古村治彦です。
アメリカ大統領選挙は、民主党のカマラ・ハリス副大統領の人気が急上昇ということで、民主党側はお祭り騒ぎになっており、共和党とドナルド・トランプ陣営が守勢に回っているという報道がなされている。私は、激戦州、特にウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州の状況を見ていて、トランプ前大統領が有利と見ている。トランプがペンシルヴァニア州を取れば選挙戦はトランプ勝利で終わるだろうと見ている。
カマラ・ハリスはカリフォルニア州でキャリアを重ね、連邦上院議員になって4年、副大統領になって3年半ほどである。国政でのキャリアは短い。バイデンは大統領になる前には、連邦上院議員を36年、副大統領を8年務め、大統領になった。ワシントン政治の大ヴェテランで賛否両論あるが、その点は評価すべきだ。バイデンはペンシルヴァニア州の出身で、隣のデラウェア州を拠点にしてきたので、五大湖周辺の激戦州での人脈が広い。ハリスは、五大湖周辺州での人脈がほぼない状況であり、ここの有権者たちにしてみれば、「カマラってどんな人なの?」ということになる。残り100日余りで、どこまで浸透できるかは不透明である。また、五大湖周辺の激戦州(工業中心、働き者の白人労働者、敬虔なキリスト教徒が多い)と、進歩主義的なカリフォルニア州では文化が違いすぎる。ハリスは自身を進歩主義派とは規定していないだろうが、激戦州の人々から見れば、十分に「過度なリベラル派で進歩主義派」ということになる。トランプに投票した、白人労働者階級の人々が、賢二上がりで進歩主義派のカマラ・ハリスを高く評価するとは考えにくい。
更に言えば、民主党内で、ハリスをどこまで支援するのかという問題も残っている。ジョー・バイデン政権内で、バイデン派とハリス派の軋轢があったということが報じられている。バイデン派からすれば、ハリスの政治家としての能力が低く、上院議員時代も、2020年のアメリカ大統領選挙に出馬して早々に撤退した時も、事務所や陣営の運営がうまくいかなかったが、副大統領になってもやっぱりうまくやれていないという不満があったようだ。また、2020年のアメリカ大統領選挙の民主党予備選挙で、ハリスがバイデンを厳しく批判し続けたことをバイデン派は忘れておらず、ジル・バイデン夫人は、ハリスを副大統領候補にすることに不満を持っていたとも言われている。今回のバイデン降ろしは、バイデン支持派にしてみれば宮廷クーデターに等しく、ハリスを全力で支持することは難しいだろう。そもそもハリスは厳しい選挙で勝った経験がなく、民主党エスタブリッシュメント派の覚えがめでたいというだけでここまで来ている。そのことに、民主党支持者の中にも不満がある。だから、8月19日からの民主党全国大会でデモを計画しているグループが複数ある。
選挙戦について、じっくりと冷静に見ていくことが必要だ。
(貼り付けはじめ)
大騒ぎの裏で民主党はハリスに懸念を持っている(Behind hoopla,
Democrats anxious about Harris)
アレクサンダー・ボルトン筆
2024年7月29日
『ザ・ヒル』
https://thehill.com/homenews/senate/4795432-kamala-harris-democratic-anxiety/
カマラ・ハリス副大統領が急速に党の大統領候補に浮上したことに対する国民の歓喜(public
jubilation)の裏で、民主党の連邦議員たちは、彼女が候補者としてほとんど試されておらず、深刻な課題に直面していることを認め、ハリスがドナルド・トランプ前大統領を破る見通しに内心不安を抱いている。
ジョー・バイデン大統領が再選を取り下げる決断を下したことによる深い安堵感(deep
sense of relief)から、不安の大部分は脇に置かれている。81歳の現職に対する数カ月間の不安を経て、民主党議員たちは、ハリスが若年層や少数派の有権者とともに、民主党への献金者たちも元気づけることを期待してハリスの支持に結集することに喜んでいる。
しかし、トランプ大統領を倒すために重要な3州(ミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州)で、ハリスが2020年にバイデンと同様に白人の労働者階級や労働組合の有権者とつながることができるかについて、既に懸念が噴出している。
ある民主党連邦上院議員は、アイオワ州党員集会前に民主党予備選挙から撤退した2020年の大統領候補としてのハリスの実績について、「彼女は素晴らしい候補者ではなかった」と語った。
この上院議員は続けて、「そして、彼女はバイデンの全盛期ほど優れた政治活動家ではないかもしれない」と述べた。
この上院議員は、民主党のほぼ全員がハリスの支持に結集しており、来月初めに民主党全国委員会がヴァーチャル審理を開催する際にハリスの指名獲得への明確な道筋が見えてきた今、ハリスの純粋な政治的手腕は彼女の成功にとってそれほど重要ではないと主張した。
この上院議員は、「ハリスは、予備選で選挙運動をしていない。彼女は候補者であり、彼女のために働いている何千人もの人々がおり、最も賢明な人々のティームがあり、その多くは長年にわたって彼女と一緒に働いてきた」と語った。
しかし、この上院議員は、ハリスの勝利への道は簡単ではないと警告した。
この上院議員は、「私たちは、非常に冷静になる必要があり、極めて厳しい状況になるだろう」と語った。
7月22,23日に激戦州の登録済有権者を対象に実施されたエマーソン大学の世論調査では、ミシガン州でトランプが46%対45%、ペンシルヴァニア州で48%対46%でハリスをリードし、ウィスコンシン州では両候補が47%で並んだ。
バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)とその支持者たちは、ハリスがこれらの州のブルーカラー有権者の支持を得るには更に多くの努力をする必要があると主張している。彼らは、バイデンが第2期目の最初の100日間に向けて進歩主義的な経済計画を策定するために、最高顧問たちと緊密に協力したにもかかわらず、選挙から外されたことに満足していなかった。
サンダースは先週、「彼女が大統領になるには、アメリカ国民の60%、つまり給料をそのまま支払いに回す、ぎりぎりの生活を送っている勤労者たちに影響を与える問題について語らなければならないだろう」と本誌に語った。
サンダースと関係を持つ民主党系のストラティジストは、11月の選挙でハリスがバイデンよりも強力な候補になるかは明らかではないと述べた。そしてこの人物は、副大統領としての3年半の間、彼女は経済的不平等への取り組みよりも、中絶の権利や選挙権の擁護に関わっていたと指摘した。
民主党員の間で懸念されている主な原因は、第三党のロバート・F・ケネディ・ジュニアが、工業地帯の中西部において文化的に保守的で労働組合に協力している多くの労働者階級の有権者の票を吸い上げてしまう可能性があることだ。
●バイデンよりも強力(Stronger than Biden)
匿名を希望した2人目の民主党連邦上院議員は、ハリスが完璧ではないことは認めているが、討論会での悲惨なパフォーマンスや選挙運動を正そうとする試みの失敗を受けて、バイデンの勝利の可能性について広範な悲観論を引き合いに出して、ハリスはバイデンよりもはるかに優れていると主張した。
この上院議員は討論会後の党員集会の雰囲気について、「民主党は絶望に陥っていた。舞台裏では、ほぼ全員が『だから、ジョー、私たちはあなたを愛しているけど、もう去って欲しい』と言おうとしていた」と述べた。
この上院銀は続けて、「『ああ、世界最高の候補者が予備選挙にいる』という完璧なヴィジョンがあった訳ではない」と述べた。
しかし、この議員は、ハリスにはホワイトハウス当選に最も重要なミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州の有権者を魅了する時間があまりないと語った。
この上院議員は、これらの激戦区の有権者に訴えるためにハリスがしなければならない仕事について、「ハリスの選挙戦はまだ始まったばかりだ。その挑戦について、彼女は決して何も知らない訳ではない」と述べた。
ペンシルヴァニア州に拠点を置くある民主党ストラティジストは、ハリスは、ペンシルヴァニア州と特別な関係はないと述べた。それは、スクラントンで生まれ、連邦上院で36年間、隣のデラウェア州の代表を務めたバイデンとは違う。
このストラティジストは、「私が驚いたのは、ハリスがここであまりにも人間関係が少ないことだ。カリフォルニアはとても遠い。文化的には非常に異質なものとして見られる」と述べている。
この人物は、「私がいつも聞いていることは、彼女はペンシルヴァニア州では、それほど多くの関係を持たず、ここでいかなるアイデンティティも確立していないということだ。明らかに、それはジョー・バイデンとは非常に大きな違いだ」と述べた。
厳しい再選争いに巻き込まれているボブ・ケイシー連邦上院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)は、ハリスには地元の州でやるべきことがたくさんあると語った。
Sen. Bob Casey (D-Pa.), who’s locked in a
tough reelection battle, said Harris has a lot of work to do in his home state.
ケイシー議員は、「ハリスの選挙戦は始まって、まだ1週間も経っていない。彼女のメッセージを伝える必要があるのは明らかだ。最終的には、彼女が勝つと思うが、私たちにはやるべきことがたくさんある」と述べた。
ペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロの存在が状況を変える可能性があり、ハリスの副大統領候補の最有力候補と見られている。
今月初め、連邦上院民主党議員会がバイデンを候補から外すかどうかで激しく議論していたとき、大統領の盟友たちは同僚に対して、ハリスがほぼ間違いなくバイデンの後任候補になるだろうと語り、ハリスには党を率いる指導者(party’s standard-bearer)としての欠点があると暗に主張した。
バイデンの後任をめぐる党内議論に詳しいある関係者は、チャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は当初、ハリスが党の候補者に就任することについて「生ぬるい(lukewarm)」と述べた。
しかしながら、水曜日、シューマー議員は、ハリス副大統領に対して熱烈な支持を表明し、バイデンが選挙活動を打ち切る決定を発表して以来、彼女の立候補に対する民主党からの膨大な支持に大喜びしているようだった。
シューマーは、連邦下院少数党(民主党)院内総務ハキーム・ジェフリーズ(ニューヨーク州選出、民主党)との記者会見で「そうだ、我々は熱烈に支持しているんだ」と宣言した。
●明確な強み(Clear strengths)
確かに、民主党連邦上院議員たちは、ハリスには明らかな強みがあると述べている。
主要政党から大統領候補に指名された2人目の女性として、彼らは彼女を、2024年の大統領選挙で、民主党の最大の争点とみなされている中絶の権利に関するメッセージを伝える理想的な候補者とみている。
そして、2008年と2012年にバラク・オバマが大統領選挙で勝利し、2020年にバイデンが勝利するのに重要な役割を果たした、マイノリティ有権者たちの間で彼女が熱狂を更に高めるだろうと彼らは考えている。
そして、彼らは、カリフォルニア州司法長官としてのハリスの経歴、連邦上院議員としての4年間、副大統領としての4年間を考慮すると、彼女には明らかに国を運営する資格があると信じている。
彼らは、2021年に児童税額控除を拡大して、子どもの貧困を20%削減するなど、バイデンの主要な功績を彼女が称賛できると主張している。再生可能エネルギーに対して、史上最大の投資を行う。1兆ドルの超党派のインフラパッケージを制定する。高齢者の処方薬自己負担額の上限は年間2000ドル、インスリン費用の上限は月35ドルとなった。
しかし、民主党上院議員たちは、ハリスが経済運営を成功させる指導者と定義する点でトランプに大きく遅れをとっており、更には、今夏初めのバイデンよりもはるかに遅れており、複数の有権者は、それが最優先事項だと主張していると警告している。
しかし、バイデン政権が有権者に「バイデンノミクス(Bidenomics)」を売り込むのに苦労したにもかかわらず、彼らは、ハリスがバイデンの経済実績に基づいて立候補できることを望んでいる。
3人目の民主党上院議員は、ハリスは政権下で好調な経済の功績をすべてバイデンに吸い上げさせたため、ハリスはやや難しい立場にあると述べた。
この上院議員は、「ハリスは、自分自身を定義しなければならない。彼女は、忠実であり、バイデンに脚光を浴びせるという素晴らしい仕事をしてくれた」と述べた。
この議員は、第2四半期の経済成長率が2.8%でエコノミストの予想を上回ったとする商務省の最新報告を指摘し、「彼女には、経済に関するブランドはないが、才覚はあり、バイデンにはその記録がある」と述べた。
バイデンの後任候補を強く推していた民主党議員たちも、59歳のハリスが候補者としてどのような実績を残すかについてはあまり手がかりがないと認めているが、彼女の個人的なカリスマ性と候補者としてのフレッシュさは、登録済有権者の51%が好意的に受け止めていない、78歳で3回目の大統領候補となった、トランプと比較して有利に働くだろうと楽観視している。
4人目の民主党連邦上院議員は、ハリスは経済問題で定評のある副大統領候補を選ぶ必要があると述べ、連邦上院で国内半導体製造産業への投資を推進している有力な支持者であるマーク・ケリー上院議員(アリゾナ州選出、民主党)を良い選択だと宣伝した。
この議員は、大統領選挙に立候補する前に十分な検査を受けていない候補者はいないと主張したが、ハリスは4年以上前に立候補した時よりも準備が整っていると述べた。
この上院議員は「大統領選挙に参加するとき、誰も完全に検査されていない」と述べた。
この上院議員は、サンダースの国民向けメディケア提案への署名や数年以内に民間医療保険が廃止される可能性を示唆することなど、2019年にサンダースがとった極左の立場のいくつかについて共和党が彼女を攻撃しようとすることを認めた。
この議員は、党のリベラル層にアピールするための2019年と2020年の狂気の争奪戦について指摘し、「予備選挙の人々は、あらゆる種類のことを言った」と述べた。
この上院議員は、2019年にアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が2019年に打ち出した大胆な提案である「グリーン・ニューディール」を支持するハリスの賢明さに疑問を呈したが、その年の連邦上院議場で可決には至らなかった。
この議員は、トランプ大統領と共和党副大統領候補のJ・D・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)も、本選挙で再び彼らを悩ませるであろう共和党支持層に応えるべく、過去に多くの発言をしてきたと述べた。
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新刊書はバイデン派とハリス派との間の緊張関係を暴露している(New book
reveals frustrations between Biden, Harris camps)
モニーク・ビールズ笛
2022年3月22日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/599181-new-book-reveals-frustrations-between-biden-harris-camps/
伝えられるところによると、『ニューヨーク・タイムズ』紙記者2名が近々出版する本で、ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領のティーム間の緊張が明らかになっているという。
『ポリティコ』誌が入手した抜粋によると、ジョナサン・マーティンとアレックス・バーンズの共著『これは通過しない:トランプ、バイデン、そしてアメリカの未来のための戦い(This Will Not Pass: Trump, Biden, and the Battle for America’s
Future)』という本は、ハリスのポートフォリオに対する懸念を具体的に明らかにしている。
この著作によると、バイデンの広報担当ケイト・ベディングフィールドは、緊張の原因は直接ハリスにあると述べた。
ポリティコの報道によると、この本では、「ベディングフィールドは、裏では、ハリスの政治家としてのキャリアの中で、彼女が非常に高い期待を下回ったのは副大統領就任が初めてではないことを指摘していた。彼女の連邦上院事務所は混乱しており、彼女の大統領選挙活動は大失敗だった。おそらく、問題は、副大統領のスタッフではないと彼女は示唆した」と書かれているということだ、
ベディングフィールドは、ポリティコへのコメントでこの報道を批判した。彼女は、「この本の執筆に携わっている誰も、この出所不明の主張を事実確認するためにわざわざ電話をかけなかったという事実が、あなたが知るべきことを物語っている」と述べた。
ベディングフィールドは続けて、「ハリス副大統領はこの政権の力であり、国を前進させるために彼女が日々行っている仕事に最大限の敬意を払っている」と述べた。
この本は、バイデンとハリスの関係を「友好的ではあるが親密ではない(friendly
but not close)」と表現し、「毎週の昼食には個人的、政治的な真の親密さが欠けていた(their
weekly lunches lacked a real depth of personal and political intimacy)」と付け加えた。
マーティンとバーンズはまた、ジル・バイデン大統領夫人がハリスの副大統領選択に不満だったと報告している。
この本には、「夫の選挙運動の側近と内密に話し、将来の大統領夫人は鋭い質問を投げかけた。アメリカには何百万人もの人々がいる、と彼女は始めた。なぜジョーを攻撃した人を選ばなければならないのかと彼女は質問した」と書かれている。
2019年6月の討論会で、ハリスは、バイデンの人種に関する経歴、特に人種差別主義者連邦上院議員との過去の関係や通学バスへの反対について批判した。
大統領夫人の広報担当マイケル・ラローザはポリティコに対し、大統領夫人事務室は、2020年のキャンペーンに関する書籍についてはコメントしないと語った。
本誌は、ホワイトハウスにコメントを求めた。
『これは通過しない』は5月3日に刊行予定だ。
(貼り付け終わり)
(終わり)
ビッグテック5社を解体せよ
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