古村治彦です。
私はこれまで、21世紀中に世界覇権国の地位はアメリカから中国に移る、西洋中心の、西洋支配の世界構造は大きく変化する、現在は「西側(the West、ジ・ウエスト)対西側市街の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造になっているが、西側以外の国々が西側を凌駕する、別の表現をすれば、グローバル・サウス(global south)がグローバル・ノース(global north)を凌駕する、日本はアメリカ隷従を辞め、より独立した政策を行うべきだと主張してきた。実際に、中国は経済面において、これまでのソ連や日本よりも、アメリカに肉薄しており、逆転は既に指呼の間(しこのかん)にあると見られている。
一方で、中国衰退論、中国崩壊論も根強い。2000年代に入り、中国が計勢視聴していく中で、毎年のように「中国経済は危ない」「中国は国家分裂する」という本が多く出続けて20年近くになる。しかし、実際には2010年に、GDPで中国が日本を逆転し、世界第2位となった。それから約15年の間で、中国のGDPの世界に占める割合は17.7%、日本は4.2%となり、中国が約4倍強となっている。アメリカは25.1%となっている。日本は2025年にはインドにも抜かれて世界第5位に転落する見込みだ。更に言えば、購買力平価(purchasing power parity、PPP)GDPで見れば、「中国、アメリカ、インド、日本、ドイツ、ロシア、インドネシア、ブラジル」の順番になっており、既に、ドイツ、ロシアに抜かれて、世界第6位になっているという話もある(インドネシアの勢いを考えると第7位にまで陥落するのも時間の問題だ)。中国よりも先に日本が崩壊する、いや、既に崩壊していると言えるかもしれない。
それでも日本はバブル期にはアメリカを追い越すのではという勢いを見せていた。アメリカ全土の土地の値段が皇居の値段と一緒だということが盛んに喧伝されていた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン(Japan as No.1)」という言葉が盛んに使われた。しかし、儚い夢に終わった。アメリカが属国日本の増上慢を許すはずはなかった。あれから30年経過して、日本は不況のままである。少子高齢化は世界でも最高水準に達し、国家の維持も危うい状況に追い込まれている。
中国は日本のこれまでの動きをよく研究している。高度経済成長も、そして、バブル経済からバブル崩壊、低迷までをよく観察し、教訓を得ている。中国は政府も国民も浮かれていない。「韜光養晦(目立たないようにして時間稼ぎをして力を蓄える、Hide one's talent and bide one's time)」戦略で力を貯めて、一気に世界の表舞台に躍り出た。しかし、それでも浮かれていない。既に人工知能や量子コンピュータなどの重要分野でアメリカを追い抜いている。それでも中国の若い世代は自分たちの未来を不安に思っている。外側から見るのとは違う評価をしている。それは、「世界覇権国になることの不安」「世界覇権国にすんなりとなることはできず大きな動乱が起きるかもしれないという不安」を持っているということだと考えられる。中国が崩壊することはない。中国は既に崩壊するには大き過ぎる存在になっている。しかし、これまでのような年率で10%を超えるような高度経済成長もまた難しいだろう(それでも西側先進諸国よりも成長率は高いだろうが)。このまま静かに進んでいくことになる。それに対して、「漠然とした不安」を中国国民は感じるだろう。これからの10年間は中国にとって大きな試練の時期ということになるだろうが、中国はそれを乗り越えていくだろう。
(貼り付けはじめ)
中国は崩壊も繁栄もしていない(China Is Neither Collapsing
Nor Booming)
-上海に戻ると、私は将来への懸念を感じた。しかし同時に、この国の巨大な規模が重要な分野で発展するという鋼のような決意も感じた。
ハワード・W・フレンチ筆
2024年8月7日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2024/08/07/china-future-perceptions-economic-growth-great-power/

上海のスカイラインの前でスクーターに乗る男性(2016年12月6日)
先週、ニューヨークからの長時間のフライトで疲れ果て、少し混乱していた私は、上海浦東国際空港に到着し、ホテルまで行くために手配したチャーターの車に乗り込んだとき、安堵感を覚えた。
身長に合わせてシートを調整し、リラックスするために背もたれにもたれかかりながら、私は運転手に、縁石から静かに発進した、印象的な布張りの車のメーカーについて尋ねた。「将来(Jianglai、ジャンライ)」と彼は驚いたように言った。中国語話者として、私はこの言葉が「未来(future)」を意味することを知っていた。これは単なる商標ではなく、比喩であった。
中国では、GAC Aion や BYD
など、世界のほとんどの人が聞いたこともない企業が製造した、気の利いた電気自動車が急速に溢れかえるようになっている。これは、世界最大の高速鉄道網から新しい空港や地下鉄システムに至るまで、この国が今世紀に誇る無数の近代化のほんの1つの事象に過ぎない。中国を訪れる多くの旅行者は、こうした表面的な変化を、21世紀に世界をリードする中国の運命の兆しと捉えて、深読み(overreading)する傾向にある。
私にとって危険なのはその逆だ。上海に住み、2000年代の大半、間違いなく最も急速に近代化した10年間に上海中を見て回り、それ以来定期的に上海を訪れている者として、私は新しいインフラやその他の目に見える変化に対して、あまりにあっけらかんとしすぎたり、あるいは色あせたと感じたりしないように警戒しなければならないようだ。
そのため、走り始めて10分か、15分ほど経った頃、ふと気がつくと、そこは市内に向かう見慣れた普通の高速道路ではなく、中央分離帯の上に高架線が浮かんでいる超高速磁気浮上式鉄道(ultra-fast magnetic levitation train)のある高速道路だった。待って欲しい、もしかして、上海は街に向かって2本目の高速道路を建設したのだろうか? 急に落ち着かなくなった私は運転手に尋ねてみた。この高速道路は経済の奇跡の一例ではない。ただ、今まで一度も乗ったことがなかっただけだった。
私は、上海滞在中に多くの会話をしたが、その中で、中国について考えるときに、目が覚めたりうんざりしたりする視点はどちらも正当ではないということを、初めてではないが思い出させられた。彼らの中には、学者やビジネスマンなどの外国人と一緒に過ごした人もいる。外国人の間では、経済の減速、急速な高齢化と人口減少、変化に非常に抵抗しているように見える政治スタイル、緊張と競争の激化する地政学的環境など、中国の増大する課題について議論する傾向が高まっている。しかし、外国人で私が会った人たちは往々にして、中国には、更なる経済成長と世界的な力を達成するための大きな風がまだ残っていると信じているようだ。
もう1つの会話は、より多く、私にとって興味深いものであったが、それは中国の若者たちとの会話であった。大人たちと若者たちの2つのグループについて、私は一般論を述べているが、後者について印象的だったのは、彼らが自分たちの将来についてどれほど心配しているかということだ。彼らの多くは、2000年代から2010年代にかけてピークを迎えた中国の黄金時代を過去のものと考えている。そして、この国のモデルが、ここ数十年のような規模で、経済的な進歩や個人的な充足の機会を提供し続けることができるのかどうか、疑念を抱いている。(こうした過去の成果を定量的に知るには、社会学者ワン・フェンの新著を取り上げた最近のコラムをお読みいただきたい)。
「私はとても心配している」とある若い男性が会話の中で私に語った。これは、他の人たちと私がした会話と同じような内容だった。この男性は続けた。「現在、良い仕事を見つけるのは本当に、本当に難しい。十代と二十代の人々に対する競争の圧力は巨大だ。同時に、命は非常に高価なものになった。このため、私と同じように、多くの人がこの国を離れたいと思っている。私の友人のほとんどもそうしたいと思っている」。
最近、若く、才能があり、教育水準が高く、裕福な中国からの移民が増えていることは、逸話的ではあるが、有力な証拠となっている。アメリカとメキシコの国境で最近見られる光景は、伝統的に農村部や都市部の貧困層が牽引してきた中国移民の歴史的な姿とは全く異なることを示している。国境を越えてアメリカに移住する中国人をテレビや紙面で取材すると、中流階級の人々の割合が高く、長年の教育の証である英語を話せるようになっていることが多い。
北京がこのことを心配し始めている兆候はたくさんある。例えば、中国は最近、少なくとも限定的な規模ではあるが、ワシントンと協力し、不法移民として摘発された自国民の空路での送還を受け入れるようになった。中国はもちろん、このような移民がもたらす、頭脳と資金の流出を懸念しているが、政治的な意味合い、つまり、国の方向性や統治に対する信頼の欠如が、いわば足で投票するような事態を引き起こしていることにも不安を感じているのではないだろうか。つまり、国の方向性と統治に対する信頼の欠如が、いわば足で投票することを引き起こしているのだ。もちろん、「移住(zouxian、ゾウシイァン)」移民にとっては、これはかなりの出費であり、個人的な苦難と危険を伴う。
もう1つの主な会話は、中国の学者たちとのもので、彼らは中国と先進諸国、特にアメリカとの間にますます緊張が高まっていることを指摘した。そのうちの1人が、戦後、高所得国の地位を獲得してきた国家の歴史とは、アメリカと良好な関係を維持してきた国々に限られている、と発言して私を驚かせた。この若い研究者は、北京はワシントンとのより良い関係を維持できなかったという根本的な間違いを犯していないだろうか、と声を大にして疑問を呈した。
この議論の間、私は議論を活発にするように、異論を唱える役割(devil’s
advocate)を果たそうとして、両国間の緊張は中国政府の行動の産物だけではなく、アメリカにも大きな責任がある、と述べた。私は、西側諸国の多くは、中国が第一級、更には傑出した大国になりたいと願うことがいかに普通なことであるかを理解できていないと付け加えた。このテーマについては、私が2017年の著書『天の下の全て(Everything Under the Heavens)』で取り上げた。この本の中で、私は、中国は世界の人口のおよそ5分の1を誇り(米国の人口は4%強)、その歴史のほとんどにおいて、中国は世界最大の、そして多くの意味で最も先進的な経済を誇っていたと指摘した。この若い学者は感情を露わにすることなく次のように述べた。「歴史なんてどうでもいい。私はいつでももっと良い外交戦術について考えたいのだ」。
これらの会話の最後に、私ははるかに年上の中国人学者に、米中両国間で激化するテクノロジー戦争(tech war)について尋ねた。この戦争において、アメリカは、中国による最も洗練されたマイクロプロセッサ製造装置や、Nvidiaのような企業の高度なグラフィックスチップ、人工知能テクノロジーへのアクセスを制限しようとしてきた。
この学者によれば、西側諸国は中国を大いに誤解しており、世界における中国の地位を過小評価しているという。このことは、北京がこれらの技術を独自に構築するために、更に努力し、最終的に勝利することを後押しするだけである。彼は、中国が全面的に勝つと予測している訳ではないと明言した。彼が私に言い残したのは、西側諸国からの反感は、北京が重要だと考えるあらゆる分野でリードしていきたいという、以前からの願望を助長するということだ。
中国は産業政策や国家主導の投資を倍増させるだろうと彼は言った。これらの多くは、長期的には見当違いであったり、非効率的であったりするだろう。しかし、国富(national wealth)だけでなく、人材(human talent)の面でも莫大な資源を持つ中国のような規模の国では、その多くが成功し、今後数十年にわたって欧米諸国の競争相手にやりたい放題になるだろう。私が確信を持って言えることは、私たちは皆、波乱に満ちた、コストのかかる、そしておそらく危険な道を歩むということだ。
※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern
World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench
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