古村治彦です。
ここしばらく、ブログの更新が滞りまして、申し訳ございません。10月に刊行予定の新刊の準備をしており、少し落ち着いたので更新します。今後ともよろしくお願いいたします。
今回は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が今年の大統領選挙で勝利し、第二次政権が誕生した際に、外交分野で政権(ホワイトハウス)や各政府機関で、交換を務めると予想される人物たちの横顔と考えを網羅する記事を紹介する。
トランプの基本線は、「アメリカ・ファースト(America First)」と「アイソレイショニズム(Isolationism)」である。これまでの記事でも何度も書いているが、「アメリカ・ファースト」は「アメリカがナンバーワンだ、最高の国だ」という意味ではなく、「アメリカ国内問題解決を最優先にしよう」ということだ。また、「アイソレイショニズム」は「孤立主義」ではない。アメリカが孤立する訳がない。そうではなくて、「海外のことに何でも首を突っ込むことは止めよう」ということだ。トランプは「アメリカは海外のことに介入しすぎて、国内問題の解決が後回しにされた。それを止めよう」と訴えているのだ。下に掲載する記事で紹介されている人物たちは、トランプのこうした考えを実現するための人々である。是非注目していただきたいと思う。
(貼り付けはじめ)
トランプの外交政策に影響を与える人物たち(Trump’s Foreign-Policy
Influencers)
-2024年共和党大統領選挙候補を形作る11人の世界観を紹介する。
『フォーリン・ポリシー』誌スタッフ
2024年8月26日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2024/08/26/trump-foreign-policy-influencers-us-election-china-trade-nato-ukraine/
ドナルド・トランプ前米大統領がホワイトハウス獲得で再び勝利した場合、彼の外交政策はどのようなものになるだろうか? 共和党の候補者であるトランプは、ロシアとウクライナの戦争を1日で終わらせることができると豪語するなど、しばしば思いつきで行動する。トランプはまた、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」のような政策屋による文書について、政治的に都合が悪くなると、すぐに距離を置く。
しかし、選挙戦の騒ぎを脇に置いて、トランプ政権2期目の外交政策アジェンダの可能性を測る1つの方法は、彼の周辺にいる主要な国家安全保障に関する思想家たちをプロファイルすることである。彼が耳を傾けるアドヴァイザーは誰か?
前大統領の現在の世界観を動かしている思想の源は何なのか?
以下のリストは、11月5日までの数日間、数週間の便利なガイドとして考えてほしい。その前に、いくつか免責事項について述べたい。以下のリストは、重要度順ではなく、アルファベット順となっている。国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官など、特定の役割のために名前が挙げるものでもない。トランプ大統領の外交政策決定に重要な影響を与える可能性のある人々の見解や考えを説明するのがベストだと考えたからだ。そして最後に、この試みの精神は、最近のワシントンでよく行われている室内ゲーム[parlor game](もちろん、誰もトランプが何をするか正確に知っているとは主張できない)に、何らかの質感を加えることである。
(1)エルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)
エルブリッジ・コルビーは、かつてそうであったし、そして、第二次トランプ政権の国防高官になる可能性のある人物である。ヨーロッパ、NATO、ロシアから、そして増大する中国からの挑戦へと力を完全にシフトすることを提唱する、ワシントンで最も声高で、おそらく最も理路整然とした発言者である。
コルビーはトランプ政権で国防副次官補を1年以上務め、アメリカのアジアへの軸足移動(U.S.
pivot to Asia)を遅ればせながら強化することに貢献した。その後、他のトランプ政権のヴェテランたちとともに、大国間競争に焦点を当てたワシントンのシンクタンク、マラソン・イニシアティヴ(Marathon Initiative)を共同で設立した。もし彼が将来のトランプ政権で再びチャンスを得ることができれば、そして彼の名前が別の国防職や国家安全保障会議の役職に候補として浮上しているならば、彼は自分の最も重要な点をはっきりと主張することになるだろう。それは、「アメリカの最大の問題はロシアではなく中国だ(China, not Russia, is America’s biggest problem)」ということだ
コルビーは、一連の論稿、著書、スピーチの中で、アメリカが限られた防衛資源を使い、敵対的な覇権主義国がアジア太平洋地域で台頭するのを防ぐべきだという主張を長年にわたって展開してきた。中国は既に多くの小さな隣国を経済的に屈服させ、南シナ海などで地域の安全保障を削り続けている。しかし、本当の試練は台湾である。つまり、中国が武力で台湾を再統合しようとすれば、アメリカやおそらく日本との衝突を意味し、成功すれば、世界で最も重要な経済地域である環太平洋地域(Pacific Basin)全体を中国が支配することになる。
コルビーの考えは、第二次世界大戦の最中に、ニコラス・スパイクマンによって書かれたアメリカの大戦略のオリジナルの青写真の一つに対するタイムリーな復権である。しかし、スパイクマンのオリジナルの考えはひっくり返り、今やヨーロッパではなく、アジアがアメリカの経済的、政治的重心(center of gravity)となっている。中国によるアジア地域支配は、アメリカの将来の見通しと行動の自由を厳しく制限することになるだろう。
コルビーにとっての問題の一つは、将来の上司となる可能性のある人物が、時には中国に対して十分に敵対的になることを厭わない一方で、完全に取引好き(transactional)でもあり、トランプは既に、台湾の自治権を取引材料にする(barter
away)意向を示していることだ。コルビーのような現実主義的タカ派は、決して変化しない重要な方向性を持つ(true
north)ことのない外交政策に対して不快感を抱く傾向がある。
もう一つの問題は、たとえそれが戦争の最中にウクライナを放棄することを意味するとしても、限られたアメリカの資源を、いつか来るであろう中国との大規模な戦いのためだけに使うようコルビーが声高に繰り返し主張してきたことは、クレムリンの悪党たちの主要な目的であるということだ。ロシア国営テレビはコルビーの外交政策の優先事項を応援している。
将来のトランプ政権や将来のカマラ・ハリス政権においても、連邦議員たちはいずれにせよ、アジア限定の防衛戦略を支持しない可能性が高い。連邦議会の委任を受けた国防検討委員会(defense review panel)は今年7月、アメリカはヨーロッパとアジアの両方において、重大な利益を守る準備をすべきだと主張した。
-キース・ジョンソン筆
(2)フレッド・フライツ(Fred Fleitz)
フレッド・フライツはアメリカの国家安全保障コミュニティの長年のメンバーであるにもかかわらず、4年間ワシントンを混乱させたトランプ主導の反体制的な「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again、MAGA)イデオロギーの熱心な支持者である。フライツは第一次トランプ政権にも参加しており、大統領選挙で、国家安全保障に関する前大統領の数少ない最高顧問の1人として頭角を現した。
フライツはキース・ケロッグとともに、トランプが再選された場合には、ウクライナ戦争を終わらせることを目的としてトランプが検討する計画を起草した。この計画には、ウクライナとロシアに交渉のテーブルに着席するように促し、現在の戦線での一時停戦を仲介することが含まれており、和平交渉中も停戦は維持されることになる。次期トランプ政権は、一方では交渉に応じなければ、アメリカの援助を打ち切ると脅してウクライナに圧力をかけ、他方ではロシアに対して、和平交渉に応じなければ、アメリカはウクライナへの軍事援助のレヴェルを引き上げると脅して圧力をかけるだろう。この計画は、フライツを始めとする、トランプの周辺にいる人物たちが政権に加わった場合、トランプ大統領のウクライナ政策がどのようになるかを示す、これまでで最も詳細なプレビューとなる。
フライツは、ティーム・バイデンが政権を握った際に、ワシントンでMAGAの活動を継続させるために2021年に設立されたシンクタンクである、アメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy Institute)のアメリカ安全保障センターの副所長を務めている。彼は右派ニューズチャンネル「ニューズマックス」の常連コメンテーターであり、『オバマ爆弾:危険で増大し続けている国家安全保障上の詐欺(Obamabomb: A Dangerous and Growing National Security Fraud)』と『来るべき北朝鮮核の悪夢:オバマの「戦略的忍耐」を逆転させるためにトランプがしなければならないこと(The Coming North Korea Nuclear Nightmare: What Trump Must Do to
Reverse Obama’s ‘Strategic Patience’)』の著者でもある。
フライツは過去の発言や、反対派が非主流派やイスラム教嫌悪者と呼ぶ極右団体や反移民団体との関係を巡り物議を醸してきた。彼は後に、過去の関係者の一部から距離を置いた。
フライツは、CIA、国防情報局、国務省、連邦下院情報委員会の共和党側スタッフなどの仕事を転々としながら、20年以上にわたり、アメリカ政府の中で過ごしてきた。ジョージ・W・ブッシュ政権では、ボルトンが軍備管理担当国務次官だったときに彼の首席補佐官を務め、その後、ボルトンがトランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したときには、国家安全保障会議の首席補佐官を務めた。
ボルトンはその後、トランプと公然と決裂したが、フライツは依然として、トランプ周辺に残り続けている。トランプが勝利した場合、誰が政権のスタッフになるかは明らかにしていないが、共和党関係者の多くは、フライツはリストのトップに掲載されていると考えている。
-ロビー・グラマー筆
(3)リック・グレネル(Ric Grenell)
2018年にドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領に信任状を提示してから数時間以内に、トランプ大統領の新駐ベルリン大使リック・グレネルはツイッターで、イランと取引しているドイツ企業に対し「直ちに事業を縮小する()wind down operations immediately」よう要求した。そこから外交関係は悪化した。
政治任命を受けたグレネルが、ドイツの比較的小さい国防費を理由に、ドイツからアメリカ軍を撤退させ、ロシアのエネルギーへの依存度を高めるノルドストリーム2・パイプラインに制裁を科すと脅迫したため、ドイツ政府との意見の相違が公に報道された。ドイツ連邦議会のヴォルフガング・クビツキ副議長は一時、アメリカが「依然として占領国(still an occupying power)」であるかのように振る舞っているとグレネルを非難した。
この懲罰的な外交上のアプローチは、ベルリンの温厚な政治勢力を恐怖に陥れた可能性がある。しかし、大使が上司のメッセージを伝える能力で評価されるとすれば、グレネルは有能な歩兵(foot soldier)だった。その後、彼はバルカン半島特使および国家情報長官代理に任命されたが、コソヴォ政府を崩壊させたとして非難された。彼は、同性愛者であることを公にした人物として、初の閣僚レヴェルの役職に就いた。
ハーヴァード大学ケネディ行政大学院を卒業したグレネルは、多くの著名な共和党議員のスポークスマンを務めた後、2000年にジョン・マケイン元連邦上院議員の大統領選挙に参加した。マケインは後にトランプ氏の最も熱心な批判者の一人となった。
2001年から2008年にかけて、グレネルは、後にトランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官となるジョン・ボルトンを含む4人の国連大使の下で、米国連代表部の広報部長を務めた。
トランプ大統領就任のかなり前から、グレネルは好戦的なツイートで知られていたが、将来の上司のツイートと同様に、ジャーナリストを攻撃したり、著名な女性民主党員の容姿を嘲笑したりすることが多かった。
トランプ政権の何人かの高官が不名誉な任期の終わりに、前大統領と決別したが、グレネルは忠実であり続けた。『ニューヨーク・タイムズ』紙の最近の報道によれば、2020年の大統領選挙後、グレネルはその主張に根拠がないことを知りながら、投票結果への異議申し立てを支援するためにネヴァダ州に派遣されたという。
グレネルは政権を離れて以来、トランプ大統領の特使を務め、世界中を旅し、極右指導者たちと会談し、グアテマラにおいてもそうだったが、米国務省の活動を貶めてきた。その忠誠心こそが、彼が将来のトランプ政権で外交政策の上級職に就く可能性を高めている。
グレネルは、3月にポッドキャスト「セルフ・センタード」に出演した際、国務長官には、「タフ(tough)」で「クソ野郎(son of a bitch)」である必要があると語った。
-エイミー・マキノン筆
マイケル・フリンが、駐米ロシア大使との会話について嘘をつき、トランプ政権の1期目開始からわずか22日で国家安全保障問題担当大統領補佐官の職を解任されたとき、キース・ケロッグはフリンの後任として最初に検討された人物の1人だった。彼はその職に就けず、三ツ星陸軍将軍のH・R・マクマスターがその職に就いた。その代わりにケロッグはマイク・ペンス副大統領に助言する役割を果たし、国家安全保障会議の首席補佐官を務めた。
これらの役割の中で、ケロッグはトランプ大統領の任期の最も重要な瞬間のいくつかに巻き込まれた。ケロッグは、トランプ大統領がウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領にバイデンの捜査を促した2019年7月の電話会談では、「何も間違ったことも不適切なこともなかった」と聞いたと述べた。そしてケロッグは、2021年1月6日、まだトランプ支持の暴徒が連邦議会議事堂から排除されている最中に、ペンスに2020年の選挙を「今夜」認定するよう非公式に促した。それでもケロッグは、2023年8月にはペンスよりもトランプを支持し、ペンスが「政治工作(political maneuvering)」と自分のイメージ作りに集中していると批判した。ペンスは2023年10月に大統領選挙から撤退し、トランプを支持していない。
それ以来、ケロッグは、ワシントンで待機中のホワイトハウスと見なされている親トランプのシンクタンクであるアメリカ・ファースト政策研究所のトランプ大統領の国家安全保障ブレイン・トラストの主要メンバーになろうとしている。ケロッグはヴェトナム戦争退役軍人で、2001年9月11日にアルカイダがボーイング757を国防総省の西側に突っ込ませた際、国防総省で三ツ星陸軍大将を務めていたが、親ウクライナであると同時に親NATOでもある。しかし、その両方に対してトランプ大統領の有名な影響力を発揮するつもりだ。ケロッグは、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を「1日」で終わらせるというトランプ大統領の公約を裏付けようとしており、キエフが交渉のテーブルにつくことを拒否した場合には、アメリカのウクライナへの軍事援助を削減する一方、交渉のテーブルにつくことを拒否した場合には軍事援助を増額する計画を立てている。クレムリンは交渉を拒否した。
7月にワシントンで開催されたNATO首脳会議でヨーロッパ当局者たちが、トランプの内通者を追及した際、ケロッグはアメリカの同盟諸国との会談に出席した元当局者の1人だった。しかし、彼らが受け取ったメッセージは、彼らが聞きたかったものではなかったかもしれない。ケロッグは、同盟の国防支出目標を達成していないNATO諸国はワシントン条約に違反していると述べた(トランプ大統領は今年初めの選挙集会で、同盟の支出目標であるGDPの2%に達していないNATO同盟国を守らないと脅した)。
-ジャック・ディッチ筆
(5)ロバート・ライトハイザー(Robert Lighthizer)
トランプ政権で好感を務めた人たちの中で、政策に大きな影響力を持ち、それを維持しているメンバーはほぼいない。しかし、トランプ大統領の下で通商代表を務め、現在は顧問に就任し、おそらく将来の財務長官に据えられるであろう、ロバート・ライトハイザーは、特に貿易に関する彼の過去回帰的な(back-to-the-past)ヴィジョンを通じて、バイデン政権が新たに見出した貿易戦争志向を形成するのに役立つほど影響力のある経済的発言者となっている。
ライトハイザーは貿易問題に精通したヴェテランの法律家であり、ロナルド・レーガン政権で公務員としてのキャリアをスタートさせた。彼は、貿易と経済に関するトランプのちぐはぐな考えを、多少なりとも首尾一貫した政策に変えた。トランプがホワイトハウスへの復帰を目指して選挙戦を繰り広げている今、ライトハイザーは、彼が最初に追求した政策をさらに推し進めようとしている。
鉄鋼、アルミニウム、そして多くの中国製品に対する有名なトランプ関税は、ライトハイザーのヴィジョンの結実であり、彼はまだ始まったばかりである。彼は、アメリカの消費者や企業が輸入するものに対する税金を上げれば、輸入が減ると信じている。理想的な世界では、それによってアメリカの企業もより多くのものを製造し、輸出するようになるだろう。
退任後の著書や著作に記されている彼の将来に関する計画には、アメリカの輸出入の帳尻を合わせるために、より多くの国々(実際には全ての国々)に対して、より高い関税を課すことが含まれている。結局のところ、彼の目的は、現在バイデン政権が好んでいる生ぬるい部分的な「リスク回避(de-risking)」よりも、中国からの完全な「デカップリング(decoupling)」にはるかに近づくことである。
ライトハイザーや、ピーター・ナヴァロ(7月に刑務所から釈放された)のようなトランプ大統領の他の有力な貿易問題アドヴァイザーにとっては、雪崩を打つような関税と好戦的な通商政策が、彼らの掲げた目的を何一つ達成しなかったことは、ほとんど気にすることではない。トランプやライトハイザーのような関税タカ派の最大の関心事である貿易赤字は、彼らの監視下で拡大した。アメリカの輸出は縮小し、製造業の雇用も(新型コロナウイルス感染拡大もあって)減少した。
友人や同盟諸国による報復関税(retaliatory tariffs)は、アメリカの海外貿易の選択肢を狭め、反中連合の見通しを弱めた。輸入税によって消費者物価は上昇した。中国は、そもそも貿易戦争を引き起こした略奪的な経済行動を一切緩和せず、実際、独自のターボチャージャーを備えた輸出主導の産業政策(export-driven industrial policy)を、まさにアメリカの経済活性化(economic rejuvenation)の中心に据えてきた。
しかし、ライトハイザー自身が主張しているように、間違ったコースにある船を正すには時間がかかる。おそらく今回は、同じ古い治療法が劇的に異なる結果を生み出すだろう。
-キース・ジョンソン筆
(6)ジョニー・マッケンティ(Johnny McEntee)
2020年の夏、トランプ大統領が再選を目指していたとき、ホワイトハウスから国防総省の職員たちに、第二次トランプ政権での役職を評価するため、2人の職員と面接をするようメールが届いた。ホワイトハウスが国防総省に対する自己主張を強め、国防総省内で辞任が相次いだことが注目された。職員たちはこの面接をトランプへの忠誠心を試すものと考えた。
この電子メールの背後にいるのは、ホワイトハウス大統領人事局長のジョン・マッケンティだった。コネチカット大学ではかつて、クォーターバック(一般受験で入学した)だったマッケンティは、政権初年度は大統領の「付き人役(body man、ボディーマン)」を務めた。マッケンティは、ギャンブル捜査による身元調査に不合格だったとして、2018年にジョン・ケリー大統領首席補佐官によって解雇されたが、2年後に復帰し、今度は強力な人事局の責任者となった。
ワシントンでは人事は政策であるとよく言われる。トランプの初期任命の多くは、伝統的な共和党の外交政策グループから来ており、標準的なMAGA陣営よりも国際的、貿易支持、NATO支持、同盟寄りだった。トランプ大統領が、自身のアジェンダを遅らせたとされるワシントンの「ディープステート」を指弾している中で、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、H・R・マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官、ジム・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官は、トランプ大統領の就任から最初の2年間、外交政策の主な主導権を握る「大人の枢軸(axis of adults)」を形成し、外交政策の舵取りを担ってきた。
しかし、マッケンティは政権後半になると、MAGAが承認した人物をトップの仕事に就かせる手助けをすることになる。彼はマーク・エスパー国防長官(当時)の解任を含む、トランプによる国防総省幹部の配置転換を指揮した。また、国防総省の最高政策委員会をトランプの側近で固めようとした。もしトランプが勝利していたら、マッケンティはトランプが計画した「スケジュールF」改革(planned “Schedule F” reforms)を実施する上で重要な役割を果たしただろう。この計画では、実質的に終身雇用トラックの政府職を、随意契約の職員に変えることになっていただろう。
それ以来、忠誠度テストはトランプの世界では標準的な慣行となった。マッケンティは現在、保守系シンクタンクのヘリテージ財団に在籍し、次期大統領に「ディープステートと対峙する(confront the Deep State)」ことを求めるプロジェクト「プロジェクト2025(Project 2025)」の先頭に立って活動している。トランプの任命候補者リストに記載して欲しい場合は、電話番号を送信し、トランプへの忠誠心が主な前提となる詳細なアンケートに記入する必要がある。
-ジャック・ディッチ筆
(7)クリストファー・ミラー(Christopher Miller)
クリストファー・ミラーは文字通り、2020年11月にトランプ大統領の国防長官代理に任命された後、初期の段階でいくつかの失敗を犯した。まず、彼は階段を上って国防総省に入る途中でつまずいた。そしてその2日後、国立米陸軍博物館で初の演説をしようと立ち上がったとき、準備していた演説を席の下に忘れてしまった。
それは、おそらく国防総省長官がこれまで行った中で最もワイルドな2カ月の歴訪の調子を整えた。トランプ大統領はエスパーの後任としてミラーを国家対テロセンターから異動させ、国防長官代行に就任させた。トランプ大統領は、各ネットワークが大統領選挙でバイデンの勝利を決定してから48時間も経たないうちに、エスパーが解任されたとツイートで発表した。
元グリーンベレーのミラーは、バイデンの就任式に先立ち、国防総省から野心的なレイムダック的な議題を与えられた。国防総省はアフガニスタン、シリア、ソマリアからアメリカ軍を2カ月以内に撤退させる任務を負っていた。
ミラーは、2021年1月6日の連邦議会議事堂でのトランプ支持派の暴動を鎮圧するための州兵の派遣を、国防総省が違反を認識してから3時間以上も承認しなかったことで広範な批判にさらされた。ミラーは後に、アメリカ軍を派遣することで南北戦争以来「最大の憲法上の危機(the greatest Constitutional crisis)」が生じるのではないかと懸念していたと述べた。ミラーはまた、暴動を引き起こしたトランプには責任があるとも述べたが、再びトランプ氏の下で働く可能性を明確に排除はしていない。
トランプ大統領は昨年12月のインタヴューで、ラジオ司会者のヒュー・ヒューイットに対し、ミラーと国防総省での短期間の勤務について、「ミラーは本当に優秀で、とても良い人だと思った」と述べた。
-ジャック・ディッチ筆
(8)スティーヴン・ミラー(Stephen Miller)
スティーヴン・ミラーは、第一次トランプ政権を通じて、大統領の強硬な、そして非常に物議を醸す移民政策の急進的な立案者として名を馳せた。もしトランプ大統領が11月に勝利すれば、アメリカの政策を徹底的に見直し、移民を取り締まるための抜本的な新たな提案を既に概説しているミラー氏に再び大きく依存すると広く予想されている。
ミラーは当時、トランプ大統領の上級顧問兼スピーチライティング責任者として、大統領の政策の形成に極めて重要な役割を果たした。ミラーは、ゼロ・トレランス(zero tolerance)として知られる家族離散政策や、イスラム教徒が多数を占める複数の国からアメリカへの旅行や難民の再定住を禁止する、いわゆるイスラム教徒の入国禁止(Muslim ban,)など、トランプ政権の最も物議を醸した計画の一部を推進した。伝えられるところによると、ミラーは難民受け入れ数の削減を推進するだけでなく、アメリカ南部国境を封鎖するために軍隊を派遣することも望んでおり、中国人に対する学生ビザの禁止を提案したとされる。
ミラーは、他の側近たちが大統領に自制を促したと伝えられる状況でも、トランプ大統領のより強硬な立場を奨励したことで知られている。2019年、法律擁護団体である南部貧困法律センターが公開した一連の電子メールの流出により、ミラーが個人的に白人至上主義者の見解を宣伝していたことが明らかになり、批判を浴びた。ミラーと保守系ニューズサイトのブライトバート・ニューズの間で交わされた電子メールは2015年と2016年に遡る。
現在、ミラー氏は正式な法律訓練を受けていないにもかかわらず、「覚醒した、意識の高い企業(woke corporations)」に対する法廷闘争に多くの時間を費やしている。2021年に彼は、バイデン政権とケロッグやスターバックスを含む民間企業の慣行に異議を唱えることに重点を置いた保守的な法律擁護団体であるアメリカ・ファースト・リーガル財団(America First Legal Foundation)を設立した。 「アメリカ・ファースト・リーガルは、人種と性別に基づいてアメリカ人を罰する差別的雇用慣行に違法に従事しているアメリカ企業の責任を追及している」とこの財団は主張している。
ミラーは11月にトランプがハリスを破れば、アメリカの移民政策を全面的に見直すと公言している。ミラーは、ニューヨーク・タイムズに対し、「トランプ大統領の決意を少しでも疑う活動家は、重大な間違いを犯している。トランプ大統領は連邦政府の膨大な権限を解き放ち、最も壮大な移民弾圧を実施するだろう。移民法活動家たちは何が起こっているのかを理解することはできないだろう」と述べた。
トランプ大統領の2期目の可能性の下で、アメリカは難民プログラムの停止やイスラム教徒の渡航禁止の一部ヴァリエーションの再導入など、移民取り締まりを目的とした政策を劇的に拡大するだろうとニューヨーク・タイムズは報じている。ミラーは、トランプ大統領は公共の職場を徹底的に強制捜査し、大量国外追放を実施し、国外追放を待つ人々を拘留するための「広大な収容施設(vast holding facilities)」を建設することを構想していると語った。トランプはまた、児童到着者に対する延期措置(Deferred Action for Childhood Arrivals、DACA)プログラムの終了にも熱心であるとミラーは述べた。
ミラーは今年初めにポッドキャストのインタヴューで、右翼パーソナリティーのチャーリー・カークに対し、「この世界で何が起こっても気にしない。トランプ大統領が再選されれば、国境は封鎖され、軍隊が配備され、州兵が動員され、不法滞在者は帰国するだろう」と述べた。
-クリスティーナ・リュー筆
(9)ロバート・オブライエン(Robert O’Brien)
トランプ大統領は就任してから2年間で、3人の国家安全保障問題担当大統領補佐官を任命したが、最終的に、そのうちの1人に落ち着いた。それが、ロバート・オブライエンだ。オブライエンは、トランプ大統領の残りの任期中、ずっとその地位にとどまった。
ロサンゼルスの弁護士であったオブライエンは、人質問題担当特使としてホワイトハウスでの任務を開始した。彼は、トランプ政権が海外で不当に拘束されたアメリカ人を休場から救い出すことを優先する中で、トルコやイエメンの刑務所からアメリカ人を解放する手助けをした。
ニューヨーク・タイムズによると、オブライエンは同盟国であるスウェーデンに働きかけて、ラッパーのイェ(旧名カニエ・ウェスト)の要請を受け、アメリカ人ラッパーのエイサップ・ロッキーを釈放させた。ロッキーは暴行罪で有罪判決を受けていた。
オブライエンは国家安全保障問題対等両大統領補佐官として、前任者たちよりもかなり経験が浅かった。彼は控えめで忠実であることを証明し、大きな論争もなくトランプ政権の任期までその職責を務めた。
2020年の大統領選挙後、オブライエンはトランプ政権の高官として初めて、不本意ながらもバイデンの勝利を認めた。「もしバイデン・ハリス組の勝利が決まれば、そして明らかに今はそのように見えるが、私たちは国家安全保障会議から非常に専門的な移行を行うことになるだろう。それは間違いない」とグローバル・セキュリティ・フォーラムのオンライン会議で語った。
オブライエンは、前大統領との親密な関係を維持しており、トランプが大統領執務室に復帰した場合には、上級職に抜擢される可能性が高い。
今年6月に出版された『フォーリン・アフェアーズ』誌の論稿の中で、オブライエンは将来のトランプ外交政策の輪郭について書いている。それは、「トランプ流の力による平和の回復(A Trumpian restoration of peace through strength)」である。オブライエンはインド太平洋地域への海兵隊全体の展開やアメリカ空母の大西洋から太平洋への移駐など、インド太平洋地域での強固な態勢を整えるよう求めており、中国が最大の焦点となっている。
オブライエンはまた、1992年以来、アメリカでは実施されてこなかった核兵器実験を再開するように主張した。オブライエンは、「ワシントンは、1992年以来初めて、単にコンピューターモデルを使用するだけでなく、現実世界において新しい核兵器の信頼性と安全性を試験する必要がある」と述べている。
-エイミー・マキノン筆
(10)カッシュ・パテル(Kash Patel)
カシュ・パテルはトランプ大統領在任中、軍歴がないにもかかわらず、連邦下院情報委員会の無名スタッフから大統領首席補佐官を経て、政権最後の数カ月で国防長官代理まで、隆盛の如く出世した人物である。パテルは当時下院情報委員会委員長だったデヴィン・ヌネス連邦下院議員の補佐官として、トランプ陣営が遊説中にロシア政府当局者と不適切な接触を行ったという告発に異議を唱える取り組みの中心となった。
パテルは、法執行当局がトランプ陣営の元補佐官カーター・ペイジの通信監視の許可を求めた際に不適切な行為をしたと主張する物議を醸した2018年のメモの執筆者だったと伝えられている。民主党はこの文書公開の決定を司法制度に対する党派的な攻撃だと非難したが、後に裁判所はペイジに対する監視令状の一部が不当であると認定した。
パテルは、国家安全保障会議でテロ対策上級部長を務めた後、2020年に国家情報長官上級顧問として国家情報長官室に異動し、トランプ前大統領による情報機関への攻撃にとって不可欠な存在となった。情報諜報コミュニティは、2016年大統領選挙へのロシアの干渉活動に関する調査文書の機密解除を求めている。
『アクシオス』誌の報道によると、トランプ政権の衰退期に、前大統領はヴォーン・ビショップCIA副長官を解任し、後任にパテルを据えることを検討していたということだ。報道によると、ジーナ・ハスペルCIA長官(当時)が抗議して辞任した場合(彼女は抗議のために辞任すると脅した)、広大な情報機関のトップにはパテルか別のトランプの周辺人物が任命されていたことだろう。
トランプが大統領執務室に復帰した場合、パテルは重要かつ上級の役割を果たす可能性が高い。2023年12月にスティーヴ・バノンのポッドキャストに出演した際、パテルは第二次トランプ政権がジャーナリストを標的にし、訴追するだろうと語った。パテルは、「はい、私たちはアメリカ国民について嘘をつき、ジョー・バイデンによる大統領選挙の不正操作を助けたメディアの人々を追いかけるつもりだ。私たちはあなたたちを追いかけるつもりだ。刑事的であれ、民事的であれ、我々はこうした問題を解決するだろう」と述べた。
パテルはまた、「国王に対する策謀(The Plot Against the King)」というタイトルの児童書も執筆している。これはロシアに関する調査を修正主義的に描いたおとぎ話で、その中でパテルはドナルド国王が「ルソニア人(Russonians)と協力しなかった」ことを王国に知らせる魔法使いとして登場する。
-エイミー・マキノン筆
(11)マイク・ポンぺオ(Mike Pompeo)
マイク・ポンペオは、任期を通じて、無作法で気まぐれな、トランプ大統領と強力な関係を維持した数少ない閣僚の一人だった。トランプはカンザス州選出連邦下院議員として比較的無名だったポンペオを引き抜き、CIA長官に抜擢した。アメリカ最高の情報機関の長官として、ポンペオはトランプ大統領と北朝鮮の最高指導者金正恩との直接会談の基礎を築くために極秘に北朝鮮を訪問し、その後に外交分野に進出した。
2018年、トランプはレックス・ティラーソン国務長官を解任すると、後任にポンペオを据えた。ポンペオはティラーソン時代と異なり、外交分野に「威勢(swagger)」を取り戻すことを誓って国務省に入った。ヴェテラン外交官の中には、そのことに安堵する者もいれば、共学する者もいた。国務長官在任中、ポンペオは、例えばトランプに関する第1回弾劾公聴会や、ハラスメント、失政、国務省のトランプ大統領任命者に対する監視機関の調査を含むその他のスキャンダルの最中に、国務省と対立することになったときでも、トランプの最側近であり続けるように細心の注意を払っていた。
ポンペオはカリフォルニア州出身で、ウエストポイントの米陸軍士官学校を首席で卒業し、陸軍士官として勤務し、その後、ハーヴァード大学のロースクールに通った。彼は1990年代にカンザス州に移り、トランプ政権に参加する前の2011年から2017年までカンザス州第4選挙区の連邦下院議員を務めた。トランプの退陣が選挙で決定された後、他のトランプ政権高官たちは、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件や選挙不正に関するトランプの明らかに虚偽の主張を非難したが、ポンぺオはそうした避難に参加しなかった。
ポンペオは一時、大統領選挙に立候補することも考慮したが、フロリダ州知事ロン・デサンティスやサウスカロライナ州元知事ニッキー・ヘイリーなど、トランプに対する他の共和党の挑戦者たちと同じくらい全国的な知名度や資金を増やすことができなかったため、早い段階で選挙戦から撤退した。ポンぺオは6月、中規模テクノロジー企業の支援を目的とした新たなプライベートエクイティ会社をヴェテラン投資家たちと設立した。
ポンペオは依然としてトランプや側近たちと緊密な関係を維持しており、共和党内部関係者の多くは、トランプが再選されれば、ポンぺオは国防長官など政権最高幹部の最有力候補になると考えている。
トランプの周囲人物の中で、ポンペオは最も率直にウクライナを擁護する人物の一人だ。ポンぺオは4月初旬にキエフを訪問し、フォックスニューズに対し、ウクライナを武装して軍事的に強化することが「前進するための最も低コストの方法(least costly way to move forward)」であると語った。多くのヨーロッパ各国の当局者たちは、ポンペオの閣僚ポストへの任命はウクライナと北大西洋条約機構(NATO)にとっては良いことであり、ロシアにとっては悪い知らせになると考えている。
熱心なタカ派であるポンぺオは、トランプ大統領のイラン核合意離脱の主な推進者であり、現在では主に超党派の支持を得ている、前大統領の中国に対する力強いアプローチの立案者でもあった。
-ロビー・グラマー筆
(貼り付け終わり)
(終わり)


ビッグテック5社を解体せよ



コメント