古村治彦です。
アメリカ大統領選挙本選挙投開票日まで100日を切った。アメリカや日本の主要メディアでは、「民主党のカマラ・ハリス副大統領が急速に追い上げている」「共和党のドナルド・トランプ前大統領は、副大統領候補のJ・D・ヴァンス連邦上院議員の失言問題もあり苦戦している」という報道がなされている。それは一面では正しいが、一面では正しくない。
アメリカ大統領選挙は有権者の投票数の合計ではなく、各州の選挙人獲得数で争われる。各州の選挙人は勝者総取り形式で配分される。例えば、カリフォルニア州でA候補が100万1票、B候補が100万票を獲得した場合には、A候補が54人の選挙人全員を獲得する。
全米50州と首都ワシントン・コロンビア特別区のうち、40以上は既に結果が見えている。分かっている。民主、共和両党のイメージカラーから、民主党優勢州は「ブルーステイト(Blue State、青い州)、共和党優勢州は「レッドステイト(Red State、赤い州)」」と呼ばれている。40以上の州とワシントンDCはきれいに色分けされている。そして、残りの約10州は激戦州(Battleground State)とか、「パープルステイト(紫の州)」などと呼ばれる。大統領選挙の結果を決めるのはこれらの激戦州だ。今回の選挙では、激戦州(Toss-up)は、以下の地図にあるおうど色の州だ。赤と青はそれぞれ、共和党のトランプと民主党のハリスが「固めた」州と言えるだろう。基礎票はトランプ235対ハリス226となる。ここからスタートとなる。
おうど色の州で重要なのは、ペンシルヴァニア州とジョージア州だ。この2州をトランプが制すれば、270となって、選挙人538名の過半数を獲得することになり、大統領に当選ということになる。この2州は、2016年の選挙ではトランプが勝利し、2020年の選挙ではバイデンが勝利した。目まぐるしく勝者が変わる州である。この2州が非常に重要ということになる。トランプ銃撃事件が起きたのが、ペンシルヴァニア州バトラーだったことを考えると、トランプ陣営としては、ペンシルヴァニア州を是が非でも取りたい。ウィスコンシン州やアリゾナ州でも勝利できれば、より盤石な勝利ということになる。
ハリス陣営としては、この2つの州を明け渡す訳には行かない。何とかどちらか1つの州を取りたいところだ。ネヴァダ州は2016年も、2020年も民主党が取っているので、ここは激戦州だが大丈夫という計算をしているだろう。アリゾナ州選出のマーク・ケリー連邦上院議員を副大統領候補にすれば、アリゾナ州も民主党が取れる可能性が高まる。しかし、そうなると、大統領候補のハリスがカリフォルニア州出身、副大統領候補のケリーがアリゾナ州出身となって、ロッキー山脈より西の西部に偏り、五大湖周辺州や南部にはなじみがない顔ぶれとなってしまう。やはり重要なのは、五大湖周辺州、ペンシルヴァニア州だ。そして、アフリカ系アメリカ人有権者の多いジョージア州だ。ジョー・バイデンはアフリカ系アメリカ人の政治家やコミュニティリーダーと長年にわたり、深い関係を築いていた。ハリスは、父親がジャマイカからのアフリカ系アメリカ人移民ということで何とかアピールしたいところだ。
激戦州の戦いでは、現在、トランプがやや有利となっている。各州を細かく見ていくと、アメリカや日本の報道とはまた違う姿が見えてくる。
(終わり)
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