古村治彦です。

選挙後のカマラ・ハリスとジョー・バイデン
アメリカ、特に民主党界隈では、「カマラ・ハリスは気の毒だった」という主張が出ている。私もその通りだと考える。佐藤優先生との対談『』は期せずして、「カマラ・ハリスの敗北分析」のようになったが、私たちが話していた内容が現在、カマラ・ハリスの敗北分析で言われている。
それでも、ハリスには気の毒な面が多かった。まず、選挙活動が実質3カ月ほどに限定された。ジョー・バイデンの高齢問題について注目が集まり、選挙戦からの撤退の声が大きくなったのが今年6月で、それまでは大統領選挙は無風状態で、トランプが有利という展開になっていた。大統領選挙候補者討論会で、一気にバイデンへの不安が噴出し、民主党側は火消しに躍起になっていたが、そのうちに、バイデンを諦めさせることが必要ということになり、バラク・オバマに「何とかしてくれ」という声が集まり、彼が引導を渡す形になったようだ。それが今年7月のことで、1カ月もの間、ぐずぐずしていたことになる。そして、「副大統領のカマラが良いのではないか」という空気づくりがなされて、「カマラ待望論」が無理やりつくられた。
そもそも、カマラ・ハリスは大統領選挙の候補者になるほどの資質を持った人物ではない。以下の論稿でネイト・シルヴァーが書いているように、「誰かの代わりになるくらいのレヴェル」であって、連邦上院議員でも彼女の資質だと持て余すくらいだと思われる。バイデンがハリスを副大統領に選んだのも、自分を脅かさないくらいの人物ということもあったと思われる。ハリスにとって大統領選挙候補者は荷が重すぎたということになる。そもそも、2020年の大統領選挙民主党予備選挙では、カマラ・ハリスは早々に撤退している。有力候補という見方をされていたのに、支持率が伸びなかった。民主党自体がカマラ・ハリスの資質について最初から見切っていた。自分の能力よりも上の仕事をさせられるのは気の毒なことである。
7月末からカマラ・ハリスは選挙運動を始めることになったが、選対は「居抜き」のような形で、それにバラク・オバマが自身の選対のスタッフだった人たちに声をかけて急ごしらえで整えられたものだ。これではまず一体感が出ない。バイデンのために一生懸命頑張ってきたというスタッフたちにとっては、「なんで能力もないカマラのために働かねばならないのか、自分はバイデンを大統領にするために頑張っている」ということになり、士気が上がらない。「トランプの大統領就任を阻止する」だけでは士気は上がらない。
更に言えば、バイデンは全く協力的ではなかったということも言えるだろう。バイデンはハリスの選挙運動にほとんど関わらなかった。「現政権の失敗と彼女とを結びつけるのはよくない」という言い訳はできるが、ハリスが副大統領である以上、バイデン政権を背負わねばならないのは当然だ。従って、バイデンは「自身の後継者」としてカマラ・ハリスを支援しなければならなかったが、それができていなかった。結果として、民主党側は盛り上がりに欠けた戦いになった。また、ハリスの候補者指名についても、結局、党の「ボス」たち、エスタブリッシュメントが空気づくりをして、手続きをすっ飛ばして決めてしまったことで、「非民主的」という批判を受ける口実を与えることになった。
カマラ・ハリスは負けるべくして負けた。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ということになる。
(貼り付けはじめ)
ネイト・シルヴァーがバイデンは「代わりの人レヴェル」の候補者カマラ・ハリスに対して「何の助けも」しなかったと発言(Nate Silver says Biden did ‘no favors’ for ‘replacement-level’
candidate Harris)
アシュレイ・フィールズ筆
2024年11月15日
『ザ・ヒル』誌
by Ashleigh Fields - 11/15/24 10:57 PM ET
https://thehill.com/homenews/campaign/4993995-nate-silver-says-biden-did-no-favors-for-harris-bid/
世論調査専門家のネイト・シルヴァーは、ジョー・バイデン大統領が今夏の大統領選からの撤退前後に「彼女に手を貸さなかった(did her no favors)」ため、トランプ次期大統領に敗北したハリス副大統領に「大きな同情(a lot of sympathy)」を抱いていると述べた。
シルヴァーは金曜日に自身のウェブサイトに投稿し、ハリス副大統領が在任中に注力したことについて、「おそらく民主党が最も苦手とする国境問題や、ホワイトハウスがおそらく進展がないと分かっていたであろう投票権問題など、バイデンはハリスに厳しい課題を与えた」と書いた。
シルヴァーは「バイデンは、討論会のスケジュールを空白にし、9月11日以降、ハリスが最も得意とする討論会であったにもかかわらず、何も予定を入れなかった。最後まで、バイデンは彼女のメッセージを踏みにじった」と書いた。
しかし、シルヴァーは、この感情がハリス候補に対する一部の肯定的な見方を歪め、彼女は 「代替レヴェルの政治家(replacement-level politician)」であり、トランプを打ち負かすには「平均か平均より少し上(average or slightly above average)」の人物が必要だったと述べた。
シルヴァーは、11月の投票での民主党の連邦上院議員候補者たちに比べてハリスの成績が劣っていたことを挙げ、「人々はハリスの立場に対する同情を、彼女が良い候補者だったことと混同していると思う」と書いた。
シルヴァーは「計算してみると、ハリスは民主党上院候補と比べて、平均2.6ポイント、中央値で2.4ポイント下回った」と書いている。
シルヴァーによれば、ハリスの劣勢の理由には、メッセージ発信の問題、バイデンとの差別化を「拒否(refusal)」したこと、2020年の最初のホワイトハウスを目指した予備選挙と、2024年の直近の千四の間で彼女のスタンスが変化したことなどが含まれるという。
シルヴァーは「彼女は今回の選挙戦で中道(the center)に軸足を移そうとしたのだろうが、なぜ以前の立場を捨てたのか、彼女の政策課題が実際にどのようなものなのかについての説明が不足していたため、せいぜい不器用な努力をしているだけのことだった」と書いている。
それでも、シルヴァーは、バイデンが選挙戦を続けていれば負けていただろうと主張し、内部世論調査でトランプが400人の選挙人を獲得したとの報道を引き合いに出した。
シルヴァーは「バイデンが選挙戦から撤退したとき、バイデンは全米世論調査の平均でドナルド・トランプに4ポイント差をつけられていた。最終的な票差は、良くなるどころか、悪くなっていたと思う」と書いている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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