古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とドナルド・トランプ米大統領、JD・ヴァンス副大統領が口論になったことが注目された。2月4日にはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領と首脳会談を行った。この会談の際に、トランプがガザ地区をアメリカが引き継ぎ(take over)、管理運営、再興を行う、パレスティナ人はアラブ諸国に移動してもらうという大胆なアイディアを発表して、注目を集め、批判を浴びた。
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ベンヤミン・ネタニヤフとドナルド・トランプ
 トランプについては、親イスラエルの姿勢を堅持している。そのために、イスラエルに対して有利なことばかりをしているという批判もあるだろう。しかし、如何にご紹介する論稿ではそのようなことはない、トランプの外交的手法の繊細さに注目されにくいと指摘している。以下に論稿の内容をご紹介する。

トランプの交渉スタイルは中東和平への試みを理解するための重要な視点となる。従来の解釈では、トランプはアラブ諸国に圧力をかけてパレスティナ難民を受け入れさせようとしているとされているが、実際には彼の交渉手法はより複雑だ。

トランプはイスラエルの指導者たちに対して、彼らが望むことを派手にぶちあげながら、実際には異なる取引を進めている可能性がある。彼はイスラエルの右翼のメシア主義的傾向を利用し、ネタニヤフ首相がより穏健な妥協を受け入れるための政治的空間を作り出している。

トランプの提案に対して、イスラエルの指導者たちは熱狂的な反応を示したが、トランプの発言がサウジアラビアの立場を明確にする結果を招いた。サウジアラビアはパレスティナ問題に対する一貫した立場を持っており、トランプはその現実を理解している。

トランプの提案は一見突飛に見えるが、実際にはより控えめな譲歩を含む複雑な外交的演出の一部である可能性がある。トランプの交渉スタイルは、見かけの勝利に包まれた困難な譲歩を実現するための手段として機能することが多いです。

最終的に、トランプの提案が現実的かどうかは別として、彼の過剰主義が実際の妥協を生み出すための政治的条件を作り出すかどうかが重要だ。トランプの外交は計算されたものであり、彼の真意を理解することが今後の展開において重要となるだろう。

 私は最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも、トランプの交渉方法について、以下の論稿のような分析をしている。そして、ネタニヤフにしてみれば、「トランプの恐ろしさ」をよく分かっていて、言われたとおりに、トランプの大統領就任式直前にハマスとの停戦に合意した。これに比べて、ただ喧嘩だけをしに行ったゼレンスキーは馬鹿ということになる。とても一国の政治指導者としての器もなく、振舞いでもない。ネタニヤフはさすがにアホのゼレンスキーよりは政治的なセンスがある。非常に慎重に動いている。この慎重さは各国の政治指導者たちから私たちのような一般人まで学ぶべきものだろう。

(貼り付けはじめ)

トランプとガザ地区の真相(The real deal on Trump and Gaza

バラク・セラ筆

2025年2月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/5132699-trump-middle-east-plan/

最近のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とのホワイトハウスでの記者会見で、ドナルド・トランプ大統領はガザ地区についての大胆とも思える計画(what appeared to be an audacious plan for Gaza)を打ち出した。ガザ地区をアメリカがコントロールし、パレスティナ人を移住させるというものだ。

多くの人々がこの衝撃的な提案の大胆さ(boldness)自体に注目する一方で、より繊細な外交的振り付け(subtle diplomatic choreography at play)を見逃している可能性がある。

トランプは著書『トランプ自伝 アメリカを変える男(The Art of the Deal)』の中で、「私は人々の空想を活かす(I play to people’s fantasies)」「人々は自分では必ずしも大きなことを考えないかもしれないが、大きなことを考える人々には興奮するものだ。だからこそ、ちょっとした誇張(little hyperbole)は決して損にはならないのだ」と書いている。

トランプの交渉スタイルの中心であるこの哲学は、中東和平への最新の試みを理解するための重要なレンズとなる。

従来の解釈(conventional interpretation)では、トランプはエジプトやヨルダンのようなアラブ諸国に圧力をかけ、パレスティナ難民を受け入れさせようとしている。しかし、これは地域の力学(regional dynamics)とトランプの洗練された交渉手法(sophisticated negotiating approach)の両方を根本的に見誤っている。

熟練した不動産ディーラーのように、トランプは見かけ上のクライアント(この場合はイスラエル)に、彼らが聞きたいことを正確に伝える一方で、全く別の取引を静かに進めている。イスラエルの指導者たちは、トランプが自分たちに代わってアラブ諸国に圧力をかけながら、自分たちと取引をしていると信じているかもしれないが、現実はその逆であるようだ。

おそらく、ネタニヤフ首相の政治的洞察力(political acumen)に匹敵する数少ない世界的指導者であるトランプは、イスラエルの右翼のメシア主義的傾向を抜け目なく認識し、利用し、彼らを掌中に収めてきた(to eat out the palm of his hand)。

トランプの発言に対して、イタマール・ベン・グヴィルはXに「ドナルド、これは美しい友情の始まりのようだ」と投稿したり、イェシャ評議会のイスラエル・ガンツ議長は「パレスティナの夢は終わった」と宣言したり、熱狂的な反応(euphoric responses)が寄せられた。

しかし、トランプが記者会見で、サウジアラビアはパレスティナの国家承認を要求していないと宣言したとき、彼は自分のしていることを正確に理解しており、まったく予測可能なサウジアラビアの反応、つまり「パレスティナ人が正当な権利を得ることなしに、永続的で公正な平和を達成することは不可能である」という明確な主張の舞台を用意した。

 

サウジアラビアの立場は驚くほど一貫している。2023年10月7日のハマスの攻撃のわずか数日後、モハメド・アリヤヒヤは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化の話し合いの間、イスラエル側から聞こえてくるささやき声は、「サウジアラビアがパレスティナ問題に無関心であることを示唆しており、サウジアラビア当局者たちは『パレスティナ問題がこの協定にとって重要である』という立場を明らかにしようとしたが、サウジアラビアが無関心であるという認識は、残念ながら広まってしまった」と述べていた。

当時、ハーヴァード大学ベルファーセンター上級研究員で、『アル・アラビア・イングリッシュ』の編集長を務めたアリヤヒヤは、その後サウジアラビア外務大臣顧問に就任しており、彼の見解の権威を裏付けている。

トランプはこの現実を理解している。更に重要なのは、地域協定を阻む最大の要因はアラブの強硬さではなく、イスラエルの国内政治にあることを理解していることだ。イスラエルの右翼と共鳴する最大主義的な立場を公然と受け入れることで、トランプはネタニヤフ首相がより穏健な妥協を受け入れるために最終的に必要となる政治的空間を整然と作り出している。公的な演出が私的な譲歩を可能にする、洗練された外交ダンスである(It’s a sophisticated diplomatic dance in which public theatrics enable private concessions)。

私たちは以前にもこの作戦書(playbook)を見たことがある。最初の大統領任期中、トランプはイスラエルの保守派を喜ばせるが、現地ではほとんど意味をなさない壮大なジェスチャーで主要な外交的イニシアティヴを先行させ、アメリカ大使館のエルサレム移転やゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認した。

アブラハム合意は歴史的なものではあるが、最終的にはイスラエルにヨルダン川西岸地区併合計画(West Bank annexation plans)を放棄させる結果となった。これはイスラエル右派が長年主張してきた立場だ。

おそらく最も注目すべきは、合意には、当時の大統領上級顧問ジャレッド・クシュナーが作成した、潜在的なパレスティナ国家の概略を示す概念図にイスラエルが同意したことが含まれていたことだ。これは、パレスティナ国家樹立に対するイスラエル右派の長年の反対からの劇的な転換である。ネタニヤフ政権は、イデオロギー的な抵抗にもかかわらず、決して起こらないと誓ったことと全く同じ内容の枠組みを承認することになった。

このパターンは最近の停戦交渉でも繰り返された。トランプは当初、就任前にガザ地区の人質が解放されなければ「地獄のような大混乱が起きる(all hell will break loose)」と警告し、イスラエルの右派を活気づかせた。しかし当選すると、彼はこの政治資本(political capital)を活用して、ベン=グヴィールやベザレル・スモトリッチのようなイスラエルの強硬派がまさに避けようとしていたこと、すなわち、血で手を染めたパレスティナ人囚人の解放、戦争の事実上の終結、外国の武装勢力(アメリカの民間請負業者)がガザ地区でイスラエルの安全保障上の利益を行使することを認めるという前例のない措置を含む取引を仲介した。

現在の状況は、そのパターンを反映している。アメリカによるガザ地区管理というトランプの一見突飛な提案(seemingly outlandish proposal)は、額面通り(at face value)に受け取るべきものではない。むしろ、より複雑な外交的演出の序幕である可能性が高い。おそらく本当の取引は、より控えめな人口移転、復興ゾーン、そして決定的に重要なのは、入植地とパレスティナ自治に関するイスラエルの譲歩を含むものだろう。

サウジアラビアはトランプの「アメリカ・ファースト」アジェンダに6000億ドルを投資する用意があると伝えられており、この地域のグランドバーゲンの経済的インセンティヴは相当なものだ。ミリアム・アデルソンのようなアメリカの親イスラエル献金者は、トランプの選挙キャンペーンに9桁の献金をして実質的な支持を示しているが、アメリカのインフラと産業に対するサウジアラビアの潜在的な投資の規模は、変革的な経済的機会を意味する。

しかしながら、この前例のないレヴェルの投資を実現するには、パレスティナ問題に関するイスラエルの妥協が必要になる。トランプの芝居がかった過剰主義(maximalism)はまさにそれを促進するために考案されたのかもしれない。

トランプの交渉スタイルを不規則だ(erratic)と切り捨てる人々は、その根底にある方法を見逃している。トランプは、「私は大きく考えるのが好きだ。私はいつもそうだ(I like thinking big. I always have)」と書いている。しかし、その大きく考えるやり方は、より現実的な取引(practical deal-making)のための隠れ蓑として機能することが多い。ガザ地区では、トランプ大統領の壮大な提案が、最終的には地域の安定に必要な控えめなステップを可能にするかもしれない。

疑問は、アメリカのガザ地区支配というトランプの具体的な提案が現実的かどうかではない。問題は、このトランプ的誇張の最新例が、前進に必要な実際の妥協のための政治的条件を作り出すのに役立つかどうかである。歴史が示すように、見かけの勝利に包まれて困難な譲歩をパッケージ化するトランプの能力を過小評価すべきではない(History suggests we shouldn’t underestimate his ability to package difficult concessions in the wrapping of apparent triumph)。

この地域がガザ地区の将来と格闘するなか、トランプの芝居じみた外交(theatrical diplomacy)は見かけ以上に計算ずくであることが証明されるかもしれない。トランプの真意を理解しようとする人は、『トランプ自伝 アメリカを変える男(The Art of the Deal)』のもうひとつの格言を思い出すといいだろう。「時には、競争相手を誹謗中傷することも取引の一部である(Sometimes, part of making a deal is denigrating your competition)」。

この場合、トランプ大統領の突飛な提案は、微妙かつ直感に反する目的を果たすかもしれない。極端なまでに過剰主義的な立場を取ることで、トランプは「世紀の取引(deal of the century)」に対する真のライヴァル、つまり同盟諸国の強硬姿勢の信頼性を故意に損なう可能性がある。

※バラク・セラ:ハーヴァード大学ベルファー科学・国際問題研究センター中東イニシアティヴ研究員。レウート研究所元上級部長、アメリカ・イスラエル関係、世界ユダヤ人、中東研究の専門家。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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