古村治彦です。
ドナルド・トランプ次期政権の人事構想もだいぶ固まってきた。今回のトランプの政権移行ティームに大きな影響を与えているのが、イーロン・マスクである。イーロン・マスクは、今回の大統領選挙でトランプを積極的に支援し、選挙資金の提供や選挙集会での演説など、様々な活動を行った。マスクはトランプ勝利に賭けて、結果的に勝利した。イーロン・マスクはトランプに影響を与えられる、自分の意見や意向を申し述べられる立場になった。マスクはトランプの家族写真にも一緒に入ることを許されるほどで、今回の選挙の最大の勝利者はイーロン・マスクということになるだろう。
トランプの家族とイーロン・マスクの家族
今回、イーロン・マスクがあいつのことは気に入らないとなって、「お前が陣営の情報を色々とリークしているんだろう」と怒鳴り上げた相手がボリス・エプスタインという、ロシア生まれのトランプの顧問弁護士だ。ボリスは、トランプの息子エリックとジョージタウン大学で知り合い、トランプに紹介されたということだ。2016年のトランプ選対のコミュニケイション担当スタッフとなり、それ以来、トランプの側近グループに入っているようだ。トランプの抱える訴訟でも弁護を担当している。2020年の大統領選挙後に、選挙結果を覆そうとしたという容疑では、共謀者として名前が挙がっている。マスクに比べれば、トランプの側近歴は長い。
ドナルド・トランプとボリス・エプスタイン
イーロン・マスクは、トランプ政権に影響を与え、自身の利益を確保しようとしているように見える。マスクが主張したのは、今回、商務長官に指名されたハワード・ラトニックの財務長官指名だった。ラトニックか、スコット・ベセントかという最終決断になって、ベセントが財務長官になった。その前に、ラトニックが商務長官に指名されたので、ベセントの指名はほぼ決まったようなものだった。マスクの意向は実現しなかったことになる。これに対してマスクはフラストレイションを高めたことだろう。そして、「マスコミに情報が洩れて、ラトニックの名前が出たことで、財務長官になれなかった」と考えるようになったのだろうと思う。そして、トランプ陣営で一番情報が集まってくるのが顧問弁護士で選対幹部のエプスタインが犯人だということになったのだろう。
エプスタインが実際に情報リークの犯人なのかはわからない。エプスタインにとっては、マスクに対抗して、マスクの意向をつぶせるくらいのことはできるとマスクに思わせることが重要だ。それだけ選対、側近の中で力があるということになる。また、黒幕というのは表には出てこないものだ。エプスタインは、ロシアで生まれ育ち、ロシアだけではなく、ウクライナにも親戚がいるので、ウクライナ戦争停戦の特使をやらせて欲しいとトランプに訴えているという話もある。彼自身は弁護士であって、これまで外交の経験はない。しかし、ウクライナ戦争停戦に関わることができれば、トランプの信頼も厚くなり、政権内での力を高めることができるという計算もあるのだろう。
トランプ選対は、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」系、アメリカ・ファースト政策研究所系、側近系といったグループに分かれており、それぞれで主導権争いが起きている、もしくはこれから起きるということになるだろう。動きを注視していくことだ大切だろう。
(貼り付けはじめ)
トランプのアドヴァイザーであるボリス・エプスタインとは誰か? そして、エプスタインはどうしてイーロン・マスクと衝突したのか?(Who Is Trump Adviser Boris Epshteyn, and Why Is He Clashing With
Elon Musk?)
2024年11月18日
『ニューズウィーク』誌
https://www.newsweek.com/boris-epshteyn-elon-musk-donald-trump-1987669
ドナルド・トランプ次期大統領の長年の顧問弁護士であるボリス・エプスタインが、トランプの新しい盟友である億万長者のイーロン・マスクと衝突したと言われている。
新政権の閣僚人事をめぐり、エプスタインとマスクの間に緊張が表面化した。複数の情報提供者が『アクシオス』誌に語ったところによると、2人はトランプのクラブ「マー・ア・ラーゴ」で激論を交わしているところを目撃されたという。
ニューズウィーク誌はトランプ、マスク、エプスタインの各代理人にコメントを求めた。
2024年11月14日木曜日にマー・ア・ラーゴで開催されたアメリカ・ファースト政策研究所のパーティーに出席したイーロン・マスク、2024年7月にウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された共和党全国大会に出席するトランプのアドヴァイザーを務めるボリス・エプシュテイン
●ボリス・エプスタインとはどんな人物か?(Who Is Boris Epshteyn?)
『ポリティコ』誌の報道によると、ロシア系アメリカ人のエプスタインはモスクワ生まれで、後にアメリカに渡ってきた。ジョージタウン大学で友人となったトランプの息子エリックを通じてトランプと知り合ったということだ。
エプスタインは2016年にトランプ選対に参加し、コミュニケイション担当のスタッフとなり、頻繁にテレビ出演し、トランプを擁護した。エプスタインはその後、トランプ大統領就任委員会のコミュニケイション担当部長を務めた後、2020年選挙活動では、連合担当アドヴァイザーとして参加した。
エプスタインは長年にわたりトランプ大統領の側近グループにおり、次期大統領の側近の筆頭格とみなされている。
2024年4月、トランプがビジネス記録の改ざん容疑に関する歴史的な罪状認否のためにニューヨークに到着した際、エプスタインは法廷でトランプ元大統領の横に座り、34の容疑について無罪を主張した。
●エプスタインはなぜイーロン・マスクと衝突しているのか?(Why Is
Epshteyn Clashing With Elon Musk?)
争いの始まりは、トランプ大統領が誰を閣僚に選ぶべきかをめぐってだったとアクシオスは報じている。
複数の情報提供者がアクシオスに語ったところによると、マスクはエプスタインがトランプの人事に影響力を持ちすぎているのではないかと疑問を呈していたという。しかし、マスクは自分のお気に入りの人物を政権に推薦しており、最近ではトランプの財務長官人事にも積極的だった。
マスクの存在感はますます大きくなっており、トランプの孫娘カイが次期大統領勝利後の家族写真で「おじさんの地位(uncle status)」に昇格したと語ったほどだ。
マスクはウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領との電話会談で次期大統領に加わったと報じられている。また、スペースXとテスラのCEOは選挙当日をトランプの自宅マー・ア・ラーゴで過ごし、共和党の勝利以来、マー・ア・ラーゴにほぼ常駐していると報じられている。
トランプ大統領はまた、連邦官僚制度の「解体(dismantle)」と人員削減を目的として、マスクを元共和党大統領候補ヴィヴェク・ラマスワミとともに政府効率省(Department of Government Efficiency、DOGE)のトップに任命した。
夕食会のある場面で、マスクがトランプ大統領の政権移行計画に関する詳細をリークしたとしてエプスタインを非難した後、「大激怒(massive blowup)」と「大爆発(huge explosion)」が起こった。エプスタインは、マスクが何を言っているのか分からないと発言したと言われている。
アクシオスによると、マスクとエプスタインの2人の間の緊張は、11月5日の選挙と迂回っ票日前から既にあったということだ。
●ボリス・エプスタインの純資産と経歴(Boris Epshteyn's Net
Worth and Career History)
エプスタインは弁護士兼投資銀行家であり、フォーチュンが報じたように、TGP
Securities Inc.に100万ドルから500万ドルの株式を保有している。
ロースクール卒業後、エプスタインはミルバンク、ツイード、ハドレー・アンド・マクロイの各法律事務所で金融業務に携わり、特に銀行融資、証券取引、私募を担当した。
2008年、ジョン・マケイン元連邦上院議員とサラ・ペイリン元知事の選挙キャンペーンでコミュニケイション担当補佐官を務めた。
2016年にはトランプ選対の上級顧問を務めた。
2024年5月16日木曜日、ニューヨークのマンハッタン刑事裁判所での公判中、ジェスチャーをするドナルド・トランプと顧問のボリス・エプシュテイン。エプシュテインは現在、トランプの新たな同盟者イーロン・マスクと争っているとされる
シンクレア・ブロードキャスト・グループは2017年にエプスタインを上級政治アナリストとして採用した。彼の契約期間は2019年に終了した。
2020年のトランプ大統領再選キャンペーンでは、エプスタインは、「ユダヤ人の声」トランプ諮問委員会の戦略顧問兼共同委員長を務めた。
●エプスタインと1月6日事件の関係(Epshteyn's Ties to January 6)
エプスタインは、トランプ前大統領に対する最新の刑事起訴に含まれる、6人目の共謀者(co-conspirator)と見られている。
ジャック・スミス特別検察官は、2020年の選挙と2021年1月6日の事件の連邦捜査に関連する4つの犯罪(アメリカを欺く共同謀議、市民の権利に対する共同謀議、公的手続きの妨害、公的手続きの妨害の共同謀議)でトランプを起訴した。
共同共謀者のうち5人は、公開されている情報、引用、会合の日付など、起訴状の手がかりから特定できた。
6人目の共謀者とされる人物は現在、エプスタインであると考えられている。エプスタインは、2020年にトランプがジョー・バイデンを破ったと虚偽の宣言をするために、いくつかの主要な州に偽の選挙人を設置する計画の中心人物と言われている。
2020年12月、エプスタインからトランプの元弁護士ルディ・ジュリアーニに送られた電子メールが、トランプの起訴状に詳述されているものと一致した。エプスタインからジュリアーニとジュリアーニの息子アンドリューに送られたメールには、「選挙人のための弁護士メモ」という件名が書かれていたと『ニューヨーク・タイムズ』紙は報じている。
2022年、エプスタインはジュリアーニ、シドニー・パウエル、トランプのアシスタント、ジェナ・エリスとともに、1月6日のテロを調査する連邦下院特別委員会に証拠を提出するよう召喚された。
エプスタインはまた、1月6日の攻撃に至るまでの出来事に関する連邦捜査の一環として召喚され、捜査の一環としてFBIに携帯電話を押収された。
2024年4月、エプスタインはアリゾナ州の偽選挙疑惑に関与した疑いで起訴された
(貼り付け終わり)
(終わり)

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