古村治彦です。
2024年7月24日夜、ジョー・バイデン大統領は選挙戦からの撤退を表明する演説を行った。具体的な撤退理由は述べなかった。もし、健康に不安がある、認知機能に不安があるということになれば、「それならば大統領職を務めることができないだろうから、辞職して、カマラ・ハリス副大統領に大統領職を譲れ。そもそも、自分は元気だ、大丈夫だと散々言って選挙戦を続けてきたのは嘘をついていたということになるではないか」という批判が出てくるということも考えられる。
バイデンの演説の後半は、自分の業績と残りの人気でやりたいことを述べていたが、去ることが確定の大統領は、「レイムダック」と呼ばれ、力は落ちる。これ以上、バイデンのために無理をして尽力しようという人は出てこなくなる。自分の次の仕事の求職活動にいそしむという人も出てくる。その点は院政を敷くこともなく、ドライでシビアというのはアメリカらしくて良いところだ。
バイデンは選挙戦からの撤退の理由を次のように述べている。「自分のこれまでの大統領としての業績、世界における自分の指導力、アメリカの未来に対する自分のヴィジョンは、いずれも私が2期目を目指すにふさわしい材料だった。しかしながら、絶対に、絶対に、どんなことも、私たちの民主政治体制を守ることを妨げてはならない。個人の野心もそこに含まれる。従って、前に進むための最善の道は、トーチを新しい世代に引き継ぐことだと私は決断した。この国を団結させる最善の方法だ。長年の公職経験が役にたつ時と場所があるのと同様、新しくフレッシュな声、より若い声が役にたつ時と場所がある。そしてその時と場所は、まさに今だ」。自分は大統領として2期目を務めるのにふさわしいと述べながら、「民主政治体制を守る」ために「若い人にバトンを渡すこと、若い声を聞くことが必要」だと述べている。
これでは、バイデン自身が2期目を目指すことが民主政治体制を守ることの邪魔なのだということを認めているようなものだ。それならば、どうして、バイデンが二期目を目指すことが民主政治体制を守ることの邪魔になるのか、ということを述べねばならない。しかし、そこまで追い詰めると、民主党内部やバイデン・ハリス陣営に亀裂を生じさせることになる。だから、ふわっとした、聞こえの良い言葉「民主政治体制を守る」を使ったということになる。更に言えば、「自分ではドナルド・トランプには勝てない」ということをはっきり述べることができないので、このような言葉遣いになった。
バイデン引きずりおろしには、民主党エリート層、エスタブリッシュメント派が総出で加わり、かなりの圧力をかけたようだ。連邦議員たちは自分たちの選挙が危ない、民主党の選挙の顔である大統領候補がバイデンは自分たちが危ないということになって引きずりおろしに狂奔した、民主党は今年2月から始まった予備選挙の結果を無視している。これまでの選挙で誰一人として、「カマラ・ハリス」と書いた人はいないのだ。民主党は、非民主的な方法で現職大統領ジョー・バイデンを選挙戦から撤退させ、カマラ・ハリス副大統領を、政治家たちの支持で作り出した雰囲気だけで大統領候補に祀り上げた。これは一種のクーデターである。良識ある民主党員ならば、民主党大会でそのことについて言及し、民主的な手続きを求め、全国委員会の責任を追及しなければならない。そのために、反エスタブリッシュメント派の諸グループが民主党全国大会の会場であるシカゴでデモを行うという計画も話し合われているということだ。
民主党大会前に大統領選挙候補、副大統領候補を決めるという動きにもなっている。全国大会が平穏に終わるかどうかが注目される。
(貼り付けはじめ)
バイデン大統領が大統領執務室で演説を行い民主党を団結させるために辞任したと発言(Biden
in Oval Office speech says he dropped out to unite Democrats)
アレックス・ガンギターノ筆
2024年7月24日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/4791617-joe-biden-democrats-unite-kamala-harris/
ジョー・バイデン大統領は大統領執務室での演説で、数週間にわたる党内の混乱と退陣への圧力の高まりを経て、民主党を結束させる方法が明らかになったため、再選への挑戦を中止する決断を下したと述べた。
バイデン大統領は、再び出馬することについて考えを変えることができるのは、より高い権力以外に何もないと断言した。しかし、特に連邦議会指導部から、撤退するか、さもなければ民主党が11月に連邦上下両院を失う危険を冒すよう懇願した後、バイデンは最終的に妥協した。
バイデンは「ここ数週間で、この重要な取り組みにおいて私の党を団結させる必要があることが明確になった」と述べた。
バイデンは「何ものも、何物も私たちの民主主義を救うのを妨げるものはない。それには個人的な野心も含まれる。そこで私は、今後の最善の方法は、新しい世代にトーチを引き継ぐ(pass the torch)ことだと明らかになった。それが我が国を団結させる最善の方法だ」と付け加えた。
「国家の大義(cause)は私たちの誰よりも大きい」とバイデンは述べた。
大統領執務室には、ジル・バイデン大統領夫人、子供たち、自分の子供たちの配偶者と子供たち、長年の政治顧問たちのほか、ホワイトハウスの職員も同席した。
バイデンは、ハリス副大統領への支持を表明しており、民主党はハリス副大統領のおかげでエネルギーが活性化され、トランプ前大統領を破る可能性が高まる可能性があると主張している。同行記者たちによると、ハリスはテキサス州ヒューストンからバイデンの演説を観戦した。
日曜日にソーシャルメディアに投稿した書簡の中で、バイデンは立候補ソを取り下げると発表した。この発言は、オバマ前大統領やナンシー・ペロシ元連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)など、最も注目を集めている民主党議員の何人かが、トランプ大統領に勝利する可能性が消えつつあることをバイデンに説得しようとしたとの報道を受けてのものだった。
バイデンは演説の中で「公的生活における長年の経験には時と場所がある。新しい声、新鮮な声のための時間と場所もある。そう、若い声です。そしてその時は今だ」と述べた。
バイデンの撤退を求める声は、6月下旬の討論会のパフォーマンスが酷かったことを受けて起きたもので、その最中、81歳のバイデンは考えをまとめるのに苦労し、低くガラガラの声で話していた。彼は、撤退するまで3週間かけて選挙戦に残り、選挙運動を続けると主張した。
バイデン大統領は演説の中で、2020年にトランプ大統領を破った後、政権の継続的なテーマである民主政治体制の維持(preserving democracy)を訴えた。
「この瞬間、私たちは意見の合わない人たちを敵としてではなく、友人、同じアメリカ人として見ることができる。それができるだろうか?
公の場での人格は依然として重要だろうか?」とバイデンは述べた。
バイデンは、オフィスに飾っているベンジャミン・フランクリンの言葉に言及し、建国の父たちはアメリカに「共和国が維持できるのか?」という言葉を与えたと述べた。
バイデンは「私たちが私たちの共和国を維持できるかどうかは、今や皆さんの手にかかっている」と言った。
バイデンは続けて「歴史はあなたの手の中にあり、権力もあなたの手の中にある。アメリカの理念は皆さんの手中にある」と述べた。
バイデンは大統領職を辞任せず、今後6カ月間任期を全うするつもりであることを明らかにした。
バイデン大統領は、ガザ地区におけるイスラエル・ハマス紛争の終結、最高裁判所の改革、性と生殖の権利のための取り組みの継続、癌ムーンショット構想など、1月に退任するまでの計画を概説した。
また、ハリスを「経験豊富」「タフ」「有能」と称賛した。バイデン大統領は、トランプ大統領の名前を決して言及しなかった。
加えて、バイデンは、50年間の政府勤務について感謝の意を表した。
バイデンは、「ペンシルヴァニア州スクラントンやデラウェア州クレイモントでささやかに生まれながら吃音を抱えた子供が、ある日大統領執務室の毅然としたデスクの後ろに座ることは地球上のどこにもない。私は他の多くの人たちと同じように、自分の心と魂をこの国のために捧げてきた。私が皆さんにどれだけ感謝しているか、少しでも分かっていただければ幸いだ」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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