古村治彦です。
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 第二次ドナルド・トランプ政権の農務長官にブルック・ロリンズが指名された。ロリンズは第一次トランプ政権で国内政策会議(Domestic Policy Council)の実質的な責任者を務めた。政権最終盤では国内政策会議委員長代理を務めた。ジョー・バイデン政権では、スーザン・ライス、ニーラ・タンデムといった大物が国内政策会議委員長を務めている。ロリンズは、第二次トランプ政権で農業分野を監督する農務長官に就任することが決まった。歴代政権では多くの場合、農業州出身の知事や連邦議員が農務長官に指名されることが多かった、ロリンズはテキサス州の出身で、テキサス農工大学では農業開発で学士号を取得し、テキサス大学のロースクールを修了している。農業分野に関しては適任の人事ということになる。
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ドナルド・トランプとブルック・ロリンズ
 第一次トランプ政権終了後、ブルック・ロリンズは、2020年創設のアメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy InstituteAFPI)の所長兼最高経営責任者(CEO)を務めてきた。ロリンズは、副理事長のラリー・クドロー(第一次トランプ政権で国家経済会議委員長を務めた)と共に、AFPIの重要人物となった。このAFPIには、第一次トランプ政権の主要な人物たちが入っている。理事長のリンダ・マクマホン(第一次トランプ政権では中小企業庁長官、トランプ・ヴァンス政権移行ティーム共同議長、第二次政権では教育長官に指名)、理事にパム・ボンディ(第二次政権で司法長官に指名)、キース・ケロッグ(第一次政権で国家安全保障問題担当次席大統領補佐官、第二次政権でウクライナ特使に指名)、ロバート・ライトハイザー(第一次政権で米通商代表)、ジョン・ラトクリフ(第一次政権で国家情報長官、第二次政権でCIA長官に指名)、リー・ゼルディン(第二次政権で観光保護局長官に指名)などがいる。

 このAFPIに関しては、ヘリテージ財団が主導した「プロジェクト2025」に参加した、ピーター・ナヴァロからは「どっちつかず」「裏切り者」という批判が出ている。AFPIに参加している人々は、2021年1月6日の連邦議事堂侵入事件に関して、トランプを熱心に擁護してはいなかった。ナヴァロはトランプを擁護し、連邦下院からの証言要請を拒否したことで、議会侮辱罪で起訴され、有罪判決を受けて服役した。刑期を終えて出所したその日に、共和党全国大会に向かい、「司法の武器化」を非難する激しい演説を行った。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」2024年8月6日記事

「トランプ側近たちの2つのグループ:高い忠誠心をもつグループの「プロジェクト2025」と穏健派のアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)」→
<a href=" https://suinikki.blog.jp/archives/88829077.html "> https://suinikki.blog.jp/archives/88829077.html </a>

 「トランプ政権はトランプに忠誠心を持つ人たちの集まり」という評価が日本でも報じられている。それは間違っていないが、大雑把すぎる評価である。トランプ政権に参加しているいくつかのグループについても細かく調査分析していくことがこれから必要だ。第二次トランプ政権においては、あまりにも熱心な支持者は巧妙に外されている印象である。

(貼り付けはじめ)

●「腹心結集のトランプ人事、個人的報復に向け「忠誠心」重視で一本釣り…歯止め利かなくなる恐れも」

2024/11/28 07:54 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/world/20241128-OYT1T50014/

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 【ワシントン=池田慶太】来年1月に発足する米国のトランプ次期政権の主要な閣僚候補が固まった。トランプ氏は自らの腹心を集め、巨大な連邦政府の掌握と個人的な報復に備えている。

 「米国民は、約束を実現して『米国第一』に取り組むよう、私たちに権限を与えてくれたのだ」

 トランプ次期大統領は26日の声明で、新政権に向けた決意を語った。主要閣僚ポストは大統領選の投票日からわずか約3週間で固まった。歴代の次期大統領は1か月以上かけて熟考するのが通例で、異例のスピードだ。

 トランプ氏の人選は前回と大きく異なる。1次政権では国防長官に元米中央軍司令官のジェームズ・マティス氏を起用するなど面識がなくても伝統的な保守派を閣内に迎えた。政権運営に自信がなかったためとされるが、確執を生み、閣僚の交代が相次いだ。こうした教訓を踏まえ、今回は個人的に親しく、自身に忠誠を尽くす人物だけを一本釣りしている。

 国家安全保障担当大統領補佐官に就くマイク・ウォルツ氏、国務長官に起用されるマルコ・ルビオ氏は、フロリダ州選出の連邦議会議員という共通点がある。同州にはトランプ氏が拠点とする邸宅「マール・ア・ラーゴ」があり、トランプ氏と頻繁に顔を合わせ、気脈を通じていることが人選に影響した模様だ。

 国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏は、保守系FOXニュースの司会者でトランプ氏は番組出演を通じて親交を深めた。トランプ氏の退任後に設立された政策研究機関「米国第一政策研究所」の関係者も多い。同研究所は第1次政権の元幹部らが所属し、復権に向けて政策を練り上げてきた。

 第1次政権で大統領首席補佐官を務めたラインス・プリーバス氏はABCテレビの番組で、トランプ氏が退任後の4年間、誰なら命令を忠実に実行するか「厳しい審査」を行ってきたと明かした。忠誠心を評価され選ばれた閣僚候補らは体を張ってトランプ氏を守るとみられ、選挙キャッチフレーズの「米国を再び偉大に」(略称MAGA)になぞらえ、「MAGAドリームチーム」とも呼ばれる。

●官僚機構不信

 トランプ氏は、命令に従わないキャリア官僚を一掃し、政権が任命できる仕組みを検討している。省庁の上級職にも信頼を置ける人物を送り込み、官僚機構を抑え込む構えを見せる。

 背景にあるのは連邦政府機関に対する不信感だ。第1次政権でトランプ氏が 弾劾(だんがい)訴追された際、一部の官僚が訴追に協力して機密情報を外部にリークしたことに対し、トランプ氏は強い恨みを持つとされる。官僚機構の「背信」で自身が起訴に追い込まれたとの思い込みもあるようだ。

 このため、トランプ氏は個人的な報復に向け、司法長官の人選を特に重視する。司法長官候補のパム・ボンディ氏は、トランプ氏を起訴した検察官や連邦捜査局(FBI)捜査官らを「ディープステート(闇の政府)」の一員と呼び、捜査・起訴すると公言する強硬派だ。トランプ氏は司法省の掌握に向け、ナンバー2の副長官にも自身の刑事裁判の担当弁護士を送り込む方針だ。

 第1次政権ではペンス副大統領ら穏健派がトランプ氏の暴走を食い止める「ガードレール」役を果たしたが、次期政権では不在だ。歯止めが利かなくなる事態も予想される。一部の閣僚候補は適格性が問題視されており、上院で人事が承認されるかは不透明な面もある。

●政権移行に署名

 【ワシントン=阿部真司】米国のトランプ次期大統領の政権移行チームは26日、バイデン政権のホワイトハウスと政権移行に関する文書に署名したと発表した。来年1月の新政権発足に向け、政権移行準備が本格化する。

 署名により、各省庁が機密情報などを新政権のメンバーに引き継げるようになる。ただ、トランプ氏側は閣僚候補らに対する連邦捜査局(FBI)による身辺調査を認める合意を拒んでおり、引き継がれる情報が制限される可能性がある。

●トランプ関税に報復示唆…メキシコ・カナダ両国

 【ロサンゼルス=後藤香代】米国のトランプ次期大統領が不法移民の流入などを理由にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すと表明したことを受け、両国は報復関税の可能性を示唆している。

 メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は26日の記者会見で、対話に向けトランプ氏に書簡を送る意向を示す一方、「関税がひとたび課されると、報復関税が課される」と警告した。トランプ氏との対等な関係も強調した。

 第1次政権時の2019年に関税発動をちらつかせたトランプ氏に対し、メキシコ側は不法移民対策を強化するなど関係構築に努めて関税の発動を回避したが、10月に就任したシェインバウム氏に「トランプ氏をなだめる意思はあまりないようだ」(AP通信)との見方が出ている。

 カナダのトルドー首相は26日、前夜にトランプ氏と電話会談したとして「建設的な方法で前進していく」と述べた。一方、クリスティア・フリーランド副首相兼財務相は限定的な報復関税の可能性に言及した。

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トランプの農務長官に指名されたブルック・ロリンズについて知っておくべき5つのこと(5 things to know about Trump Agriculture pick Brooke Rollins
ジュリア・ムラ―筆

2024年11月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5008075-brooke-rollins-agriculture-trump-what-to-know/

ドナルド・トランプ次期大統領は、第一次トランプ政権でホワイトハウス補佐官を務めたブルック・ロリンズ氏を、第二次政権では米農務省(U.S. Department of AgricultureUSDA)のトップに抜擢した。

トランプはプレスリリースの中で「アメリカの農家を支援し、アメリカの食糧自給(American Food Self-Sufficiency)を守り、農業に依存したアメリカの小さな町を復興させるという任務に対する、ブルックの関与と努力は、他の誰にも負けない」と書いている。

テキサスA&M大学で農業開発の学位を取得し、テキサス大学で法学博士号を取得したロリンズは、トランプ大統領の最初の任期中に国内政策の責任者を務め、現在はトランプ大統領と提携するシンクタンクを率いている。もし人事承認されれば、彼女はジョー・バイデン政権のトム・ヴィルザック農務長官の後任として、全米の農業、牧場、林業、そして食品の品質や栄養といった関連分野を監督する機関を率いることになる。

次期農務長官候補ロリンズについて知っておくべきことを以下に挙げていく。

(1)第一次トランプ政権で国内政策を指揮した(Directed domestic policy during Trump’s first term

52歳のロリンズは、トランプ大統領の大統領執務室での最初の任期中、国内政策会議(Domestic Policy Council)のディレクター、アメリカン・イノベーション・オフィス(Office of American Innovation)のディレクター、戦略イニシアティヴ(Strategic Initiatives)の大統領アシスタントを務めた。

トランプ大統領はリリースの中で、ロリンズは最初の任期中に「信じられないほどの素晴らしい仕事をした。私の政権の変革的な国内政策アジェンダの開発と管理に貢献した」と述べた。彼女は2016年に初めて経済諮問会議(Economic Advisory Council)に加わった。

トランプは2期目の選挙運動で元スタッフからの批判に直面したが、ロリンズは元側近の中で率直な擁護を表明した。

ロリンズは今年初めに「今、否定的なことを言う元トランプ高官やスタッフ一人一人に対して、彼のために働き、ホワイトハウスや政権で働いた何百人もの人々が、再び彼の下で働く機会を待ち望んでおり、すぐにでもそうするだろう」と語った。

(2)トランプ政権の元スタッフでいっぱいのシンクタンクのトップを務める(Heads think tank filled with former Trump staffers

ロリンズは過去4年間、アメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy InstituteAFPI)の責任者を務めてきた。AFPIは、トランプ政権の元スタッフによって立ち上げられた非営利団体で、トランプが再選に敗れた後、トランプ1期目の政策課題を推進することに注力している。

トランプ大統領は、超党派団体として記載されているAFPIの会長兼CEOとしての彼女の仕事と、彼女が理事を務める支持団体アメリカ・ファースト・ワークス(America First Works)でのリーダーシップを賞賛し、「忠実な愛国者のティームを作り、アメリカ・ファースト・アジェンダの政策を支持している」と称賛した。

AFPIは、2021年にジョー・バイデン大統領の経済計画に反対する1000万ドルの「セーヴ・アメリカ連合(Save America Coalition)」キャンペーンを主導した。CNNが報じたところによると、セーヴ・アメリカ連合はそれ以来、トランプ大統領の大統領復帰を待つ「ホワイトハウス・イン・ウェイティング(White-House-in-waiting)」と評されている。

また、トランプ大統領が次期政権のために頼りにしているAFPIのリーダーはロリンズだけではない。彼はスコット・ターナーを住宅都市開発長官に、リンダ・マクマホンAFPI理事長を教育長官に指名した。

(3)サプライズ指名(Surprise pick

ケリー・ロフラー元連邦上院議員(ジョージア州選出、共和党)を農務長官に指名すると予想されていただけに、ロリンズを指名するというトランプ氏の今週末の発表はいささかサプライズだった。

ロフラーは、不動産王のスティーブ・ウィトコフとともに、トランプの第二回大統領就任委員会の共同委員長を務めている。ロリンズは、最終的にスージー・ワイルズに譲ったトランプの大統領首席補佐官候補と報じられていた。

『ポリティコ』誌は、ロリンズは次期農務長官の候補者リストの他の人物よりも、農業政策の経験が少なかったため、誰がその任に就くかをめぐって陣営内で激しい揉め事があったと報じている。

(4)ロリンズはテキサスのルーツを強調(Rollins touts Texas roots

テキサス州出身のロリンズは以前、リック・ペリー元テキサス州知事の補佐官を務めていた。ペリーは第一次トランプ政権でエネルギー長官を務めた。

ロリンズは、テキサス州の保守系シンクタンクであるテキサス公共政策財団に15年間在籍した。彼女は2021年にテキサス公共政策財団の理事に復帰した。

トランプ大統領は発表の中で、ロリンズが青少年の農業プログラム「フューチャー・ファーマーズ・オブ・アメリカ」や「4-H」に携わっていることをアピールした。ロリンズは、彼女が長官候補に指名されたことを「テキサス州グレンローズの小さな町の農業少女にとっては大きなこと」と呼んだ。長官就任が承認されれば、彼女は農務省を率いる2人目の女性となる。

(5)ロリンズは農業セクターの挑戦の中で役割を担うことになる(She’d take on the role amid challenges for sector

各農業団体は、ロリンズの指名を祝福したが、リーダーたちは、ロリンズが指名されれば、農業部門にとって歴史的な挑戦の中で、その役割を担うことになると強調した。

アメリカ農業局連盟(American Farm Bureau Federation)のジッピー・デュヴァル会長は、ロリンズがアメリカの農民のために戦うと約束したことに「勇気づけられた(encouraged)」と述べ、「農民や牧場主が苦しい農業経済に直面する中、米農務省での効果的なリーダーシップはこれまで以上に重要だ」と主張した。

全米農民組合(National Farmers Union)のロブ・ラーリュー会長は、「ロリンズの農村でのルーツが、家族経営の農家や牧場主が我が国の経済を支える上で果たす重要な役割を彼女に植え付けたことを期待している」と述べ、現在の家族経営農家や地域社会にとっての「歴史的な課題(historic challenges)」を指摘した。

米農務省によれば、トランプ大統領の関税案や大量強制送還の計画は、昨年のアメリカ経済に1兆5800億ドルもの巨額をもたらし、3400万人以上のアメリカ人の雇用を支えている農業と食品産業に大きな影響を与える可能性がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)