古村治彦です。
ドナルド・トランプが2期目の政権を樹立すると、日本で言えば大臣クラスの各省の長官(Secretaries)をはじめ、各省や政府機関の高官ポストが交代になる。これを政治任用(political appointment)という。その数は4000ほどと言われている。トランプ政権では、「スケジュールF」といって、政治任用の大幅に拡大し、5万と10倍以上にするという計画がある。これは2020年の政権末期に行おうとしてできなかったことだ。
トランプ一期目政権のマイク・ペンス前副大統領やジョン・ボルトン元国家安全保障問題担当大統領補佐官、レックス・ティラーソン元国務長官といった人々は、トランプから離れて批判派に転じている。それでも、トランプ一期目政権で政府高官を務めた人々の中で、二期目政権に入ると見られている人たちがいる。
こうした人たちは大きく分けると2つのグループに分かれている。1つは、ワシントンにある保守派のシンクタンクであるヘリテージ財団が主導して、100以上の組織が参加した政策提言プロジェクト「プロジェクト2025(Project 2025)」に参加した人々である。この「プロジェクト2025」の政策提言「プレイブック」は、行政国家の解体を旗印にして、ディープステイトの解体を目指す内容になっているが、中絶の法制化やポルノの禁止といった保守過激派の主張が色濃く反映されている。このプロジェクトは、元人事管理局首席補佐官のポール・ダンズが主導し、ホワイトハウス国家通商会議委員長・ホワイトハウス通商製造業政策局長を務めたピーター・ナヴァロ、元住宅都市開発長官のベン・カーソン、元大統領上級顧問のスティーヴン・ミラーが参加している。
ポール・ダンズ
ピーター・ナヴァロ
スティーヴン・ミラー
この「プロジェクト2025」に対しては、トランプ前大統領は距離を置いていたが、最近になって突き放すようになっている。トランプ選対の共同本部長を務める、スージー・ワイルズとクリス・ラシビータは、「プロジェクト2025」を批判し、プロジェクトを主導したダンスは辞任した。「プロジェクト2025」に参加した人物はトランプ政権に入れないという情報もある。「プロジェクト2025」系のピーター・ナヴァロは、トランプのために、連邦下院からの証言招聘を拒否し、服役した筋金入りのトランプへの忠義派だ。ナヴァロは論功行賞でトランプ政権に入ることになるだろう。このナヴァロが強く批判しているのがもう一つのグループである「アメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy Institute、AFPI)」である。ナヴァロはこのグループを「偽物のトランプ派、忠誠心などない」とツ激しく非難している。
アメリカ・ファースト政策研究所は、トランプ政権終了後に創設されたシンクタンクであり、中心人物としては、元国内政策担当補佐官のブルック・ロリンズ、トランプ大統領のトップの経済担当補佐官を務めたラリー・クドロー、トランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官のロバート・オブライエン、トランプ政権下で米通商代表を務めたロバート・ライトハイザーが挙げられる。彼らは穏健派であり、「プロジェクト2025」グループのような過激な主張は行っていない。このグループからはトランプ政権の高官になる人たちが多数出ると予想されている。
ブルック・ロリンズ
ロバート・オブライエン
ラリー・クドロー
ロバート・ライトハイザ―
トランプ政権を支えるのが「プロジェクト2025」派と「アメリカ・ファースト政策研究所」派ということになる。両派の間はしっくりいっていないようである。トランプ政権が発足する場合、政権を円滑に進めるためにも両派の間をうまくマネイジメントできる人物を首席補佐官に据える必要があるだろうと考える。
(貼り付けはじめ)
●「「プロジェクト2025」責任者辞任 トランプ陣営が批判」
By Alex Rogers NIKKEI
FT the World 2024年8月1日
https://www.nikkei.com/prime/ft/article/DGXZQOCB311QZ0R30C24A7000000
トランプ前米大統領の率いる共和党が政権を奪還した場合を想定した政策集をまとめている「プロジェクト2025」の責任者を務めていたポール・ダンズ氏が30日、辞任した。約900ページに及ぶ政策集で連邦政府の再編を提言していたが、トランプ陣営は距離を置いていた。
民主党による批判の矛先に
プロジェクト2025は保守系シンクタンク、ヘリテージ財団が主導する(幅広い保守系団体などの参加する)協調的な取り組みで、共和党の大統領が政府を全面刷新するための青写真を描くことを目指している。しかし、大統領選でトランプ氏と争う見通しのハリス副大統領をはじめとする民主党陣営は、トランプ氏が「中産階級を弱らせる」過激な計略を追求していると批判する材料として、プロジェクト2025を利用してきた。
政策集では冒頭に、このマニフェスト(政権公約)に「目」を通すのは、第47代米大統領(次期大統領)だと書かれている。
ヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長は、財団を去ることにしたダンズ氏の決断をたたえた。30日の声明で、ダンズ氏について「保守派の統一ビジョンを築く」ために数十もの組織のアイデアをまとめ上げる能力を持っており、今後「まだ戦いの続く前線へ移っていくだろう」と述べた。
プロジェクト2025にはトランプ氏に再び仕えることを望む何人もの前政権高官が参加しているにもかかわらず、トランプ陣営は繰り返しこの計画を批判してきた。同氏は7月下旬にも、計画と自身を関連付けるのは「極左の民主党のやつらが流した単なる偽情報だ」と主張した。
政策集には、ポルノ禁止や避妊薬などの使用制限、人工妊娠中絶に関する政府の情報収集強化など社会問題に対して保守的な提案が盛り込まれており、前大統領やその顧問らをいら立たせていた。
トランプ氏の任命によって保守派判事の割合が増えた連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆した後、同氏は全米での中絶禁止という右派の目標とは距離を置こうとしてきた。ロバーツ氏はプロジェクト2025の政策集の序文で「次の保守派の大統領は、罪なき生命を守るために既存の連邦政府の権限を行使しながら、議会も支持するであろう最も強力に胎児を保護する措置の立法化に向けて議会と協力していくべきだ」と書いた。
トランプ陣営、辞任を歓迎
トランプ陣営の上級顧問を務めるスージー・ワイルズ氏とクリス・ラシビータ氏はダンズ氏の辞任を歓迎し、トランプ氏を代弁していると主張する他の団体に警告を発した。
両氏は共同声明で「プロジェクト2025は(トランプ)陣営と全く関係がなく、陣営を代弁しておらず、いかなる形でも陣営や大統領と結びつけるべきではない」と表明した上でこう強調した。「プロジェクト2025が終了するという知らせは大いに歓迎されることであり、トランプ氏や陣営に影響力を持つかのように見せかける人や団体への警告となるはずだ。あなたにとって、それは良い終わりを迎えない」
プロジェクト2025のある顧問は、政策の青写真を描く活動は終わったかもしれないが、ホワイトハウスに政治任用される高官候補のデータベースを構築する作業は続くと語った。
ハリス氏の陣営を率いるジュリー・チャベス・ロドリゲス選挙対策委員長は、プロジェクト2025を「隠した」ところで消えはしないと述べた。
同氏は声明で「今もはっきりしているのは、トランプ氏や(副大統領候補のJ・D・)バンス氏、プロジェクト2025の計画は米国を後退させるということだ。中絶の禁止が広がり、苦しみが増し、中産階級のコストが上昇し、社会保障とメディケア(高齢者向け公的医療保険)が削減され、医療保険制度改革法(オバマケア)が廃止され、空気と水が汚くなり、トランプ氏に米国の民主主義を破壊する力を与える」と記した。
ダンズ氏のヘリテージ財団退職は、ニュースサイト「デイリー・ビースト」が最初に報じた。
=====
●「【2024米大統領選】保守派が掲げる「プロジェクト2025」とは何か?(海外)」
7/31(水) 11:10配信 BUSINESS INSIDER JAPAN
https://news.yahoo.co.jp/articles/0911c2f9dbd8e5106c073bf65391de35debd8063
『プロジェクト2025』は次の共和党の大統領のためのロードマップだ。保守系シンクタンクのヘリテージ財団がまとめた。
教育省の廃止など、その内容は驚くものとなっている。
トランプ前大統領は「プロジェクト2025については何も知らない」としているが、前大統領とプロジェクト2025とのつながりは、本人が認めている以上に深そうだ。
バイデン大統領が討論会で悲惨なパフォーマンスを見せるずっと前から、アメリカでは保守派がゲームプランを組み立てていた。
2023年1月、ヘリテージ財団は『プロジェクト2025』を打ち出し始めた。共和党の次期政権を導くために、数多くの保守系団体の意見を取り入れて作成された922ページに及ぶ「プレイブック」だ。
「時は短く、保守派には計画が必要だ」とプロジェクト2025のウェブサイトにはある。
「このプロジェクトは左派の壊滅的な政策に苦しむアメリカ人を迅速に救済するため、新政権発足から180日間で取るべき行動のプレイブックを作成する」
プロジェクト2025の優先事項としては次のようなものがある:
連邦政府の雇用を削減し、「政府の各レベルにおけるWokeプロパガンダ」を黙らせる
教育省とその「Wokeが支配する公立学校の制度」を廃止する
連邦捜査局(FBI)が誤情報や偽情報と戦うことを禁じる
「化石燃料との戦い」を終わらせ、アメリカ先住民の土地でのさらなる開発を許可する
「国益に反する」FBIによる積極的な捜査を終わらせる
※なお、「Woke(ウォーク)」とは「目覚める」という言葉をベースにしたスラングで、差別問題をはじめ、社会に存在する不正義や不平等に対して敏感であること。「意識高い系」とも。リベラルに対する揶揄によく使われる。
プロジェクト2025の内容はあまりに極端なため、トランプ前大統領でさえ距離を置こうとしている。7月5日には「プロジェクト2025については何も知らない」と、自身が立ち上げたソーシャルメディア「Truth Social」に投稿した。
その上で「誰が裏にいるのか、わたしは知らない。彼らが言っていることの中には同意できないものもあるし、まったくもってバカげたひどいものもある。彼らが何をしようとわたしは彼らの幸運を祈るが、わたしは彼らとは何の関係もない」と続けた。
プロジェクト2025の広報担当者は、このプレイブックは「いかなる候補者や選挙運動を代弁するものではない」とBusiness Insiderに語った。
その上で「わたしたちは110を超える保守系団体の連合体で、次の保守系大統領に向けた政策や人事に関する提言を行っている。ただ、どの提言を実行するかは、最終的には次期大統領次第で、わたしたちはそれがトランプ大統領になると信じている」と話した。
=====
トランプが「プロジェクト2025」について知っているということを人々に知られたくない理由(Why Trump
doesn’t want you to know he knows about Project 2025)
-反省することなく簡単に嘘をつくトランプにとってさえ、「プロジェクト2025」の背後に誰がいるのか、「分からない」という指摘は、笑ってしまうほどの嘘だ。
ブライアン・タイラー・コーエン筆
2024年7月9日
「MSNBC」
https://www.msnbc.com/opinion/msnbc-opinion/trump-project-2025-truth-social-rcna160774
美しい言葉で包んで本当のことを隠すことはできない。ここ数週間、民主党にとって悪い時期だった。それでも、ドナルド・トランプ前大統領と共和党は依然としてパニックに陥っているようだ。問題は、辞任を求める内部圧力と戦い続けているジョー・バイデン大統領ではない。むしろ、共和党は、どうやらトランプ自身も含め、ヘリテージ財団とトランプ支持の思想家や団体が開発した極右政策イニシアチヴ(far-right policy initiatives)である「プロジェクト2025」に対する主流派の懸念が高まっていることを、急に心配するようになっているようだ。
先週、トランプ前大統領はトゥルース・ソーシャルで、このプロジェクトについて何も知らないと否定した。「“プロジェクト2025”について何も知らない(I know nothing about Project 2025)」「誰が背後にいるのか全く分からない。彼らの言っていることには同意できないし、彼らの言っていることの中には全く馬鹿げていて最低なものがある。彼らが何をしても幸運を祈るが、彼らとは何の関係もない(I have no idea who is behind it. I disagree with some of the things
they’re saying and some of the things they’re saying are absolutely ridiculous
and abysmal. Anything they do, I wish them luck, but I have nothing to do with
them.)」と書いている。
「罪がある人は自らその罪に気づいて自分で勝手に騒ぐ(A hit dog will
holler)」という表現を聞いたことがあるだろうか?
簡単に嘘をつき、後悔もしないトランプでさえ、「プロジェクト2025」の背後に「誰がいるのか全く知らない」という主張は全くもって笑止千万だ。
真実は、「プロジェクト2025」は、元人事管理局首席補佐官のポール・ダンズ、元ホワイトハウス大統領人事局長のジョン・マッケンティー、元ホワイトハウス立法・政府間関係・実施担当次席補佐官のリック・ディアボーン、元住宅都市開発長官のベン・カーソン、元国土安全保障副長官のケン・クチネリ、ホワイトハウス国家通商会議委員長でホワイトハウス通商製造業政策局長のピーター・ナヴァロ、元国防長官代行のクリストファー・ミラー、トランプの2016年選挙キャンペーン顧問のスティーヴィン・ムーア、元行政管理予算局長のラッセル・ヴォート、ウィリアム・ペンドリー元土地管理局局長代理、ポール・ウィンフリー元予算政策局長、ブルックス・タッカー元退役軍人省首席補佐官、ロジャー・セヴェリーノ元保健福祉省公民権局局長、キロン・スキナー元国務省政策企画局長、バーナード・マクナミー元連邦エネルギー規制委員会委員など、トランプ政権の元高官らによって実現されたということだ。
実際、「プロジェクト2025」にはトランプ政権の元職員200人以上が参加している。トランプが、自身の元職員数百人が取り組んでいる大規模な保守プロジェクトを知らないということは本当にあり得るのだろうか?
それとも、このアジェンダの有害性はそれほど明白なのだろうか??
常識(common sense)とオッカムの剃刀(Occam’s razor)が示しているのは、後者であると思われる。そして、このプロジェクトは正真正銘極端であるため、トランプがこのプロジェクトから距離を置こうとするのは当然である。
このプロジェクトのメインとなる「プレイブック」は、『リーダーシップのための命令書:保守の約束(Mandate for Leadership: The Conservative Promise)』であり、それだけで900ページを超える。一言で言えば、このプレイブックは、気候変動に対する取り組みを無効化する一方で、その致命的な影響を増大させること、教育省を廃止し、学校給食の無料化やヘッドスタート(幼児教育支援相談)プログラムを大幅に削減すること、メディケイドのような給付金を削減すること、移民税関捜査局(Immigration and Customs Enforcement)の強制送還権限を拡大すること、ポルノを禁止し、それを制作した者に刑事罰を課すこと、人工妊娠中絶を厳しく制限し、中絶政策を後退させること、連邦医療提供者がトランスジェンダーの人々にジェンダーを肯定するケアを提供することを阻止すること、そして大統領の権力を大幅に強化することを求めている。
トランプがこの政策から距離を置こうとしているという事実は、それが、明らかにアメリカの主流から外れているかということを示す証拠だ。トランプがこれに同意していない訳ではない。ただ、有権者の大多数が同意していないことを正しく認識しているだけだ。
ここでの重要な点は、トランプが「プロジェクト2025」の今後について言うことは何一つ信用できないということだ。そして、これはトランプが必然的に「プロジェクト2025」のいかなる部分も実行しようとしないと主張する際の重要な背景だ。私は、トランプが、ベン・カーソンが誰だったのか覚えていないと信じる可能性の方が少し高いだろう。
=====
トランプ氏は今週ワシントンに戻る。元顧問らは復帰を画策している(Trump
returns to D.C. this week. These former advisers are plotting the comeback.)
-トランプ前大統領は、彼を支持するシンクタンクのイヴェントに出席する予定で、計画通りに進めば将来の政権の基盤となるヴィジョンを概説している。
メレデス・マグロウ筆
2022年7月25日
『ポリティコ』誌
https://www.politico.com/news/2022/07/25/trump-america-first-policy-institute-think-tank-00047634
2020年の初め、ドナルド・トランプ大統領の側近の補佐官たち(top advisors)たちの小グループがホワイトハウスに集まり、次期政権のために、2期目の政策アジェンダを策定した。
国内政策担当補佐官のブルック・ロリンズ、トランプ大統領のトップの経済担当補佐官のラリー・クドロー、トランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官のロバート・オブライエンが当初ティームを組み、ホワイトボードで作業することもあった。時には、イヴァンカ・トランプ、ケリーアン・コンウェイ、トランプ大統領の行政管理予算局長ラス・ヴォート、そして様々な政策担当の補佐官たちが加わった。
2020年夏までに、このグループは「ヴィジョン2025(Vision 2025)」と呼ばれる2ページの文書を作成し、本誌がレヴューした10の優先事項を概説した。ロリンズによると、選挙後の1週間、計画を練るためにキャンプ・デイヴィッドの使用が予約されていた。
しかし、計画は無駄になった。トランプは選挙に負けた。ヴィジョン2025は発表されず、キャンプ・デイヴィッドの使用はキャンセルされた。
しかし、ロリンズ、クドロー、その他のメンバーは、自分たちのプロジェクトを放棄したのではなかった。彼らはそれを、しばしば「ホワイトハウス待機中(White House in waiting)」と評される、新しい非営利団体「アメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy Institute、AFPI)」の青写真に変えた。
そして今、彼らは別の課題に取り組んでいる。それは、ホワイトハウス待機中を、過去から逃れられないことで有名なトランプが率いる運動のための、実際に前向きなプラットフォームに変えることだ。
トランプ前大統領は、火曜日にワシントンDCに戻る。2020年1月6日の失態で去って以来、初めてのワシントン訪問で、AFPIのアメリカ・ファースト・アジェンダサミットで基調演説を行う。2024年の大統領選への出馬を発表する準備が整ったトランプ大統領の側近たちは、この機会を利用して、2020年に対する不満を一旦止め、2024年に向けた作戦計画を練り始めることを切望している。
トランプ前大統領と親しく、サミットで演説する予定の元連邦下院議長ニュート・ギングリッチ(共和党)は「これは、トランプ大統領がワシントンに来て、彼のリーダーシップで未来がより良くなる理由について先見性のある演説をする機会だ。そして、彼がそのことに焦点を当てる度合いによって、非常に重要な演説になる可能性がある」と述べた。
トランプ前大統領が過去を過去として忘れる能力が限定的であるのは有名だ。しかし、支援者たちは、連邦議事堂での暴動前と暴動中のトランプの行動を調査し、暴露した2021年1月6日の事件調査委員会の公聴会でトランプが受けたダメージを受けて、この件はより重要になっていると述べている。
火曜日の演説は、トランプにとって、決着をつけることよりも政策に重点を置くことを示すチャンスとなる。これは、トランプに前進して欲しいと望む、トランプの周囲にいる人々と、そうすることを妨げているトランプ自身の本能とアイデンティティとの間の絶え間ない戦いの最新のものとなるだろう。
トランプの火曜日の演説に詳しい人物によると、包括的な政策演説ではなく、アメリカ・ファーストの特定の柱に焦点を当てる予定だという。インタヴューで、ロリンズは、今度のサミットでのトランプの演説を「一般教書演説5.0(State of the Union 5.0)」と称した。トランプの支持者の中には、この演説を、前大統領から前向きな発言を聞くための歓迎すべき招待と見ている者もいる。
ギングリッチは、トランプが2020年の再審理に注力していることについて次のように語った。「それは間違いだと思う。直接言うのは構わない。トランプは5分を過去に費やすべきだ。賛成か反対かは誰もが理解している。誰もが理解している。そして残りの時間全てを未来に費やすべきだ」。
掲載後に送られた声明で、トランプの広報担当者は、増加する犯罪と公共の安全に重点を置くと述べた。
トランプの広報担当者テイラー・バドウィッチは、「トランプ大統領は、犯罪の増加と民主党の政策によるコミュニティの安全性の低下が一因となって、国家が衰退していると考えている。彼の発言は、民主党の政策の失敗を浮き彫りにすると同時に、中間選挙以降に決定的な問題となるであろうアメリカ・ファーストの公共の安全に対するヴィジョンを示すだろう」と述べた。
AFPIの創設は、政策は実際にはトランプのブランドの一部であり、MAGA主義(MAGA-ism)の要素は、トランプ自身を超えた何かに基づいているという考えに基づいていた。
ロリンズは、ワシントンで2日間行われるサミットについて次のように語った。「これは運動を団結させるチャンスだ。ホワイトハウスで3年近くトランプの隣で働いてきたが、多くの人がトランプの政策ヴィジョンをあまり評価していなかった」。
ポリティコがレヴューした「ヴィジョン2025」の草案では、副題「刷新、修復、再構築(renewed,
restored, rebuilt)」のもと、トランプの補佐官たちが2024年末までに達成できると信じていたことが概説されていた。
こうした目標には、雇用創出と低失業率(job creation and low
unemployment)、手頃な価格の住宅の拡大(expansion of affordable
housing)、新型コロナウイルスの根絶(eradicating Covid-19)、連邦政府の官僚機構の縮小(reducing federal bureaucracy)、犯罪と不法移民の取り締まり(cracking
down on crime and illegal immigration)、連邦議会の任期制限の可決(passing
congressional term limits)、対外戦争と中国への依存の終結(ending
foreign war and reliance on China)などがある。社会問題や文化問題もある。しかし、少なくともトランプが退任して以来右派を活気づけているほど、中心的な焦点にはなっていない。例えばロリンズは、ロウ判決の無効化を受けて全国的な中絶禁止を支持するかどうか尋ねられたとき、AFPIに先んじることはしたくなかったが、州に判決を下した最高裁を称賛した。
「州に焦点を当てた政策担当者として、最高裁がそれをアメリカ国民に最も近いところに戻すのは100%正しいと思う」とロリンズは述べた。
ヴィジョン2025の枠組みの下、ロリンズと彼女のティームはAFPIを150人以上が働くシンクタンクに成長させた。幹部クラスには、中小企業庁長官のリンダ・マクマホンや国土安全保障長官代行のチャド・ウルフ、内務長官のデイビッド・バーンハート、エネルギー長官のリック・ペリーなど元閣僚を含む17人の元ホワイトハウス上級スタッフが含まれる。また、クドローや、フットボールコーチからトランプの盟友となったルー・ホルツなど、元政権高官も含まれる。AFPIには合計22の政策センターがあり、「選挙の公正センター」や「メディアの説明責任センター」などの問題に焦点を当てている。
AFPIは、「ビッグテック」やワクチン接種義務化に対して訴訟を起こしている。また、その資金調達力の証として、運営予算は、2500万ドルだが、非営利組織の資金源は公開されていないため公表されていない。
AFPIが、本誌に事前に提供した、新たに公開された組織のアジェンダには、この非営利団体の重点分野が10分野にまとめられており、その中には「世界最高の経済を全てのアメリカ人のために機能させる」「親が子供の教育をもっとコントロールできるようにする」「壁を完成し、人身売買を終わらせ、麻薬カルテルを打倒する」「投票しやすく、不正行為を難しくする」「全てのアメリカ人が平和に暮らせるよう、安全で安心なコミュニティを提供する」「沼地を排水して政府の腐敗と闘う(Fight Government Corruption by Draining the Swamp)」などがある。
トランプはこの組織を支持してきた。昨年11月、彼はマール・ア・ラゴでAFPIのブラックタイ・ガラ募金活動を主催し、彼のPAC「セーヴ・アメリカ」は100万ドルを寄付した。この組織のメンバーの中には、コンウェイ、フロリダ州元司法長官のパム・ボンディ、牧師のポーラ・ケイン・ホワイトなど、今もトランプ氏の周囲にいる人物が含まれている。
しかし、元大統領と同盟を組んでいる人全員がこの組織のファンという訳ではない。金曜日、スティーヴ・バノンのウォー・ルーム・ポッドキャストに出演したトランプの貿易担当補佐官を務めたピーター・ナヴァロは、この組織を「第1政権の失敗者(failed people)、RINO(Republicans in name only、名ばかりの共和党員)、そしてトランプを失望させた不忠者たち(disloyalists who let Trump down)のゴミ捨て場や避難所(dumping
ground and haven)」と呼んだ。
意見の相違が生じる可能性があるのは、AFPIが2024年にトランプ、あるいは他の保守派が勝利した場合の人員増強に重点を置いている点だ。保守政策研究所(Conservative Policy Institute)やヘリテージ財団など、トランプと同盟関係にある他のシンクタンクも最近、2025年大統領移行プロジェクトで、次期保守派主導政権に向けた独自の計画を強化した。
しかし、アクシオス誌が報じたように、トランプの著名な顧問団も、不忠義を装って政府の大部分を事実上一掃し、トランプとトランプ主義に忠実な人たちで完全に置き換える独自の人事案に取り組んでいる。
今年の夏、AFPI は、元連邦人事担当トップのマイケル・リガスが率いる「アメリカン・リーダーシップ・イニシアチヴ(American Leadership Initiative)」を創設し、右派政権が誕生する前に削減または補充すべきポストを特定することを目指した。
ロリンズは次のように述べている。「私たちの側は、人事やプロセスの準備が得意ではなく、長い間その点で劣勢に立たされてきた。そして、この取り組み、私たちのリーダーシップ・イニシアチブ、CPIの取り組み、ヘリテージ財団の取り組みによって、私たちは新たなリーダーシップの時代に向けて準備が整うと思う」。
ロリンズたちが連邦官僚機構の未来を想像するなか、トランプが再選を断念する、あるいは再選を希望しても予備選挙で勝てないという可能性もある。それはありそうにないことのように思われる。トランプ前大統領の元副報道官でAFPIの選挙公正センター所長のホーガン・ギドリーは、トランプ前大統領がどんな決断を下すにせよ、同グループは次期「アメリカ・ファースト」政権に奉仕する独自の資格を備えていると述べている。その政権がトランプ大統領主導かどうかは関係ないということだ。
ギドリーは「私たちが擁しているのは、トランプ前大統領が決断を下した時にその場にいた人々だ。他には誰もそんな人はいない」と語った。
(貼り付け終わり)
(終わり)
ビッグテック5社を解体せよ
コメント