古村治彦です。
第二次ドナルド・トランプ政権の顔ぶれがほぼ固まりつつある。注目すべきなのは、連邦通信委員会(FCC)委員長にブレンダン・カー、商務長官にハワード・ラトニックを指名したことだ。両者の共通点は、トランプ周辺世界で存在感を増し続けている、イーロン・マスクの盟友であるという点だ。マスクは、財務長官候補として、ラトニックを推薦していたという報道もあった。ブレンダン・カーはマスクの衛星による通信サーヴィス「スターリンク」を称賛している。
ブレンダン・カー
ハワード・ラトニック(左端)とイーロン・マスク(右端)
ラトニックはトランプの政権移行ティームの共同議長を務めていることから、財務長官の有力候補であったが、商務長官に落ち着いた。商務長官は関税を担当することになる。トランプの中国製品への60%の関税、他の国々からの輸入品には20%の関税という主張をラトニックは支持しているため、その実現のために動くだろう。アメリカ国内の製造業を活性化して、雇用を生み出すための関税引き上げということになるが、これは同時に、アメリカ国内の物価上昇を招く危険性もある。ここをどのように差配していくかが注目される。
ブレンダン・カーの連邦通信委員会委員長就任は、ビッグテック(Big Tech、グーグル、アップル、メタ[旧フェイスブックス]、アマゾン、マイクロソフトの5社)への宣戦布告ということになる。ビッグテックに関しては、インターネット上に流れる内容に関しての責任追及と情報の独占と個人情報の独占的利用に対しての批判が起きている。
アメリカの通信品位法第230条は、インターネット上の情報の自由を重視し、プロバイダや利用者の責任を限定する制度だ。具体的には、「プロバイダは、第三者が発信する情報について原則として責任を負わない。有害なコンテンツに対する削除等の対応に関し責任を問われない対話的コンピューターサービスの提供者や利用者は、情報コンテンツ提供者が提供する情報の発行者や表現者とはみなされない」というもので、プラットフォーム(フェイスブックやインスタグラムなど)に利用者が載せた内容について、プラットフォーム運営会社やプロバイダは責任を問われないというものだ。これに対しては訴訟が起きている。
ビックテックに関しては情報通信の「寡占(oligopoly)」が問題になっている。独占禁止、反トラストの立場から、ビッグテックを解体せよと訴える人たちは多い。2021年に連邦取引委員会委員長に就任したリナ・カーンはその急先鋒だ。また、私が翻訳した『ビッグテック5社を解体せよ』(徳間書店、2021年)の著者で、ミズーリ州選出の連邦上院議員ジョシュ・ホウリーも独占禁止の観点から、ビッグテック解体を主張している。この戦列に、ブレンダン・カーも加わることになる。
ブレンダン・カーの連邦通信委員会委員長就任、ハワード・ラトニックの商務長官就任で、一番「得をする」のはイーロン・マスクだ。イーロン・マスクのSNSサーヴィス「X(旧ツイッター)」のライヴァルはビッグテックであり、電気自動車(EV)メーカー「テスラ」のライヴァルは、中国のEVメーカーであるBYDである。今回の布陣は、マスクのビジネスにとって助けとなるものだ。
私は、今回の大統領選挙の最大の勝利者はイーロン・マスクだと考えてきた。皮肉に見えるが、そのことをマスクが所有する「X」で11月8日に書いた。
イーロン・マスクはアメリカ国内にイーロン・マスク帝国を築こうとしている。彼の武器は、「情報通信(スターリンクとSNSのX)」と「EV」だ。EVもインターネットにつなぐということを考えると、彼の帝国は「情報帝国」ということになる。それを、関税の城壁を築いたアメリカ国内で築こうとしているのだろうと思う。マスクはトランプを利用して、自身の「皇帝」としての地位を築こうとしているのだろう。トランプはそのことに気づいているのか、気づいて許しているのか、そこのところはよく分からない。
(貼り付けはじめ)
トランプの連邦通信委員会委員長の選択について知っておくべき5つのこと(5 things
to know about Trump’s FCC pick)
ミランダ・ナザロン筆
2024年11月18日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/technology/4996396-5-things-to-know-about-trumps-fcc-pick/
ドナルド・トランプ次期大統領は連邦通信委員会(Federal
Communications Commission、FCC)の次期委員長にブレンダン・カーを指名し、委員会が保守的な見解を「検閲している(censoring)」として、カーが非難したビッグテックやメディア企業との衝突の可能性を高めている。
FCCは、テレビ・ラジオ放送、電話、インターネット・サービス・プロヴァイダー、人工衛星を規制する独立機関である。
2017年からFCC委員を務めるカーは、テック企業や放送会社の自由に関して、FCCに劇的な変化をもたらそうとする可能性があると専門家は指摘している。
カーについて知っておくべきことを挙げていく。
(1)FCCにおいての10年を超える経験(More than a decade of FCC experience)
カーの FCC での歩みは、10年以上前の2012年にスタッフとして採用されたところから始まった。カーは2017年にFCCの法務顧問に就任するまでの3年間、元FCC委員長アジット・パイ(共和党)の法律顧問を務めた。
トランプ大統領は2017年にカーを委員に任命し、バイデン大統領によって再び指名され、2029年までの任期を務めることになった。FCCは連邦法により、1つの政党から3人以上の委員を出すことはできない。
カーは近年、ソーシャルメディアを利用してバイデン政権の政策に対する懸念を表明し、共和党政権下で追求すべき代替案について議論することで、ネット上で支持を集めた。
トランプ次期大統領は日曜日、カーは「アメリカ人の自由を抑圧し、私たちの経済を抑制してきた規制戦争と戦ってきた」と述べた。
「彼は、アメリカの雇用創出者と革新者を苦しめてきた規制の猛攻撃に終止符を打ち、FCCがアメリカの地方(rural)に貢献することを確実にする」と付け加えた。
FCC次期委員長カーは、主要なインターネット・サービス・プロヴァイダーに対し、そのネットワークを通過する全ての情報を平等に扱うよう強制するネット中立性規則を撤回するようパイ前委員長が推進した際、パイ委員長と緊密に協力した。
2015年に初めて承認されたこの規則は、2017年にパイのリーダーシップの下で廃止された。FCCは今年初め、民主党のジェシカ・ローゼンウォーセルFCC委員長のリーダーシップの下、規則の復活を決議した。
ローゼンウォーセル委員長が退任した場合、反対党の大統領が就任した場合の慣例として、トランプ大統領は別の委員を任命し、共和党が多数派となり、ネット中立性規則が再び削減される可能性がある。
ローゼンウォーセルは月曜日の声明でカーを祝福した。
ローゼンウォーセルは「カー委員長がFCCに入ってから、私はカー委員がスタッフ、この新しい役割の責任、そして通信におけるアメリカの継続的なリーダーシップの重要性に精通していると確信している」と書いている。
(2)ビッグテックと放送ネットワークを批判(Critic of Big Tech,
broadcast networks)
大手ソーシャルメディア企業に対して厳しい批判者であるカーは、特に230条免責条項が連邦議会によって後退させられた場合、ビッグテックの権力を抑制しようとすると予想される。
カーは、トランプ勝利の直後に優先事項を示し、声明の中で次のように書いている。「政権移行が完了すれば、FCCはビッグテックを抑制し、放送局が公共の利益のために運営されることを保証し、経済成長を解き放つと同時に、私たちの国家安全保障上の利益を促進し、法執行を支援する重要な役割を担うことになるだろう」。
またカーは先週、「検閲カルテル(censorship cartel)は解体されなければならない」と述べ、特定の視点を抑圧する「中心的な役割(central role)」を担っているとされる大手テック企業を非難した。
トランプ大統領は日曜日、カーを言論の自由の「戦士(warrior)」と呼び、このアプローチを称賛している。
FCCに関するアドヴァイスを行っている「テレコミュニケイションズ・ラー・プロフェッショナルズ」のマネージング・メンバーであるマイケル・ラザルスは、大手テック企業の抑制がカーにとっての最優先事項になるだろうと予測した。
ラザルスは、「カーは、保守的であろうとリベラルであろうと、ビッグテックに対する透明性ルールが平等であることを確認するために、何らかの形でビッグテック企業を抑制することを強く主張している」と述べている。
カーは、優遇措置の疑いがあるテレビ局に対しても同様の取り締まりを示唆している。
今月初め、ハリス副大統領が選挙前の「サタデー・ナイト・ライブ」に出演した際、カーはNBCがFCCの「イコール・タイム・ルール(equal time rule)」を「回避(evade)」しようとしていると主張した。NBCはその後、トランプからの短いメッセージを放送し、次期大統領に平等な時間を提供した。
カーによる放送ネットワークへの関心も、NBCは自分にとって公平ではないと主張し、FCCにCBSとABCの放送ライセンスを剥奪するよう求めているトランプによる批判の継続とみなされる可能性が高い。
トランプが取り締まると脅しているコムキャストは、カーのリーダーシップを 「歓迎する」と述べ、彼には「成功した実績を持っている」と述べている。
(3)「プロジェクト2025」のFCCセクションを執筆 (Wrote the FCC section of Project 2025)
カーは昨年夏、保守派のヘリテージ財団が第二次トランプ政権の政策青写真として作成した「プロジェクト2025」において、FCCの政策課題に関する項目を執筆し、民主党から批判を浴びた。
トランプ次期大統領はこのプロジェクトから距離を置こうとしているが、民主党はトランプと執筆者たちとの関係を繰り返しターゲットにしている。
カーのセクションは、ウェブサイトやソーシャルメディア企業が、ユーザーが投稿したコンテンツに対する責任を問われないよう保護する連邦法第230条の撤回を主張した。
FCCはソーシャルメディア企業が第230条に基づいて享受している「広範な非テキスト免除(expansive, non-textual immunities)」を廃止する命令を発行すべきだとカーは書いた。
カーは、「裁判所は第230条を広く解釈し、一部の世界最大手企業に法文のどこにも見当たらない全面的免責権(sweeping immunity)を付与している」と述べた。
カーは更に「彼らは、インターネット企業が第230条の恩恵を受け続けながら実行できる行動の種類に対して連邦議会が課した制限を無効にする方法でこれを行った」と述べた。
第230条の改正は何年も前から検討されてきた。国家電気通信情報局による請願は、バイデン大統領の勝利直前の2020年7月に第230条の規定を明確にするよう提出されたが、依然としてFCCに対して係争中である。
フィックス・ギア・ストラテジーズのCEOでパイの元側近であるネイサン・リーマーは、本誌の取材に対して、「カーにとっての最初のステップは、その嘆願書を検討することであり、その嘆願書は第230条におけるFCCの役割に含まれるものだと思う。それがFCCの範囲内であると解釈されたことは一度もないが、本物の弁護士であるこの分野の多くの専門家にとっては、ここに事件がある」と語った。
(4)イーロン・マスクの盟友の一人(An Elon Musk ally)
カーはハイテク億万長者イーロン・マスクの最も著名な同盟者の一人で、スペースX社の衛星サービス「スターリンク」に対する連邦賞の授与を提唱している。
カーは先月、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の論説において、地方の家庭や企業への高速インターネットに対するスターリンクへの8億8500万ドルの報酬をFCCが取り消したことを取り上げた。
カーは次のように書いている。「私の見解では、これは左派のトップターゲットの一人であるマスク氏に対する規制法に他ならない。方向転換する時期はある。プログラムの DEI 要件、価格管理、テクノロジーの偏見、政府運営のネットワークに対する優先順位を取り除くのに遅すぎるということはない」。
マスクは現在、トランプの最も強力な同盟者の一人であり、次期大統領が政府効率委員会(government
efficiency panel)のリーダーに選んだ人物であり、カーのリーダーシップから利益を得る可能性がある。
ラザラスは「アメリカでのブロードバンド導入とブロードバンド展開の促進に関しては、カーが衛星や新技術に対してはるかに好意的であることが分かると思います」と語った。
(5)法律業界は彼の計画に疑問を持つ(Legal industry questions
his plans)
法律専門家の一部は、カーの提案は現実的ではないか、FCCの権限に該当しない可能性があり、連邦議会の承認が必要になると懸念を表明した。
ラザラスは、「カーは、放送局による違反の有無、放送局が公共の利益に基づいて運営していないかどうかについて、注意深く監視することになると思う」と語った。
ラザラスは続けて、「しかし、ライセンスを剥奪すべきかどうか検討するなど、この種のより大げさなアイデアに関しては、それはかなり大げさだと考えられるし、私たちがそうするつもりはない。そのような性質のものは何も見られないと思う」と述べた。
FCCの元首席補佐官で投資調査会社ニューストリートの政策顧問を務めたブレア・レヴィンは、ビッグテック企業に対するカーの潜在的な権限に冷や水を浴びせた。
レヴィンは次のように語っている。「突然、FCCは、テクノロジーを規制する権限を手に入れた。それは法律に反すると思う。また、特定の決定を連邦議会が決定しなければならないという近年の最高裁判所の判例にも明らかに矛盾している」。
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●「FCCは「検閲カルテル解体を」-トランプ氏が委員長に起用のカー氏」
Kelcee Griffis
2024年11月19日 16:33 JST
ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-19/SN6AQET1UM0W00
・マスク氏とも懇意でXを多用、コンテンツ選択巡り異議唱える方針
・放送局も標的になる公算大-公益のための運営義務を執行とカー氏
トランプ次期米大統領が連邦通信委員会(FCC)委員長に起用するブレンダン・カー氏は大手テクノロジー企業や放送局によるコンテンツ選択を巡り異議を唱える方針だ。
起用が発表された直後の17日遅く、カー氏(45)はソーシャルメディアX(旧ツイッター)で、FCCに対し「検閲カルテルを解体し、米国人の日常の言論の自由を回復する」よう求めるなど要求を立て続けに投稿した。これはフェイスブックなどのソーシャルメディアによる不快とみなされるコンテンツの制限について言及している可能性が高い。
カー氏は他のFCC当局者とは異なり、トランプ氏支持者として有名なイーロン・マスク氏が所有するXへの投稿を気ままに行うことで知られる。同氏はマスク氏がXを買収する前からソーシャルメディアの影響力を活用してきた。
カー氏はまた、トランプ氏の返り咲きをマスク氏が支持するはるか前から同氏と足並みをそろえていた。カー氏はFCCの規則が低軌道衛星群などの新興技術よりも光ファイバーのようなインターネット配信テクノロジーを優先していると主張し、警鐘を鳴らしていた。マスク氏のスペースXはこれらの衛星を軌道に打ち上げる予定で、そのためにはFCCの承認を得る必要がある。
保守派はソーシャルメディア企業が新型コロナウイルスを巡る偽情報など問題視される投稿を削除していることを長年批判してきた。カー氏は昨年の議会証言で「インターネット企業に圧力をかけ、米国人の保護された言論を検閲させる現政権のキャンペーン」を批判。2022年には「大手テクノロジー企業が特定の政治的発言や見解を検閲することを禁じる」テキサス州の州法を支持した控訴裁判所の判決を称賛した。
カー氏は、ブロードバンドプロバイダーに全てのトラフィックを同じように扱うよう義務付ける、いわゆる「ネットの中立性」に関する規則には反対している一方、オンラインプラットフォームに対しては、基準に違反したとして削除される可能性がある投稿について中立性の義務を負うべきだと提案している。
また検索結果を操作したり、ユーザーアカウントを禁止または停止したり、コンテンツ制作者を「一見して一貫性なく」収益化できないようにしたりしているとして、グーグルやフェイスブック、ユーチューブなどのプラットフォームにもブロードバンドに関する透明性開示を適用するよう求めた。
放送局もカー氏の標的になる可能性が高い。
カー氏は18日の投稿で「放送メディアは希少かつ貴重な公共資源である電波を利用する特権を得てきた」とし、「その見返りとして、放送局は公共の利益のために運営することが法律で義務付けられている。政権移行が完了すれば、FCCはこの公益義務を執行することになる」とコメントした。
さらにテクノロジー企業やメディア企業に新たな義務を課すとともに、インターネットインフラを大量に活用しているプラットフォームに課金することも提案した。これは、ブロードバンドインフラの拡張や低所得者層の電話やインターネット利用の支払いを支援するFCCのユニバーサルサービス基金の強化につながるもので、AT&Tなどの企業が支持している。
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トランプ大統領、商務長官にハワード・ラトニックを選出すると予想(Trump
expected to pick Howard Lutnick for Commerce secretary)
アレックス・ガンギターノ、ブレット・サミュエルズ筆
2024年11月19日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/4997898-trump-howard-lutnick-commerce/
ドナルド・トランプ次期大統領は商務長官にハワード・ラトニックを指名する見通しだ。複数の関係者が本誌に述べた。
ラトニックはカンター・フィッツジェラルド社の会長兼最高経営責任者(CEO)であり、現在はトランプ政権移行ティームの共同議長も務めている。ラトニックは特に、トランプ大統領の関税計画を公に支持しており、これは商務部門を率いる仕事の主要な部分を占めることになる。
トランプ大統領は火曜日午後の発表で人選を正式に発表し、ラトニックが「米通商代表部に対する追加の直接責任を持ち、関税と貿易の議題を主導する」と述べた。
ラトニックは、トランプ陣営で経済顧問を務めたスコット・ベッセントとともに、商務長官の最有力候補とみなされていた。
ラトニックはまた、商務省を率いる役割において、リンダ・マクマホンを破った。トランプ政権移行ティームの共同議長であるマクマホンは最有力候補とみなされており、第一次トランプ政権において、中小企業庁を率いていた。
最近、経済の重要な役割を誰が担うかをめぐる争いが国民の目にさらされる中、トランプ大統領は財務長官についての関心を高めた。億万長者のハイテク界の大物イーロン・マスクは今週末、ベッセントよりもラトニックを支持した。
ラトニックはトランプ大統領の長年の友人であり、仮想通貨の著名な支持者である。彼は、世界貿易センターで 600人以上の従業員が殺害された911事件に対するカンター
フィッツジェラルドの対応を監督した。
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トランプが商務長官に指名したハワード・ラトニックについて知っておくべきこと(What
to know about Howard Lutnick, Trump’s pick for commerce secretary)
ファティーマ・フセイン(AP通信)筆
2024年11月19日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/ap/ap-business/ap-what-to-know-about-howard-lutnick-trumps-pick-for-commerce-secretary/
ワシントン(AP通信)発。ドナルド・トランプ次期大統領は、証券・投資銀行カンター・フィッツジェラルド社代表で暗号通貨支持者のハワード・ラトニックを商務長官に指名した。
この指名により、ラトニックは、新しいコンピューター・チップ工場への資金提供、貿易制限の発動、経済データの公表、天候の監視などに関与する、広大な内閣機関の責任者となる。また、各企業の最高経営責任者(CEO)や広範なビジネス・コミュニティーとのつながりが極めて重要なポジションでもある。
トランプ大統領の政権移行ティームの共同議長であるラトニックは、第一次トランプ政権の中小企業庁を率いていた元プロレス団体幹部のリンダ・マクマホンとともに、かつてトランプ大統領のNBCリアリティ番組「アプレンティス」に出演していた。彼は次期大統領の側近となっている。
上院で人事承認されれば、商務省を率いることになるこの億万長者について知っておくべきことをこれから挙げていく。
(1)イーロン・マスクが財務省長官に推した人物(He was Elon Musk’s
pick to lead the Treasury Department)
イーロン・マスクをはじめとするトランプ大統領周辺の人々は先週、トランプ大統領に対し、財務長官の最有力候補であるスコット・ベッセントを捨て、ラトニックを選ぶよう求めた。マスクは投稿の中で、「ベセント氏は通常通りの選択だが、ハワード・ラトニック(@Howardlutnick)氏は実際に変化を起こすだろう」と述べた。
財務省の役割は、トランプの側近グループでも異例の注目を集める争奪戦の中心となっている。同時に、この役職は金融界で注視されており、破壊的な候補者が指名されれば、トランプ大統領が注視する株式市場に直ちに悪影響を及ぼす可能性がある。トランプ大統領は、内閣の残りの空席のうち上位の1つをまだ決めていない。
残る主な候補者は、ベセント、ケヴィン・ウォーシュ元連邦準備理事会(FRB)理事、アポロ・グローバル・マネジメント社のマーク・ローワンCEO、テネシー州選出のビル・ハガティ連邦上院議員(第一次トランプ政権の元駐日本米大使)だ。
(3)ラトニックはトランプ大統領の関税案の主要な支持者だ(He is a major
supporter of Trump’s tariffs plan)
トランプ大統領は選挙戦で、中国からの輸入品に60%の関税をかけ、それ以外の米国の全輸入品には最大20%の関税をかけることを提案した。選挙戦では、トランプは輸入品への課税を、より良い貿易条件を打ち出すための交渉手段であると同時に、他の減税の財源を確保するための財源捻出手段でもあるとしていた。
広範な関税を課すことを主張するラトニックは、9月のCNBCのインタヴューで、トランプの関税計画を全面的に支持した。ラトニックは、「関税は大統領にとって素晴らしい手段だ。そして、私たちはアメリカの労働者を守る必要がある」と語った。
主流の経済学者たちは、一般的に関税に懐疑的で、政府が資金を調達し繁栄を促進するための非効率的な方法だと考えている。
(4)ラトニックの弟と数百名の従業員が911のテロ攻撃で殺害された(His
brother and hundreds of Cantor employees were killed in the September 11th
terrorist attacks)
ラトニックの弟ゲイリー・ラトニックと全従業員960名のうちの658名が2001年9月11日のワールドトレードセンターへの攻撃で殺害された。ラトニックの会社はその日だけで従業員の3分の2を失った。ラトニックは、国立9月11日記念館・博物館、パートナーシップ・フォ・ニューヨーク・シティの理事会のメンバーである。
2013年にカンター・フィッツジェラルド社がアメリカン航空と保険会社を相手取って起こした不法死亡と人身傷害の訴で、1億3500万ドルで解決した後、ラトニックは次のように語った。「私たちは、この和解を決して平凡なものとは考えられないし、今後も考えることはないだろう。私たちにとって、この妥協案を普通、公正、合理的などという適当な言葉で表現することはできない。私たちが言えるのは、この問題の法的形式が終わったということだけだ」。
トランプ大統領が火曜日に発表した商務長官指名に関する発表では、ラトニックが経験した喪失について触れ、彼は 「言語に絶する悲劇に直面した際の回復力の体現者(the embodiment of resilience in the face of unspeakable tragedy)」であったと述べた。
(5)彼は暗号通貨の主要な支持者だ(He’s a major supporter of
cryptocurrency)
ラトニックは暗号通貨産業、すなわち暗号通貨テザー(cryptocurrency
Tether)の目的を推進する支持者だ。
暗号通貨は、グローバルな銀行システムに依存することなく、インターネット上で取引できるデジタルマネーの一形態だ。ビットコインは最も人気のある暗号通貨である。
ラトニックは今年初めのビットコイン会議で次のように述べた。「ビットコインは金のようなもので、世界中どこでも自由に取引されるべきだ。世界最大の卸売業者(wholesaler)として、私たちはそのために全力を尽くすつもりだ。ビットコインは、例外なく、制限なく、世界中のあらゆる場所で金と同じように取引されるべきだ」。
トランプ大統領は、5月に選挙戦に向けて「仮想通貨軍団(crypto army)」と呼ばれる組織を構築する取り組みの一環として、仮想通貨での寄付の受け付けを開始すると発表して以来、仮想通貨に対して好意的な見方を示している。トランプはまた、今年初めに家族とともにワールド・リバティ・フィナンシャルという仮想通貨プラットフォームを立ち上げた。
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●「米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉に」
By Alexandra Alper
2024年11月22日午後 12:39 GMT+91日前更新
https://jp.reuters.com/world/us/EV5W7FLYZZMKVLQNFY5GOSQ4P4-2024-11-21/
[ワシントン 20日 ロイター] - トランプ次期米大統領が商務長官に指名した実業家ハワード・ラトニック氏を巡り、中国との関係がやり玉に挙がっている。
同氏率いる金融サービス企業には、中国国有の中国人民保険集団を筆頭株主とする中誠信託との間で合弁会社を持つBGCグループや、中国企業の米国上場を支援したキャンター・フィッツジェラルドが含まれる。
議員や専門家はこれらの企業を通じて中国との関係から利益を得ているラトニック氏について、米通商代表部(USTR)にも「直接的な責任」を負う商務長官として中国に新たな関税や輸出規制を課すかどうかの決断を下す際に影響を受けかねないと指摘する。
上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党)は「ラトニック氏の中国における利益相反は相当なものだと思われる。米国民は中国政府から給料をもらっている人物に対し、働く米国民のために中国との競争条件を公平にする手助けを期待できるのだろうか」と疑問を呈した。
キャンター・フィッツジェラルド、トランプ政権移行チームからはコメントを得られていない。
米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉に
トランプ次期米大統領が商務長官に指名した実業家ハワード・ラトニック氏(写真)を巡り、中国との関係がやり玉に挙がっている。資料写真、ニューヨークで10月撮影(2024年 ロイター/Andrew Kelly)
ラトニック氏はBGCのウェブサイトに21日掲載した声明で、指名が承認されれば、同社とキャンター・フィッツジェラルドの職務を退くと表明。
「米政府の倫理規則に準拠するため、これら企業の権益を売却するつもり」とし、市場で売却することは見込んでいないとした。
ワシントン大学セントルイス校のキャスリーン・クラーク教授(政府倫理学)は、ラトニック氏は実質的に中国政府の「ビジネスパートナー」だと指摘。「これは中国政府が商務長官に対して影響力を持つとの懸念を強めるものであり、最悪の場合、外国政府に支配権を明け渡すことになる」と語る。
BGCグループは、中誠信託との合弁会社の株式33%(約2800万ドル相当)を保有している。ウェブサイトによると、合弁会社は2010年に北京で初の為替取引仲介業者として営業許可を得て、国内外の為替・短期金融・債券・デリバティブ(金融派生商品)市場の仲介やデータサービスを提供している。
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キャンター・フィッツジェラルドは昨年、中国バイオテクノロジー企業である阿諾医薬(アドレー・ノーティ)(ANL.O)のナスダックIPO(新規株式公開)を引き受けた。中国が海外上場前に特別な申請書を取得することを国内企業に義務付ける新ルールを導入して以来、初めて上場に成功した中国企業だ。
(貼り付け終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ
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