古村治彦です。

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 イスラエルがイランに対して攻撃を仕掛け、その後、イスラエルとイランの間でミサイル攻撃の応酬が続いている。両国で既に多数の死傷者が出ている。イスラエルは、イランの核兵器開発を阻止することを大義名分としているが、世界各国の原子力発電所などに査察を行う専門機関である世界原子力機関(IAEA)は、イランの核兵器開発の証拠はないと報じている。そして、2025年6月21日に、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イランの核開発関連施設3カ所をアメリカ空軍の戦闘機を使って攻撃を行った。

 イスラエルのイランに対する攻撃に関しては、中国、ロシア、インドが国際法違反だとして非難している。イランは、2023年から上海協力機構(Shanghai Cooperation OperationSCO)に正式加盟し、2024年にはBRICSの正式メンバーになっている。中東地域における大国であり、かつ、私がこれまでの著作で述べてきた「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)対西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の西側以外の国々にとっての重要な国である。イランを攻撃するということは、それらの国々との関係を緊張させるということになる。非常に拙劣な手法であると言わざるを得ない。戦術レヴェルでの攻撃が成功したとして、それだけで、戦略的な成功をそれで引き寄せることはできない。アメリカは中国との間でレアアースの貿易で命綱を握られていると言っても過言ではないが、ホルムズ海峡の封鎖やレアアースの輸入に何かしらの障害となってしまえば、自分で自分の首を絞めることになる。
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 世界を俯瞰して見ると、ウクライナとイスラエルは、私がこれまでの著作で述べてきた「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)対西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造の最前線である。ウクライナとイスラエルは、アメリカやヨーロッパ諸国(そして、日本も含まれる)が直接関わりたくない「汚れ仕事(dirty work)」をやっている。その上で、姑息なヨーロッパの諸大国(イギリス、ドイツ、フランス)は「まあまあ、落ち着いて。外交で解決しましょう」とにやにやした、したり顔で出てきて、交渉を行って、手柄を持っていく。実力もないくせに大国ぶるという最低最悪の存在だ。

 ウクライナが対ロシア、イスラエルが対イランということになれば、対インドはパキスタンになるだろうし、もっと言えば、対中国は日本ということになる。トランプ政権は、「アメリカ・ファースト」「アイソレイショニズム」を政策の柱に掲げてきたが、政権内部には強硬派が存在する。彼らが暴走してしまえばこういうことになる。私たちが恐れるべきは、日本が中国との戦争をけしかけられることである。そして、アメリカに切り捨てられることである。
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(貼り付けはじめ)

中国がイスラエルとの戦いでイランを支援した(China Backs Iran in Fight Against Israel

-北京の対応はこれまで以上に強力かつ直接的だ。

ジェイムズ・パルマー筆

2025年6月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/17/china-iran-israel-conflict-diplomacy-oil-trade-defense-weapons/

『フォーリン・ポリシー』のチャイナ・ブリーフへようこそ。

今週のハイライト:イラン・イスラエル紛争における中国の立場、習近平国家主席のカザフスタン訪問、そして中国がレアアース元素をめぐるアメリカへの影響力行使。

●中国がイランを支持し、イスラエルを非難した(China Supports Iran, Condemns Israel

中国は、進行中のイラン・イスラエル紛争について明確な立場を表明した。土曜日、王毅外相はイスラエル外相との電話会談で、イスラエルによるイランへの攻撃は「容認できない(unacceptable)」ものであり、「国際法違反(violation of international law.)」であると述べた。

王外相は、イラン外相に対し、「(イランの)国家主権を守り、正当な権利と利益を擁護し、国民の安全を確保する」という点で支援を表明した。習近平国家主席も火曜日の声明で同様の発言を行った。中国の対応は、昨秋のイラン・イスラエル紛争への対応よりも強力かつ直接的なものとなっている。

中国は外交資源を総動員し、イランも加盟している上海協力機構(the Shanghai Cooperation OrganizationSCO)を通じてイスラエルの最新の攻撃を非難する声明を出した。これに対し、上海協力機構加盟国でありイスラエルと強い武器取引関係を持つインドは、声明について協議を受けていなかったにもかかわらず、非難を向けた。

イランは近年、中国との関係を緊密化させており、両国は定期的に軍事演習で協力し、2021年には経済・軍事・安全保障協力協定に署名した。イランの原油輸出の90%以上は中国向けで、制裁を回避するため、西側諸国の銀行や海運会社を迂回し、人民元建て取引を行うといった迂回策が用いられている。

イスラエルがイランの石油産業を混乱させることに成功すれば、中国にとって痛手となる可能性がある。しかし、イランは中国にとって6番目の供給国に過ぎないため、中国は打撃を吸収できるだろう。

中国はイランに対し、強い声明を出しているものの、言葉上の支援以上のことは行わない可能性が高い。中国は中東情勢にこれ以上巻き込まれることを望んでおらず、むしろアメリカにとっての混乱を歓迎している。ワシントンのタカ派は、中国とイランの関係を実際よりも強固に見せかけようとしているが、イランは結局のところ、中国の中核的利益(core interest)にとって重要ではない。

中国が介入するのであれば、おそらくイランが過去に脅迫したようにホルムズ海峡を封鎖しないよう圧力をかけるためだろう。中国の主要な石油供給国はロシアだが、中国の石油輸入の約半分は湾岸諸国から来ている。ホルムズ海峡の封鎖とそれに伴うエネルギー価格の高騰は、既に低迷している中国経済にとって痛手となるだろう。

中国は、2023年のイラン・サウジアラビア和解の仲介を足掛かりに、和平交渉の仲介役を務めることを期待しているかもしれない。しかし、イスラエルが中国を中立的な仲介者として受け入れるとは考えにくい。イスラエルとハマスとの戦争の中で、中国の親パレスティナの立場と中国のインターネット上での反ユダヤ主義の蔓延により、両国の関係は悪化している。中国に合意を求めることは、気難しいアメリカ大統領を遠ざけるリスクもある。

中国にとって、イラン・イスラエル紛争のプラス面は、自国の防衛技術の新たな市場獲得となる可能性がある。パキスタンは最近のインドとの小競り合いで予想を上回る成果を上げており、その成功は主に中国製システム、すなわちこの紛争で初めて実戦投入されたJ-10C戦闘機と、主に中国製の防空システムの使用によるものだ。

これまでイスラエルは、イランの時代遅れの防空システムと空軍を圧倒してきた。余裕ができれば、その改善はイランにとって最重要課題となるだろう。中東のバイヤーはかつてJ-10に懐疑的だったが、イランは今回の紛争以前から関心を示していたようだ。

中国はかつてイランの主要な武器供与国だったが、両国は2005年以降、新たな契約を締結していない。しかし、今や状況は一変する可能性がある。

●注目のニュース(What We’re Following

習近平国家主席は中央アジアに接近している。習近平国家主席はカザフスタンを訪問し、中央アジアの指導者らと会談した。エネルギー資源が豊富な中央アジア地域における中国の貿易拡大を目指している。習近平国家主席は就任以来、ロシアに次いでカザフスタンを最も多く訪問している。その間、中国はロシアに代わりカザフスタンの主要貿易相手国となった。

しかし、カザフスタン国民は隣国に対してそれほど好意的ではなく、自国のエリート層が中国政府に身売りしているという意見を表明する人も多い。中国による新疆ウイグル自治区におけるカザフ族の強制収容はカザフスタンで激しい反発を引き起こしているが、カザフスタン政府は中国政府を宥めるため、新疆ウイグル自治区の人権活動家たちへの弾圧を行っている。

恋愛小説を取り締まりしている。中国警察は、男性同士の同性愛関係を描いた人気のオンライン恋愛小説、いわゆるボーイズラブ小説(boys’ love fiction)の作者を再び逮捕している。日本で生まれたこのジャンルは、主に女性によって、女性向けに書かれている。習近平政権下では、オンライン検閲が繰り返しこのジャンルを標的にしてきた。

この敵意は、同性愛嫌悪、反日感情、そして女性のセクシュアリティに対するますます強まる家父長制的な態度といった、複数の要因が重なり合って生じている。今回の一連の動きは、警察が管轄外で発生した犯罪を探し出し、罰金を科して私腹を肥やす「深海漁業(deep-sea fishing)」の表れでもあるように思われる。

全国で少なくとも100人の作家が、他省の当局から発行されることが多い警察からの召喚状を受け、罰金や懲役の可能性に直面していると推定されている。

スコット・ケネディが『フォーリン・ポリシー』誌に書いているように、中国はこの分野で明らかに影響力を発揮している。レアアース生産のほぼ完全な独占状態は、アメリカの製造業の重要部門を停止させる力を持っている。北京はこれまで、その力を十分に行使することを避けてきた。それは主に、ワシントンがレアアース精錬の国内回帰に追い込まれることを懸念していたためだ。

しかし、この一時停止は、中国が援助の蛇口を閉める用意があることを示していた。ロンドン会合の前に、アメリカ当局は重要な技術輸出に対する新たな制限を課すことを検討したがこのチキンゲームで中国が明らかに勝利した。

ここ数日、ドナルド・トランプ米大統領の発言はますます融和的になり、中国人留学生のヴィザ取り消しの脅しを撤回し、中国とその友好国であるロシアをG7に招待したいという意向を表明した。

香港の労働団体が閉鎖された。中国本土の抗議活動、賃金紛争、ストライキに関する情報を香港に拠点を置いて提供してきた中国労働公報が、財政問題を理由に31年間の活動に幕を閉じた。トランプ政権下でのアメリカの対外援助打ち切りが、中国労働公報に影響を与えた可能性がある。

しかし、中国労働公報の突然の閉鎖とウェブサイトの消失は、香港当局の標的となった可能性を示唆している。2020年に厳格な国家安全法が導入され、香港では言論の自由が事実上排除されたが、一部の団体は生き延びている。

中国労働公報は、天安門事件の反体制活動家で中国本土から亡命した韓東方によって設立された。彼は1989年の民主化運動において、しばしば忘れられながらも極めて重要な役割を果たした労働者の出身だ。中国では、公式労働組合は機能不全に陥っているが、それ以外は労働組合の結成は違法であり、劣悪な労働条件や賃金不払いが蔓延している。

非公式の労働組合や活動家は、移民労働者の労働権擁護において大きな役割を果たしているが、他の市民社会と同様に、習近平政権下では彼らも標的にされている。

※ジェイムズ・パルマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。Blueskyアカウント: @beijingpalmer.bsky.social

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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