古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 アメリカの外交政策に関する考えについては大きな分類、グループ分け、潮流が存在する。私は、人道的介入主義派・ネオコン対リアリズムの対立があると分類している。これは、「世界各国に介入して各国の体制を変革する」ことを目指す介入主義(Interventionism)と「アメリカのパワーを国益のために使うことを最優先し、外国に介入することには抑制的であるべきだ」と考えるリアリズムの対立である。

 以下の論稿では、昨年の大統領選挙の共和党の立候補者たち(当時は民主党はジョー・バイデン前大統領が現職で2期目を目指すということで民主党には有力候補者はいなかった。栄枯盛衰、会者定離)と歴代の大統領たちの外交政策に関する考えを6つに分類して紹介している。大きくは、「国際主義者(internationalists)」対「非国際主義者(non-internationalirs)」の2つである。国際主義者はアメリカの影響力を行使し、世界に積極的に関わると考えるグループで、非国際主義者は世界に関わるのは抑制的であるべきだと考える。国際主義者の中には、(1)一極主義的国際主義者(Unilateral Internationalists)、(2)民主政体志向国際主義者(Democratic Internationalists)、(3)リアリスト国際主義者(Realist Internationalists)、多極主義的国際主義者(Multilateral Internationalists)の4つのグループがあり、非国際主義者には、(5)後退者(Retractors)と(6)抑制主義者(Restrainers)の2つのグループがある。

(1)の一極主義的国際主義者は、「アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する」という考えだ。(2)の民主政治体制志向国際主義者は、「民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている」。(3)のリアリスト国際主義者は、「アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている」。(4)の多極主義的国際主義者は、「他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている」。(5の後退者は、「世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する」。(6)の抑制主義者は、「アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する」。

 冷戦期からポスト冷戦期にかけてのアメリカの外交政策の主流は当然のことながら、国際主義者だった。しかし、アメリカの国力の衰退や世界構造の変化によって、国際主義者の中でもリアリズム系が台頭し、また、非国際主義者も勢力を増しつつある。その象徴がトランプ大統領だ。長い論稿ではあるが、是非以下の論稿を読んで一緒に勉強してもらえたらと思う。

(貼り付けはじめ)

アメリカの外交政策思考の混乱したスペクトラム(The Scrambled Spectrum of U.S. Foreign-Policy Thinking

-大統領、政府関係者、候補者は党の方針に従わない6つの陣営に分類される傾向がある。

アシュ・ジェイン筆

2023年9月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/27/republican-debate-trump-biden-foreign-policy-ideology/
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共和党大統領予備討論会では外交政策が大きく取り上げられそうだ。8月の討論会では、候補者たちは、アメリカの対ウクライナ支援継続を支持するかどうかという質問で激しい議論を行った。フロリダ州のロン・デサンティス知事は以前、ロシアのウクライナ戦争はアメリカにとって「重大な(vital)」国益ではないと示唆していたが、実際も懐疑的なようで、代わりにヨーロッパに対して更なる対応を求めた。起業家のヴィヴェク・ラマスワミは、そのような援助にもっと率直に反対し、アメリカが「他国の国境を越えた侵略から守る(protecting against an invasion across somebody else’s border)」ことは「悲惨な(disastrous)」ことだと述べた。一方、マイク・ペンス元副大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使は、ウクライナ支援への強い支持を表明し、ロシアの侵略に対抗するジョー・バイデン大統領の取り組みを事実上支持し、アメリカに更なる努力を求めた。

政治のもう一方の側においては、民主党所属の連邦議員の中にはバイデンのウクライナ政策を警戒する人たちもいる。それは、進歩主義的な民主党所属の連邦議員たちが大統領宛に送った、紛争の外交的終結とロシアに対する制裁緩和の可能性を求める書簡(後に撤回された)からも明らかである。

今日の分極化した政治的雰囲気の中では、このような横断的な見解は混乱に見えるかもしれない。たいていの国内政策問題では、政治指導者たちの名前の横にR(共和党)とD(民主党)がついているかどうかが、特定の問題に対する彼らの考え方を示す良い目安になることが多い。しかし、外交政策に関しては、通常の政治ルールは適用されない。むしろ、政治指導者たちが外交政策イデオロギーのスペクトラムのどこに位置するかが、より大きな意味を持つ。
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このスペクトラムを構成する複数の学派は、世界におけるアメリカの役割について根本的に異なる見解を反映しており、影響力は大きいが、あまり理解されているとは言えない。

外交政策の立場を区別しようとするとき、メディアはしばしば「タカ派対ハト派(hawks versus doves)」といった決まり文句(cliches)や、「アイソレイショニスト(isolationist)」「ネオコンサヴァティヴ(neoconservative)」といった流行語(buzzwords)に頼る。しかし、これらの用語は単純化されすぎたり(oversimplified)、誇張されたりする(exaggerated)傾向があり、有益な情報はほとんど伝わらない。国際関係論(international relations)もそれほど役に立たない。「リアリズム(realism)」は、国家がどのように行動すべきかではなく、どのように行動することが期待されるかを予測する学問的概念と日常的に混同されている。また、「アイデアリズム(idealism)」や「コンストラクティヴィズム(constructivism)」といった他の理論も、現実世界の意思決定を理解する上で役立つことは限られている。

しかし、政策立案者たちが世界をどのように捉え、アメリカの外交政策の方向性に影響を与えようとしているかには、決定的な違いがある。例えば、アメリカの影響力は概ね肯定的であり、アメリカは世界情勢において積極的な役割を果たすべきであると考える人々と、アメリカの傲慢さは往々にして悪い結果をもたらすと考え、アメリカの海外での関与を縮小したいと考える人々との間には、明確な二分法が存在する。

アメリカは民主政治隊の価値観と規範の推進を優先すべきだと考える人々と、より限定的な戦略的利益の擁護を信条とする人々との間にも、大きな隔たりがある。また、アメリカはロシアや中国といった敵対諸国に対して毅然とした態度を取るべきか、それとも共通の基盤を見出すべきなのかについても、見解は大きく分かれている。

私は、アメリカの世界における役割に関する主要な考え方を代表する6つの外交政策陣営を整理した。これらの陣営は、国際的な関与のスペクトラムに沿って位置づけることができる。そのうち4つは、このスペクトルの中でもより積極的な側、「国際主義者(internationalists)」に属し、アメリカは影響力を行使し、国際情勢に積極的に関与すべきだと考えている。そして、残りの2つは「非国際主義者(non-internationalists)」に属し、アメリカは国際社会への関与を縮縮小し、より前向きでない外交政策を採用すべきだと考えている。

●国際主義者(INTERNATIONALISTS

(1)一極主義的国際主義者(1. Unilateral Internationalists)

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一極主義的国際主義者:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■定義的な世界観(Defining worldview):一極主義的国際主義者は、アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、特に最初の任期中にこの考え方に近づいたが、この学派を直接的に支持したアメリカ大統領はいない。

■主な特徴(Key attributes):

・中国とロシアを国際システムにおけるアメリカの優位性に対する最大の脅威と見なし、アメリカの敵対勢力に対抗し、アメリカの力を誇示するために最大限の圧力をかけようとする。

・同盟諸国を犠牲にしてもアメリカの国益を優先し、民主政治体制的な価値観や「ルールに基づく秩序(“rules-based order)」よりも戦略的利益を重視する。しかし、同盟諸国の行動意欲には懐疑的ながらも、アメリカの同盟諸国を支持する。

・国連や国際協定に不信感を抱き、米国の力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関から米国が脱退することを支持する。

米国の利益を促進するために軍事力を使用することを支持する。

国連や国際協定に不信感を抱いており、アメリカの力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関からアメリカが脱退することを支持する。

・アメリカの利益のために軍事力を使用することを支持する。

■著名な発言者たち:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

(2)民主政体志向国際主義者(2. Democratic Internationalists)

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民主政体志向国際主義者:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ、ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン、クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

■定義的な世界観(Defining worldview):民主政治体制志向国際主義者は、民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている。この学派は、ハリー・トルーマン大統領が「自由で独立した国家が自由を維持できるよう支援する」ことがアメリカの政策であると宣言して以来、民主、共和両党を問わず、アメリカの選出指導者の間で主流となっている。

■主な特徴(Key attributes):

・民主政治体制と独裁政治の戦略的競争を国際システムの主要な断層線(the major fault line)と捉え、中国とロシアといった修正主義独裁国家(revisionist autocracies)に対抗するための積極的な措置を支持する。

民主政治体制同盟と連帯(democratic alliances and solidarity)を強く擁護し、「自由世界のリーダー(leader of the free world)」としてのアメリカの役割を維持することに熱心である。

・民主的価値観と人権を推進し、独裁政権の戦争犯罪と暴力的弾圧の責任を問うための強力な取り組みを支持する。

・民主政治体制とルールに基づく秩序を守るために、必要であれば武力行使も検討する用意がある。

■著名な発言者たち:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ

■最近の米大統領:ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

(3)リアリスト国際主義者(3. Realist Internationalists)

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リアリスト国際主義者:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン、リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ、ロン・デサンティス

■定義的な世界観(Defining worldview):リアリスト国際主義者は、アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている。元国家安全保障問題担当大統領補佐官のブレント・スコウクロフトとヘンリー・キッシンジャーは、この学派の典型的な実践者であり、彼らが仕えた大統領たちもこの考え方を支持した。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間競争(great-power rivalry)は世界システムにおいて不可避であると認識し、アメリカの同盟関係と、ライヴァル諸国を抑止し世界秩序を維持するための積極的な取り組みを支持する。

・戦略目標の推進のため、政治体制の種類に関わらず、敵対諸国と対峙し、あらゆる国と協力する用意がある。

・安定した勢力均衡(a stable balance of power)を達成するために、ライヴァル諸国と相互に妥協するか、分断を図る用意がある。

・「世界をあるがままに受け入れる(accept the world as it is)」傾向があり、アメリカの介入や民主政治体制促進の取り組みに警戒感を抱いている。

・アメリカの強力な防衛態勢を支持し、重要な国益を守るために必要であれば武力行使も辞積極的に行う。

■著名な発言者たち:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン

■最近の米大統領:リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ロン・デサンティス

(4)多極主義的国際主義者(4. Multilateral Internationalists)

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多極主義的国際主義者:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ、バラク・オバマ

■定義的な世界観(Defining worldview):多極主義的国際主義者は、他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている。バラク・オバマ大統領の外交政策はこの学派に深く根ざしており、現在、アメリカの気候変動対策首席交渉官を務めるジョン・ケリー元国務長官がその代表を務めている。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間の対立や戦略的競争を警戒し、敵対諸国に「手を差し伸べる(extend a hand)」ことで共通点を見出すことに熱心である。

・国際規範、良い統治、人権の推進に向けたアメリカの積極的な関与を支持する。

・国境を越えた課題への対応において、全ての国と協力することを目指し、特に気候変動(climate change)を優先する。

・包摂的な制度を通じた関与を優先するが、ルールに基づく秩序の促進のためにアメリカの同盟諸国と協力することを支持する。

・軍事力の使用には消極的(disinclined)であり、国連安全保障理事会の承認を得た場合にのみ検討する。

■著名な発言者たち:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ

■最近の米大統領:バラク・オバマ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

●非国際主義者(Non-Internationalists

(5)後退者(1. Retractors)

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後退者・非国際主義者:マイケル・アントン、ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

■定義的な世界観(Defining worldview):後退者は、世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する。ドナルド・トランプ大統領の外交政策はまさにこの学派の典型である。しかし、この学派の支持者は、1990年代後半の共和党大統領候補パット・ブキャナンや、アメリカを第二次世界大戦に巻き込ませまいとした1930年代のアメリカ・ファースト運動にまで遡ることができる。

■主な特徴(Key attributes):

・価値観や規範に対して非常に懐疑的で、陰謀論を信奉し、それに陥りやすく、アメリカの政策を操作する「ディープステート(deep state)」の役割を疑っている。

・同盟関係に批判的で、特にヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国を軽蔑し、国際機関を通じた協力の取り組みはナイーブで自滅的だと考えている。

・独裁政権との「取引と合意(make deals)」を求め、民主的な価値観や国際規範を軽視している。

・他国が「アメリカを騙す(ripping America off)」のを防ぐため、経済保護主義(economic protectionism)と国境封鎖を強調している。

・アメリカは軍事的に過剰な関与をしていると確信しているが、「強硬な態度(act tough)」を取り、アメリカの実力を示すために、時折限定的な軍事行動を行うことを支持している。

■著名な発言者たち:マイケル・アントン

■最近の米大統領:ドナルド・トランプ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

(6)抑制主義者(2. Restrainers)

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抑制主義者・非国際主義者:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■定義的な世界観(Defining worldview):抑制主義者は、アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する。この学派は依然として周縁的存在ではあるものの、近年、クインシー記念責任国家戦略研究所とその支持者たちの台頭に見られるように、ある程度の存在感を増している。

■主な特徴(Key attributes):

・国際システムにおけるアメリカの力と影響力に不信感を抱いており、欠陥のある民主政治体制、偽善(hypocrisy)、帝国主義(imperialism)を基礎にして考えると、アメリカには民主的価値観やルールに基づく秩序を推進する立場はないと考えている。

・アメリカは敵対諸国と不必要な戦い(unnecessary fights)を仕掛けており、海外における軍事態勢、同盟、制裁政策はしばしば過度に挑発的であると考えている。

・中国とロシアによる脅威を「誇張(inflating)」することを警戒し、敵対諸国と協力し相互妥協に至る外交努力を支持し、国家主義的な外交政策は傲慢で不快だと考えている。

・海外におけるアメリカ軍のプレゼンスの削減、NATOやその他の同盟諸国への関与の縮小を求め、武力行使に強く反対している。

■著名な発言者たち:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

この分析からいくつかの重要な点が導き出される。第一に、確かにこれらの陣営の境界線は曖昧であり、政策立案者たちは、特定の問題においては、これらの陣営のいずれか、あるいは複数の陣営にまたがっている場合が多い。しかしながら、これら6つの学派は十分に明確に区分されており、アメリカが外交政策をいかに進めるべきかという現代の議論に影響を与えている主要な世界観を代表している。

第二に、これらの学派の多くは党派の垣根を越える傾向がある。例えば、民主政治体制志向国際主義は、与野党の政治指導者たちから熱烈に支持されており、国際共和研究所(International Republican Institute)や全米民主研究所(National Democratic Institute)といった民主政治体制志向機関に見られるように、超党派の強力な支持基盤を有している。リアリズムもまた、アメリカの外交政策において長い伝統を持ち、民主、共和両党の国家安全保障担当者の共感を呼んでいる。同様に、抑制者は、左派の進歩主義者と、ワシントンの国際的関与の縮小を求めるリバータリアンの両方から支持を集めている。一方、一極主義的行動主義は主に保守派に支持され、多国主義的国際主義は主にリベラル派の支持を得ている。近年、トランプ支持派の共和党員の間では、こうした姿勢の撤回が主流となっている。

第三に、近年の米大統領がこのスペクトルのどこに位置づけられるかは自明ではない。就任当初は特定の陣営に傾倒するかもしれないが、ほとんどの大統領は純粋主義者(purists)ではなく、政権を担う中で、多くの大統領が、一貫性があり予測可能な外交政策の理念を維持することを困難にする実際的かつ政治的な現実に直面することになるだろう。

例えば、バラク・オバマはリアリスト国際主義に傾倒していたように見え、ロシアとの関係を「リセット(reset)」しようとし、後にシリアのバシャール・アサド大統領による化学兵器使用の責任追及のためのアメリカ軍派遣を拒否した。しかし、オバマがキューバやイランといった敵対諸国への関与や国連を通じた活動を重視していたことを考えると、彼の外交政策の主眼は多極主義的国際主義とより整合しているように見えた。

ジョージ・W・ブッシュもまた、様々な立場に立脚していた。世界的な対テロ戦争の開始に際し、ブッシュはアメリカの優位性を主張しようと決意し、一極主義的国際主義に傾倒しているように見えた。しかし、イラクとアフガニスタンにおける民主政治体制の推進、彼の代名詞である「自由のアジェンダ(Freedom Agenda)」、そして2回目の就任演説における「世界の専制政治の終焉(ending tyranny in our world)」の訴えなど、ブッシュの全体的な世界観はより、民主政治体制志向国際主義に根ざしているように見えた。

バイデンがどの立場を取るかは依然として議論の余地がある。現在、バイデン政権の国家安全保障ティームは、アフガニスタンからの撤退とサウジアラビアのムハンマド・ビン・スルタン王太子との交渉再開を求めるリアリストと、大統領による民主政治体制サミット開催の取り組みを支持する民主政体志向国際主義者に分裂している。しかし、バイデンがNATOと協力して民主的なウクライナを守るという揺るぎない決意と、世界は「民主政治体制と独裁政治の世界規模での闘争()global struggle between democracy and autocracy」に直面しているという確信を踏まえると、これまでのバイデン政権の外交政策の大筋は、民主政治体制志向国際主義とより整合しているように思われる。もっとも、より明確な判断は、バイデンの任期満了まで待たなければならないだろう。

それでは、現在の共和党候補者たちはどうなるのだろうか? ペンス、ヘイリー、そしてニュージャージー州元知事のクリス・クリスティは、ロシアの侵略に立ち向かうよう訴え、中国の人権侵害を非難しており、まさに民主政治体制志向国際主義陣営に属している。ドナルド・トランプには、もちろん独自の路線がある。一方、デサンティスとラマスワミは、アメリカの国際社会への関与に懐疑的な共和党支持者からの支持獲得に苦戦する中で、リアリズムとトランプの撤回との間で板挟みになっているように見える。デサンティスはウクライナから中国への軸足を移すことを支持しており、これはトレードオフについて非常に現実的な考え方と言える。ロシアと中国を分断する戦略を提唱してきたラマスワミは、時折リアリストのようにも聞こえるが、ロシア・ウクライナ戦争へのアメリカのいかなる関与も回避し、台湾を中国に譲渡する可能性、そして「アメリカの利益を最優先する(interests of America first)」という彼の姿勢は、彼が撤回に向かっていることを示唆しているように思われる。

有権者たちは次期大統領を選ぶ際に外交政策を中心的な要素とは考えていないかもしれないが、アメリカの指導者が世界とどのように関わっていくかは、アメリカ国民の安全と繁栄にとって極めて重要である。最も影響力のある外交政策の学説をより明確に理解することで、有権者たち、そして候補者たち自身も、より情報に基づいた選択を行うことができるようになるだろう。

※アッシュ・ジェイン:米国土安全保障省(U.S. Department of Homeland SecurityDHS)職員。最近まで、アトランティック・カウンシル(大西洋評議会)傘下のスコウクロフト戦略安全保障センターで民主秩序担当部長を務めていた。ここで表明された見解は、米国土安全保障省(DHS)、またはアメリカ政府に帰属するものではない。Xアカウント:@ashjain50

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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