古村治彦です。
 2025年10月10日、不注意によって転倒し、左手薬指を脱臼し、2025年10月16日に靭帯の縫合手術を受けました。11月発売の新刊のゲラの修正も同時に行っておりました。現在、パソコンのキーボードを打つのが不自由な状態で、ブログの更新が滞りがちになります。まことに申し訳ございません。歩き慣れた道での転倒で、油断もあったと思いますが、筋力低下や柔軟性の低下で足が上がらないということもあったと思います。回復に務めつつ、筋力の維持のためのトレーニングも行ってまいります。皆様におかれましても、お気を付けください。

 第二次トランプ政権の「国家防衛戦略(National Defense StrategyNDS)」の策定が進められている。以下の記事で重要な点は、政権幹部たちは不法移民や麻薬売買対策といった国内問題、国土防衛を最優先し、対中強硬姿勢を改めるという考えを持っており、それに対して、アメリカ軍の制服組、職業軍人たちが懸念を持っているということだ。

 アメリカの国力では中国との戦争を戦うことはできないし、世界の警察官となって世界を管理することはできない。そうなれば、国内に引き上げていくのが当然だ。そうなると、アメリカ軍の規模は縮小される。結果として、将官やポストの数は減らされる。巨大官僚組織であるアメリカ軍はそれを受け入れることはできない。また、国防予算も縮小され、「軍産複合体」の原資も減っていくことになる。

 私の新著のテーマは「軍産複合体」である。現在、アメリカで起きている「新・軍産複合体づくり」の動きを詳述している。今回の動きはその一環だ。是非、新刊を読んでみて欲しい。

(貼り付けはじめ)

国防戦略草案に懸念表明 米軍首脳、対中より国内問題優先で―報道

時事通信 外信部202510011413分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025100100671&g=int

 【ワシントン時事】9月30日付の米紙ワシントン・ポストは、トランプ政権が策定中の「国家防衛戦略」の草案に関し、米軍首脳が深刻な懸念を表明したと報じた。中国抑止を重視するこれまでの路線を変更し、不法移民や麻薬流入など国内問題を優先しているためだという。

 報道によると、懸念を表明したのは制服組トップのケイン統合参謀本部議長を含む複数の米軍最高幹部。ケイン氏はヘグセス国防長官やコルビー国防次官(政策担当)に「非常に率直に意見を述べた」とされる。

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対中より本土防衛優先か トランプ政権の次期国防戦略―米

時事通信 外信部202509081750分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025090600301&g=int

 【ワシントン時事】米政治専門紙ポリティコ(電子版)は5日、国防総省がトランプ政権の安全保障政策の指針となる「国家防衛戦略」で、対中国よりも本土防衛を優先する方針を打ち出す見通しだと報じた。次期国防戦略は早ければ10月にも公表されるという。

 同紙が関係者の話として報じたところによると、8月下旬にヘグセス国防長官に提出された国防戦略の草案は、中国やロシアへの対抗ではなく、本土と周辺地域での任務を最優先に位置付けた。中国抑止を重視するこれまでの路線を変更するもので、関係者は「米国と同盟国にとって重大な転換になる」と述べた。

 トランプ大統領は1月の就任後、不法移民対策でメキシコとの国境に兵士を配備したほか、「治安維持」名目で国内の大都市に州兵を派遣。麻薬流入阻止を掲げ、カリブ海で麻薬密輸船を攻撃した。

 第1次トランプ政権が2018年に発表した国防戦略は、「対テロ」から中ロとの大国間競争へと重心を移した。バイデン前政権下の22年の戦略も同じ路線を継承しつつ、対中国をより前面に押し出した。

 次期戦略は国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)が策定を主導している。世界規模で米軍の配置を見直す文書も公表する予定という。

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ピート・ヘグゼス国防長官の新たな国防総省戦略にアメリカ軍最高幹部たちが懸念を表明(Military leaders voice concern over Hegseth’s new Pentagon strategy

-統合参謀本部議長のダン・ケイン将軍を含む複数の高官からの批判は、ピート・ヘグゼス国防長官がアメリカ軍の優先順位を再編する中で表明された。

ノア・ロバートソン、タラ・コップ、アレックス・ホートーン、ダン・ラモース筆

2025年9月29日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2025/09/29/hegseth-national-defense-strategy-trump-dissent/?nid=top_pb_signin&arcId=6PCTHCEQF5GUTIHZD344XKXWBM&account_location=ONSITE_HEADER_ARTICLE

アメリカ軍最高幹部たちはトランプ政権の次期国防戦略(forthcoming defense strategy)について深刻な懸念を表明しており、ピート・ヘグゼス国防長官が火曜日にヴァージニア州において、最高幹部たちを異例の会議に招集する中で、国防総省内での政治指導部と制服組指導部の間の分裂(a divide between the Pentagon’s political and uniformed leadership)が露呈したと現職および元職の当局関係者8人が明らかにした。

統合参謀本部議長のダン・ケイン大将を含む複数の高官たちからの批判は、ヘグゼス長官がアメリカ軍の優先事項を再編する中で出された。国防総省は本土への脅威認識に重点を置き、中国との競争を縮小し、ヨーロッパとアフリカにおける米国の役割を重要視していない。

ドナルド・トランプ大統領は、クワンティコ海兵隊基地で開催される将軍と提督が急遽招集されたこの会合に出席する予定だ。制服組の指導者たちは大量解雇や、戦闘指揮系統と軍階級の抜本的な再編を懸念しているが、ヘグゼス長官は軍の基準と「戦士の精神(warrior ethos)」について演説するとみられる。

国防総省が資源の優先順位付けを行い、世界各地にアメリカ軍を配置する主要な指針となる国家防衛戦略(National Defense StrategyNDS)をめぐる議論は、トランプ政権の型破りな軍事アプローチの中で舵取りを迫られる軍高官にとって、新たな課題となっている。

編集プロセスに詳しい関係者たちは、他の人々と同様に匿名を条件に、デリケートな審議について語った。彼らは、大統領の極めて個人的で、時に矛盾する外交政策へのアプローチを考えると、この計画は近視眼的で、的外れである可能性があると感じており、不満が高まっていると述べた。

国防総省のショーン・パーネル報道官は、機密文書の内容や、文書の編集プロセスで懸念が提起されたかどうかについてコメントを控えた。

パーネル報道官は、「ヘグセス国防長官は、トランプ大統領の常識的な『アメリカ第一主義、力による平和』政策(America First, Peace Through Strength agenda)の推進に焦点を絞った国家防衛戦略の策定を指示した。このプロセスはまだ進行中だ」と述べた。

国防総省政策局内のトランプ大統領の政治任命職員(中には、ヨーロッパと中東に対するアメリカの長年の関与を批判してきた当局者も含まれる)が戦略を起草し、現在最終編集段階にある。

この草案は、世界各地の戦闘司令部から統合参謀本部に至るまで、軍の指導者に広く共有されているが、関係者3人によると、その中には、この計画の優先事項が、世界中の危機に対応するために設計された部隊にとってどのような意味を持つのか疑問視する者もいた。

複数の関係者によると、起草過程で反対意見が出るのはよくあることだが、この文書を懸念する当局者の数、そして批判の大きさは異例だ。

事情に詳しい2人の関係者によると、ケイン統合参謀本部議長はここ数週間、国防総省の幹部たちに懸念を伝えていたという。

「ケイン統合参謀本部議長はヘグセス長官に非常に率直なフィードバックを与えた」と2人のうちの1人は述べ、国防総省の政策責任者であるエルブリッジ・コルビーも議論に参加していたことを指摘した。この人物は「ヘグセス氏が国家防衛戦略の重大性を理解しているかどうかさえ分からない。だからこそ、ケインはあれほど努力したのだと思う」と述べた。

2人目の関係者は、ケイン統合参謀本部議長が国家安全保障戦略(NDS)において、紛争において中国を抑止し、必要であれば打ち負かすための軍の整備に引き続き重点を置くよう働きかけてきたと述べた。

ヘグセス長官と政策当局者たちは、国防総省がヨーロッパから一部部隊を撤退させ、司令部を統合する意向を示しているが、これは特にロシアによるウクライナ戦争や、最近のNATO領空への度重なる侵攻を受け、同盟諸国の一部を不安に陥れる形となっている。長年にわたり、国防総省の戦略は、国の最善の防衛策は海外で強固な軍事同盟を構築・維持することであるという考えに基づいてきた。

第二次トランプ政権内で、この海外重視アプローチを批判する人々は、国内の利益を守るどころか、外国での多額の費用がかかる戦争にアメリカを泥沼に陥れていると主張している。トランプ大統領のこれまでのアプローチは、同盟諸国に自国の防衛費増額を促すことに重点を置いており、時には国内の防衛費増額を訴えている連邦議会共和党の国防強硬派を疎外することもあった。

トランプ大統領はイエメンとイランで爆撃作戦を実施してきているものの、その主な焦点はアメリカ本土に近い任務への軍の増強にある。

トランプ大統領の指揮下で、国防総省は今年、カリブ海で麻薬密売容疑者たちを攻撃し、南部国境にアメリカ軍と武器を配備した。また、州兵と海兵隊をアメリカの各都市に派遣し、国外追放活動を支援し、大統領が「制御不能(out of control)」と呼ぶ都市犯罪の抑制に努めた。これらの国内派遣の一部は、現在裁判で争われている。

トランプ大統領は週末、ソーシャルメディアでオレゴン州ポートランドへの部隊派遣を命じ、ポートランドで散発的な抗議活動を引き起こしている移民関税執行局(Immigration and Customs EnforcementICE)の職員を守るため、部隊に「全力(full force)」を行使することを認めた。ヘグセスは日曜日、オレゴン州兵へのメモで、この任務には約200人の州兵の連邦化(federalizing)が含まれると述べた。

複数の関係者によると、新戦略に対する内部からの批判の多くは、中国が急速な軍備増強を続け、アメリカ軍関係者が太平洋におけるアメリカの優位性を低下させていると警告しているにもかかわらず、国家防衛戦略の草案がアメリカ本土への脅威を強調していることに向けられている。

文書には依然として中国に焦点を当てた部分も相当数あるが、それらはアメリカにとって最大の敵国との世界的な競争というよりも、台湾攻撃の脅威に大きく集中していると5人の関係者は述べている。コルビーは長年、アメリカ軍は中国の侵攻リスクへの備えができていないと警告し、ワシントンに対しこの問題への注意と資源の集中を求めてきた。

ある元当局者は、この戦略について「十分に検討されていないのではないかという懸念がある」と述べた。

この文書の論調は過去の戦略よりもはるかに党派的(partisan)であり、ヘグセス長官の演説と同様のレトリックで、バイデン政権がアメリカ軍の衰退を招いたと述べていると、計画に詳しい2人の関係者は述べている。

一方、ヘグセス長官はアメリカ軍の改革を主導しており、米軍を統括する約800人の将軍と提督を20%削減し、アメリカ軍の戦闘部隊の指揮系統を再編することを約束している。ヘグセス長官は既に、チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア統合参謀本部議長やリサ・フランケッティ海軍作戦部長など、高官を解任している。これらの解任では、不釣り合いなほど多くの女性が解任されている。

『ワシントン・ポスト』紙が3月に初めて詳細を報じた国防総省の暫定防衛戦略には、台湾と本土防衛への同様の重点が含まれており、両方の優先事項を満たすために世界の他の地域で「リスクを負う(assume risk)」よう国防総省の指導者に促すまでになっている。

この暫定文書は、国内外で軍人をより積極的な役割で活用するという新たな戦略にも示唆を与えていた。文書によると、ヘグゼス国防長官は国防総省に対し、「国境封鎖、不法な大量移民、麻薬密売、人身売買、その他の犯罪行為を含む侵略行為の撃退、そして国土安全保障省と連携した不法移民の国外追放に重点的に取り組む」よう指示した。

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国防総省の計画は中国の脅威よりも国土防衛を優先する(Pentagon plan prioritizes homeland over China threat
-これは北京への抑止力を重視した第一次トランプ政権からの大きな転換を示すものだ。

ポウル・マクリーリー、ダニエル・リップマン筆

2025年9月5日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2025/09/05/pentagon-national-defense-strategy-china-homeland-western-hemisphere-00546310

国防総省の高官たちは、国防総省がアメリカ本土と西半球の防衛を優先するよう提案している。これは、長年にわたり中国の脅威に焦点を当ててきた軍の任務からの、際立った転換だ。

先週、ピート・ヘグセス国防長官の机に届いた最新の国家防衛戦略(National Defense Strategy)の草案は、北京やモスクワといった敵対諸国への対抗よりも、国内および地域的な任務を優先していると、報告書の初期ヴァージョンについて説明を受けた3人の関係者が述べている。

この動きは、ドナルド・トランプ大統領の最初の任期を含む、近年の民主党政権と共和党政権の、北京をアメリカ最大のライヴァルと呼んだ状況からの大きな転換となるだろう。また、中国の指導部をアメリカの安全保障に対する脅威と見なす、両党の対中強硬派を激怒させることも予想される。

「これはアメリカと複数の大陸にまたがる同盟諸国にとって大きな転換となるだろう」と、草案について説明を受けた関係者の1人は述べた。彼は「アメリカの古くからの、信頼されてきた約束に疑問を持たれている」と発言した。

この報告書は通常、政権発足時に公表されるため、ヘグセス長官は計画に変更を加える可能性がある。しかし、多くの点で、この転換は既に起こりつつある。国防総省は、ロサンゼルスとワシントンDCの法執行機関を支援するため、数千人の州兵を動員し、アメリカへの麻薬の流入を阻止するため、複数の軍艦とF-35戦闘機をカリブ海に派遣した。

今週、アメリカ軍は国際水域(international waters)でヴェネズエラのトレン・デ・アラグア・ギャングの構成員とみられる11人を殺害したとみられる。これは、軍による非戦闘員殺害への大きな一歩となる。

国防総省はまた、メキシコとの南部国境に軍事化ゾーン(a militarized zone)を設定し、軍が民間人を拘束できるようにした。これは通常、法執行機関(law enforcement)の任務である。

この新たな戦略は、中国への抑止力を国防総省の最重要課題としていた、トランプ政権初期の2018年国家防衛戦略の重点を大きく覆すものとなるだろう。

この文書の冒頭には「中国とロシアが、自国の権威主義モデル(authoritarian model)と整合した世界を構築しようとしていることは、ますます明らかになっている」と記されている。

報告書について説明を受けた、共和党のある外交政策専門家は、この変化は「トランプ大統領の対中強硬姿勢とは全く一致していないように思える」と述べた。この専門家も、他の専門家と同様に、微妙な問題について匿名で話した。

トランプ大統領は、北京に莫大な関税を課すことや、モスクワでの軍事パレードで北朝鮮の金正恩委員長とロシアのウラジーミル・プーティン大統領と会談した後、習近平国家主席がアメリカに対して「陰謀を企てている」(“conspiring against” the U.S.)と非難するなど、中国に対して強硬な姿勢を示し続けている。

国防総省の政策責任者であるエルブリッジ・コルビーがこの戦略を主導している。彼はトランプ大統領の最初の任期中に2018年版の策定に重要な役割を果たし、より孤立主義的な政策を強く支持してきた。長年対中強硬派として活動してきたコルビーだが、アメリカを対外的な関与から切り離したいという点では、JD・ヴァンス副大統領と意見が一致している。

コルビーの政策ティームは、今後予定されている世界情勢の見直し(世界各地におけるアメリカ軍の駐留場所を概説する)と、アメリカと同盟諸国の防空体制を評価し、アメリカのシステムの配置場所に関する提言を行う戦域防空ミサイル防衛の見直しも担当している。国防総省は、早ければ来月にも両見直しを発表する予定だ。

国防総省報道官は、この見直しについてコメントを控えた。ホワイトハウスもコメント要請に応じなかった。

これら3つの文書は、多くの点で相互に関連している。ある関係者によると、それぞれの文書は、同盟諸国に対し、自国の安全保障に対する責任をより強く負うよう求めることを強調する一方で、アメリカはより国土に近い取り組みを強化するという。

同盟諸国は、この国際情勢見直し(global posture review)の影響を特に懸念している。なぜなら、この見直しによってアメリカ軍がヨーロッパや中東から撤退し、重要な安全保障支援プログラムが削減される可能性があるからだ。

国防総省当局者とヨーロッパ各国の外交官たちは、国防総省のバルト海安全保障イニシアティヴ(ラトヴィア、リトアニア、エストニアの防衛および軍事インフラ整備を支援するため、年間数億ドルを助成している)が今年資金を失うという『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道を確認した。

ある外交官は、このイニシアティヴの資金はアメリカ製兵器の購入に充てられ、「強力な支持を受け、主要能力の開発を加速させ、ハイマース(HIMARS)のようなアメリカ製システムの取得を可能にしてきた」と指摘した。

NATO同盟諸国は、ヨーロッパに駐留する約8万人のアメリカ軍兵士の一部が今後数年間で撤退するとの見方を強めている。しかし、各国の影響の受け方は異なり、最終的にはトランプ大統領の気まぐれに左右されることになる。

水曜日にポーランドの新大統領がホワイトハウスを訪問した際、トランプ大統領は、アメリカはポーランドから軍を撤退させるつもりはないと述べた。しかし、アフリカ大陸の他の地域では軍の削減を検討していることを認めた。

「むしろ、ポーランドに兵力を追加するつもりだ」とトランプ大統領は述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※2025年11月に新刊発売予定です。新刊の仮タイトルは、『「新・軍産複合体」が導く米中友好の衝撃!(仮)』となっています。よろしくお願いいたします。
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