常はもっと短い)。前半のトランプは、暗殺未遂事件について語り、しんみりとした雰囲気だった。彼は、「神が私のそばにいて下さった(I had God on my side)」「全能の神の恩寵(grace of
almighty God)」「神の摂理の瞬間(providential moment)」といった、信仰に絡んだ言葉を選んだ。トランプは自分自身が「神に生かされた」「神に選ばれた」という「確信」を得て、「回心(改心)」したと考えられる。
しかし、後半はだんだん調子が出てきて、原稿からどんどん離れていった。ジョー・バイデンという名前は原稿にはなかったが、1度だけ言うとして、「アメリカの最低の大統領10人を集めたよりも、酷い損害をアメリカに与えた」という発言を行った。この激しい言葉遣いは一度で十分である。
ヴァンス副大統領候補と配偶者のウーシャさんを紹介した時には、「イェール大学で知り合った」ということまで述べた。これは、「自分たちは白人至上主義ではない、きちんとした移民とその子供で、きちんとした教育を受けた人は自分たちの仲間だ」ということを示そうとしている。トランプ陣営やトランプ支持者は白人至上主義者と見られたり、白人氏至上主義グループから支持を受けたり、ということがあり、無党派に懸念を持たれる部分であるが、そのイメージを払拭しようとしている。その点で、ヴァンスの人選は良いものとなった。
今回の共和党全国大会は大きな失点がないどころか、盛り上がりを見せ、共和党全体を勢いづけることになった。この盛り上がりもあり、バイデン大統領は撤退を決断したということもあるだろう。6月27日の討論会でバイデンが酷いパフォーマンスを見せ、その後、トランプの暗殺未遂事件が起きた。バイデンと民主党は追い込まれた。そこで、起死回生のバイデン撤退表明となった。来月には民主党大会があり、そこで、どれくらいの勢いをつけることができるが勝負ということになる。これからも目を離すことはできない。
(貼り付けはじめ)
選挙集会での銃撃事件後のトランプが戦うために出てきた:昨夜の共和党全国大会の5つのポイント(Trump comes out fighting after rally shooting: 5 takeaways from
RNC’s last night)
ジャレッド・ギャンズ、ジュリア・ミュラー筆
2024年7月19日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/4781271-donald-trump-rnc-joe-biden-jd-vance/mlite/
ドナルド・トランプ前大統領は、暗殺未遂事件から生還して以来初の演説で、2024年共和党全国大会を選挙集会と変化させ、銃撃事件では神が味方だった(God was on his side)と主張し、「この国を救う(save this
country)」ために党が団結するよう呼びかけた。
トランプは、ミルウォーキーで数千人の聴衆を前に演説し、正式に共和党の大統領候補指名を受けた際に、自身の臨死体験(near-death experience)の詳細を明かした。
以下で、共和党全国大会最終日の夜の5つのポイントを挙げる。
(1)トランプは暗殺未遂について詳しく話す(Trump went into
detail about assassination)
4日間の緊張の後、トランプは党全国大会の締めくくりの演説(convention-capping
speech)で、ペンシルヴァニア州での土曜日の集会で起きた暗殺未遂事件の体験を語った。この事件では、銃撃犯が耳をかすめ、集会参加者1人を殺害、2人を負傷させた。
トランプは、「皆さんも既にご存知のとおり、暗殺犯の銃弾は私の命を奪う寸前まで迫っていた。非常に多くの人が私に、『何が起きたのか?
何が起きたのか教えて欲しい』と尋ねてきた」と述べた。
トランプは参加者たちに「何が起こったのか正確に(exactly what
happened”)」話すと約束したが、「話すのがあまりにも辛いので(because it’s
actually too painful to tell.)」二度と話さないと誓った。
トランプは、その日の観衆について、「夕方の暖かく美しい日(warm,
beautiful day in the early evening)」と、ペンシルヴァニア州の「歓声を上げていた(cheering)」と詩的に語ったが、その後「大きな、ヒューという音(loud,
whizzing sound)」と「本当に、本当に激しく(really, really hard)」耳に当たった弾丸の感覚で、歓声が途切れたと語った。
トランプは事件で傷ついた耳に白い包帯を巻いていた。共和党全国大会の参加者の中にも同じように耳に包帯をしている人がいたが、ある女性は、それは元大統領への「連帯感(in solidarity)」からだと話した。
トランプは「ひどい夜(terrible evening)」であり、「多くの弾丸(many bullets)」が発射され、死と隣り合わせの緊張感があったと表現したが、「穏やか(serene)」な気分だったと語った。彼は生き延びたことを神に感謝し、「おそらく」「神の摂理の瞬間(providential moment)」だったと語った。
参加者たちはトランプの話に釘付けになり、シークレットサービスに囲まれ拳を突き上げるトランプ元大統領の写真が背後のスクリーンに映し出されると、「ファイト(fight)」の掛け声をあげた。
(2)トランプは以前からの彼自身だった(Trump was his old self)
トランプ以前の演説者たちは、よりソフトなヴァージョンのトランプが登壇するための下地を作っているようだった。
水曜日の夜、トランプの孫娘カイ・マディソン・トランプが登場し、前大統領を 「普通のおじいちゃん」で「両親が見ていないときにキャンディやソーダをくれる
」し、「いつも学校での様子を知りたがる」と述べた。
木曜日、トランプ政権の中小企業庁長官を務めたリンダ・マクマホンは、マーアラーゴでのトランプ大統領と4歳の孫娘の逸話を披露した。孫娘が「彼の髪の毛をぐちゃぐちゃにした時」に「彼は祖父だけが持つことのできる愛をもって微笑んだ」と述べた。
マクマホンは、この逸話は「典型的なドナルド・トランプ・ストーリではないだろう」と認め、前大統領は「ライオンのハートと戦士の魂」を持つ「素晴らしい人物」と述べた。
しかし、木曜夜に演説したトランプは、2015年に選挙運動を開始して以来、あらゆる集会で見られたのと同じ人物だった。
事前に発表された演説原稿の主な内容は、トランプの2期目の可能性に関する計画と、トランプがこの国が直面していると考える問題についての議論に焦点が当てられていたが、トランプは予定されていた発言から頻繁に逸脱し、代わりに味方を称賛し、敵を攻撃する方向に転じた。
書かれた原稿には、バイデン大統領の名前は含まれていなかったにもかかわらず、トランプ大統領は敵対者への直接的なジャブを浴びずにはいられなかったようだ。トランプは、「アメリカ史上最悪の大統領10人を数えて、全員を合わせても、バイデンが与えたような損害は与えられなかっただろう」と述べた。
また、トランプはナンシー・ペロシ前連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)を批判し、「クレイジーなナンシー」と呼び、聴衆からはブーイングが出た。ペロシの広報担当者は後に、トランプは一部の人が予想したような「新しいトーン(new tone)」を取らず、以前のトランプと同じトランプだったと述べた。
トランプはまた、中国などの外国に雇用が流出しているとして、全米自動車労働組合(United
Auto Workers)の指導者を非難し、「恥じるべき(ashamed)」、「解雇されるべき(fired)」と述べた。
同時に、トランプは今週のテーマである「団結(unity)」に傾倒し、特にスピーチの終盤で原稿通りの発言をし、人々が互いに争うことにエネルギーを費やせば、国の「運命(destiny)」は手の届かないものになると述べた。
トランプは、「私たちはそのエネルギーを、国の真の可能性を実現するために使わなければならない。そして、アメリカの歴史のスリリングな章を私たち自身で書いていかなければならない」と述べた。
(3)イヴェントはロックコンサートのようだった(The event was like
a rock concert)
木曜日の夜のラインナップには、音楽スターのキッド・ロック、格闘技プロモーターのデイナ・ホワイト、レスリング界のレジェンドであるハルク・ホーガンなどの著名人たちも登場し、参加者は熱狂した。
ホーガン(本名テリー・ボレア)は、トランプと新たに副大統領候補に指名されたオハイオ州選出の連邦上院議員J・D・ヴァンスを「私が人生で見た中で最高のタッグチーム(he greatest tag team of my life)」と称賛する発言をし、その間に「USA」の連呼を参加者に促した。
彼はまた、大声で歓声を送る参加者についても称賛した。
「今夜ここに来たとき、この場所にはとてもエネルギーが溢れていて、もしかしたらマディソン・スクエア・ガーデンで次のタイトルを獲得する準備をしているのかもしれないと思ったほどだった。しかし、私が気づいたのは、私が本物のアメリカ人でいっぱいの場所にいるということだった、兄弟たちよ」と述べた。
一方、キッド・ロックは自身の曲「アメリカン・バッド・アス」を歌い、参加者は「ファイト」や「トランプ」と叫んだ。
夜の終わりに、トランプはリー・グリーンウッドの「ゴッド・ブレス・ザ・USA」のライヴパフォーマンスに乗って、派手に登場した。そしてステージを歩き回り、曲が終わると参加者に手を振り、手を叩いてから演壇に向かった。
その夜は、トランプ大統領の家族もステージ上に登場し、ファイサーヴ・フォーラムの参加者が熱狂する中、報道によると、10万個以上の赤、白、青、金の風船が映画の1シーンの
ように降下して終了した。
(4)ハルク・ホーガンが注目を集めた(Hulk Hogan almost stole
the spotlight)
トランプよりも目立つということは難しい仕事であるが、ホーガンはそれをほぼやってのけた。
トランプ前大統領を称賛する演説をしている間、プロレスラーのハルク・ホーガンはミルウォーキーの会場を大いに沸かせた。
ホーガンが登壇するとすぐに、参加者たちは「USA」という言葉を一緒に叫んだ。
しかし、おそらく彼の登場で、最もスリリングな瞬間は、レジェンドレスラーが参加者に向かって話しているときに、シャツを引きちぎった時で、ほとんど耳がつんざくような大歓声が起きた時だ。
「彼らがアメリカの次期大統領を殺そうとしたとき、もうそれだけで十分だった。私はトランパマニアを野に放ってくれと言ったんだ、兄弟たちよ」と、自身のキャッチフレーズ「ハルクマニア」をもじって述べ、ホーガンは満場の拍手を浴びた。
その後、ホーガンは元大統領の家族とともにトランプのボックス席に座り、トランプ自身もホーガンがどれほど参加者を元気づけたかについて、その力を認めているようだった。
トランプは演説中にも「ハルクスターはどうだった?」と質問し、出席者は歓声で応えた。
(5)バイデンの苦境は静かに進行(Biden’s woes were an
undercurrent)
共和党が銃撃事件後の最初のトランプの演説に歓喜し、党の指名を正式に受諾したことを祝う一方で、民主党では、バイデンと2024年の候補者指名をめぐる内部争いが続ている。
共和党全国大会の期間中、モンタナ州選出のジョン・テスター連邦上院議員は、バイデンに大統領選挙から撤退するよう求めた2人目の民主党所属の連邦上院議員となった。
共和党支持が強い州で再選を目指す民主党所属の議員で、危うい立場にあるテスターは、現職のバイデンの「公務と国家への献身(commitment to public service and our country)」を評価するが、バイデンは「再選を目指すべきではない(should not seek reelection to another term)」と述べた。
モンタナ州選出の連邦上院議員の動きは、選挙集会でのトランプ銃撃事件を受けてやや沈静化していた、民主党内部のドラマに拍車をかけるものだったが、今週初め、党のより著名な人物がこの動きに続々と加わったことで、ドラマは再燃した。
水曜日、アダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、11月にバイデンがトランプに勝つ能力について、「深刻な懸念(serious concerns)」を表明し、ジム・コスタ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)もこの呼びかけに加わり、バイデンが「トーチを渡す(pass the torch)」時が来たと述べた。
トランプは共和党全国大会の演説でバイデンの名前を一度だけ挙げたが、事前に発表された原稿には入っていなかった。
「バイデン、この言葉を一度だけ使う。これ以降はその名前は使わない。一度だけだ」とトランプは述べ、演説は政権を批判したものの、共和党の反対側の党で繰り広げられているドラマについては語らなかった。
カマラ・ハリス副大統領が自分のボスであるバイデンに代わって候補者リストのトップに立つ可能性についての話が高まっており、民主党内部の関係者たちは、8月の党全国大会が近づくにつれ、バイデンの政治的将来に関する決定が数日のうちに下される可能性があると囁き合っている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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