古村治彦です。

 カマラ・ハリス副大統領の大統領選挙運動においての弱点は、自身が現政権の最高幹部であることだ。ジョー・バイデン政権の政策について批判はできない。自分が参加している政権の政策を批判すればそれは自分に返ってくる、自分自身を批判することになるからだ。ハリスに関しては、外交政策が全くの未知数だ。これからハリスの独自色を出すとすれば、民主党の支持者たちの間で、不支持が高まっているイスラエル支援についてだ。イスラエルのガザ地区攻撃についてけん制し、停戦に導くために、イスラエル支援について抑制するということをハリスが述べることができれば、独自色を出し、支持者を繋ぎ止めることができる。

 先日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の米連邦議会演説で、ネタニヤフは、バイデンとは長年の友人であり、ある時、バイデンが自分自身について、「誇り高きアイルランド系アメリカ人シオニスト(proud Irish-American Zionist)」だとネタニヤフに語ったという逸話を紹介した。バイデンとの違いを出すには、ハリスは自身を「シオニスト」とは定義しないで、イスラエルへの支援について合理的な選択をすることが重要だ。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、非常に危険な動きをしている。ガザ地区のハマスだけではなく、レバノンのヒズボラとの戦闘を拡大し、更にはイラン国内でハマスの政治部門トップのイスマイル・ハニヤを殺害したことで、イランも引きずり出そうとしている。イエメンのフーシ派も攻勢を強めると見られている。中東の微妙なバランスは崩れ、より大きな戦争が発生する可能性が高まっている。今、アメリカは権力の空白が生じている。現職の大統領は再選を目指さず、力を失っている。次の大統領が誰になるか不透明であるが、誰がなっても、イスラエルに対して停戦を強く求めてくることは目に見えている。停戦になって、国内が落ち着けば、ネタニヤフのスキャンダルに対する訴追が行われ、ネタニヤフは絶体絶命の状態に追い込まれる。アメリカの次の大塗料が決まるまでに、状況を複雑化し、戦争を拡大するという選択をネタニヤフがしたということが考えられる。これは世界にとって最悪の選択だ。

 ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争は一刻も早い停戦が望まれる。アメリカ大統領選挙はそれらに大きな影響を与える。イスラエルのネタニヤフは行動の自由があるうちに状況を自分の利益になるようにしようとしている。非常に危険な状況がこれから続くということは秘奥に懸念されることだ。

(貼り付けはじめ)

ハリスの候補者指名は民主党にガザ地区問題で軸足を移すチャンスを与える(Harris Candidacy Gives Democrats a Chance to Pivot on Gaza

-米国の外交政策を正して有権者を取り戻すために彼女にできること。

マシュー・ダス筆

2024年7月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/24/kamala-harris-gaza-israel-democrats-united-states-presidential-race/

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2023年66日、ワシントンDCの国立建築博物館でイスラエル大使館主催のイスラエル建国75周年を記念するレセプションで講演するカマラ・ハリス米副大統領(2023年6月6日)

ジョー・バイデン米大統領のイスラエル・ハマス戦争への対応ほど、民主党内で意見の分かれる外交政策はない。カマラ・ハリス副大統領は、民主党の次期大統領候補として、これまでとは異なる方針を打ち出し、そうすることで、バイデンがイスラエルの無差別ガザ地区破壊をほぼ無条件で支持したことで怒り、疎外された民主党の主要な有権者を再び活気づける機会を得ている。

国内政策の面において、バイデンが並外れた成功を収めた大統領として記憶されることは疑いの余地がない。成果のリストは長い。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を乗り越え、数百万の新規雇用を創出し、数十年ぶりに独占禁止法を積極的に施行し、クリーンエネルギーとアメリカの製造業への投資を劇的に拡大したことなどだ。

バイデンの外交政策は、いくつかの明らかな勝利を収めたとはいえ、むしろ賛否両論ある。彼は、アメリカの中心地を産業空洞化させ(deindustrialized the U.S. heartland)、国内と世界の不平等(inequality)を悪化させ、国際的な腐敗と民族ナショナリズムを助長する新自由主義神学から決別し、より公平で持続可能な世界経済秩序への道を示した。2020年10月のブラジル大統領選挙を巡る同政権の取り組みは、軍事クーデターの回避に貢献した可能性があり、世界で最も重要な台頭大国の1つにおける民主政治体制を守るための隠れた勝利となっている。ロシアの全面侵攻に対するウクライナ防衛を支援するためのバイデンの同盟国結集は、外交技術(diplomatic skill)と軍事的自制(military restraint)の両方を証明した。

しかし、バイデンのグローバルなアプローチは、時には統合失調症(schizophrenic)のように見えることもあった。バイデンは一方で、世界的な力の相対的なシェアが低下しているアメリカが国際的なアプローチを改革し、重要なパートナーシップと同盟を強化し、グローバルサウス(global south)の国々に対してより効果的にアピールする必要があると認識した。その一方で、アメリカの軍事的覇権(U.S. military hegemony)が国の資源を枯渇させ、政治を腐敗させているにもかかわらず、アメリカの軍事的覇権を世界の安定の必要条件とみなすアメリカ例外主義神学(American exceptionalist theology)から抜け出すことを彼は未だに望んでいない。これは、アメリカとそのパートナーを、アメリカ政府が他国に従うよう求める規則を超えたものとして扱うアプローチであり、人命とアメリカの信頼に多大な犠牲を与えるものである。

ガザ戦争への政権の対応ほどこの対照が顕著な場所はない。ガザ地区では、国際法と人権に対するひどい組織的な違反が明らかに起きているにもかかわらず、バイデンは基本的に不人気な極右イスラエル政府の意向に従っている。ロシアが行った場合とイスラエルが行った場合の、集団処罰(collective punishment)と民間人の苦痛(civilian suffering)に対するアメリカのあからさまな二重基準は、アメリカ政府の密封された言説ではそれほど注目されていないかもしれないが、ワシントン政治の外や世界中では明らかに注目されている。

数カ月にわたる世論調査では、バイデンのガザ地区政策が11月の民主党の可能性に深刻なダメージを与えていることが示されている。民主党にとって勝たねばならない州で10万票以上を獲得したミシガン州のアンコミット運動は、警鐘を鳴らすべきだった。バイデンは最終的に、イスラエルからの2000ポンド爆弾の提供を差し控え、恒久的な停戦を迫ることを決定したが、アメリカ国内法が要求する軍事援助の更なる条件付けを拒否することで、自らの努力を台無しにした。

センチュリー財団が今月初めに発表した報告書によると、「無党派層、激戦州の可能性が高い有権者、民主党の活動家を含む多くの中核的有権者が、イスラエルによるガザ攻撃に対するバイデンの無条件の支持に怒っている。全国的には、有権者の10人に4人近く(38%)が、ガザ戦争へのバイデン大統領の対応のせいでバイデン大統領に投票する可能性は低い」ということだ。

これが偏った見解だと誤解している人がいるかもしれないので付け加えておくと、7月23日、7つの主要労働組合が共同書簡をバイデンに送り、「イスラエルへの軍事援助を直ちに停止する(immediately halt all military aid to Israel)」よう要請した。

ハリスがバイデンから劇的に距離を置くとは誰も期待していないが、ハリスが40年前ではなく、今日の民主党を代表していることを示すために取れる手段はある。ハリスは大統領として、アメリカが提供したアメリカ国内法に違反して使用されている軍事援助を直ちに停止すると発表することができる。ハリスは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が権力にしがみつくために人質解放(hostage release)と停戦(cease-fire)の取り組みを遅らせているという、イスラエルの野党議員や現職治安当局者を含む無数のイスラエル人の評価に同意していることを公に明らかにできる。ハリスは、ガザ地区最大かつ最も重要な救援機関である、近東地域の国連難民救済事業機関(United Nations Relief and Works Agency for Palestine RefugeesUNRWA)が「ハマスのフロント組織(Hamas front)」であるという根拠のない扇動的な主張を拒否し、自分はそうするだろうと明言することができる。UNRWAの資金提供が法的に可能な限り早く再開されるよう取り組んでいる。そうすることで、彼女は既に寄付を再開しているイギリス、フランス、ドイツなどのアメリカのパートナーに加わることになる。

ネタニヤフ首相が先週、イスラエル議会でヨルダン川以西のパレスティナ国家を除外する前例のない決議案を可決したことなど、パレスティナ国家樹立の可能性を繰り返し拒否していることに対して、ハリスは、パレスティナ国家の最終的な輪郭はまだ決まっていないが、次のように言うべきである。「パレスティナ人の国家に対する権利は、イスラエル人と同様に交渉の余地がない」。

11月の選挙は外交政策の真の対比をもたらすチャンスだ。アメリカの専門家たちは、共和党候補で元大統領のドナルド・トランプと副大統領候補のJD・ヴァンスに対して「孤立主義者(isolationist)」という形容詞を絶えず使っているにもかかわらず、現実には彼らは孤立主義的な外交政策を提示しているのではなく、むしろ一極主義的(unilateralist)で軍国主義的な外交政策を提示している。アメリカとそのパートナー諸国は、武器を購入しない政府は従わなければならないとアメリカ政府が主張する国際規範に拘束されず、自由に暴力を行使できる。

残念ながら、ガザ戦争に対するアメリカの政策はこれと同じアプローチを反映しており、ハリス副大統領のルーツであるアメリカ国内の公民権運動(civil right movement)が闘ってきた一種の組織的差別(systemic discrimination)を強化している。ハリスには、この不協和音(dissonance)に終止符を打ち、パートナーと敵対者ごとに異なる規則や規範ではなく、国際社会に普遍的な一連の規則や規範を支持するアメリカ外交政策のヴィジョンを提示する機会がある。

そうすることで、ハリスは最終的に私たち全員が安全、繁栄、尊厳を持って生きることを可能にするアプローチを大胆かつ正しく主張することになるだろう。

※マシュー・ダス:国際政策センター上級副会長。2017年から2022年にかけて、バーニー・サンダース連邦上院議員外交政策補佐官を務めた。ツイッターアカウント:@mattduss

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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