古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙は、民主党がカマラ・ハリス副大統領を大統領候補者として正式に決め、副大統領候補にミネソタ州知事ティム・ウォルツを決めた。ウォルツの起用は、このブログで予想した通りで、アメリカ大統領選挙の主戦場は、五大湖周辺州の激戦州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州と定まった。共和党側はニューヨーク出身(現在はフロリダ州在住)のドナルド・トランプ、民主党側はカリフォルニア州出身のカマラ・ハリスとなり、いわゆる、アメリカの両沿岸地域出身であり、それぞれの副大統領候補が中西部、五大湖周辺州とその隣州の出身ということで、両陣営が五大湖周辺州を最重視し、ここで決着をつけようとしていることが明らかになった。

 ハリスがウォルツを起用したのはヒットだった。ウォルツはハリスにないものを補える人物だ。エリートではない、中道、中間層のアメリカ人(「普通の」アメリカ人)であり、ハリスの持つ、検察官上がりのエリート臭さを緩和することができる。ウォルツがリベラルであるが行き過ぎてはいないということで、党内の団結のためには良い人選となった。

 しかし、ハリスにはまだまだ厳しい壁が立ちはだかっている。ハリス自身の外交政策が見えてこないこと、中道なのか、リベラルなのかはっきりしないこと、ジョー・バイデンとどこがどう違うのかをはっきり示さねばならないが、やり過ぎるとそれは現政権批判になってしまうということだ。バイデンの政策をそのままそっくり日気づいて何も買えないということになれば、それならバイデンで良いではないかということになる。

 主戦場の五大湖周辺州で、ハリスはどれだけの「地上戦」を展開できるかと言われると、甚だ疑問だ。ウォルツがいるのでだいぶ助かるだろうが、彼女自身が五大湖周辺州にほぼ縁がないということが問題だ。ジョー・バイデンはペンシルヴァニア州の生まれ育ちで、隣のデラウェア州でキャリアを重ねたが、地縁、血縁、ネットワークは強固なものだ。労働組合やアフリカ系アメリカ人組織などとは数十年にわたり関係を築いてきた。バイデンはまさに「地上戦」の人である。ハリスとヒラリーはどうしても「空中戦」の人だ。ハリスがどれだけ地上戦を展開できるかだ。

 また、アメリカ経済の先行き不安ということになると、「経済はやはり経験のあるトランプ」ということになる。ハリスには経済運営を行った経験はない。アメリカ経済の後退局面がこの時期に来たというのはハリスにとっては逆風となるだろう。

 「ハリスさん、いいぞいいぞ」「ハリスが急上昇」という報道が日本でもなされているが、現状を冷静に見ることが必要だ。

(貼り付けはじめ)

カマラ・ハリスが「ハネムーン期間」が終わって直面するであろう5つの疑問(5 questions facing Kamala Harris as her ‘honeymoon period’ ends

ナイオール・スタンジ筆

2024年7月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4799034-harris-2024-campaign-questions/

カマラ・ハリス副大統領の登場は、ジョー・バイデン大統領を候補者のままで迎える11月の選挙での自分たちの可能性を深く憂慮していた民主党所属の議員たちの間に大きな興奮を呼び起こした。

ハリス陣営によると、バイデンが選挙戦からの撤退を表明して1週間も経たずに、2億ドルを集めたということだ。17万人以上の新たなヴォランティアが登録したと報じられている。

各種世論調査でも、ハリスはドナルド・トランプ前大統領がバイデンに対して享受していた差を縮めている。

しかし、ほとんどの調査でトランプがリードを保っており、熱狂的なハリス支持者を含め、事実上誰もが彼女のハネムーン期間がすぐに終わることを知っている。

ハリスは、週末にマサチューセッツで行われた資金調達パーティーで、「私たちはこのレースでは負けている」と語った。

ハリスと選対が抱える大きな問題を5つこれから紹介していく。

(1)彼女は強力な副大統領候補選びができるだろうか?(Will she make a strong VP choice?

これがハリスに迫る最大の決断だ。

副大統領候補は近々決まるが、それはいつでもというタイミングだ。月曜日の「CBSモーニングス」でのインタヴューで、ミシガン州知事グレッチェン・ウィトマー(民主党)は、ハリスが「これからの6、7日(the next six, seven days)」で決めるだろうと語った。ウィトマーは、ハリスの伴走者(running mate)にはならないことを強く示唆した。

副大統領候補のトップランナーとしては、マーク・ケリー連邦上院議員(アリゾナ州選出、民主党)、ペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロ(民主党)、ミネソタ州知事ティム・ウォルツ(民主党)が挙げられている。その他に、ケンタッキー州知事アンディ・バシア(民主党)とピート・ブティジェッジ運輸長官の名前も挙がっている。

上位3人のいずれかを推すのは簡単だ。ケリーは移民問題でハリスの弱点を補う能力があると考えられるからであり、シャピロは最大の激戦州の知事として人気があるからであり、そして、ウォルツは、平易な語り口で、中西部地方でアピールできるからだ。

しかし、紙の上では良さそうに見える伴走者選びも、簡単に失敗することがある。共和党側では、JD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出)がトランプの副大統領候補として不安定なスタートを切ったことに大きな不安がある。共和党は、2008年にジョン・マケイン連邦上院議員(当時、アリゾナ州選出)の伴走者となったアラスカ州知事(当時)サラ・ペイリンのパフォーマンスにいまだに悩まされている。

ハリスが勝利のチャンスを得るために、副大統領候補の選択を失敗しないことが極めて重要となる。

(2)彼女はこれまでの立場をめぐる無遠慮な攻撃を鈍らせることができるか?(Can she blunt attacks over her previous positions?

ハリスに対するトランプ陣営の包括的な攻撃は、彼女がアメリカ国民にとってリベラルすぎるというものだ。

特に2020年の大統領選挙の民主党指名獲得を目指したハリスのコメントや政策的立場に関して真の脆弱性が存在する。

当時、ハリスは採掘(フラッキング、fracking)禁止を支持し、すでにグリーン・ニューディールの連邦上院共同提案者となっており、移民税関捜査局Immigration and Customs EnforcementICE)の抜本的改革を望んでいた。

ハリスがどのような立場に立っていたのかについては、いくつかの論争がある。

例えば、この時期に移民税関捜査局の廃止を求める声に賛成かどうか尋ねられた彼女は、「ICEを批判的に再検討(critically reexamine ICE)」する必要があると答え、更に「私たちはおそらくゼロから始めることさえ考える必要がある」と付け加えた。

ハリス陣営は、元検事という経歴は彼女を定義づける戦いにおいて大きな武器であり、強大な権益に立ち向かう意思があると思わせるのに役立つと反論している。

彼女はまた、2020年の予備選の時よりも、より中道的な位置づけをするようだ。例えば、彼女の陣営は先週末、本誌に対し、彼女はもはや採掘禁止を支持していないことを明らかにした。

しかし、トランプ陣営からのジャブは今後も続くだろう。

月曜日、トランプ陣営はハリスが語った古いインタヴューでのコメントを掲載した。ハリスは次のように述べていた。「そう、私は過激(radical)だ。私たちがやっていることについて過激になり、真剣に取り組む必要があると信じている」。

(3)彼女はイスラエルのガザ地区攻撃に怒る有権者を味方につけることができるだろうか?(Can she win over voters angry about Israel’s assault on Gaza?

バイデンがガザ地区攻撃でイスラエルを強く支持したことに対し、民主党の有権者の間には深い不満がある。

ギャラップ社が先月行った世論調査では、イスラエルがガザ地区でとった軍事行動に賛成している民主党員と支持者はわずか23%だった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が先週行った連邦議会での共同演説では、100人以上の民主党所属の連邦下院議員と連邦上院議員がボイコットした。

バイデンのイスラエルとガザ地区に対する姿勢は、アラブ系アメリカ人が全米で最も集中している重要な激戦州(swing state)であるミシガン州では、選挙上特に危険な要素である。

ハリスは先週末、バイデンとは別でネタニヤフ首相と会談した後、顕著な口調の変化を見せた。

イスラエルとその安全保障への「揺るぎない関与(unwavering commitment)」は確認したものの、ハリスはガザ地区で起きたことを「破壊的()devastating」と表現し、「あまりにも多くの罪のない民間人の死(the death of far too many innocent civilians)」を嘆いた。

ハリスは続けて「私たちは苦しみに無感覚になることを許すことはできない。私は沈黙しない」と述べた。

しかし、ハリスはまだ針の穴を通すことになるだろう。パレスティナに同情的な有権者たちは、実際の政策転換(shift in policy)を望んでおり、一方、親イスラエルの有権者たちは、支持が緩むことに非常に敏感となっている。

(4)彼女は重要な激戦区で勝利することができるか?(Can she win the key battlegrounds?

民主党内では、ハリスへの熱狂が起きているが、各種世論調査の数字を信じるならば、11月の選挙ではトランプが有利であることに変化はない。

ハリスの支持者たちは、バイデンが身を引いてからの世論調査の数はまだ少ないが、彼女の方向に動いていると指摘する。

しかし、特にアリゾナ州、ジョージア州、ネヴァダ州の激戦区において、彼女には挽回すべき大きな地盤がある。本誌とDDHQDecision Desk HQ)が管理している世論調査の平均では、これらの州でトランプは、約6ポイント、4ポイント、9ポイントそれぞれリードしている。

ハリスは火曜日にジョージア州に向かう。アフリカ系アメリカ人初の女性大統領となる可能性が、有権者のおよそ3人に1人がアフリカ系アメリカ人であるこの州で、彼女を大きく支援する可能性は十分にある。

ハリスは、ミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州の3つの「青い壁(blue wall)」と呼ばれる州で、僅差でリードを許している。

ハリス陣営は、彼女はまだ投票先未決定の有権者たちから大きな支持を得ていると考えている。しかし、前途は多難である(tough road ahead)ことは間違いない。

(5)彼女はバイデンと差別化できるだろうか?(Can she differentiate herself from Biden?

ハリスはある点で本質的に厳しい立場にある。彼女は11月の大統領選挙本選挙候補者と、そして支持率が低調な現職大統領の現職副大統領という、2つの役割を担っている。

今から投票日までの数カ月の課題は、あからさまに不誠実に見えることがないようにしながら、彼女が望む奈良の話であるが、どうなって、バイデンとの差別化を図るかということだ。

バイデンの実績としては、インフラ支出の増加、学生ローンの救済策、数百万人の高齢者のインスリン代を月額35ドルに制限するなどの具体的なものが挙げられるが、ハリスに関連付けたい要素がこれらである。

しかし、バイデンの記録の他の要素、特に移民と2022年の急速なインフレによって生じた、現在でも癒されていない政治的傷跡(political scar)ははるかに問題がある。

ハリスは今後数カ月間、ホワイトハウスにいるバイデンに対してあまり厳しい態度をとらないようにしながら、将来の明確なヴィジョンを概説する必要に迫られる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める