古村治彦です。
日本製鉄がアメリカの老舗製鉄会社であるUSスティールを買収するという話が持ち上がって、日米間で問題になっている。アメリカ側は、ジョー・バイデン政権とドナルド・トランプ前大統領陣営で反対論が主張されている。これは、アメリカの鉄鋼労組である、全米鉄鋼労働組合(USW、United Steelworkers of America)が買収に反対しているためだ。
日本製鉄によるUSスティールの買収は過剰に政治問題化しており、簡単な図式で言えば、全米鉄鋼労働組合の組織票が欲しい政治家たちが、労組に媚びを打って、計画に反対しているということになる。国益であるとか、労働者の利益などよりも、政治家たちの利益と圧力団体である労組の利益が優先される状況である。
日本製鉄はUSスティール買収で、雇用を守り、給料も引き上げると発表している。相当な気遣いをしている。そして、実際に働いている労働者の人たちも、雇用が守られることを重視して、買収に反対はしていない。アメリカでGAFAが凄い、凄いと言って、USスティールよりも雇用ができる企業などではない。日本製鉄がUSスティールを買収しなければ、製鉄所は閉鎖され、労働者は失業する。彼らがGAFAに再就職できることなどありえない。それならば、雇用を守ると明言している日本製鉄がUSスティールを買収することが得策なのである。
また、米中経済戦争においては、アメリカが単独で中国を迎え撃つことができる段階ではない。既に多くの産業分野で中国に追い抜かれているのが現状だ。製造業に関しては、中国が全世界の30%を占め、日本が15%を占め、アメリカは5%に過ぎない。アメリカは、日本に協力してもらわねば、中国に太刀打ちできない。その日本だって、衰退を続けており、いつまでも力を持っている訳ではない。
アメリカ人の馬鹿さ加減はこれまでも何度も目撃してきたが、日本製鉄のUSスティール買収計画でもその馬鹿さ加減を遺憾なく発揮している。アメリカがこのまま推定していくのは御勝手にである。日本が逸れに付き合うのはもっと馬鹿げたことだ。買収計画に反対して頓挫して、失業者が多く出て、更に犯罪問題や麻薬問題が増えてもそれは自業自得である。
(貼り付けはじめ)
日本製鉄によるUSスティールの買収を阻止することが間違いである理由(Why Blocking Nippon Steel’s Purchase of U.S. Steel Is a Mistake)
-バイデンは健全な政策立案よりも、選挙政治を優先するという超党派のパターンに従っている。
ハワード・W・フレンチ筆
2024年9月9日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2024/09/09/us-japan-nippon-steel-biden-blocking-deal-politics/

ペンシルヴァニア州ピッツバーグの本社前で、日本の日本製鉄による買収を支持するUSスティールの労働者たち(2024年9月4日)
去年の今頃、講演のためにペンシルヴァニア州を訪れていた。私は時間を見つけて、これまで見た中で最も珍しい公園の1つを訪れた。この施設は、かつて世界最大の製鉄所の1つであったベツレヘム・スティールの広大な旧跡の周囲に建てられている。
1857年に、ペンシルヴァニア州ベツレヘムに設立されたベツレヘム・スティール株式会社は、第二次世界大戦中のアメリカの造船業や、エンパイア・ステート・ビルディング、ゴールデンゲート・ブリッジ、ニューヨークのロックフェラー・センターといった世界的に有名な建造物の建設に大きな役割を果たした鉄鋼を生産していた。
私が公園の階段を登り、小道を歩いた日には訪問者は誰もいなかったが、自由に見学できる精巧で巨大な建造物は今ではゆっくりと錆びて忘却(oblivion)の彼方に向かっており、消滅した文明(vanished
civilization)が残した記念碑のような雰囲気を漂わせていた。
鉄鋼産業がニューズになっていたので、私はここ数日、廃墟となったベツレヘム鉄鋼所のことをよく考えていた。先週、各メディアは、ジョー・バイデン政権が、日本企業である日本製鉄による経営不振の老舗企業USスティールの買収(150億ドル近くの入札)を拒否する計画であると報じた。ホワイトハウスは国家安全保障の論理に隠れてこの協定を阻止しようとしているようで、政府機関間の対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States)からの勧告を発動する準備をしている。
しかしながら、これは純粋に選挙政治に根ざした動機を覆い隠しているように私は考える。ペンシルヴァニア州は、刻々と近づいている米大統領選挙において、いわゆる激戦州(swing state)と呼ばれる最大の州であり、保留中の否決は、日本のUSスティール買収に反対する労働組合をなだめるとともに、グローバル化に懐疑的な有権者にアピールするための明らかな狙いのように見える。または経済ナショナリズムの概念も含まれている。
もしそうならば、これはアメリカによる重大な外交政策の誤りとなるが、バイデン政権の敵対者である共和党がそれを非難する可能性は低いと思われる。それは、ドナルド・トランプ前大統領がグローバリゼーションを積極的に批判しており、民主党と同様に労働者階級の経済ナショナリスト層からの票を集めようとしているからだ。こうした理由から、トランプは日本の鉄鋼会社の買収にも反対してきた。
貿易は、アメリカの主要政党が大統領選挙期間中、ナショナリストの路線に沿って姿勢を示す必要性を長年感じてきた問題の1つであり、そうする際には良好な経済や健全な政策を脇に置くことがよくある。アメリカと中国の関係も同様の問題だ。
最近の最も顕著な例の1つとして、バラク・オバマ政権は環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific
Partnership、TPP)と呼ばれるものを強力に推進した。これはアメリカと環太平洋経済圏11カ国との間の貿易協定で、加盟国を統合した世界貿易の40%をカヴァーすることになるものだった。アメリカとの経済協力をより徹底し、そして重要なことに、中国との経済的・政治的競争において、アメリカ政府の方策を強化した。当時のバラク・オバマ大統領の国務長官ヒラリー・クリントンはTPPを公に支持した。ヒラリー・クリントンは、「このTPPは、自由、透明、公正な貿易、つまり法の支配と平等な競争条件を備えた環境を開くための貿易協定の黄金律を設定するものだ」と述べた。
しかし、2015年にヒラリー・クリントンが大統領候補となり、最終的にトランプとの接戦に突入すると、TPPに対して冷淡になった。もう1つの激戦州であるミシガン州で選挙運動を行ったヒラリーは、「私はTPPを含め、雇用をなくしたり、賃金を押し下げたりするあらゆる貿易協定を阻止する」と宣言した。ヒラリーは「私は今も反対しているし、選挙後も反対するし、大統領になっても反対する」と述べた。
TPP放棄が、アメリカの労働者の雇用や賃金上昇に有利になったという証拠はほとんどない。ワシントンの想定上のパートナーは、祭壇の前で立ち往生し、自らの後継協定である環太平洋パートナーシップのための包括的かつ先進的な協定を形成することに踏み切った。実際、中国はワシントンの方向転換で最大の受益者だったのかもしれない。2020年には、インド太平洋14カ国と地域包括的経済連携協定(Regional Comprehensive Economic Partnership)を締結した。
ここで、日本のUSスティール買収を支持する根拠の1つに話を戻したい。中国は世界の鉄鋼生産をリードしており、新日鉄のオーナーは、存続するアメリカのメーカーの買収計画は、戦略的材料であり続ける鉄鋼の中国支配がますます拡大することに対する防波堤(a bulwark against ever greater Chinese domination of steel, which
remains a strategic material)になると主張している。
中国との競争を直接の前提としない買収を承認する説得力のある理由は他にもある。合理的な政策選択の世界では、あるいは有権者の選好の世界では、これらの理由が優先されるべきであった。USスティールがこれまで生き残ることができたのは、トランプ大統領時代とジョー・バイデン大統領時代に実施された保護主義的措置によるところが大きい。USスティール首脳部が警告しているように、新たな投資と技術の大規模な流入がない限り、将来にわたって競争力を維持することには疑問符がつく。これらがなければ、USスティールは、やがて本社があるペンシルヴァニア州ピッツバーグから完全に撤退することになるだろう。
最後に、このように健全な政策決定よりも選挙政治が優先され、それが近視眼的な姿勢を生み出していることは、もう1つの重要な点でも共鳴している。バイデン政権の外交政策の特徴のひとつは、カマラ・ハリス副大統領の選挙テーマにもなっているように、特にアジアにおける同盟関係の強化(strengthening U.S. alliances, particularly in Asia)である。バイデン政権の下で、ワシントンは日本をより緊密に抱き寄せ、日米両国間の軍事協力を大幅に強化し、日本ともう1つの同盟国である韓国をなだめすかして和解させ、アジアとヨーロッパの両国に中国との先端技術の共有を制限するよう説得した。
このような状況下で、鉄鋼のような伝統的な産業は戦略的なものであり、日本が所有することは許されないと宣言することは、同盟国間の経済的な共同戦線(a common economic front among allies)を促進するという概念を愚弄するものである。バイデンとハリスは、トランプのスローガンである
「アメリカ・ファースト(America First)」を叫んでいる訳ではないが、「政治ファースト(politics first)」を宣言するような振る舞いをすることで、多かれ少なかれ同じことを言っているのである。
※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern
World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench
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