古村治彦です。

 第二次トランプ政権発足後、イーロン・マスク率いる政府効率化省によるかくせいふきかんへの立ち入り調査や米国国際開発庁(USAID)の閉鎖決定など、アメリカ国内の動きが日本をはじめ世界中で報道されている。対外関係で言えば、カナダとメキシコへの関税や、グリーンランドやパナマ運河の領有を主張して世界をざわつかせた。

中国の競争、特に最先端分野について、昨年、超党派の「米中経済安全保障検討委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)」という組織が提案を行った。その年次報告書には、中国の自由貿易特権の剥奪や、「自律型ヒューマノイドロボット」を含む技術の輸入禁止、さらには人間の認識力を超えるAIを開発するためのマンハッタン計画の創設が挙げられている。恒久的正常貿易関係の撤廃も重要な提案の1つだが、これは「アメリカの同盟国と同等の貿易上の地位を中国に与えた結果、アメリカ製造業や知的財産に対する損害をもたらしてきた」という「反省」から出てきたものだ。このように註徳に対して厳しい内容の年次報告書が出たのが昨年10月で、大統領選挙の結果が分かっていなかったが、トランプにとなっても、ハリスになっても、この年次報告書の内容は実行されるべきだと委員たちは主張している。

中国のAI技術の進展にはアメリカ側は強い懸念を持っている。米中経済安全保障検討委員会は、AI分野での競争が軍拡競争(arms race)に発展することを危惧している。米中経済安全保障検討委員会の提案は、アメリカの政策形成において影響力のあるものとなっており、中国の台頭を抑制するための強硬な姿勢を主張している。

 AI分野での競争が軍拡競争に発展する危険性については、私たちは留意しておく必要がある。3月25日に発売の新刊で、私はこの点については1章を費やして書いている。最後は宣伝になって恐縮だが、以下の論稿を参考にしながら、新刊もお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

よりタカ派的な対中政策はどのようなものになるのか(What an Even More Hawkish China Policy Could Look Like

-新しい報告書によると、ドナルド・トランプ大統領の就任準備に向けた人工知能、貿易、投資に関する勧告事項がまとめられている。

リシ・イエンガー筆

2024年11月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/19/us-china-commission-report-biden-trump-xi-jinping/

donaldtrumpxijinping2017001
2017年11月9日、北京で中国国家主席の習近平と握手するドナルド・トランプ米大統領。

中国との競争(competition with China)は、過去10年間で極度に分極化したアメリカ政府(highly polarized Washington)にとって最大の懸案となっており、中国に関してアメリカ連邦議員たちに助言する超党派委員会(bipartisan commission)は、アメリカがその競争に勝つための思い切った措置を求めている。

火曜日に発表された米中経済安全保障検討委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)の連邦議会提出年次報告書にある32項目の勧告の中には、中国の二国間自由貿易特権の剥奪(revoking China’s bilateral free trade privileges)、「自律型ヒューマノイドロボット」を含む技術の中国からの輸入禁止(barring the import of technologies, including “autonomous humanoid robots,” from China)、人間の認識力を凌駕する人工知能を実現するためのマンハッタン計画の創設(creating a Manhattan Project to achieve artificial intelligence capable of surpassing human cognition)などが含まれている。

米中経済安全保障検討委員会は、これらの措置は、中国の技術に対する輸出規制の更なる強化や、アメリカから中国への海外投資の制限強化とともに、習近平国家主席率いる中国共産党が必然的にエスカレートさせるであろう対立(conflict)に勝利するために不可欠であると主張している。「異論を唱える手段がほとんど残されておらず、指導者個人への絶対的な忠誠を求める政治体制であるため、習近平が破滅的な紛争を引き起こす危険性のある行動を取ると決めた場合、誰もそれを思いとどまらせることはできないだろう」と報告書では述べられている。

米中経済安全保障検討委員会の重要な勧告の1つは、中国の恒久的正常貿易関係(permanent normal trade relationsPNTR)指定の撤廃である。恒久的正常貿易関係は、北京にアメリカの同盟諸国と同じ貿易上の地位と関税免除を与えるものである。20年以上前、中国が世界貿易機関(WTO)への加盟を準備していたときに与えられたこの特権を、中国は悪用してアメリカに中国製品を流し、アメリカの製造業を疲弊させ、知的財産を盗んできたと、ワシントンの多くの人々は指摘している。米中経済安全保障検討委員会は、先週ジョン・ムールナー連邦下院議員が連邦下院に提出した法案にも反映されているこうした懸念に共鳴し、「不公正な貿易行為に対処するためのより大きな影響力(more leverage to address unfair trade behaviors)」を提唱した。

この動きは、幅広い中国からの輸入品に関税をかけると繰り返し宣言しているドナルド・トランプ次期大統領の政権発足に向けた準備となっているようだ。しかし、月曜日にワシントンで行われた記者団とのブリーフィングで、複数の委員は、ホワイトハウスの主が誰になるかは関係ないと強調した。米中経済安全保障検討委員会の報告書は今年(2024年)10月、大統領選挙の数週間前にまとめられた。2000年10月に設立された米中経済安全保障検討委員会は、連邦下院議長、連邦下院少数党院内総務、上院臨時議長(連邦上院多数党院内総務と少数党員何総務の推薦を受ける)により任命される12人の委員で構成され、任期は最低2年、延長も可能である。現在の委員たちは、産業界、学界、政府を代表している。

委員の1人であるジェイコブ・ヘルバーグは次のように述べている。「PNTRの廃止により、大統領は中国の最恵国待遇(most favored nation)を見直し、変更する権限が与えられる。それによって関税が自動的に引き上げられる訳ではない。サプライチェインを自国(アメリカ)に戻す(reshore)ための広範な取り組みが超党派で進行中である。サプライチェインを自国(アメリカ)に戻す鍵となるのは、中国の製造品に対する関税の引き上げである」。

トランプ大統領は、NATOEUを含むアメリカの同盟諸国としばしば険悪な関係にあったことから、トランプ前大統領が政権に復帰した後、中国に対する多国間の輸出規制がどうなるかを疑問視する声も多い。米中経済安全保障検討委員会の報告書は、中国に対抗するために「志を同じくする国々の連合体(a coalition of like-minded countries)を構築するための、アメリカ主導の明確な協調のための努力」の必要性を強調している。別の委員であるアーロン・フリードバーグは記者団に対して次のように語った。「私たちが議論している問題の多くは、同盟諸国との協力が相当なレヴェルで構築されなければ効果的に対処できないことは明らかだ」。

しかし、同僚の委員であるマイケル・ウェッセルによれば、トランプのレトリックと第一次政権の行動を区別することも重要だという。マイケル・ウェッセルは次のように語っている。「私は民主党員だ。一部の人々が抱いている印象では、ファウェイのような存在に関して、連合体を築こうとする関与が十分に評価されていないことは明らかだ。だから、発言に耳を傾けるだけでなく、何が行われたかを注視することが重要だと思う」。

ワシントンにおいて、テクノロジーほど中国の懸念を刺激する分野はなく、人工知能(AI)は中国の技術進歩を鈍らせようとするアメリカの努力の要となっている。米中経済安全保障検討委員会はAI開発競争を抑制されない軍拡競争(unbridled arms race)とみなし、人間より賢いAIを意味する、汎用人工知能(artificial general intelligenceAGI)のアメリカでの開発を提唱している。米中経済安全保障検討委員会は、中国がAGI能力を獲得する前に、原子爆弾を製造したマンハッタン計画のような政府資金による取り組みを推奨している。

アメリカと中国は、AIを軍事利用する際のガードレールを設置しようとしており、ジョー・バイデン大統領と習近平国家主席は土曜日にペルーで行われた会談で、核兵器の使用におけるAIの役割を制限することに合意した。委員であるランダル・シュライバーは次のように述べている。「この種の対話は、懸念事項を議論し、最良の方法(ベストプラクティス)と思われるものを提示しようとするプラットフォームだ。しかし、現実は、米中両国は拡大競争をしている最中だ」。

米中経済安全保障検討委員会の勧告の多くは、中国の半導体産業に対する輸出規制や、バイデン政権が導入した中国技術への対外投資規制など、中国に対する既存の技術規制の強化にも焦点を当てている。米中経済安全保障検討委員会が中国からの輸入を禁止するよう勧告している「自律型ヒューマノイドロボット(autonomous humanoid robots)」のような特定の用途や、バイオテクノロジーのような特定の分野についても言及された。委員であるマイケル・クイケンは次のように述べている。「バイオテクノロジーの分野で私たちがどれほど厳しい敗北を喫しているか、そしてその分野での技術革新を加速させるための政府による劇的な投資がない限り、私たちは今後数年間、非常に暗い状況に置かれることになるということを、人々は理解していないと思う」。

月曜のブリーフィングで、委員の一部はバイデン政権の「小さな庭、高いフェンス(small yard, high fence)」アプローチを批判した。ヘルバーグ委員は次のように語った。「私の基本的な考え方は、私たちは中国との技術経済戦争(techno-economic war)に巻き込まれており、中国が戦争を仕掛ける戦線の数を増やせば増やすほど、私たちが対応しなければならない様々な戦線が自動的に決定されるというものだ。中国が戦争を仕掛けてくる戦線の数を増やせば、われわれが対応しなければならないさまざまな戦線が自動的に決定されることになる。自分たちが守りたいと考える狭い庭を維持するだけでは、実際には成功することはできない」。

米中経済安全保障検討委員会の報告書と勧告は、「おそらくその庭はもう少し広いものであるべきだ」という考えを反映しているとウェッセル委員は語った。

委員たちは、中国の台頭を抑制するための彼らの強硬なアプローチは、ワシントンの言論を支配するようになった、北京に対するタカ派的な態度よりも以前からあったものであり、それはほとんど、国際舞台における中国の行動のみに起因するものだと指摘した。

ウェッセル委員は「対話の決裂(breakdown in dialogue)は、それが起こった限りでは一方的なものであり、アメリカと共有されていない。新たな関与があり、それが結果を生むことを誰もが望んでいるが、中国の態度と慣行については現実的になる必要がある」と述べた。

※リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』記者。「X」アカウント:@Iyengarish

(貼り付け終わり)

(終わり)

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