中国は、中東情勢における重要な出来事である、2025年6月のイスラエルとイランの停戦を受けて、中国は中東地域における紛争が中国の国益にどう影響するかを考慮している。中国は中東地域から石油を輸入しており、中東の安定は中国の国益に適うことになる。また、中東地域やアフリカの各国との協力関係を深めており、中東情勢の悪化によって地域が不安定化し、戦争が起きたり、政府が倒されたりということは望ましいことではない。
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一方で、中東地域において、アメリカがイスラエルへの支援に偏重することで、他の中東地域の国々、特に伝統的な同盟国であるサウジアラビアとの関係が悪化したり、中東地域におけるアメリカの役割が縮小したりする事態は中国にとって望ましいことでもある。中国としては、中東地域のある程度の事態悪化までは容認できるという考えもある。そのために、イランを更に支援するということも考えられる。

 しかし、事態悪化が中国にとって都合の良いレヴェルで収まってくれるという保証はない。それどころか、コントロールできないということになれば、事態悪化が中国にとって都合が悪いということになってしまう。従って、合理的な判断は、事態の鎮静化、地域の安定ということになる。

 これに対して、アメリカはこのような複雑な思考ができず、ひたすらイスラエル支援にまい進している。イスラエルを支援すればするほど、イスラエルを危険に晒すということすらも分かっていない。イスラエルがガザ地区で行っている残虐な行為をアメリカが支援している、アメリカが化膿しているという構図を世界に晒し続けることは、イスラエルを危険に晒すだけではなく、アメリカも危険に晒す、国益に反する行為だ。このような判断すらもできなくなっているアメリカに世界覇権国の資格はないし、アメリカの支配層の劣化は目を覆いたくなるほどに酷い状況になっている。
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 日本もよくよく考えておくべきだ。アメリカに隷従しておけばよいという時代は終わった。そして、日本国民は賢くならねばならない。しかし、この失われた30年で、十分に痛めつけられ、日本の再興はかなり期待できない状況になっていると私は悲観している。

(貼り付けはじめ)

北京は中東情勢の激化を歓迎するだろうか?(Would Beijing Welcome Escalation in the Middle East?

-中国は不安定化によって大きな損失を被ることになる。

デン・ユウェン筆

2025年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/26/china-xi-middle-east-iran-israel-peace-trump/

北京は、アメリカのイラン攻撃とそれに伴うイスラエル・イラン間の(不安定ながらも)停戦を受けて、自らの立場を模索している。紛争が長期化すれば、必然的に波及し、アメリカ以外の主要諸国までも巻き込む可能性がある。それでは、この紛争は中国の国益にどう影響するのか? 北京は紛争のさらなる激化を望むのか、それとも公式声明が示唆するように、緊張緩和(cool down)と停戦(a cease-fire)の実現を真に望んでいるのか?

この問いに答えるには、中国の中東戦略とアメリカとの広範な戦略的競争という2つの側面から分析する必要がある。

一見すると、イスラエルとイランの紛争は中国とほとんど関係がないように思える。しかし、この紛争は中国の「一帯一路」構想(China’s Belt and Road InitiativeBRI)を混乱させ、エネルギー安全保障に影響を与え、さらには米中対立にも波及する可能性がある。つまり、中国は紛争の行方に真の利害関係を有している。

中国の中東戦略は、主にエネルギー安全保障の確保を最重要視している。それは、中国は湾岸諸国やイランから大量のエネルギーを輸入しているためだ。次に、同地域における経済的利益、すなわち一帯一路プロジェクトの実施が位置づけられる。最後に、アラブ諸国やイランとの政治的協力が挙げられる。この協力は、結局のところ前者の2つの目標に奉仕するものである。もし中国が中東産油への依存度がそれほど高くなく、過剰な工業生産能力を同地域に輸出する必要がなければ、中東諸国との緊密な関係維持やイランとサウジアラビアの仲介に、これほど強い動機は持たなかっただろう。

中国はウクライナ紛争後、ロシア産原油の購入を増やしているものの、依然として石油埋蔵量の大部分は中東産である。停戦が崩壊し紛争が拡大すれば、中国の中東における一帯一路構想プロジェクトは必然的に影響を受けるだろう。

過去10年間、一帯一路構想は中東において他のほとんどの地域を凌駕する大きな進展を遂げてきた。戦争によって引き起こされた協力の減速、あるいは強制的な停止は、中国の輸出と経済全体に直接的な打撃を与えるだろう。もしイランがホルムズ海峡封鎖の脅しを実行に移した場合、その結果生じる経済混乱は中国の原油輸入と経済回復に深刻な影響を与えるだろう。

しかしながら、このシナリオは北京にとって最悪の事態ではないかもしれない。中国が最も恐れているのは、アメリカ・イスラエル共同の軍事圧力によってイランの神政政治体制(Iran’s theocratic regime)が転覆することだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アメリカによるイランの核施設への攻撃を受け、イラン国民に対し、政府への反乱を公に呼びかけた。ドナルド・トランプ米大統領も政権交代を示唆している。もしそれが現実のものとなった場合、中国の長年にわたるイランへの投資と関与は水の泡となり、アメリカ主導の反乱に対する北京自身の長年の懸念を裏付けることになるだろう。

北京が現在のイランと連携していることで、イスラエルとは疎遠になっている。アメリカとイスラエルの支援を受ける新たなイラン政権は、少なくとも当初は中国を脇に追いやる可能性が高く、イランだけでなく中東全体における中国の立場に大きな打撃を与えるだろう。

中国の中東戦略の観点から言えば、北京はこの戦争がエスカレートすること、特に本格的な地域紛争に発展することを望んでいない。中国が停戦と地域の安定を求め、アメリカのイラン攻撃を非難するのは、単に道徳的な優位性のためだけではない。真の懸念を反映しているのだ。

しかし、イスラエルとイランの紛争は、より広範な米中競争にも影響を与えている。そして、場合によっては、これが中国の地域戦略(regional strategy)に取って代わる可能性もある。紛争の悪化が、たとえ短期的な経済的痛みを犠牲にしても、アメリカの影響力に対抗しようとする北京の努力に有利に働くならば、北京は実際には、アメリカがイスラエルを支持するのと同様に、限定的なエスカレーションを容認、あるいは支持する傾向にあるかもしれない。ジョン・ミアシャイマーなどの学者たちは、イスラエルによるイランの核施設への空爆、そして、アメリカによるイスラエル支援への介入は、最終的にはアメリカを犠牲にして中国に利益をもたらすと主張している。

最近のインタヴューで、ミアシャイマーはイスラエルとトランプ政権が危機を煽っていると批判した。アメリカは中国からのより大きな戦略的脅威に直面しており、ペルシャ湾で資源を浪費するのではなく、東アジアに資源を集中させるべきだと主張した。

ワシントンは湾岸地域から東アジアへの海軍・航空戦力の再展開を計画していたが、イスラエルのエスカレーションにより、ニミッツ級空母と爆撃機を湾岸地域に戻した。より広範な地域戦争は、アメリカが東アジアからさらに多くの軍事力の撤退を余儀なくさせ、弾薬備蓄(ammunition stockpiles)を枯渇させ、中国に対する抑止力を損なうことになるだろう。ミアシャイマーの見解では、中東情勢の動向は明らかにアメリカの利益にならない。

アメリカの視点からすれば、この論理は妥当である。エスカレーションによって紛争が長引けば、アメリカ軍は膠着状態(bog down)に陥り、東アジアにおけるプレゼンスが低下する可能性がある。そうなれば、アメリカは中国との長期的な競争を維持する能力を弱めることになる。

しかし、アメリカに損害を与えるものが必ずしも中国の利益になるとは限らない。ミアシャイマーの論理が成り立つためには、エスカレーションはイランの体制転換(regime change)に至ることなく、イランが長期にわたる軍事闘争を維持する能力を維持しなければならない。イラン政権が崩壊した場合、新政府がアメリカにとって強力な敵であり続けるかどうかは不透明だ。政権が存続した場合、トランプ大統領が長期的な軍事資源を投入して対立を継続するかどうかも同様に不透明だ。

北京の観点からすれば、イランとイスラエルの紛争が「第二のアフガニスタン(second Afghanistan)」となり、アメリカの注意を逸らすためには、イランは軍事力を維持しなければならない。そのためには、直接的な軍事支援、あるいはパキスタンなどの第三者を介した軍事支援、あるいはイラン国内の防衛産業への支援が必要になるかもしれない。北京による公然たる軍事支援は考えにくいものの、イランの自立性(ran’s self-sufficiency)を強化するための静かな支援はあり得る。

要するに、東アジアにおけるアメリカの戦略的圧力を軽減するために、北京はイスラエルとイランの紛争がエスカレートすることを、ある程度までは有利と見なすかもしれない。しかし、それはイランがホルムズ海峡を封鎖したり、内部崩壊したりしない限りの話だ。エスカレーションが始まれば、どこで止まるかを予測するのは困難だ。北京の立場は本質的に矛盾しており、停戦を求める声には少なくともある程度の誠実さが込められている。

これまで、北京は戦争に対するこの立場を明確にしてきた。カザフスタンのアスタナで最近行われた中国・中央アジア首脳会議において、習近平国家主席はウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領にこの問題を提起し、イスラエルの軍事行動が地域の緊張の高まりを招いていると批判した。

習主席はまた、ロシアのプーティン大統領ともこの紛争について協議し、双方、特にイスラエルに対し、緊張緩和と外交ルートへの復帰を促した。中国の王毅外相は、イランとイスラエルの外相、そして他の中東諸国の外相たちと会談し、イスラエルを厳しく批判するとともに、イスラエルのギデオン・サール外相に対し、イスラエルによるイランへの攻撃は国際法違反であると訴えた。北京はまた、イランの核施設に対するアメリカの空爆を強く非難した。

北京のメッセージは明確だ。外交的にはイランを支持し、イスラエルとアメリカを非難し、より広範な地域的不安定化を避けるため自制を求めている。しかし同時に、全面戦争(total war)を回避し、外交への回帰を促している。

中国国内には密かにエスカレーションを望んでいる人間たちもいるかもしれないが、北京が一貫して平和を重視していること、特に一帯一路構想と中国の石油安全保障への潜在的な損害を考慮すると、少なくとも今のところは、北京は紛争が制御不能に陥ることを望んでいないことが窺(うかが)える。

※デン・ユウェン:中国の作家・学者。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※2025年11月に新刊発売予定です。新刊の仮タイトルは、『「新・軍産複合体」が導く米中友好の衝撃!(仮)』となっています。よろしくお願いいたします。
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