古村治彦です。※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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第2次ドナルド・トランプ政権は発足後から100日を過ぎた。政権は発足後、怒涛のスタートダッシュを見せて、アメリカ国内、そして、世界中を驚かせた。様々なことが起きて、いささか疲れ気味という感じになっている。トランプ政権には4年間しか時間がなく、次の選挙には出られないので、最後の1年はどうしてもレイムダック化(無力化)してしまうこと、2026年11月には中間選挙が実施され、上下両院での共和党の過半数が崩される可能性もあること、こうしたことから、2年間で公約の多くを進めようという意図が見える。
トランプ政権の原理は「アメリカ・ファースト」であり、これはアメリカ国内問題解決最優先主義ということになる。アメリカ国内の諸問題を解決するために、政権は財政赤字と貿易赤字の削減を行おうとしている。肥大化した連邦政府と官僚機構の削減と、高関税とドル安誘導を行おうとしている。そして、関税と共に、不法移民対策によって、「国境を守る」という政策を進めている。
これらのスピード感あふれる施策によって、摩擦も起きている。トランプ政権の大統領令や施策に対して、裁判所に提訴するということも多く起きている。政権側と司法(裁判所)が対立する構図にもなっている。
アメリカの国内、国外の大変革は、国内、国外での「アメリカ政府の役割を変える」ということである。歴代の大統領たちは、「現状を変える」「ワシントン政治を変える」と訴えて当選してきた。しかし、結果は大きな変化は見られず、失望の4年間、8年間となった。そして、また、新しい人物が「変化」「変革」を訴えて当選して、失望させるというパターンに陥ってきた。それは、これまでの歴代の大統領たちがワシントンのインサイダーであり、「常識人」であったからだ。アメリカ国民はアウトサイダーのトランプに賭けた。子の賭けは失敗に終わるだろうが、それはアメリカの衰退という大きな流れの中で仕方がないことだ。それでも何とかしようとしたというトランプの存在は後世の歴史家たちに評価されていくだろう。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領が就任100日で政府を刷新した5つの方法(5 ways
Trump reshaped the government in the first 100 days)
アレックス・ガンギターノ筆
2025年4月28日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5271255-trump-executive-actions-federal-government/
ドナルド・トランプ大統領の就任後100日間は、主要な選挙公約の実現を目指した数々の大統領令(executive orders)や政策で、ホワイトハウスと連邦政府全体の常識を覆した。
その中には、複数の機関の削減、数千人の連邦職員の解雇、そして政権に異議を唱える多数の訴訟が提起される中での裁判所の介入回避などが含まれている。
以下で、トランプ大統領が2期目の最初の3カ月で政府を刷新した5つの方法について挙げていく。
(1)連邦政府機関の再編と削減(Federal agency overhauls,
cuts)
ドナルド・トランプ大統領は、億万長者のテック起業家イーロン・マスクを政府効率化省(Department
of Government Efficiency、DOGE)の責任者に任命した。政府効率化省は、連邦政府機関の無駄を特定することで、連邦政府の抜本的な改革を目指している。
CNNの分析によると、少なくとも12万1000人の連邦職員が解雇またはレイオフされ、少なくとも30の機関が影響を受けている。
政府効率化省は、米国国際開発庁(U.S. Agency for
International Development、USIDA)を骨抜きにし、退役軍人省(Department of Veterans Affairs)の職員を大幅に削減し、保健福祉省(Department of Health and Human Services)などの省庁の再編に長官らと協力した。一部の削減は迅速かつ広範囲に行われ、トランプ大統領はマスクに「斧(hatchet)」ではなく、「メス(scalper)」で削減してほしいと公言した。
ホワイトハウス高官たちは、今回の改革は連邦政府の非選官僚から権力を奪い、選挙で選ばれた公職者に「権力を戻す(return power)」ために必要だと主張している。マスクはトランプの選挙運動中にアドヴァイザーとして就任し、大統領は彼を政府効率化省の責任者に任命した。
ホワイトハウス高官たちは、「私たちは民主政治体制とは全く相反する官僚制という牢獄(the
prison of bureaucracy)の中で生きている。大統領が行った最大の改革の1つである最初の戦いは、行政部内の闘争(intrabranch fight)、つまり大統領と官僚たちの闘争だ」と述べた。
今回の改革後、マスクは政府における特別任務を縮小し、進行中の改革の指揮を長官たちに委ねる予定だ。マスクの自動車会社テスラは攻撃の標的となり、彼の仕事に対する国民の認識も一部で酷評されている。
(2)大統領令で連邦議会を回避する(Executive orders
bypassing Congress)
ホワイトハウスによると、トランプ大統領は就任後100日間で140件以上の大統領令に署名した。
就任宣誓の日から、移民問題や社会問題から、1月6日の被告人問題、教育問題、法律事務所への攻撃など、あらゆる問題に対処してきた。
大統領が大統領執務室から執行したこれらの大統領令は、財政権を持つ連邦議会を除外していた。共和党が多数派を占める連邦上下両院は、連邦議会の権限が縮小されているとについてほとんど言及していない。
大統領は重要な法案の1つ、レイケン・ライリー法に署名した。1月に署名されたこの法案は、窃盗、強盗、万引きの容疑で逮捕された、合法的な滞在資格を持たない幅広い移民を拘留することを義務付けている。
ホワイトハウス高官によると、ホワイトハウスは今後100日間で、税制および国境関連法案の成立に向けて連邦議会への圧力を強めると予想されており、法案の成立が近づくにつれ、トランプ大統領は連邦議会への働きかけを強めるだろう。
マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は月曜日に大統領と会談し、議題について協議したが、連邦下院における共和党のわずかな過半数と、相反する優先事項のため、連邦議会が法案を成立させるには長い道のりが残されている。
(3)法廷闘争を回避する(Skirting court challenges)
ホワイトハウスは、国外追放、連邦政府職員の解雇、軍におけるトランスジェンダーの兵士に関する措置など、大統領令に対する数十件の異議申し立てに直面している。
トランプ大統領が18世紀に制定された「外国人敵対者法(Alien Enemies
Act)」を行使したことに対する法的異議申し立てが最も大きな注目を集めている。この法律は、外国への「侵略(invasion)」を理由に移民を国外追放することを可能にする。
その結果、数百人の移民が国外追放に巻き込まれており、トランんプ政権は証拠を示すことなく、彼らがヴェネズエラが発祥のトレン・デ・アラグア・ギャングのメンバーであった、あるいはその他の犯罪行為を行ったと主張している。
キルマー・アブレゴ・ガルシアのケースでは、トランプ政権は裁判所文書の中で、エルサルヴァドル国籍のアブレゴ・ガルシアの国外追放は「行政上の誤り(administrative error)」であったと認めたが、ホワイトハウスはその後、この見解に異議を唱えている。連邦最高裁判所からアブレゴ・ガルシアの帰国を「促進(facilitate)」するよう命じられたにもかかわらず、トランプ政権はアブレゴ・ガルシアがアメリカに帰国することはないと主張している。
トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアは現在エルサルヴァドル当局の管轄下にあるため、アメリカの裁判所が帰国を義務付けることはできないと主張している。
別のケースでは、連邦判事が先週、「サンクチュアリ」地域(“sanctuary”
jurisdictions)が「連邦資金へのアクセスを受けないようにする」大統領令は違憲の可能性が高いとの判決を下した。その後、トランプ大統領は月曜日、連邦移民当局との連携を怠ったサンクチュアリ都市への取り締まりを強化する大統領令に署名した。
複数のホワイトハウス高官は、裁判所が官僚機構の味方をしていると主張している。
(4)司法省、アメリカ移民・関税執行局の役割を拡大する(Expanding roles
of DOJ, ICE)
トランプ大統領は、最重要課題の執行の大部分を担う2つの機関、司法省(Department
of Justice、DOJ)とアメリカ移民・関税執行局(Immigration
and Customs Enforcement、ICE)の役割を拡大した。
トランプ大統領は、パム・ボンディ司法長官に対し、民主党の寄付者プラットフォーム「アクトブルー」への外国人によるダミー献金疑惑の捜査から、「反キリスト教的偏見の根絶(eradicate anti-Christian bias)」に向けたタスクフォースの指揮まで、幅広い任務を担うよう指示した。
トランプ政権はまた、司法省公民権局において一連の政策変更を実施し、「女子スポーツへの男性の介入排除()keeping men out of women’s sports」や「反キリスト教的偏見の根絶」といった優先事項に司法省職員たちが重点的に取り組むよう指示した。
アメリカ移民・関税執行局は、強制送還件数を急速に増やす任務も負っている。フロリダ州では州法執行機関と共同で「前例のない(first-of-its kind)」作戦を実施し、数日間で100人近くを逮捕した。また、日曜日の早朝にはコロラド州コロラドスプリングスのナイトクラブを急襲し、100人以上を拘束した。
加えて、FBIは金曜日、ミルウォーキー郡巡回裁判所のハンナ・C・デュガン判事を前例のない方法で逮捕した。デュガン判事は、アメリカに不法滞在している移民が法廷で逮捕を逃れるのを手助けし、トランプ大統領の移民政策を妨害しようとした疑いがある。
(5)民間機関をターゲットにする(Targeting of private
institutions)
トランプ大統領は、主要大学や法律事務所を含む様々な民間機関に対し、資金提供を停止し、企業への打撃を与えようとしている。
トランプ政権は、ハーヴァード大学が採用・入学手続きの変更、多様性・公平性・包摂性(diversity,
equity and inclusion)プログラムの廃止といったトランプ大統領の要求を拒否したことを受け、ハーヴァード大学への22億ドルの資金提供を停止した。
ハーヴァード大学はトランプ政権を提訴しているが、トランプ大統領はハーヴァード大学の免税措置にも狙いを定めており、国土安全保障省はハーヴァード大学の留学生受け入れを停止すると警告している。
パーキンス・コイ法律事務所やウィルマー・ヘイル法律事務所といった法律事務所は、トランプ大統領の政敵と協力していることで、トランプ大統領の怒りを買っている。大統領は様々な機関に対し、これらの法律事務所の従業員の機密情報取扱許可(セキュリティクリアランス)の剥奪、連邦政府施設へのアクセスの停止、そして政府と法律事務所との契約内容の精査を指示している。
パーキンス・コイ法律事務所とウィルマー・ヘイル法律事務所は、トランプ大統領の命令は違法であり、政府に関わる法律業務を遂行する能力に重大な危害をもたらすとして、裁判所に法的救済を求めている。司法省は、国家機密を誰に委託するかは大統領の裁量に委ねられていると主張し、これに反論している。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』
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