古村治彦です。
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ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まってからいまだに停戦を迎えていない。このまままた冬を迎え、年を越していくことになる。現在、中東情勢が緊迫の度合いを深めている中で、注目も薄れているように感じる。大きな動きもなく、戦況は膠着状態に陥っている。そうした中で、犠牲者だけが増えている。私は2年前から訴えているが、一日も早い停戦を望む者である。

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ウクライナの最大の支援国であるアメリカは大統領選挙期間中、しかも現職の大統領は再選を目指さないということでレイムダック状態になり、大きなことはできにくい状態にあり、選挙が終わって、新政権ができてからしばらくの間は、アメリカは動けない。そうした中で、停戦のきっかけをつかむのは難しい。ウクライナの国内状況が変わらねば、早期停戦は望めない。具体的にはヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の交代だ。

 そうした中で、「ウクライナのNATO加盟」という話も出ている。私は、ウクライナのNATO加盟には反対する。ウクライナのNATO加盟は紛争の火種を残すことになる。それならば、EU加盟を目指すべきだ。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は多少の皮肉も込めながら、ウクライナのEU加盟には反対しない姿勢を示した。ウクライナの腐敗度や財政赤字をEU諸国で面倒を見られるのか、どうなんだという皮肉を示しているが、ウクライナにとっては、EU加盟は経済を向上させるには良いきっかけとなる。

EU諸国にとっては逆で、ウクライナを支援する負担を考えるとEUには加盟させたくない。しかし、ロシアをこれからも挑発する存在としては味方につけておきたい。それで、NATO加盟という話も出ている。しかし、それはあまりにも危険だという慎重論ももちろんある。自分たちからわざわざ危険を高めてしまう行為であるからだ。現在のウクライナ戦争もヨーロッパ諸国にとっては大きな負担である。そうした状況がこれからも続く上に、ロシアからの核攻撃の脅威に晒されるという危険が継続するということはヨーロッパ諸国、更にはアメリカの人々にとっては耐えがたい苦痛だ。

 アメリカと西側諸国の火遊びがロシアによるウクライナ侵攻を招いた。そうした中で、将来に火種を残すような、ウクライナのNATO加盟、NATO軍のウクライナ国内駐留という話は状況を不安定化させるだけだ。

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ウクライナはNATOへの「河川湖沼横断(渡河作戦)」を必要としている(Ukraine Needs a ‘Wet Gap Crossing’ to NATO

-ウクライナに戦時中の橋渡しをするために、アメリカ軍の戦略(playbook)を使う時が来た。

アン・マリー・デイリー筆

2024年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/18/ukraine-nato-bridge-biden-usa/

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NATO首脳会議中の2009年4月4日に撮影された、ドイツのケールとフランスのストラスブールを繋ぐパセレル・ミムラム歩道橋の一帯。

バイデン政権は時に、ウクライナのNATO加盟への「橋(bridge)」を築く必要性に言及する。これは適切な比喩だが、支持者たちが考えるような方法ではない。

橋について言えば、単なる希望の象徴(symbol of hope)と思うかもしれない。しかし、軍事的な文脈で使われる橋は、戦時中のインフラとしての役割を最もよく示している。なぜなら、戦時中の橋の建設は、軍事プランナーが「ウェット・ギャップ・クロッシング(河川湖沼横断、wet gap crossing)」と呼ぶ、とてつもなく困難で複雑な作戦だからである。2022年5月にウクライナがシヴェルスキー・ドネツ川を渡ろうとしたロシア軍大隊を壊滅させたように、河川湖沼横断の実施は危険を伴うが、戦略的な見返りは大きい。1944年、ジョージ・S・パットン将軍率いる第3軍はナンシーでモーゼル川を渡り、ドイツ軍の防衛ラインを転換させ、バルジの戦いのための戦略的位置を開いた。

ウクライナをNATOに加盟させることは、河川湖沼横断と同じようにリスクとコストがかかるが、戦略的な成功につながる可能性がある。もしNATO諸国がウクライナをNATOに加盟させることを本当に真剣に考えているのであれば、NATOへの架け橋を作ることは単に巧みな外交的比喩であってはならないし、シヴェルスキー・ドネツ川のロシア軍のように単に向こう側に行くためだけに試みるべきではない。困難で、洗練された、多面的な作戦のように取り組まなければならないし、第二次世界大戦中のモーゼル川横断のように、戦後のヨーロッパ・大西洋安全保障のためのより広範な戦略の一部でなければならない。

7月にワシントンで開催されるNATO首脳会議で、ウクライナのNATOにおける将来的な役割を計画する外交官や政治家たちは、河川湖沼横断に対するアメリカ軍独自のアプローチを理解するのがよいだろう。その教訓は示唆に富んでおり、身の引き締まる思いがする。

ステップ1:迂回を試みる(Step 1: Try to go around

河川湖沼横断は非常に困難であるため、可能であれば完全に回避することが望ましい。ウクライナをNATOに参加させるのはリスクが高すぎるから回避すべきだと言う人もいるだろう。しかし、それはウクライナにとってNATO加盟以外に良い選択肢がないという事実を無視しており、長期的に見ればウクライナをNATOに加盟させないリスクの方が大きい。軍事作戦でもそうだが、川を渡ることが目的地への最も早く効果的な方法であることはよくある。

コンバット・ブリッジング(戦闘中の架橋、combat bridging)に固有のリスクや困難が知られているにもかかわらず、軍隊がこの能力を維持しているのは、河川湖沼横断の成功によって得られる戦略的機会が、リスクや困難に見合うものである場合があることを知っているからである。また、時には迂回するという選択肢がないことも知っている。ロシアは近隣諸国を侵略し、核のサーベルを鳴らしているが、NATOを直接攻撃することはしていない。それは、NATOの第5条が依然として効果的な抑止力となっているからだ。それ以外には何も機能していないのだ。

ウクライナのNATO加盟に反対する人々は、ウクライナへの継続的な物資支援という「イスラエル・モデル(Israel model)」を選ぶべきかもしれない、あるいはG7諸国のような国々の組み合わせがウクライナに長期的な経済支援を提供することで、ロシアに勝ち目はないと確信させることができるだろうと主張する。それは、イスラエルには核兵器があり、ウクライナにはないからだ。実際、そこが重要だ。ウクライナは1994年、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することにロシアなどが同意したことで、核兵器を放棄した。同様に、すでにEUに加盟しているにもかかわらず、スウェーデンとフィンランドがNATOへの加盟を決定したことは、ウクライナをEUに加盟させ、EUの第42条7項の相互援助条項を与えるだけでは、ロシアの侵略を抑止するには不十分であることを示している。

ステップ2:計画とリハーサル(Step 2: Plan and rehearse

意図的な河川湖沼横断を行うことが決まったら計画が重要である。単に水際まで兵力を移動させ、水際に到達してから横断方法を考えようとしても、大惨事になることは確実だ。渡河地点の候補を偵察し、地形や敵味方の長所・短所を考慮して、どれが成功しそうかを判断し、複数の渡河地点を準備しなければならない。

ウクライナをNATOに加盟させるための選択肢はいくつかあり、いずれも検討されるべきだが、有望と思われるものばかりではない。最初の選択肢は、敵対行為が続いている間にウクライナをNATO加盟国にするというもので、理論的には可能だが、新加盟国を受け入れるには32カ国の同盟国の全会一致が必要であることから、政治的には実現不可能な可能性が高い。地理的に恵まれ、軍事的にも先進国であるスウェーデンを同盟に加入させるのに1年もかかったという事実は、この厳しい事実を裏付けている。仮に、これが政治的に実現可能になった場合、NATOは第5条の保証を単なるリップサービス以上のものにするために、速やかにウクライナに軍を展開しなければならなくなる。

2つ目の選択肢は、停戦または敵対行為の停止をめぐる交渉中の保証の一環として、ウクライナをNATOに加盟させることだ。つまり、停戦が成立次第、ウクライナはNATOに加盟することになる。ロシアはウクライナのNATO加盟のきっかけとなった戦闘停止に同意せずに戦闘を続けることが考えられるため、これはおそらくうまくいかないだろう。

3つ目の選択肢は、停戦後のウクライナの主権と領土の一体性を保証するために、NATO諸国がウクライナ領内に部隊を展開することである。これには、ウクライナに具体的な安全保障を提供する一方で、ウクライナ加盟に懐疑的なNATO諸国を味方につける時間を確保できるという利点がある。

ウクライナの将来の姿は未知数であり、ウクライナのNATO加盟のスケジュールも不明である。NATOはウクライナ加盟に対するNATO諸国の政治的支持の一致を達成するために、また、ウクライナの主権と領土の一体性を保証するために、NATO諸国の軍隊をいつ、どこで、どのように使用するかを決定するために、今すぐ作業を開始すべきである。どちらの選択肢が最も信頼できると判断されるかにかかわらず、どちらの措置も避けられないだろう。

ステップ3:戦場を準備する(Step 3: Prepare the battlespace

コンバット・ブリッジング(戦闘中の架橋、combat bridging)においては、車列を組んで橋を架けたい場所に直接車を走らせ、水中に物を置き始めるようなことはしない。それは自殺行為だ。計画を立て、リハーサルを行い、戦力を整え、有利な条件を整えるための準備を行う。同様に、何の計画も準備もせずにウクライナのNATOへの橋渡しを宣言するだけでは、ウクライナは、2008年のブカレスト宣言後に直面したのと同じ戦略的手詰まり(strategic limbo)の状態に置かれるだけであり、同様に、NATOに加盟できるようになる前にウクライナの主権を弱体化させようとするモスクワの努力を更に倍増させることになる。

NATOにとって、これは加盟諸国が今すぐウクライナのNATO加盟に賛成する票を集め始める必要があることを意味する。外交官たちは、同盟の誰が既にウクライナをNATOに加盟させることに賛成しているのか、そしてどのような条件のもとで加盟させることに賛成しているのかを理解する必要がある。「絶対的に」あるいは「戦争が終わるまでは」加盟させないという立場の人々に対しては、より創造的な解決策を提案し、議論し、内輪で固めていかなければならない。これは一時的な議論では済まない。最終的なウクライナ加盟に向けて戦場を準備するための絶え間ないキャンペーンでなければならない。

ウクライナが1991年の国境を取り戻して戦争が終結するにしても、キエフがそれを下回る形で決着するにしても、NATO加盟諸国の軍隊をウクライナ国内に駐留させ、NATOへの橋渡しに必要な時間、空間、安全を提供する必要がある。この軍隊には、NATOの核保有3カ国(英、仏、米)を含む主要同盟諸国の連合体を含めることが理想的であり、第5条の安全保障がないにもかかわらず、NATOの核保有諸国が合意された国境を守ることを約束していることを示す必要がある。ちょうど、第二次世界大戦の終結から西ドイツがNATOに加盟するまでの数年間、東ドイツのソ連軍を抑止するためにNATO軍が西ドイツに駐留した前例を真似る必要がある。

休戦または停戦後、短期間でこれらの軍隊をウクライナに移動させることは、論理的にも政治的にも極めて困難だ。したがってNATO加盟諸国は、ウクライナを包囲するNATOの防空網がNATO領内を攻撃する軌道にあるロシアのミサイルや、一方向攻撃ドローンの撃墜を開始することを宣言し、ウクライナに少人数のNATO将兵を派遣してウクライナ人に訓練を提供し、民間船舶を保護するために黒海にNATO海軍の能力を認めることについてトルコと交渉することによって、そのような動きの舞台を今すぐ整え始めるべきだ。

ステップ4:関与する(Step 4: Commit

河川湖沼横断作戦は大規模な作戦である。アメリカ陸軍では軍団レヴェルの作戦とされている。空軍、宇宙軍、サイバー資産も重要な支援を提供するように想定されている。困難でリスクが高く、コストもかかるが、適切に行えば戦略的突破口(strategic breakthrough)につながる。

リスクが大きいからこそ、作戦指揮官は関係するリスクを評価し、作戦を危険に晒すことなく、可能な限りリスクを軽減するが、同時に全てのリスクを軽減することは不可能であることを受け入れなければならない。これは極めて重要なステップだ。なぜならば、ひとたび河川湖沼横断が始まれば、指揮官はその計画に全面的に関与し、利用可能な全ての戦力を活用して成功させなければならないからだ。この種の作戦において中途半端な対策は失敗を招く。

NATOがウクライナを加盟させることを真剣に考えているのなら、そしてそうでなければならないのなら、リスクについて明確な認識を持たなければならない。この計画は、より広範な戦略を支えるものでなければならない。そして最も重要なことは、成功を約束することである。もしそうしなければ、最終的に失敗に終わる可能性が高い。

※アン・マリー・デイリー:ランド研究所政策研究員、大西洋評議会スコウクロフト記念戦略・安全保障センター大西洋横断安全保障イニシアティヴ非常駐上級研究員、米陸軍予備役将校。ランド研究所入所以前は、国防長官室でロシア戦略上級顧問およびウクライナ担当デスクを務めた。本書に含まれる見解、意見、発見、結論、提言は筆者個人のものであり、ランド研究所やその研究スポンサー、クライアント、助成機関のものではない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める