古村治彦です。
※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
ドナルド・トランプ大統領は、イラン国内の3カ所の核開発関連施設攻撃を承認した。中東地域は緊迫の度を高めている。イランがホルムズ海峡の封鎖まで踏み切れば、世界経済に大きなダメージを与えることになる。アメリカが石油を増産しても需要に追い付かないだろう。そして、アメリカは逆にそうした機会(原油価格の急激な高騰)を利用して、高値で同盟諸国に原油を売りつけるだろう。
トランプ大統領に強くイラン攻撃を進言したのは、マイク・ハッカビー(Mike
Huckabee、1955年-、69歳)駐イスラエル米大使だ。マイク・ハッカビーという名前はアメリカ政治に詳しい人だったら名前を知っているだろう。マイク・ハッカビーは1996年から2007年までアーカンソー州知事を務めた。2008年の大統領選挙では、共和党予備選挙に出馬し、善戦した。ハッカビーは福音派の牧師という一面も持つ。娘のサラ・ハッカビー・サンダース(Sarah Huckabee Sanders、1982年-、42歳)は2017年から2019年まで、第1次ドナルド・トランプ政権で、ホワイトハウス報道官を務め、2022年からは父と同じ、アーカンソー州知事を務めている。
福音派(Evangelicals)はキリスト教プロテスタントの一派で、聖書にもとづく信仰を基盤とし、聖書で起きるとされることを信じている。従って、聖書に書かれているパレスティナの地でユダヤ人による国家が建設されることを徹底的に支持している。そして、その後に来るのはハルマゲドン、善と悪の最終決戦で、自分たちが救われて、自分たち以外は地獄に落ちて責め苛まれることになるという信仰を持っている。これを敷衍すれば、彼らはハルマゲドンの到来を待ち望んでいる。彼らの世界観からすれば、核兵器の使用を伴う世界規模での戦争はハルマゲドンにつながるということになる。
トランプ派、こうした考えを持つ、福音派のハッカビーを駐イスラエル米大使にした。そして、今回のイランに対する攻撃の前に、ハッカビーは、トランプを「激励する」内容の文章を送り、トランプはそれをSNSに投稿した。マイク・ハッカビーの「激励」には、トランプを1945年のハリー・トルーマン大統領になぞらえる描写がある。これはつまり、「あなたはトルーマンがやったように、核兵器使用の決断をする」ということになる。トランプにイランに対する核兵器使用を決断することを示唆している。
トランプのイラン攻撃は、核開発関連施設に限定されたもので、イランからの報道によると、核開発の原材料などは攻撃前に別の場所に移動してあったということだ。私は今回の攻撃は「管理された」攻撃だと考えている。マイク・ハッカビーを代表とする福音派=キリスト教シオニストたちとイスラエルの顔を立てつつ、事態がエスカレートしないようにしたいということだと考える。しかし、不測の事態が起きればどうなるかは分からない。アメリカでも大きな勢力を持つ福音派をトランプも無視はできなかっただろうが、それ以上のことは望まないだろう。
(貼り付けはじめ)
ハッカビーがトランプはイランに核攻撃を仕掛け、「天」からの導きに従うべきだと示唆(Huckabee
Suggests Trump Should Nuke Iran, Follow Guidance From “Heaven”)
-福音派の牧師であり駐イスラエル米大使でもあるハッカビーが、トランプに対し、戦争に関する導きを「天から聞くだろう(will hear from heaven)」と語った。
シャロン・ジャン(『トゥルースアウト』誌)筆
2025年6月17日
『トゥルースアウト』誌
https://truthout.org/articles/huckabee-suggests-trump-should-nuke-iran-follow-guidance-from-heaven/
駐イスラエル米大使マイケル・ハッカビーは、ドナルド・トランプ大統領に対し、イランに対して核爆弾を使用するべきだと示唆し、イスラエルのイラン戦争に関する決定を下す際には「天から聞こえる(hear from heaven)」声に耳を傾け、その導きに従うよう強く求めた。
火曜日、トランプ大統領はSNSのトゥルース・ソーシャル(Truth Social)への投稿で、ハッカビー大使から送られてきたという長文のテキストのスクリーンショットを投稿した。ハッカビーは福音派(evangelical)でキリスト教シオニスト(Christian Zionist)であり、トランプはハッカビーを「偉大な人物!(Great Person!)」と称賛している。
ハッカビーは、この文章の中で、トランプが現在、アメリカをイラン攻撃にさらに関与させるべきかどうかという決断を下している現状は、1945年にハリー・トルーマン大統領が直面した決断に似ていると述べている。1945年、トルーマン大統領は広島と長崎に2発の原爆を投下し、日本の何十万人もの罪のない人々を殺害し、2つの都市を壊滅させた。
ハッカビーはさらに、トランプを説得するのではなく「勇気づける(encourage)」のだと述べた。さらに次のように書いた。「神はペンシルヴァニア州バトラーで、あなたをこの1世紀、いやおそらく史上最も影響力のある大統領にするために生かした。私の生涯で、あなたのような立場に就いた大統領はいない。1945年のトルーマン大統領以来だ」。
この支離滅裂なメッセージは、イスラエルがイランの核兵器開発計画を標的として開始した戦争において、トランプがイランに核爆弾を使用するべきだと示唆していることを考えると、極めて皮肉なものだ。ただし、これまでの標的と犠牲者の大半は民間人だ。
ハッカビーはまた、トランプに対し「神の声(HIS voice)」に耳を傾けるよう促し、この問題について「天から聞くだろう(will hear from heaven)」と述べている。これは明らかに神の声を指している。
アメリカの多くの福音派キリスト教徒たち(evangelical Christians)と同様に、ハッカビーもキリスト教シオニストであり、終末の預言(the end-times prophecy)とイエス・キリストの再臨(second
coming of Jesus Christ)を実現するためには、イスラエルがパレスティナを支配しなければならないという信念を抱いている。そうなれば、キリストは新時代にイスラエルを統治し、全ての人々がキリストを崇拝するか、滅ぼされて地獄に堕ちるかのどちらかになる。
キリスト教シオニストの一部は、パレスティナの完全支配を目指すイスラエルを破壊しようとするイランのような敵国に対し、イスラエルは優位を主張すべきだと公然と説いている。ハッカビーは、占領下のヨルダン川西岸地区をユダヤとサマリアと呼ぶことや、「パレスティナ人など存在しない」と発言したことで激しく批判されている。
10年以上にわたり米国にイランとの戦争を訴えてきたリンジー・グラハム上院議員(共和党、サウスカロライナ州選出)は、ハッカビー氏の発言を称賛し、「まさにその通りだ」と述べた。
Sen. Lindsey Graham (R-South Carolina), who
has spent over a decade urging the U.S. to enter into a war with Iran, praised
Huckabee’s text, saying it is “spot on.”
「今こそ中東におけるこの恐ろしい章を終わらせ、新たな章を始める時だ」とグラハム議員は述べ、イランの政権交代という古くからのネオコンの幻想に言及しているようだ。
“It is now time to end this terrible
chapter in the Middle East and start a new chapter,” said Graham, seemingly
referring to an old neo-conservative fantasy of regime change in Iran.
この文書は、トランプ大統領を刺激してイランに極端な武力を行使させようとするものだが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がトランプ大統領にイラン攻撃を公然と促し、現在のアメリカ軍による防衛支援に加えてイスラエルにさらなる支援を与えているという微妙な時期に出されたものだ。
トランプ大統領が火曜日に、イランは核兵器の開発を進めていないというアメリカ情報機関の評価を一蹴した発言と同様に、ハッカビーがより高次の目的を掲げたことは、ジョージ・W・ブッシュ大統領がイラク戦争を開始した際の奇妙な理由を彷彿とさせる。アメリカによるイラク侵攻開始からわずか数カ月後、ブッシュ大統領はイスラエル・パレスティナ首脳会談で、「神からの使命に突き動かされている(driven with a mission from God)」と述べたと報じられている。
トランプ大統領の次の動きは不透明だ。彼は繰り返し、イランに核合意という政権の要求に屈服させることが目標だと述べている。火曜日、彼はトゥルース・ソーシャルに「完全なる降伏(COMPLETE SURRENDER)」と投稿した。
トランプ大統領は、J・D・ヴァンス副大統領か、中東担当特使のスティーヴ・ウィトコフを交渉に派遣する可能性があると述べている。『アクシオス』誌が引用した情報源の話によると、トランプ大統領は火曜日にホワイトハウスのシチュエーションルームで国家安全保障ティームと戦争について会議を行う前に、イランへの攻撃を検討していたと伝えられている。
※シャロン・ジャン:『トゥルースアウト』誌政治、気候、労働担当ニューズライター。『トゥルースアウト』誌に参加する前、『パシフィック・スタンダード』誌、『ザ・ニューリパブリック』誌などに記事を掲載してきた。環境学で修士号を取得している。ツイッターとブルースカイでアカウントを持っている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』
コメント