古村治彦です。
アメリカにも、日本にも、戦争を煽り立てる人間がいる。そのような人物たちがどのようなことを考えて、どのような主張をしているかについては、馬鹿らしいとは思いながらも、把握しておくことが重要だ。アメリカの軍事能力として、2つの大きな戦争と1つの小さな戦争を同時に遂行できるようにするということが挙げられる。これは、世界の警察官として、世界の治安維持のためには、これくらいの能力が必要ということであり、他国はそれだけの力を持っていないということになる。アメリカ一極、一強体制が盤石な状態であれば、これも可能だった。
しかし、アメリカの国力は衰退し続けている。そして、中国の国力は伸長し続けている。そして、世界の構造は大きく変化しつつある。時代は過渡期を迎えている。アメリカの国力の減退は既に多くの人々が目撃している。21世紀に入ってからのアメリカのイラク侵攻と占領、アフガニスタンの侵攻と占領は泥沼の状態に陥り、最終的には失敗し、撤退を余儀なくされた。2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻から発生したウクライナ戦争と、2023年10月からのイスラエル・パレスティナ紛争にアメリカは深く関与して、多くの援助をしているが、その先行きはいまだに不透明だ。更に、アメリカ、日本では、「ウクライナの次は台湾だ」と、危機感を煽り立てる言説もある。もし台湾をめぐり、米中が対立するとなれば、アメリカは3つの戦争を直接、間接に戦わねばならなくなる。こうなれば、アメリカは国家破産に向かう可能性すら出てくる。
現状を「第三次世界大戦」と規定して、全面的に戦っていないという批判を下の論稿の筆者たちはしているが、もしアメリカが軍隊を出して、現在のウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争に当事者として関わるようになったら、それこそが第三次世界大戦の始まりということになる。現在のところ、これらの地域的な戦争・紛争が拡大しないように、当事者たちが微妙なバナランスを取っている。それが崩れたら大変なことだ。
アメリカはもはや一国で世界管理はできない。そこで、同盟諸国への負担を大きくしようとしている。これをバック・パッシングという。「責任転嫁」とも訳すことができる。そのための、同盟諸国の「防衛費対GDP比2%」という「厳命」である。日本ではそのための大規模増税である。これは厳しいことである。しかし、お金で済むことであれば、何とか我慢しておけば、アメリカが衰退していけば、このような状況も変化していく。私たちが怖いのは、日本が「ウクライナ」にされることである。アメリカのための戦争を日本の国土で、日本人が血を流し、武器だけ与えられてやらされてしまうことだ。
「お勇ましい」言説は麻薬と一緒だ。一瞬は気持ち良いだけのことだ。私たちは冷静に、安全保障と平和について考えていかねばならない。
(貼り付けはじめ)
バイデンは第三次世界大戦に敗北しつつある(Biden is losing World
War III)
マーク・トース、ジョナサン・スウィート筆
2024年5月22日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/national-security/4678430-biden-is-losing-world-war-iii/
ジョー・バイデン大統領は、21世紀のジェームズ・ブキャナンとなった。
第15代大統領のブキャナンは、史上最悪の大統領と広く考えられている。ブキャナンは、皆を宥めようとしたが、結局は誰も喜ばなかった。彼の統治下で、国家は国家分離と南北戦争(secession and Civil War)にますます近づいた。
1世紀半以上が経過し、世界は世界規模のイデオロギーによる第三次世界大戦へと深刻化しつつある。ロシア、中国、そしてその代理諸国は、アメリカの国益を積極的に攻撃している。
しかし、連邦議会調査局が1月に発表した「大国間の競争:防衛への影響(Great
Power Competition: Implications for Defense)」と題した報告書によると、バイデンの国家安全保障戦略は依然として、「同時または重複する2つ未満の大きな紛争(something less than two simultaneous or overlapping major conflicts)」に根ざしているという。
報告書は、2018年にトランプ政権がオバマ時代の決断に直面したことを指摘している。その決断は、「ならず者国家との2つの地域紛争の要求を中心に戦力を構築するのではなく、例えば台湾をめぐる中国との戦争や、バルト地域でのロシアとの衝突など、単一のトップクラスの競争相手との高強度紛争に勝利するための要求を中心に戦力を構築する」というものだ。
しかし、現実には、我が国はウクライナ戦争、中東戦争、そして差し迫った台湾と南シナ海を巡る戦争という3つの戦争に直面している。
実際、アメリカ軍がニジェールの基地を放棄する中、アフリカのサヘル地域で、私たちが失いつつある影響力戦争を含めると、戦争は3年半になる。
バイデンは、11月の選挙結果の悪影響に巻き込まれているように見え、私たちが既に第三次世界大戦に突入していることを認めることすら拒否しており、ましてやそれに勝利するために必要な措置を講じることはおろか。その結果、我が国の軍隊、武器、軍需品の生産能力、サイバー戦争やモスクワや北京から発せられる偽情報に対処する能力は、いずれも悲惨なほど不足している。いずれも即時の対策が必要だ。
バイデンはブキャナンと同様、歴史におけるサムター砦の瞬間に直面している。
1860年、ブキャナンは事態のエスカレーションを恐れ、チャールストン港の入り口を守る戦略的要塞を十分に強化することを拒否した。このような動きは、おそらく戦争の軌道を変えることはなかったであろうが、南部の分離主義者(Southern secessionists)にとって切望されていた、越えてはならない一線を引くことになっただろう。
その代わり、ブキャナンは、バイデン政権が現在ウクライナ、インド太平洋、中東で行っているのと同じように、最低限のことは行った。サムター要塞の最小限の防御が無駄であることが判明したのと同様に、アメリカの同盟諸国を防御するだけでは十分ではない。
バイデン大統領のホワイトハウスでは、もはや「防衛(defending)」がその日の合言葉ではなく、「勝利(winning)」でなければならない。ロシアと中国が軍事的・経済的に支配し、BRICSが中心となったいわゆる多極世界(multipolar world)という、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と中国の習近平国家主席が共有するヴィジョンに対して、自由主義民主政治体制(liberal democracy)が勝利するには、このますます激化する世界的イデオロギー戦争に勝つことが我々の唯一の前進の道である。
バイデンのエスカレーションに対する懸念も終わらせなければならない。10月7日のバフムート、アヴディイウカ、4月13日のイランによるイスラエル攻撃、そして今回のハリコフ州でのバストーニュのような戦いで証明されているように、エスカレーションの恐怖は、我が国の敵、そして、東ヨーロッパと中東における同盟諸国の敵によって空白を埋めるだけとなっている。
簡単に言えば、バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンが、エスカレーション緩和(de-escalation)を主張すればするほど、敵はその隙を利用してエスカレーションを強めるということだ。
イスラエルは、国の外交政策を扱うバイデンのブキャナンのようなアプローチの狂気を示す事例だ。バイデンは当初、イスラエルに対する軍事的脅威であるハマスを終わらせるイェルサレムの権利を強く支持していた。全国各地、特にニューヨーク市の大学キャンパスでの反イスラエル・パレスティナ抗議活動を受けて、バイデンの決意は消え去った。ハマス、ヒズボラ、イランとの存亡をかけた戦争中のイスラエル挙国一致内閣は、すぐにワシントンDCからの同士討ちに晒されることになった。
ミシガン州の15人の選挙人を守ることは、イスラエルを守ることやハマスを破壊すること、あるいは、ガザ地区でハマスの軍司令官ヤヒヤ・シンワールが今も拘束している8人のアメリカ人人質を単独で救出することよりも重要になったようだ。忘れないようにしておきたいが、10月7日にはアメリカ国民45人がハマスによって惨殺された。
月曜日、バイデンの深淵は更に深まった。国連は、ガザ地区で殺害された女性と子供の数をほぼ100%過大評価していたことを認め、これはイスラエルがイラク戦争中にアメリカよりも民間人の死傷率が低いことを示唆している。それでも、国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官カリム・カーンは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とイスラエル国防大臣ヨアヴ・ギャラントによるガザでの戦争犯罪容疑で逮捕状を求めていると発表した。
ハマスがパレスティナ民間人を人間の盾(human shields)として使い続けていることや、最高指導者ハメネイ師を含むロシアとイランのスポンサーについては全く言及されていない。
ヘリコプター墜落事故で死亡したイラン大統領エブラヒム・ライシは、数万人のイラン人の殺害を命じた「テヘランのブッチャー(Butcher of Tehran)」として知られていたにもかかわらず、国際司法裁判所(ICC)によって起訴されなかった。
バイデンは計画を見失った、あるいは、彼にはそれを理解する能力がないのかもしれない。ロシアと中国は、第二次世界大戦後の世界秩序と、かつてはそれを守っていた国連安全保障理事会や現在は間接的に国際司法裁判所を含む諸機関を破壊している。
バイデンと彼の政治家の協力者たちは、このますます拡大する自由に対する世界的な共同攻撃と戦って勝利するために国民を結集させる代わりに、11月の勝利を目指してアメリカの国家安全保障を犠牲にしている。
第三次世界大戦が目前に迫っており、我が国は危険に晒されている。サムター要塞は象徴的に空っぽに立っている。この国の軍隊は過大な負担を抱えており、一度に3つの戦争に直面する可能性があり、準備しているのは1つだけです。
エイブラハム・リンカーンとその勝利への決意を伝える代わりに、バイデンは、自由世界の指導者としての義務を怠ったブキャナンを真似ている。
※マーク・トース:国家安全保障・外交政策に関する記事を執筆。
※ジョナサン・スウィート:大佐(予備役)。陸軍情報将校として30年勤務。2012年から2014年にかけてアメリカ欧州軍情報・諜報部門責任者を務めた。
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第三次世界大戦はもう始まっている、勝ち始めよう(World War III is
already here, so let’s start winning it)
マーク・トース、ジョナサン・スウィート筆
2024年7月4日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/national-security/4753494-world-war-iii-is-already-here-so-lets-start-winning-it/
1776年7月4日、私たちの国のファイティングスピリットと勝利への意思が誕生した。
大陸会議(Continental Congress)はジョージ三世のもとで、イギリスからの独立を大胆に宣言し、王の世界は永遠にひっくり返った。13の植民地が果敢に勝利を収めて以来、アメリカ人は何世代にもわたってその決定的な精神を守り続けてきた。
248年後、私たちは再び戦争状態にある。2022年2月22日、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領がウクライナに侵攻した日を皮切りに、第二次世界大戦終結以来、私たちが知っている世界が再びひっくり返った。
これは、私たちが作り出した戦争ではなく、プーティン大統領が選んだ多極戦争(multipolar
war)だ。その規模と範囲は急速にグローバルになりつつある。最初は、東ヨーロッパで発生したが、ウクライナを超えて爆発的に拡大し、中東、サハラ以南アフリカのサヘル地域まで広がり、台湾も飲み込む恐れがある。
イデオロギー戦争だったものが、今ではますます激化している。しかし、ワシントンとブリュッセルは、西側諸国(the West)に多極化した世界秩序(multipolar world order)を押し付けるためのプーティン大統領と中国の習近平国家主席との連携には依然として、おおむね否定的な姿勢を示している。
私たちは、既に第三次世界大戦に突入している。見た目も雰囲気も、ハリウッド映画に出てくるようなものではない。核のキノコ雲が私たちの周囲で爆発している訳でも、私たちが放射性物質の翌日のシナリオに目覚めて、放射性降下物シェルターで生き残ろうとしている訳でもない。
むしろ、この第三次世界大戦の現実版は、はるかに陰湿で欺瞞的だ。私たちは、世界中で何千ものロシア人と中国人の切り傷によって死に直面しているが、国家の大多数は、私たちの危険が増大していることに依然として気づいていない。
1770年代に、国王ジョージ三世とその側近たちが欺瞞を行ったのと同じように、バイデン政権は依然として深く否定している。アメリカ政府はついに、モスクワと北京の陰謀の範囲と規模に目覚め、自由を守るために何を求められるかについて、アメリカ国民と歩調を合わせなければならない。
この戦争はなくなることはない。身も凍るようなことに、バイデンには勝利するための全体的な戦略が欠けており、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンには、それを構築する能力がなく、その代わりに不可解なことに、連携と短期的な政治的利益のためにプレーすることを選択している。
その結果、私たちは、それらのつながりが損失に変わるリスクが増大していることに気づいていた。ことわざにあるように、「勝てなければ負けている(If you are not winning you are losing)」ということだ。アメリカは、勝負が始まっていることを認識する時が来た。それは、ロシア、中国、そしてその同盟諸国に対して勝利を収めることを意味する。
そこに到達するには、バイデンはサリヴァンに辞表を要求することから始めなければならない。彼はまた、「エスカレーション麻痺(escalation paralysis)」を捨て、ベン・ホッジスかデイヴィッド・ペトレイアスのような才能のある将軍を後継者として抜擢しなければならない。
これは十分に早く起こることはできません。サリヴァンのエスカレーションへの恐怖は、逆説的だが予想通り、宇宙の兵器化、NATO首都への核攻撃の脅し、中東やアフリカの地域緊張の激化など、プーティン大統領をエスカレーションに倍増させる結果となっている。
勝つというのは難しい概念ではない。それは私たちの国のDNAの根幹に関わるものだ。それにもかかわらず、バイデンがサリヴァンの勝利への恐怖を克服するのは大変なことであり、もどかしいことに、大統領にはまだそうした意欲がないようだ。
この拡大する第三次世界大戦の戦場において、私たちの同盟諸国が、私たちのために喜んで勝利を収めることが重要である。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とその将軍たちは、862日間にわたってそれを証明し続けている。そしてウクライナは、確かにプーティン大統領に対して決勝打を放つことができるだろう。クリミアは、ロシアにとって維持不可能になりつつある。モスクワがハリコフやクピアンスクなどウクライナ東部戦線の主導権を維持している一方で、キエフはその攻撃をかわしており、戦場の状況はウクライナの反撃にますます有利になっている。
ロシアの死傷者は、指数関数的に増加し続けており、死者と負傷者は54万5090人を超えている。その加速の大部分を占めているのが、アメリカ製のATACMSだ。しかし、バイデンの制限がなければ、ウクライナ国内での接戦に突入する前に、ウクライナは国境付近に展開するさらに多くのロシア軍を阻止することになるだろう。
戦争研究所の推計によれば、現在、ATACMSのアメリカに対するバイデンの交戦規定は、ロシアが兵力を増強し、攻撃力の高い無人機、ミサイル、滑空爆弾の攻撃を行うために利用している領土の16%のみをウクライナが攻撃することを制限している。バイデンが戦場の84%を敵の聖域として明け渡し続ければ、ウクライナは勝つことはできない。
イスラエルも同様に、ガザ地区のハマスだけでなく、ヒズボラやイランの急速に加速する核兵器開発計画に対しても、中東地域での戦略的勝利をワシントンの理事会に加える用意がある。
10月7日以来、プーティン大統領は、イラン最高指導者ハメネイ師と協力して、中東、地中海、紅海におけるアメリカの空軍・海軍資産を意図的に拘束してきた。しかし、イェルサレムもイスラエルに勝利を銀行に預けるよう促すどころか、サリヴァンの拡大する懸念の怒りを感じている。
イランが4月13日と14日に無人機やミサイルを発射して、イスラエルを攻撃した後、バイデンはイスラエルにテヘランとの戦いでの勝利を求めないよう促した。自身の認めによると、バイデンは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、もしイスラエルがテヘランに対して大規模な報復を行った場合には自らの責任で対処するだろうと語った。
バイデンのホワイトハウスでは関係は問題ないようだが、それは、彼の「ちょうど十分な(just
enough)」戦略と一致している。しかし、彼は、アメリカの同盟諸国を勝たせるつもりはない。むしろ、永遠の戦争を終わらせようという2020年の大統領の選挙戦を考えると、皮肉にもそうなのだが、大統領の遺産は急速に、地域ごとに新たな永遠の戦争(forever wars)を根付かせるというものになりつつある。バイデンは、完全な勝利を目指すことを拒否し、私たちに代わって同盟諸国が勝利を達成できないように手錠をかけ続けている。
プーティン大統領は、自国の経済を戦闘態勢に置いた。私たちはそのようにしていない。ロシア大統領プーティンは、自分が第三次世界大戦を引き起こしたことを知っている。バイデンは、どうやらそれがどれほど大きいかを理解していないか、少なくとも理解していないようだ。
一方、習近平は、台湾奪取に向けた計画を加速させている。インド太平洋地域の他の主要な同盟諸国はもちろん、台北を防衛するための適切な計画もまだない。
イランは、核爆発に急速に近づいており、北朝鮮はソウルに対する攻撃を強めている。
世界大戦は、ゲームチェンジャーだ。今年の独立記念日にバイデンが勝利を収め、再び世界を好転させ始める時期は過ぎた。
※マーク・トース:国家安全保障・外交政策に関する記事を執筆。
※ジョナサン・スウィート:大佐(予備役)。陸軍情報将校として30年勤務。2012年から2014年にかけてアメリカ欧州軍情報・諜報部門責任者を務めた。
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