古村治彦です。

 現在、中東情勢が緊迫している。ハマスの政治部門指導者イスマイル・ハニヤがイランの首都テヘランでイスラエルに殺害された(731日)。ハニヤは、イランのマスード・ペゼシュキアン新大統領の就任式に出席するため、テヘランに滞在していた。就任式は30日に実施された。イランにしてみれば、自国の大統領就任式という晴れの舞台に招いた賓客を殺害されたということで面子が丸つぶれである。イラン政府内のかなり上のところまで、イスラエルの息のかかったスパイ、情報提供者がいることが推察される。イランは「報復」を宣言し、イスラエルは防衛態勢強化を進めている。イスラエルはガザ地区でのハマスとの紛争、レバノンのヒズボラとの紛争を進めていたが、これら2つの組織を支援するイランとの全面戦争(all-out war)へと進むことになれば、中東地域の微妙なバランスが崩れ、戦争が拡大し、最悪の場合には、核兵器を使った戦争にまで進んでしまうということまで考えられる。

 イエメンのフーシ派による攻撃で、紅海の船舶運航が阻害されている中で、イランとイスラエルが全面戦争になれば、ペルシア湾の入り口ホルムズ海峡をイランがコントロールしているために、湾岸諸国からの石油輸出にまで影響が出ると、世界的な原油価格高騰を招き、世界規模の経済不況の引き金を引くことになりかねない。

 イスラエルの戦争拡大路線はベンヤミン・ネタニヤフ首相と右派の内閣の意向であろう。現在、アメリカには権力の空白が生じている。現職のジョー・バイデン大統領は再選を断念し、退任が決まっている。退任が決まっている大統領についていく人はいない。皆、自分の次の仕事探しをするようになる。かと言って、大統領選挙候補者になっているカマラ・ハリス副大統領には何の権限もない。軍隊を動かすこともできないし、外交政策で何か動ける訳ではない。バイデン政権はイスラエルを支援しながらも停戦を求めていた。そのために、ネタニヤフ政権に圧力をかけようとしていた。しかし、アメリカのこうした間隙を突いて、ネタニヤフは戦争を拡大しようとしている。アメリカの力と威光は減退している。

 それは、アメリカ軍の能力の面にも出ている。アメリカは、「2つの大きな戦争を同時に戦える能力をアメリカ軍に持たせる」という戦略を採用してきた。その原点は第二次世界大戦だ。第二次世界大戦中、アメリカはヨーロッパとアジア太平洋という2つの「戦域(theater)」で戦争を遂行し勝利を収めた。2つの戦争を戦う力こそがアメリカの基本である。
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 しかし、21世紀に入り、国力の減退もあり、アメリカの軍事力は落ちている。アメリカは中東、ヨーロッパ、中国の3つの「正面」を想定しているが、そのうちの2つで本格的な全面戦争が始まれば、それらを支えることは不可能であるという調査報告書が出ている。これを逆用すれば、これら3つの正面で戦争が起きれば、アメリカは負けるということになる。アメリカとしては恥も外聞も捨てて、同盟諸国の力を借りねばならないが、そうなれば、同盟諸国の意向も無視できなくなり、フリーハンドで動くことはできない。アメリカが完全に自由に言うことを聞かせられるのは、日本だけだ。日本は「自ら進んで」アメリカの言いなりになろうとしてくれる「理想的な属国(完全なる奴隷)」である。私たちはまず、このような心性からの脱却から始めなければならない。そうでなければ、日本を待っている運命は「第二のウクライナ(アメリカのための戦争を、日本人が、日本の国土で、日本がお金を出した平気でやらせて、自分たちに意思決定権はない)」ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカは同時発生複数戦争に備える必要があると監視委員会が発表(The U.S. Must Prepare to Fight Simultaneous Wars, Oversight Panel Says

-新しい調査では、米国防総省が複数の戦域で同時に戦争を行う準備ができていないことが判明した。

ジャック・ディッチ筆

2024年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/29/us-national-defense-strategy-commission-review-report-biden-war-planning/

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ヴァージニア州アーリントンのロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港から離陸する飛行機から見える国防総省(2022年11月29日)

米連邦議会が命じた、アメリカの国防戦略の正式な見直しによると、米国防総省は世界の複数の地域での戦争を戦うための資源の調達と計画に戻るべきだという。この勧告は、アメリカ軍がインド太平洋地域に限定的に集中するよう求めた、ジョー・バイデン米大統領も同調した、ドナルド・トランプ時代の戦略と真っ向から矛盾している。

今回の検討は、バイデンの2022年国防の「前提、目的、防衛投資、部隊態勢と構造、作戦概念、軍事リスク(the assumptions, objectives, defense investments, force posture and structure, operational concepts and military risks)」について分析し、勧告を行うことを任務とする連邦議会の委任を受けた超党派の委員会である「国家防衛戦略委員会(Commission on the National Defense Strategy)」によって実施された。この委員会のトップには、連邦下院情報委員会の幹部委員を務めた元連邦下院議員ジェーン・ハーマンが就任している。この委員会は、ドナルド・トランプ前米国大統領の2018年国防戦略(2018 National Defense Strategy)を検討した。

このような報告書は通常、アメリカの新たな国防戦略に付随するもので、連邦議会の国防タカ派が国防総省の支出増を促すために利用することが多い。月曜日に発表された最新の報告書は、中国とロシアの脅威を防ぐために、インフレ率を上回るアメリカの国防支出の増加を求めている。

バイデン政権の防衛戦略は、2022年2月にロシアがウクライナに本格的に侵攻することを想定して書かれたもので、イスラエルとハマスのガザ地区での戦争に完全に先行していたため、委員会は、この2年間で深刻化したヨーロッパと中東での脅威の増大、そしてロシアと中国のパートナーシップの拡大に対応するには、この戦略は「不十分(insufficient)」だと指摘した。

冷戦後のほとんどの期間、アメリカは2つの戦争を同時に戦い、勝利する準備をアメリカ軍に求め、2つの戦争戦略(two-war strategy in place)を採っていた。2001年9月11日のテロ攻撃以降、アメリカ軍はイラクとアフガニスタンという2つの戦争を同時に戦い、その後、20年の大半を費やした。しかし、これらの戦争は、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、第二次世界大戦のような過去の通常戦争の規模には及ばないものだった。

しかし、財政緊縮策(fiscal austerity)、特に国家債務を削減する目的で、バラク・オバマ政権時代に連邦議会が制定した予算上限規制(budget caps)は、過去3人の米大統領の下での中国への戦略的転換と相まって、2度の戦争を経た軍の維持はもはや国防総省の戦略の柱ではなくなった。

2つの戦争はもはや必要ではなくなり、失業率の低さにより軍人募集がはるかに困難になっているため、アメリカ軍全体の兵力は過去80年間に比べて減少している。

国家防衛戦略委員会の委員たちは「アメリカの統合された軍隊は今日、即応性(readiness)を維持する限界点(breaking point)にある。準備を再構築するためのリソースを追加せずに負担を増やすと機能が壊れてしまう」と書いている。

「国家防衛戦略委員会は、アメリカ軍が戦闘を抑止し、勝利することができると確信するために必要な実務能力(capabilities)と潜在能力(capacity)の両方を欠いていることを発見した」と付け加え、米国防総省がハイテク兵器(high-tech weapons)と弾薬(munitions)の配備についてより良い仕事をする必要があることを示唆した、中国のような非常に有能な敵と戦うのに必要な速度で弾薬を補充する。

国家防衛戦略委員会はまた、国防総省とホワイトハウスに対し、地図の全領域にわたる中国とロシアの連携に対処するためのアメリカ軍の作戦指示を見直すよう求めている。中東におけるアメリカ軍の最高司令部である米中央軍は、4月にイランによる大規模な無人機とミサイル攻撃を阻止するために防空資産を調整することで効果的な連携を示したと報告書は述べている。

報告書は、複数の異なる地域、つまり軍事用語で「戦域(theaters)」で戦争を行うという要求は、古い2つの戦争の枠組みとは異なるものであり、そのアプローチは、アメリカに、イランや北朝鮮など、世界でも一流の軍事力を持たない可能性のある、北東アジアと中東のならず者国家を倒す準備をするよう求めていると述べている。現在、報告書は、アメリカ軍はアメリカ本土を防衛し、西太平洋での中国と、ヨーロッパでのロシアを阻止する取り組みを主導し、イランの悪意のある活動から防衛できる必要があると述べた。

報告書に参加した委員の1人であり、戦略予算評価センターの会長兼最高経営責任者(CEO)トーマス・マンケンは個人的に更に踏み込んで、国防総省が3つの戦域で戦う準備を整えるアメリカ国防衛戦略を求めている。しかし、他の専門家たちは、アメリカは戦略に焦点を当て、軍隊や武器を含む資源が不足する可能性がある時代に慣れる必要があると考えている。

トランプ政権の2018年国防戦略策定に貢献したエルブリッジ・コルビーは、今月初めの外交政策イヴェントで、「私たちには2つの戦争を戦える軍隊はない。ヨーロッパよりもアジアの方が重要だと考えている。これは、バイデン政権自身のものを含む、2つの連続した国防戦略の事実である」と述べた。

国家防衛戦略委員会は、特に複数の戦争が世界中で同時に勃発した場合、アメリカの資源は無制限ではないことを認めた。こうした現実を踏まえ、この委員会は、NATOの国防計画立案者たちは、ヨーロッパの同盟諸国が保有する必要のある軍事能力の支援において「アメリカへの過度の依存を減らす(to reduce overreliance on the United States)」ために、その軍事能力の目標を設定すべきだと述べた。しかし、たとえアメリカが中国だけに焦点を当てたとしても、中国の世界的利益に対処するために、アメリカ軍は依然として世界中に拠点を置く必要があると報告書は述べている。

※ジャック・ディッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障担当特派員。ツイッターアカウント:@JackDetsch

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める