古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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  最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)の宣伝ばかりになって申し訳ないが、このブログでしか宣伝ができないのでご容赦いただきたい。

 第2次トランプ政権にとって最重要の人物がイーロン・マスクであることは誰も否定しないだろう。政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いて、米連邦政府全体を引きずり回している。しかし、実は、トランプ運動を通じての最重要の人物はピーター・ティールである。ピーター・ティールは、イーロン・マスクと共にペイパル社を大きくし、その後は、パランティア社を創設し、更には様々な企業に資金提供を行っている。最新刊『トランプの電撃作戦』の第1章では、ドナルド・トランプ、ピーター・ティール、イーロン・マスクの関係について詳しく分析している。その際には、以下に掲載する記事を参照した。これまでとは違った姿が見えてくると思う、是非お読みいただきたいと思う。

(貼り付けはじめ)

パランティア社が国防費増加に賭ける投資家たちの「トランプ・トレード(トランプ関連株)」になる(Palantir becomes a ‘Trump trade’ as investors bet on higher defence spending

-アメリカ政府を最大の顧客とする、ピーター・ティールが設立したデータ会社は、選挙以来、企業価値が230億ドルも上昇

タビー・キンダー(サンフランシスコ発)

2024年11月20日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/f583fa72-858f-418e-b17c-67cad1f2c10a

ドナルド・トランプが今月アメリカ大統領に当選して以来、パランティア社(Palantir)の時価総額は230億ドル以上も増加した。投資家たちは、この秘密主義の米政府からの請負企業が、国家安全保障、移民、宇宙開発に対する連邦政府の支出強化の最大の勝利者になることに賭けている。

今回の株価上昇は、この1年間のパランティア社の驚異的な上昇に拍車をかけるもので、パランティア社の株価は約3倍の1株あたり61ドルに上昇し、企業価値は約1400億ドルに達した。

この急激な上昇は過去12ヶ月で見てみると、半導体メーカーのエヌヴィディア社(Nvidia)を上回るもので、パランティア社の時価総額はアメリカ最大の国防元請企業の1つであるロッキード・マーティン社(Lockheed Martin)よりも大きくなった。

2003年にピーター・ティール、ジョー・ロンズデール、アレックス・カープといった、テクノロジー業界のヴェテランたちによって設立されたパランティア社は、政府や企業が膨大な量のデータを照合・分析し、複雑なパターンを特定したり、業務改善に利用できる詳細な情報(インテリジェンス)を構築したりするのを支援している。

アメリカ政府はパランティア社にとっての最大の顧客となっている。CIAやアメリカ国家安全保障局(National Security Agency)から軍隊や警察に至るまで、テロリストの追跡、ハッカーの阻止、不法移民の強制送還、金融詐欺師の告発のため、パランティア社のシステムを導入している。パランティア社のテクノロジーは、アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの殺害、新型コロナウイルスワクチンの配布、金融業者バーナード・マドフの有罪判決に使われた。

投資家たちは、パランティア社がトランプ政権下で政府の国防支出が増加した場合に有利な立場にあることに賭けている。

パランティア社は2024年5月、国防総省の主要AI戦場情報プログラム「プロジェクト・メイヴン(Project Maven)」を拡張するため、4億8000万ドル規模の5年契約を獲得し、そのデータ処理を利用して軍事上の要点を特定し、アナリストたちの効率を向上させた。

パランティア社に投資しているフォルテ・キャピタル・グループ社のロジャー・モンテフォルテ最高経営責任者(CEO)は、「トランプは、特にイスラエルとウクライナにおいて、任務を遂行する人物になるだろう。パランティア社は極めて重要なプレーヤーになるだろう」と述べている。

モンテフォルテは、パランティア社はイーロン・マスクの電気自動車メーカーであるテスラやパーマー・ラッキーの自律型兵器(autonomous weapons)のスタートアップ企業アンドゥリル社(Anduril)と並んで、「トランプ取引(トランプ関連株)」の「三人組(trifecta)」(新政権に近いことで利益を得られる銘柄[stocks that stand to gain from their proximity to the new administration])の1つであると付け加えた。アンドゥリル社は流通市場取引(secondary market trading)で株価が急騰した民間企業である。

トランプ次期大統領は連邦政府の支出を抑制すると宣言しているが、マスクは防衛費をこれまでの第一次防衛請負企業(traditional defence prime contractors)ではなく「起業家企業(entrepreneurial companies)」により配分すべきだと述べている。

ロケット製造会社スペースX社(Space X)を通じたマスクの宇宙開発への個人的関心も、パランティア社に利益をもたらす可能性がある。2024年6月、パランティア社は「スターラボ(Starlab)」と呼ばれるコンソーシアム(consortium)に参加し、国際宇宙ステーション(International Space Station)の後継となる、NASAやその他の宇宙機関、民間顧客にサーヴィスを提供するための商業宇宙ステーションを10年後に立ち上げる予定だ。

DAデイヴィッドソン社(DA Davidson)」のソフトウェアアナリストであるギル・ルリアは「パランティア社は新政権と2つのレヴェルで連携している。その創設者たちは政権の内輪の影響力の中にいる。もう1つの調整はイデオロギー的なものだ。パランティア社には西洋文明を保護するという明確な使命があり(a clear mission to protect western civilisation)、それは次期政権の哲学と非常によく一致している。」

パランティア社は、第一次トランプ政権下での移民税関捜査局(Immigrations and Customs Enforcement)との契約について、数百万人の移民をアメリカから強制送還する取り組みを促進し、人権侵害に加担していると非難され、擁護団体から攻撃を受けた。

パランティア社の最近の評価ブームは、ピーター・ティールとアレックス・カープが忠実な個人投資家のオンライン軍団から人気を得ていること、人工知能にまつわるマニアックな話題、過去1年間に利益率を改善しながら成長を加速させた結果だ。パランティア社の株価は、ソフトウェア企業の中で最も高い倍率で取引されており、来年予想される収益の40倍、予想利益の130倍で取引されている。

月曜日の投資家たちによるパランティア社株オプション取引は160万件を超え、米オプション市場ではエヌヴィディアとテスラに次いで、3番目に人気のある企業となっている。オプション取引は、投資家が株式の方向性に安価なレヴァレッジをかけた賭けをすることを可能にし、レディッと(Reddit)のような小売取引フォーラムで人気となっている。

新古典派社会理論の博士号を持つアレックス・カープは、愛国主義(patriotism)、社会、テクノロジーに関するイデオロギー的な宣言で、このようなフォーラムで知られるようになった。

カープは、「今世紀はソフトウェアの世紀であり、私たちは市場全体を手に入れるつもりだ。私たちは、最も重要な組織を武装し、防衛するためにこの会社を設立したのであって、無為で退廃的な娯楽を作り出すためにこの会社を設立したのではない」と述べた。

カープは大統領選挙以来、株価高騰により報酬計画に基づく自動売却が開始されたため、パランティア社株の売却で約10億ドルを稼いだ。

パランティア社のピーター・ティール会長は、シリコンヴァレーにおけるトランプ大統領の最大の盟友の1人であり、JD・ヴァンス副大統領の政治的台頭の主な支援者でもある。しかし、ティールはトランプからの選挙運動への寄付要請を断った。

事情に詳しい関係者によると、2009年にパランティア社を去った、ジョー・ロンズデールはイーロン・マスクに近く、トランプ政権移行ティームでの潜在的な役割を担う準備が整っているということだ。

パランティア社に近いある人物は、トランプ大統領の誕生がこのビジネスにとって好材料になるかは、それほど明確ではないと述べた。

この人物は続けて「パランティア社はバイデン政権の下で急成長し、ウクライナ戦争とイスラエルを通じて重要なプレーヤーとなった。トランプ大統領のことは表面的な認識に過ぎない。誰も何らかの形で推測したくない」と述べた。

2010年以来、パランティア社は民間企業へのサーヴィスを拡大し、リオ・ティント社、BP者、ジェネラル・ミルズ社、CVSヘルス社といった企業との大型契約のおかげで成長を加速させた。このAIプラットフォームは、企業のオペレーションやサプライチェーンの管理、不正行為やリスクの検出、創薬、需要予測などを支援するものだ

パランティアは2023年に初の黒字決算を達成したが、これはパランティア社の商業ビジネスが爆発的な人気を博したためだ。民間部門ビジネスは現在では収益の35%を占めている。全体として、パランティアは今年第3四半期に1億4400万ドルという過去最高の純利益を計上し、第4四半期の調整後利益は約3億ドルになると予想した。

パランティア社は2024年9月にS&P500種株価指数に採用され、機関投資家が保有するインデックス・ファンドに組み入れられるようになった。先週、パランティア社は、11月26日にニューヨーク証券取引所からナスダック市場に上場市場を変更すると発表し、ナスダック100の仲間入りを果たす見込みだ。

パランティア社の取締役で8VCのパートナーであるアレックス・ムーアは、この動きは上場投資信託による数十億ドルの株式購入を「余儀なくさせ(will force)」、その結果、個人株主は利益を得ることになるだろうとXで述べた。

しかし、アナリストの中には、株価収益率の高さが懸念材料だと警告する人もいる。リシ・ジャルリア率いるRBCのアナリストは先月、「パランティア社がソフトウェア業界で最も割高な企業である理由を合理的に説明できない」と述べ、目標株価を9ドルに設定した。

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トランプの世紀の大当たり(Trump’s bonanza of the century

-イーロン・マスクをはじめとする超富裕層の起業家たちは規制緩和で利益を得る立場にある

エドワード・ルース筆

2024年12月17日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/fe4702cc-4643-41d2-9214-63bf3888127f

上げ潮は全てのメガヨットを持ち上げる。しかし、純資産(net worth)の増加という点では、イーロン・マスクはその部類に入る。ドナルド・トランプが11月5日に再選を果たして以来、マスクの資産はおよそ3分の2増の4400億ドルに跳ね上がった。このペースでいけば、トランプ大統領の任期中に彼は楽に兆万長者(trillionaire)になるだろう。

メタ(Meta)の創業者マーク・ザッカーバーグやアマゾンのジェフ・ベゾスといった後発組も、この流れに乗りつつある。両者はトランプ大統領の就任式委員会(inauguration committee)に100万ドルを寄付しており、これは次期政権の機嫌を取る伝統的な方法だ。彼らの資産も急増している。アメリカは史上最大の規制緩和の流れにある。

この上昇気流は、トランプ大統領に票を投じたブルーカラーのアメリカ人という小舟をも持ち上げるのだろうか? トランプはそうなると約束している。トランプが多くの労働者階級の票を獲得した主な理由は、ブルーカラーのアメリカ人が、パンデミックが起こる前に実質所得の中央値が上昇した彼の第1期を思い出したからだ。しかし、マクロ経済の状況はそれ以来大きく変化している。トランプは2017年にゼロ金利の世界を引き継いだ。今回は、金融の拘束がかかっている。トランプ減税の更新によるインフレの影響は急速に進むだろう。アメリカのブルーカラーは失望するだろう。

同じことは、アメリカの富裕層、特にトランプの最も熱心な2つの産業支援者であるAIと暗号通貨(crypto)に出資している富裕層には当てはまらないだろう。トランプの誤った名前の政府効率化省(department of government efficiencyDoge)の共同責任者であるマスクの利益相反(conflicts of interest)の規模は前例がない。神聖ローマ帝国は、帝国でも神聖なものでもなかったが、それと同じように、政府効率化省は政府の部局でもなければ、効率化が真の目的でもない。マスクの目標は予算から2兆ドル(連邦政府支出の約3分の1)を削減することだという。しかしそれは、アメリカの国防予算や、トランプ大統領がそれぞれ増額と維持を公約している社会保障とメディケアを削減しなければ不可能だ。

残るは国内裁量予算[domestic discretionary budget](教育、フードスタンプ、インフラなど)では、1兆ドルにも満たない。私の予想では、イーロン・マスクは連邦議会を説得して財布の権限を放棄させることはできないだろう。しかし、連邦議会はトランプ減税を実施するだろう。その結果、アメリカの財政赤字は拡大し、2024年のGDP比は6.4%と既に高水準に達している。財政赤字の拡大は借入コストの上昇につながる。つまり、アメリカの予算のうち債務返済が占める割合が大きくなることと、実質金利の上昇によって個人所得が減少することである。

しかし、マスクの真の目標は規制緩和だ。彼が規制撤廃に成功するという市場の期待が、彼の純資産高騰に拍車をかけている。マスクが出資している「ドッジコイン(Dogecoin)」の評価額の上昇から、テスラ、スペースX、ニューラリンク社(Neuralink)、エックスエーアイ社(xAI)に至るまで、マスクの会社は全てが急成長している。マスクの利益の範囲と複雑さを考えると、メディアや連邦議会、その他の監視機関が、危機に瀕した複数のプレーをチェックし続けるのは難しいだろう。明白なものには、テスラの自律走行システムに関する責任の緩和、スペースXの国防総省との契約ブーム(そのほとんどが機密扱い)、マスクのAIと脳チップへの投資に対するあらゆるグリーンライトが示されている。

マスクは同輩中の首席(first among equals)である。しかし、オンライン決済会社を立ち上げた当初の「ペイパルマフィア(PayPal mafia)」の仲間たち、特にピーター・ティールやデイヴィッド・サックスも利益を得ている。ティールのデータ分析会社で、米国防総省と大規模な契約(そのほとんどが機密扱い)を結んでいるパランティア・テクノロジーズ社の株価は、11月5日以降、約4分の1上昇した。パランティア社は現在、アメリカの国防産業複合体(America’s defence industrial complex)の旧世界の模範であるロッキード・マーティン社よりも価値がある。

トランプはまた、サックスを暗号通貨ツァー(cryptocurrency tsar.)に任命した。トランプの選挙公約の1つに、連邦準備制度(Federal Reserve)が暗号通貨をバランスシートに加えるというものがあった。もしそれが実現すれば、アメリカの中央銀行は実質的に、多くの経済学者がねずみ講(Ponzi scheme)と見なすものを支援することになる。トランプの勝利以来、ビットコインの価値が10万ドルを超えて急騰しているのは驚きではない。トランプは、ビットコインが10万ドルを超えたとき、自身のソーシャルメディアであるトゥルース・ソーシャルに「どういたしまして(You’re welcome)」と投稿した。

アメリカでは汚職は合法だとよく言われる(It is often remarked that in the US, corruption is legal)。マスクやトランプがこうした利益相反で法を犯しているとは誰も主張していない。本当の審判は政治だ(The real judge is politics)。一般国民の投票の半数弱を獲得したトランプは、均等に分裂した国家(evenly divided nation)を統率しているが、アメリカを作り直すという大任を主張している。

勝者は既に想像を絶する報酬を得ている。これは全て、トランプが大統領に就任する前から起こっていることだ。

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●「PalantirAnduril主導の次世代防衛企業連合が始動、SpaceXOpenAIも参画へ」

XenoSpectrum 20241223

https://xenospectrum.com/palantir-anduril-led-next-generation-defense-companies-alliance-launched/

米防衛テクノロジー大手のPalantir TechnologiesAnduril Industriesが、従来の防衛産業の勢力図を塗り替えるべく、約12社規模の企業連合の結成を進めている。この動きは、8,500億ドル規模の米国防予算の獲得を目指す新興テック企業の野心的な挑戦となる。

目次

新興テック企業が描く次世代の防衛産業像

急成長する防衛テック企業の台頭

■新興テック企業が描く次世代の防衛産業像

この企業連合には、Elon Musk氏率いるSpaceXChatGPT開発元のOpenAIAI関連のScale AI、自律型船舶建造のSaronic Technologiesなどの参画が見込まれている。20251月にも正式発表される見通しだ。関係者によれば、これは単なる企業連合の形成ではなく、「新世代の防衛請負業者を生み出す」取り組みとして位置づけられている。

連合の目的は、Lockheed MartinRaytheonBoeingといった伝統的な防衛産業大手が支配する現状を打破することにある。これらの老舗企業は、艦船、戦車、航空機など、設計から製造まで長期間を要する高額な装備品の製造を主力としてきた。これに対し、シリコンバレーの新興企業群は、より小型で安価な自律型兵器の開発に注力している。彼らは、現代の紛争における実戦での有効性を重視したアプローチを採用している。

すでに連合企業間での技術統合も始まっている。Palantirのクラウドベースのデータ処理を行う「AI Platform」は、Andurilの自律型ソフトウェア「Lattice」と統合され、国家安全保障目的のAIとして提供される。さらにAndurilは、対ドローン防衛システムにOpenAIの高度なAIモデルを組み込み、「空からの脅威」に対処する米政府契約の共同開発にも着手している。

注目すべきは、この連合が単なる技術提供を超えて、国防総省の技術的優先事項の実現と重要なソフトウェア能力の問題解決を目指している点だ。関係者の一人は、これを「産業界の連携(aligning industry)」と表現し、政府の技術ニーズに効率的に応える新たな枠組みとしての期待を示している。ウクライナ戦争や中東での紛争、米中間の地政学的緊張の高まりを背景に、軍事目的で使用可能な先進的AIプロダクトを開発する技術企業への政府の依存度は、さらに高まると予想される。

■急成長する防衛テック企業の台頭

防衛テクノロジー企業の急成長は、株式市場でも顕著な現象となっている。特にPalantirの成長は目覚ましく、同社の株価は過去1年で300%の上昇を記録。時価総額は1,690億ドルに達し、伝統的な防衛大手であるLockheed Martinをも上回る規模にまで成長した。この急成長の背景には、データインテリジェンス分野における同社の独自の技術力と、政府契約の着実な獲得が寄与している。

Palantirの成功は、共同創業者であるPeter Thiel氏の先見性も反映している。Thiel氏は2017年にAndurilの立ち上げ時の主要な出資者としても名を連ねており、現在Andurilの企業価値は140億ドルにまで成長している。防衛テック企業への投資は、ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫化を受け、国家安全保障、移民問題、宇宙探査への連邦支出増加の恩恵を受けると見込まれている。

この成長の波は、他の参画予定企業にも及んでいる。Elon Musk氏が率いるSpaceXは、最近の評価額が3,500億ドルに達し、世界最大の非上場企業としての地位を確立した。一方、OpenAI2015年の設立からわずか8年で1,570億ドルという驚異的な企業価値を実現している。注目すべきは、OpenAIが最近になって利用規約を改定し、同社のAIツールの軍事利用を明示的に禁止する条項を削除したことだ。この変更は、同社の政府調達への参入意欲を示す重要な転換点として受け止められている。

これら新興企業は、すでに政府との関係構築でも成果を上げている。SpaceXPalantir20年以上にわたり大型の政府契約を獲得してきた実績を持つ一方、OpenAIAndurilなど比較的新しい企業も、政府調達市場への参入を着実に進めている。特にAndurilは、自律型システムや先進的なセンサー技術を活用した防衛装備品の開発で注目を集めており、従来型の防衛企業とは一線を画す革新的なアプローチで、政府からの支持を広げている。

このような防衛テック企業の台頭は、単なる企業成長の枠を超えて、米国の防衛産業の構造転換を象徴する現象として注目されている。特に、AIや自律システムといった先端技術を軸に、より機動的で効率的な防衛能力の実現を目指す彼らのビジョンは、従来の防衛産業のあり方に根本的な変革を迫る可能性を秘めている。

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パランティア社とアンドゥリル社が米国防総省との契約獲得に向けテック企業のグループと協力関係を築く(Palantir and Anduril join forces with tech groups to bid for Pentagon contracts

-コンソーシアムにはイーロン・マスクのスペースX社(SpaceX)も参加し、アメリカの国防予算8500億ドル(約125兆5000億円)のより大きなスライスを獲得しようとする動きがあるようだ。

タビー・キンダー、ジョージ・ハモンド(サンフランシスコ発)

2024年12月23日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/6cfdfe2b-6872-4963-bde8-dc6c43be5093

アメリカ最大の防衛テクノロジー企業2社のパランティア社(Palantir)とアンドゥリル社(Anduril)は、アメリカ政府の「元請(prime)」請負業者の寡占状態を打破するため、アメリカ政府の仕事を共同で入札するコンソーシアムを結成するため、約10社の競合他社と交渉中である。

このコンソーシアムは、早ければ1月にも複数のテック企業グループと合意に達したと発表する予定だ。この件に詳しい複数の関係者によると、参加交渉中の企業には、イーロン・マスクのスペースX社(Space X)、チャットGPTChatGPT)メーカーのオープンAI社(OpenAI)、自律造船会社(autonomous ship builder)のサロニック社(Saronic)、人工知能データグループのスケールAI社(Scale AI)などが含まれるということだ。

このグループの結成に携わったある人物は「私たちは、新世代の防衛請負業者を提供するために協力している(We are working together to provide a new generation of defence contractors)」と語った。

この動きは、テック企業がロッキード・マーティン社(Lockheed Martin)、レイセオン社(Raytheon)、ボーイング社(Boeing)といった伝統的な元請請負企業から、アメリカ政府の莫大な防衛予算8500億ドル(約125兆5000億円)のより大きなスライスを奪おうとしていることに起因する。

別の関係者によると、このコンソーシアムはシリコンヴァレーの最も価値のある企業の一部を結集し、その製品を活用してアメリカ政府に最先端の防衛および兵器の能力を供給するより効率的な方法を提供する予定だという。

投資家たちは、ドナルド・トランプ次期政権下で国家安全保障、移民、宇宙探査などへの連邦政府支出が増加し、これらの企業が勝ち組の仲間入りをすると賭けており、防衛技術関連の新興企業が今年記録的な額の資金を集めている中で起こった。

ウクライナや中東での戦争、米中間の地政学的緊張は、軍事目的に使用できる高度なAI製品を開発するハイテク企業へのアメリカ政府の依存度を高め、この分野への投資家を後押ししている。

パランティア社の株価はこの1年で300%も急騰し、時価総額はロッキード・マーティン社よりも大きい1690億ドル(約25兆3500億円)に達した。このデータ・インテリジェンス・グループは、テック投資家のピーター・ティールによって共同設立された。彼は、2017年に立ち上げられ、今年140億ドル(約2兆1000億円)の時価評価を受けたアンドゥリル社にも最初の支援を提供した。

一方、スペースX社の評価額は今月3500億ドル(約52兆5000億円)に達し、世界最大の民間スタートアップとなった。また、オープンAI社は2015年の設立以来、評価額が1570億ドル(約23兆5500億円)に高騰している。

どの企業も、政府の国防予算の一角をつかもうとしている。スペースX社とパランティア社は20年前から大規模な公的契約を獲得しているが、政府調達の経験が浅い企業もある。オープンAI社は今年、利用規約を更新し、自社のAIツールを軍事目的に使用することを明確に禁止しなくなった。

アメリカの国防調達は、ロッキード・マーティン社、レイセオン社、ボーイング社といった数十年の歴史を持つ少数の元請請負企業に有利で、時間がかかり、反競争的だと長い間批判されてきた。これらの巨大コングロマリットは通常、コストが高く、設計と製造に何年もかかる艦船、戦車、航空機を製造している。

シリコンヴァレーの急成長する防衛産業は、小型で安価な自律型兵器の生産を優先してきた。シリコンヴァレーの防衛産業は現代の紛争においてアメリカ同盟諸国をよりよく守ることができると主張している。

コンソーシアムの立ち上げに携わったある人物は、「国防総省の技術的優先事項を実行(execute the technical priorities of the Department of Defense)」し、「重要なソフトウェア能力の問題を解決(olve critical software capability problems)」するために、「産業界の足並みを揃える(aligning industry)」と説明している。

コンソーシアムに参加すると予想される技術グループ間の提携については既に合意されており、統合作業は直ちに開始される予定だ。

クラウドベースのデータ処理を提供するパランティア社の「AIプラットフォーム(AI Platform)」は今月、アンドゥリル社の自律型ソフトウェア「ラティス(Lattice)」と統合され、国家安全保障目的のAIを提供した。

同様に、アンドゥリル社はドローン防衛システムとオープンAI社の高度なAIモデルを組み合わせ、「空中からの脅威(aerial threats)」に関連するアメリカ政府との契約に共同で取り組んだ。

このパートナーシップに関するアンドゥリル社とオープンAI社の共同声明は、「アメリカ国防総省と情報機関が、世界で利用可能な最も先進的で効果的かつ安全なAI駆動技術を利用できるようにすることを目指す」と述べている。

アンドゥリル社、オープンAI社、スケールAI社は、コンソーシアムの創設についてコメントを拒否した。パランティア社、スペースX社、サロニック社はコメントの要請に応じなかった。

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●「シリコンバレーと決別した天才起業家、パルマー・ラッキーの現在」

フォーブス誌 2022年6月24日

Jeremy Bogaisky | Forbes Staff

https://forbesjapan.com/articles/detail/48340

https://forbesjapan.com/articles/detail/48340/page2

2014年にVR(仮想現実)テクノロジーを開発する「オキュラス・リフト(Oculus Rift)」をフェイスブックに30億ドルで売却したパルマー・ラッキー(29)は今、軍事テクノロジーのスタートアップ「アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)」の創業者として注目を集めている。

2017年設立の同社は、これまで累計18億ドルを調達しており、フォーブスは現在のラッキーの保有資産を、フェイスブックから得た大金と合わせて14億ドル(約1830億円)と推定している。しかし、アンドゥリルは間もなく評価額80億ドルで、新たな調達を行うと報じられており、そうなれば、ラッキーの保有資産はさらに膨らむことになる。

かつてVRの神童と呼ばれた彼は、9月に30歳になる。

アンドゥリルは米移民税関捜査局(ICE)に、ドローンの映像とセンサーから得たデータで国境警備を行う「ヴァーチャル・ボーダー・ウォール」と呼ばれるシステムを提供している。これは、地上の赤外線センサーが捉えた映像を、ラティス(Lattice)と呼ばれる人工知能(AI)プログラムで分析し、適切な対応を行うシステムだ。

不審な動きを検知した場合はまず、Ghost(ゴースト)と呼ばれる監視用のドローンが飛び立ち、上空から詳細を把握する。フォーブスが確認したデモで、同社のシステムは不審なトラックから降りてきた男が、発射したドローンが中国製のDJI P4であることを突き止め、即座に攻撃用ドローンのAnvil(アンビル)を急行させ、DJI製ドローンを地上に叩き落とした。

「当社の攻撃用ドローンは、とんでもない速さで敵のドローンを撃墜する」と、自身のトレードマークであるアロハシャツを着たラッキーは話した。

今から8年前の彼はVR業界を率いる若き天才起業家として、フォーブスの表紙を飾るなど、多くのマスコミの注目を集めていた。しかし、2016年の大統領選挙でドナルド・トランプを支持したことをめぐる騒動の中で、彼はフェイスブックから解雇された。

■シリコンバレーとの決別

それから間もなく、ピーター・ティールらと組んで防衛関係のスタートアップを設立した彼は、左寄りのシリコンバレーに、きっぱりと分かれを告げた。アンドゥリルは、サンディエゴの米軍基地に近いカリフォルニア州のコスタメサに本社を構えている。

自身を批判する友人たちと別れたラッキーは今、自分が正しかったと感じているという。アンドゥリルは、ウクライナにもシステムを提供しており、一部の人々は彼に謝罪を申し出た。「彼らは今になってようやく、米国がより良い武器を持つことが、実はとても大事なことだと気づいたと」と彼は話した。

昨年の収益が推定15000万ドルのアンドゥリルは、国防総省が欲しがると思う武器や監視システムのニーズを先取りして、自社でそれを開発している。

「我々は、ペンタゴンが何かを必要とするとき、真っ先に思いつくような会社になりたい」と、ラッキーは話す。

アンドゥリルはまた、2019年に買収したゲームスタジオCarbon Gamesのソフトを改良して、複雑なシミュレーションツールを構築した。このツールは、国防総省に戦いのシミュレーションを行わせるもので、VRゴーグルと通常のスクリーンの両方で表示可能な「もしも」のシナリオを何千回も高速で実行することが可能だ。

■ホームスクールで育った天才

学校には通わずに、母親の指導のもとでホームスクールの教育を受けたラッキーは、父親の車の修理を手伝ったときにエンジニアリングに目覚めたという。カリフォルニア州ロングビーチの自宅ガレージで彼は、高出力レーザーや、電磁石を使ったコイルガンなどを製作し、10代半ばで古いゲーム機に最新の電子回路を搭載して、持ち運びができるように改良した。

ゲームへの関心はやがて、VRに移っていった。ソフトウェアで画像を操作すれば、高価で重い光学系を安価で持ち運びが可能なツールできることに気づいたラッキーは、弱冠16歳でVRヘッドセット「Oculus Rift」を開発。それがマーク・ザッカーバーグの目に留まり、2014年にフェイスブックに買収された。

その後、軍事関連のスタートアップのアイデアを思いついたラッキーは、取締役のピーター・ティールと、国防総省の最大の弱点がソフトウェアであるという意見で意気投合したという。

そして、2017年にフェイスブックを追放されたラッキーが、ティールが経営するパランティア(Palantir)の関係者と立ち上げたのがアンドゥリルだ。パランティアは、ラッキーを国防総省のハードウェア担当者として送り込む計画を立てた。

「エンジニアたちは、いつも刺激的なアイデアを提示するラッキーのことを気に入っている」と、元パランティア社員で現在はアンドゥリルの会長を務めるトレイ・スティーブンス(Trae Stephens)は話す。若く創造力あふれる彼は、ときに周囲を混乱させてしまうが、脇を固めるベテランたちが、暴走を防ぐ役割を果たしている。「彼は、誰かが適切にチャンネルを合わせてやれば、とんでもない力を発揮する」とスティーブンスは話した。

創業間もないアンドゥリルが税関・国境警備隊(CBP)に売り込んだのが、国境を違法に横断する人や車両を自動的に検出し、担当者たちを日常的なパトロール業務から解放するシステムだ。2020年に、CBPはアンドゥリルと最大25000万ドルの契約を締結し、今年2月現在で、メキシコとの国境の176の監視塔にそのシステムを配備している。

■数百億ドル規模の受注

同社は今年1月には、米特殊作戦司令部のドローン防衛を担当する契約を獲得し、10年間で10億ドル近い収益を見込んでいる。さらに大きなチャンスと呼べるのは、国防総省が導入を検討中の、すべての監視システムと兵器システムを統合して戦場を一望するためのシステムだ。このプログラムはJADC2Joint All Domain Command and Control)と呼ばれ、パランティアやシースリー・エーアイ(C3 AI)などの大手が数百億ドル規模の受注を争っている。

アンドゥリルは、同社のAIシステムがそれを成し遂げられると考えている。2020年に行われた空軍の試験で、同社のAIは飛来する巡航ミサイルを検知し、F-16やパラディン榴弾砲など複数の兵器システムに標的データを自動的に送って、ミサイルを破壊することに成功した。驚くべきことに、このシステムはたった一人の飛行士でそのミッションを成功させた。

昨年9月まで空軍の最高ソフトウェア責任者だったニコラス・チャイヤンは、「アンドゥリルのチームは間違いなくトップレベルだ」と断言する。チャイヤンは、統合参謀本部のサイロ化した組織が、JADC2のプロジェクトを破滅させるかもしれないと警告した後に、空軍を辞めていた。

しかし、仮にJADC2の契約を獲得できなかったとしても、ラッキーはさほど気にしないと述べている。すでに獲得済みの契約に加えて、アンドゥリルにはベンチャーキャピタルからの潤沢な資金がある。

「国防省が今考えるべきは、次のパルマー・ラッキーをどうやって見つけるかだ。19歳のときの私のように優れた技術と優れたアイデアを持つ人物を、彼らは探さなければならない。今のところ、そのあては全く見当たらないのだから」と、ラッキーは話した。

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