古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権が発足し、直後からスピード感を持って物事が動いている。是非最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)を読んで、トランプとトランプ政権の行動原理について知っていただければ幸いだ。

 早速、「トランプに3期目を!」という声が出ている。アンディ・オグルズ連邦下院議員 (テネシー州選出、共和党)が、大統領の任期制限(term limits)を定めた、憲法修正第22条の例外条項設定に向けて動き出している。保守系の団体でも「第3期プロジェクト(Third Term Project)」がオグルズ議員支援のために動き出している。

 アメリカ大統領は任期制限がある。2期8年までしかできない。これは、初代大統領ジョージ・ワシントン以来の「不文律(unwritten rules)」であったが、1947年に米連邦議会が憲法の修正条項として任期制限を設定した。この憲法修正条項の修正は連邦上下両院それぞれでの3分の2以上の賛成と、4分の3以上の州の賛成が必要であり、現実的には不可能である。

 しかし、以下の論稿にある通り、「トランプが3期目を目指す」「トランプなら3期目を実現するかもしれない」という思惑がアメリカ政界で広がることで、トランプの影響力行使に大きなプラスになる。トランプの力はそれほどのものだ。トランプが3期目を目指すことはないが、次の大統領選挙において、トランプが誰を後継者として指名するか、もしくは支持するかが重要になってくる。トランプから支持を得られた人物が共和党の候補者になることは確実だ。現在の最側近であるイーロン・マスクは南アフリカ生まれであるので、大統領になる資格を持たない。現在のところ、最も自然なのは、JD・ヴァンス副大統領が後継者になることだ。それはどのようなことからそのように考えられるのかについては、最新刊『トランプの電撃作戦』で書いているので、是非読んで欲しい。このブログでも紹介したが、公開している目次を読めば、このブログの読者で、勘の良い皆さんならば、どういうことかをたちどころに理解されるだろう。

 「トランプが3期目も大統領になれるか」ということが重要ではない。憲法修正という高いハードルを越えられのではないかという思い(支持者には期待と反対者には恐れ)を人々に持たせることが重要だ。それによって政治の世界で行使できる力も変わってくる。これは好き嫌いの問題ではなく、現実の問題である。

(貼り付けはじめ)

トランプの3期目の予告は見事な政治戦略だ(Trump’s third-term tease is a brilliant political strategy

ミラ・アダムス筆

2025年3月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5180505-trumps-third-term-tease-is-a-brilliant-political-strategy/

先月開催された保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)は、第47代大統領を祝う「トランプルーザ(Trumpalooza 訳者註:paloozaは「宴」や「パーティー」の意味)」の愛の祭典となった。イーロン・マスクがチェーンソーを振り回す舞台上の芝居や、スティーヴ・バノンのナチス式敬礼に加え、注目を集める心配な「第3期プロジェクト(Third Term Project)」のデビューもあった。

プロジェクトのリーダーであるシェーン・トレホは、「草の根レヴェルでトランプが正当に第3期目を獲得できるよう支援を推進している。2020年、トランプは務めるはずだった任期を盗まれたと私たちは考えている」と語った。

「第3期プロジェクト」の使命は、トランプ大統領就任の3日後にアンディ・オグルズ連邦下院議員 (テネシー州選出、共和党) が提出した憲法修正案(proposed constitutional amendment)を支持することだ。オグルズ議員は、トランプ大統領が3期目を務めることを可能にする例外条項を憲法修正第22条(22nd Amendment)に設けたいと考えている。実質的には、これは完全にトランプ大統領に特化した提案であり、連続しない 2期の任期を務めた大統領にのみ適用される。

「第3期プロジェクト」のCPACデビューはおかしなもので、歴史的な皮肉なものとなった。バナーには、トランプ大統領の横顔の胸像が、古典的な古代ローマ様式で描かれていた。これは、2069年前の3月、政敵に暗殺されるまで「終身独裁者(dictator for life)」の地位に就いた将軍であり政治家であったジュリアス・シーザー(Julius Caesar)の象徴的な彫刻を模倣したものだ。

2023年12月まで話を進めると、当時のトランプは、もし当選しても「第一日目を除いて(except for day one)」独裁者(dictator)にはならないと誓った。その後、一般投票ではわずかに1.5パーセントポイント、選挙人投票では312対226というより説得力のある票差で勝利した後、トランプは鉄拳(iron fist)で統治し、アメリカを「アメリカの黄金時代(America’s Golden Age)」に導く圧倒的な権限を得たと信じているように見える。

就任式(Inauguration Day)のその日から、トランプは大統領の権限を戦略的に拡大することを止めていない。彼は、憲法で義務付けられた行政府、立法府、司法府間の連邦権力の分離と均衡(separation and balance of federal powers between the executive, legislative and judicial branches)を覆そうとすることに大きな誇りを持っているようだ。

建国の父たち(the Founders)は、独立を宣言した相手のような、全能の独裁的な支配者(all-powerful, despotic ruler)から身を守るために、特に力が同等の諸政府機関を設けた。トランプはこの微妙なパワーバランス(delicate power balance)を試すことに熱心で、連邦最高裁は根本的な影響を伴う判決を下し続け、トランプが従わなければならない行政権をチェックしている。

これは、トランプが2028年の大統領選挙に合法的に再出馬できるよう、オグルズが修正を夢見ている憲法修正第22条に私たちを戻してくれる。

この修正案が連邦下院と連邦上院で3分の2以上の多数で通過する可能性はゼロで、ましてや4分の3の州で批准される可能性はない。しかし、ショーマンであるトランプが、3期目について熱烈な支持者たちに対して予告することを止めることはないだろう。今年2月、ホワイトハウスで行われた黒人歴史月間を祝うイヴェントで、トランプは友好的な集まりに「再出馬すべきか? 君たちが教えてくれ(Should I run again? You tell me.)」と質問した。そして、「そこにあなたたちの論争がある(There’s your controversy right there,)」と付け加えた。この言葉に続いて、「更に4年(four more years)」の掛け声が続いた。

これより前、大統領の2期目が始まる1週間前、トランプは、自身が所有するドラル・ゴルフリゾートで行われた共和党の祝賀会で、連邦下院議長マイク・ジョンソン議員(ルイジアナ州選出、共和党)に再選の質問をした。挑発的に、大統領は「私には再選は認められていないと思う。よく分からない。再選は認められているのか、マイク? 君を巻き込まない方がいいな」と述べた。

しかし、トランプが自ら関与してくることは間違いない。なぜなら、3期目についてのほのめかしは、マキャベリ的な戦略を後押しし、権力拡大への飽くなき追求を後押ししているように見えるからだ。トランプが期限付きのレームダックであるという政治的現実を考えると、3期目の見通しは、2029年1月に避けられない彼の政治キャリアの期限を軽視するのに役立つ。その間、トランプ氏は恐怖による統治(to rule through fear)を続け、敵味方(friends and foes)に絶対的な忠誠を要求する。

トランプは、3期目の見通しをできるだけ長く利用して、自身の政策への支持を集め、「仕事を完了する(finish the job)」ことができるだろう。これは、「3期目プロジェクト」のスローガンだ。しかし、2026年の中間選挙後は、結果にかかわらず、レームダック状態となり、2028年の空席のある大統領選挙戦が始まる。では、トランプはどう行動するだろうか?

もし彼が健康を維持して、有権者の少なくとも45%から支持され続ければ、82歳で再出馬する勇気はあるだろうか? MAGAのインフルエンサーであるスティーヴ・バノンが推進する疑わしい非連続任期論(non-consecutive term argument)を使って、憲法修正第22条を試すだろうか? バノンは最近のCPACスピーチで、再びトランプの2028年出馬を主張した。

3期目の話は2028年の共和党の大統領選挙出馬希望者たちを動揺させ、トランプの権力をさらに強めさせる。最も注目すべきは、野心的で率直で目立つ存在になりつつある彼の自然な後継者であるJD・ヴァンス副大統領に対するトランプのコントロールを助けることだ。

更に言えば、トランプはいつでも政治劇(political theater)に加わることができる。「再出馬(run again)」という質問をして見せびらかすこともできる。友好的な群衆が「更に4年!」と叫ぶことは彼にとって嬉しいことだ。報道の見出しはそれに従う。認識は現実だ(Perception is reality)。人々は次の任期を「要求(demand)」している。トランプの行動は、2028年の大統領候補者全員を圧倒する可能性がある。

トランプは報道の見出しを確保する論争を起こすのが大好きなので、違法な3期目、あるいは少なくともその曖昧さはぴったりだ。彼は、あらゆるプラットフォームでのMAGAメディアの増幅によって「正常化(normalized)」されるまで、嘘を繰り返したり、とんでもない政策や人事を主張したりする技術を完璧に身に付けている。彼は2028年の大統領選を「正常化(normalize)」するだろうか?

その場合、民主党と不満を抱く共和党は、1947年に共和党が支配する連邦下院と連邦上院が、憲法修正第22条の非常に明確な制限「大統領職に2回以上選出される者はいない(No person shall be elected to the office of the President more than twice)」を可決したことを有権者に思い出させるべきだ。その後、4分の3の州で批准されるまで1951年までかかった。この修正は、民主党のフランクリン・ルーズヴェルト大統領が1932年から1944年までの4回の選挙で勝利したことに対する共和党の回答だった。

戦後の共和党は任期制限によって大統領の権力を抑制しようとした。現在、オグルズ連邦下院議員と「第3期プロジェクト」の旗は「トランプ2028年・・・そしてその先も!」と叫んでいる。

フランクリン・ルーズヴェルトの4度の大統領選挙勝利は、大恐慌(Great Depression)との戦い、そして第二次世界大戦中のリーダーシップの結果だったことを思い出して欲しい。

逆に、アメリカ人はトランプの攻撃的な行動と政策が、意図せずして新たな恐慌や中国との戦争を誘発しないことを祈るべきなのである。

※ミラ・アダムス:論説記者、2004年と2008年の2回の大統領選挙で共和党側陣営のクリエイティヴティームに参加した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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