古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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第2次ドナルド・トランプ政権100日では様々なことが起きたが、今はひと段落で、トランプ関税については、90日間の猶予の間に、各国がトランプ詣でをして、二国間で個別交渉を行い、妥協や譲歩を引き出すという動きになっている。日本も赤澤亮正経済再生担当大臣が何度も訪米し、トランプ大統領自身とも会談を持っている。日本としては自動車に関する関税や米を含む農産物について、妥協を引き出したいところだ。
 トランプ大統領が高関税を正式に打ち出したのは2025年4月2日で、「解放記念日(Liberation Day)」関税と呼んだが、これによって、株式が大幅下落し、米国債の金利が上昇したために、後退を余儀なくされた。スコット・ベセント財務長官が主導権を握る形で、状況が悪化することを防いだ。

私が奇妙だと思っているのは、高関税を発表すれば、株価が下落し、米国債の金利が上昇するくらいのことは政権が予測していたのではないか、それなのに慌てた様子で妥協を行ったということだ。ここからは私の想像で話を進めていきたい。
 現在の株式の高騰は現実の経済全体を反映したものではない。中央銀行が供給した資金が株式や不動産投資に回っているだけのことだ。コロナ禍もあり、中央銀行は市場に多くの資金を供給した。それが社会の隅々にまで行き渡れば良かったが、無利子の資金は富裕層や大企業に集中して回り、彼らを更に肥え太らすことになった。トランプ政権を誕生させたのは、貧乏な白人労働者たちを中心とする一般国民である。トランプ政権は富裕層や大企業の利益最優先ではない。株価の下落や米国債の金利上昇はウォール街や投資マネーにとっては痛手であるが、彼らのブクブクに膨れた、あぶく銭の資産を少し減らすことは重要なことだ。トランプ政権はそこから「撤退」して妥協する形になったが、いつでもこのようなことができるんだぞということを示した。これは大きい。富裕層や大企業はトランプの一挙一投足に気を遣わねばならなくなった。

 共和党は金持ちの党であったが、トランプの出現によって、そのウイングは広がっている。そして、トランプ政権は大きな矛盾を抱えることになった。貧乏人のための政策を行いながら同時に金持ちたちの利益もある程度は守らねばならない。この矛盾をどう解決するのか、それともそもそもそんなことはできないのか、何か共通の敵を見つけるのか、これから注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領が就任100日で経済を変えた5つの方法(5 ways Trump has changed the economy in his first 100 days

トバイアス・バーンズ筆

2025年4月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/trumps-first-100-days/5273522-5-ways-trump-has-changed-the-economy-in-his-first-100-days/

ドナルド・トランプ大統領の就任から100日間の経済政策は、これまでとは全く異なるものだった。

トランプ大統領の関税措置は、世界の貿易関係を根本から覆し、企業と投資家を政権の一挙手一投足に合わせて右往左往させた。

トランプ大統領は複数の規制機関に猛攻撃を仕掛け、広範囲にわたる政府職員の人員削減を命じた。これは、テクノロジー業界の支持者たちが唱える「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」というスローガンを、かつてないほど極端に押し進めたと言えるだろう。こうした命令と方針転換の嵐のようなリズムに、アメリカの経済同盟諸国も敵対諸国も、トランプ大統領の政策がどこに向かうのか見極めようと苦慮している。

景気後退から戦争に至るまで、経済危機の際の伝統的な安全資産であるアメリカの金融資産でさえ、弱体化の兆候を見せている。

ここで、トランプ大統領の政策が就任後100日間に経済に与えた影響を見てみよう。

(1)1世紀ぶりの高関税率(Century-high tariff rates

国際通貨基金(International Monetary FundIMF)の分析によると、アメリカの総関税率は25%を超え、1世紀以上ぶりの高水準となっている。

総関税率の主な構成要素は、中国に対する145%の関税、10%の一般関税、そして木材、自動車、金属などの製品に対する特定関税である。

金融当局は輸入税についてスタグフレーション的な見通し(a stagflationary picture)を示しており、IMFから連邦準備制度理事会(FRB)に至るまで、様々な機関が、その結果として物価上昇と経済成長率の低下を予想している。

IMFのエコノミストたちは4月の経済見通しで、「(関税水準は)それ自体が経済成長への大きなマイナスショックだ」と述べている。

トランプ大統領は関税を断続的に導入しており、発令後、すぐに撤回するといった行動を何度も繰り返してきた。

撤回された関税には、カナダとメキシコへの25%の関税、中国からの800ドル未満の貨物に対するデミミニス免除(the de minimis exemption)の終了、そして数十カ国のアメリカの貿易相手初校に対する様々な税率の国別関税の一時停止などが含まれる。商務省は火曜日、5月3日に予定されていた自動車部品への関税を縮小した。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の国際ビジネス部門長ビル・ラインシュは本誌の取材に対して次のように語った。「これは(貿易相手国を)不均衡な状態に維持することを意図している。これにより、アメリカは最大限の立場を取り、その後、そこから後退することが可能になる。これはトランプのいつものやり方だ」。

ウォール街の投資家たちは関税を激しく非難している。億万長者のヘッジファンドマネージャーであるビル・アックマンは、トランプの特定国への関税は「誤った計算(bad math)」に基づいており、「世界経済を落ち込ませている(taking the global economy down)」と述べた後、最終的に関税を緩和したことを称賛した。

主要アメリカ株で構成されるダウ工業株30種平均は、トランプの就任以来約8.4%S&P500は約8.7%下落している。ハイテク株中心のナスダック総合指数は12%以上も下落している。

(2)貿易の再構築と国際関係の揺さぶり(Resetting trade, shaking up international relations

トランプ大統領の関税は、アメリカの経済的なライヴァル諸国と同盟諸国の両方を標的にしており、中国のような敵対国との緊張を高める一方で、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ連合(European UnionEU)といった長年のパートナー国との新たな緊張を生み出している。

中国は貿易戦争に「最後まで(to the end)」戦うと明確に表明し、先手を打つかどうかはアメリカ次第だと述べている。

中国外務省の郭嘉昆(Guo Jiakun)報道官は火曜日に、「この関税戦争(tariff war)はアメリカが始めたものだ。もしアメリカが本当に交渉による解決を望むのであれば、脅迫や圧力を止め、中国との対話を追求するべきだ」と述べた。

専門家たちは、トランプ大統領と会談する代表団は、トランプ大統領が貿易戦争で実際に何を求めているのかを理解していないと指摘する。

ラインシュは本誌に対して次のように語った。「今朝と先週、外国の関係者といくつか話し合った。「彼らは『彼はXについてもYについても言及しなかった。私たちは彼が話を持ち出すと予想していたのに。一体何が起こっているんだ?』と言っている」。

生産とサプライチェインの専門家たちは、戦後のアメリカの貿易政策の集大成である世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に体現された一元的な貿易協定とは異なる、多極的な世界貿易システムの新たな基盤が築かれつつあると見ている。

供給管理研究所(Institute for Supply ManagementISM)のCEOトム・デリーは本誌とのインタヴューで次のように語った。「私が話を聞いたほとんどの人は、二極化した貿易体制に向かっていると考えている。WTO中心の、単一の合意に基づく貿易ルールではなく、西側中心、おそらくアメリカ主導の貿易圏(a Western-centered, maybe U.S.-led trade bloc)と、東側中心、中国主導の貿易圏(an Eastern-centered, China-led trade bloc)だ」。

(3)アメリカ金融資産からの逃避(A flight from U.S. financial assets

トランプ大統領が世界経済に大きな変化をもたらしていることを示す最も確かな兆候は、おそらく、米ドルが他の通貨に対して同時に下落し、アメリカ国債が市場で売られたことだ。

通常、投資家たちは経済の不確実性が高まるとアメリカ資産に逃げ込むが、この傾向は2001年9月11日の同時多発テロから世界大不況に至るまで、様々なショックにも耐えてきた。

しかし、指標となる米ドル指数はトランプ大統領の就任以来一貫して下落しており、4月2日と4月9日の追加関税発表直後には顕著な下落を記録した。

トランプ大統領が4月2日の「解放記念日(Liberation Day)」に関税を発表した直後、債券も売られ、トランプ政権は発効当日に特定国向け関税の90日間の一時停止を宣言した。

ユーロが対ドルで上昇するにつれて、アメリカ国債とドイツ国債の利回り格差は拡大した。これは異例のパターンであり、エコノミストたちはすぐにこの動きに気づいた。

タンパ大学の経済学者ヴィヴェカナンド・ジャヤクマールは今週の論説記事で、「2年物アメリカ国債と2年物ドイツ国債の利回り格差が200ベーシスポイントを超えたにもかかわらず、ユーロは対ドルで急上昇した。これは通常の市場動向の転換を示し、アメリカからヨーロッパへの資本逃避を示唆している」と述べている。

(4)移民パターンと労働市場(Migration patterns and the labor market

トランプ大統領はまた、国連が「世界で最も危険な移民の地上陸路(deadliest migration land route)」と表現するアメリカ南部国境沿いの取り締まりを強化し、移民の流入を阻止しようと努めてきた。

アメリカ税関・国境警備局によると、2024年度のこの時点で国境での接触件数は130万件、2023年度には120万件に達していた。今年は38万1000件に上る。

近年、移民はアメリカの労働力の動向において重要な要因となっており、成長予測や物価水準にも影響を与えている。

連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は昨年、多くの人が景気後退を予想していたにもかかわらず、2024年の経済が予想を大幅に上回ったのは、移民に関する測定値の違いが原因かもしれないと指摘した。

パウエル議長は昨年4月、移民問題に言及し、「これはまさに、私たちが自問自答してきたことの真相を説明している。つまり、外部のエコノミストほぼ全員が景気後退を予測していた年に、なぜ経済が3%以上成長できたのかということだ」と述べた。

移民の減少は、長期的には労働力不足と経済成長の鈍化を意味する可能性がある。保守派は、アメリカの労働者の利益のためには、こうしたコストを支払う価値があると主張する。

ヘリテージ財団予算センター所長リチャード・スターンは、本誌に対し、「企業に不法労働者、つまり労働法を破っても税金を全額負担しなくて済む労働者を雇用する能力を与えれば、それは事実上、不法労働者を雇用するための政府補助金となってしまう」と語った。

ヘリテージ財団が重要な役割を担って策定した「プロジェクト2025」で明記された政権の取り組みについて問われたスターンは「順調に進んでいる(on track)」と述べた。

スターンは「政権最初の100日間を振り返ると、政権が容易に実行可能なプロジェクトの部分を見ると、その主要部分の多くで間違いなく順調に進んでいる」と述べた。

(5)減税に先立ちIRS(内国歳入庁)を解体(Gutting the IRS ahead of tax cuts

トランプ大統領と、イーロン・マスクが率いるコスト削減委員会(the cost-cutting panel)である政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection BureauCFPB)、教育省(Department of Education)など、連邦政府諸機関の閉鎖をしてきた。

保守派の中には、DOGEの取り組みを政治的な芝居だと一蹴している。財政的に保守的なマンハッタン研究所の上級研究員ジェシカ・リードルはロイター通信に対し、「DOGEは真剣な取り組みではない(DOGE is not a serious exercise)」と述べ、最終的には節約効果を上回る費用がかかると予測している。

しかし、DOGEは、1万2000人を超えるIRS職員全体の4分の1から40%を人員削減する可能性がある。これは、政府の歳入とその財源に深刻な影響を与える可能性がある。

これは特に、IRSがバイデン政権下で開始し、トランプ政権によって完全に撤回された大規模な業務改革を考慮すると、なおさらだ。

アーバン・ブルッキングス税制政策センターの上級研究員ハワード・グレックマンは本誌に対して次のように語った。「彼らは何千人もの人を解雇し、さらに何千人もの人が辞めた。所得税制度に与えるダメージは計り知れない。文字通り、私たちは、彼らが何をしているのか分からないため、ダメージを測定することができない」。

トランプが1月に再就任して以来、IRS(内国歳入庁)には5人の長官が就任しており、グレックマンはその交代率を「驚異的(remarkable)」と評した。

IRSの空洞化は、共和党議員たちが2017年の減税延長と、トランプが選挙運動中に約束した新たな未検証の減税策の追加を進めている中で起こっている。

最終的な対策は、数兆ドル規模の財政赤字を増加させる可能性があり、公式会計では無視される見込みの4.6兆ドルの財政赤字拡大も含まれる。

(貼り付け終わり)
(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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