古村治彦です。

 最近、ブログの更新が滞りまして申し訳ございません。来年第一四半期に本を出すことになりまして、その準備に追われております。年末年始で終わらせねばならない事務作業もあり、ブログでの発信ができない状態でした。「でした」と書きましたが、本の原稿のために、来年になってもしばらくは更新が滞ると思います。大変申し訳ございません。

 2024年は皆様に大変お世話になりました。ありがとうございます。私としましては、2023年末に刊行しました『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を、佐藤優先生に2度にわたって書評にてご紹介いただきました。それがご縁となりまして、佐藤先生との対談『世界覇権国交代劇の真相』(秀和システム)を10月末に刊行することができました。来年の本は単著になりますが、対談本が出ていなければなかったお話と言えます。来年以降は年間で何とか2冊本が出せたら良いなと考えております。皆様のご指導、ご鞭撻がなければ本の商売は成り立ちません。今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。

 2024年の日本は能登半島を中心とする大規模な地震から始まりました。復興が思い通りに進まないという中で1年が終わろうとしていることを考えると、日本全体が置かれている状況は決して明るいとは申せません。先日は一人当たりのGDPで韓国に抜かれて、OECD加盟国中22位になったという報道がありました。2025年度は上昇すると予想されており、世界全体では37位(2024年は39位)になると見られています。

※2024年12月23日付「セカイハブ 【2025年】世界の一人当たり名目GDPランキング(IMF)」

https://sekai-hub.com/statistics/imf-gdp-per-capita-ranking-2025

少子高齢社会、為替などの理由から大したことではないという言い訳じみたことを言う人たちもいますが、2000年には世界で2位、2012年には13位だったことを考えると、順調に「右肩下がり」で来ています。「右肩下がり」が順調では困ります。この21世紀の第一四半期を通じての「右肩下がりの経済衰退」のトレンドはこれからも続くでしょう。日本が世界の経済成長から取り残されている状況が続く限り、厳しいでしょう。全体の名目GDPではドイツに再逆転を許して第4位となりましたが、2025年中にインドに抜かれて第5位になるでしょう。10年以内に6以下で日本を脅かしそうな国はないので、ここがしばらく定位置と言うことになるでしょう。購買力平価(purchase power parity)で計算したGDPでは、「中国、アメリカ、インド、ロシア、日本、ドイツ、ブラジル、インドネシア」という順番になっており、この10年で更に順位が下がるでしょう。

日本の国力の衰退を示す1つの現象として、円安も影響してのインバウンドの増加があります。1980年代、1990年代、日本人は「安い、安い」と世界中に旅行に行きました。現在は世界中から「安い、安い」と観光に来られる国になりました。そして、これは良くないことですが、1990年代、2000年代では、外国からの売春婦が東京の繁華街に多く見られたものですが(新大久保ではこの通りにはどこどこの国の人、別の通りには別の国の人という「棲み分け」がありました)、いまでは、未成年の女性たちも含めて、日本人女性が繁華街で客引きをするようになっているということが報道されています。また、ハワイなどで日本人女性が「出稼ぎ」で売春をしているということで、女性の一人旅は警戒され、強制送還されることもあると聞きます。

現状について色々と言い訳がましいことを言っても仕方がありません。日本は確実に貧しくなっています。

 日本は太平洋戦争での惨めな敗戦から立ち上がりました。1956年の経済企画庁発表の『経済白書』の中の一節、「もはや戦後ではない」は戦後復興がひと段落した後、1960年代から1970年代にかけての「奇跡の経済成長(economic miracle)」が始まることを予感させました。1960年代から1970年代にかけて、日本は毎年10%以上の経済成長を続けました。この時期の日本の高度経済成長の特徴は「格差なき経済成長(economic growth without inequality)」でした。国民の9割が「自分は中流だ」と考えるような国になりました。経済格差の小さな経済大国であった日本は、バブル期以降崩壊しましたが、その崩壊を促進し、後戻りできないまでにしたのは、小泉・竹中路線です。21世紀に入っての日本の凋落について、小泉純一郎、竹中平蔵はその罪。万死に値すると言わねばなりません。

 日本は貧しくなり、日本国民は「衣食足りて礼節を知る」状態から堕落し、アノミー状態に陥っています。格差が亢進し、社会的全体を覆う無力感とその反対の怒りは大きくなっています。アノミー状態になることで、社会的な規範は崩れ、自殺者は増えることになります。格差が進めば、「金持ちから税金を取れ」という主張から、「国が機能しないならば実力行使だ」ということになり、犯罪が増加することになるかもしれません。闇バイトと称してお金が欲しい若者たちを使嗾しての犯罪行為は既に起きています。

 このような状態は昭和初期とよく似ています。日本では「戦前」「戦後」という言葉が使われます。それは、太平洋戦争が最後の戦争であって、戦前は1945年8月15日以前、戦後は1945年8月15日以降ということがコンセンサスとなっているからです。現在の日本の状況は「『もはや戦後ではない』ではない」、ポスト戦後時代、新しい「戦前」と言えるのではないかと思います。

 日本国憲法の下では、日本は戦争ができません。国際紛争を解決する手段としての戦争は永久に放棄しています。ですから、日本は、1945年以降は永久に「戦後」ですし、そうあり続けねばなりません。この経済の衰退、貧困の亢進による社会の閉塞感を外に向けて、戦争を行うことで解決することはできません。

 「日本は均衡点まで落ち続ける。それはしばらく続く、おそらく団塊ジュニア世代がいなくなるまで(あと30年くらいは続く)」という前提で、物事を考えねばなりません。2050年頃の日本は元・先進国として、遺産も食いつぶして、裸一貫からやり直すことになるでしょう。そのようなことができるのかどうか分かりません。しかし、これからの30年は衰退が続くということを覚悟して、均衡点まで落ち続け、そこからの反転攻勢ができることに期待したいものです。

 2024年は世界各国で故呉伊勢レヴェルの選挙が実施され、指導者が交代するということもありました。台湾、インドネシア、インド、フランス、イギリス、日本、アメリカで選挙がありました。その中でも最も重要だったのは、アメリカ大統領選挙です。共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、132年ぶりの大統領返り咲きを達成しました。米英仏というこれまで世界をリードしてきた、民主政治体制の本家本元とも言える先進諸国で選挙が実施されましたが、一抹の不安感を覚える結果となりました。民主政体国家の不安定さと非民主国家の安定ぶりが対比され、民主政治体制の正統性に疑問符がつくということになっています。大富豪イーロン・マスクが大規模な資金を出すことで、トランプ政権に大きな影響力を持つということもそれで果たして良いのかという疑問符がつきます。アクトン卿の至言「権力は腐敗する、絶対権力は絶対的に腐敗する」を考える時、「政治は腐敗から逃れることはできないし、きれいごとだけでは政治はできない」ということになるが、民主政治体制は綺麗事を前面に押し出しているために、失望感が大きいということになるのだろうと思います。

おめでたい年末年始になんとも暗い話で申し訳ありません。良い年になりますよ、などと安易に言える状況ではありません。「正月は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」(一休禅師)。「それでもなお」、私たちは進み続けるしかありません。
(終わり)

sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める