古村治彦です。

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体
最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
低排出水素とは、製造過程で発生する二酸化炭素の排出を抑えて生産される水素のことだ。水素は、クリーンな次世代エネルギーと見なされ、発電、熱利用、燃料電池自動車などに使用される。これから重要性が増大していく分野と目される。水素を生産する電解装置の面で、中国がアメリカをリードしている。アメリカはこれから電解装置や水素輸出の面で技術革新を行い、中国と対抗すべきというのが下に掲載した論稿の趣旨である。
次世代のクリーンエネルギーや重要資源、レアアースの分野で、中国はアメリカに対して優位な立場にいる。中国は十年から数十年の単位で、中長期な計画を立てて、それを実行している。首尾一貫した長期的な政策遂行を行うことが可能な体制になっている。アメリカは、こうしたことが非常に「苦手」である。中国のこのような中長期的な計画立案と政策遂行のモデルは、高度経済成長時代の日本の「産業政策」である。アメリカは日本を抑え込むことができたが、中国の場合はそういう訳にはいかない。日本がアメリカに押しつぶされていなければ、「失われた30年」は全く違ったものとなっていただろう。アメリカに迎合し、日本を潰した小泉純一郎・竹中平蔵から安倍晋三の対米隷属・統一教会志向の売国政権の罪は万死に値する。
現在の高市早苗政権の危なっかしい対中強硬姿勢は日本の国益を損なう。重要資源・レアアース、水素エネルギーの分野で、中国から制裁を受けるようなことになれば、日本経済は崩壊する。それほど日本経済は中国に依存している。私たちは、先の大戦の教訓を思い出し、冷静な対応を行うべきだし、高市政権の危険性を認識し、早期に退陣させることが肝要である。
(貼り付けはじめ)
中国は次世代エネルギーのサプライチェインで既に先行している(China Is Already Pulling
Ahead on the Next Energy Supply Chain)
-低排出水素は地経学的競争における新たなフロンティアとして急速に注目を集めている。
ジェイン・ナカノ、マシアス・ザカライアス筆
2025年11月10日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2025/11/10/green-hydrogen-china-supply-chain/
アメリカが炭化水素を中心としたエネルギー支配のヴィジョンを追求する一方で、中国はまた別の未来のエネルギーサプライチェインを支配するべく着々と歩みを進めている。低排出水素を製造するための主要技術は、地経学的競争(geoeconomic competition)における新たなフロンティアの1つとして急速に注目を集めており、アメリカは再び後れを取る可能性がある。
エネルギー転換における「スイス・アーミー・ナイフ(Swiss Army knife 訳者註:多機能・高機能なもの)」と呼ばれる水素(hydrogen)は、他に類を見ない柔軟性を備えている。天然ガスや再生可能エネルギーなど、様々な資源から生産可能だ。水素の最大の価値提案の1つは、費用対効果の高いクリーンな代替エネルギーがなく、電化も難しい「排出削減が困難な」セクターの脱炭素化(decarbonize the “hard to abate” sectors that lack cost-effective
clean alternatives and are difficult to electrify)に貢献できることだ。これには、石油化学精製や製鉄といった重要な産業基盤セクターに加え、海運・航空セクター向けの革新的なクリーン燃料も含まれる。さらに、水素は長期にわたるエネルギー貯蔵として機能するため、エネルギーシステムの統合(integration)、回復力(resilience)、信頼性(reliability.)の向上にも活用できる。
つまり、水素の利用は、アメリカの産業に国際舞台での競争上の優位性を与えると同時に、新たな輸出機会を創出し、国の電力システムを強化する可能性がある。
懸念されるのは、アメリカとその同盟諸国が技術革新ではリードしながらも、製造とコスト削減で後れを取るという状況が繰り返される可能性があることだ。その結果、供給途絶に対する回復力と構造安定性(resilience and robustness)に欠けるグローバルサプライチェインが生まれることになる。中国は既に太陽光発電と電気自動車用バッテリー(solar photovoltaics and electric vehicle batteries)のグローバルサプライチェインを支配している。そして今、電気を使って水を水素と酸素に分解する重要な装置である電解装置(electrolyzers)についても、同様の優位性を確立しようと、取り組みを強化している。さらに、世界への輸出機会を視野に入れ、先進的な電解装置技術の開発にも多額の投資を行っている。
中国の水素への取り組みを形容するには言葉が足りないが、いくつかの注目すべき点がある。第一に、中国は世界最大の水素生産国であり、消費国でもあるだけでなく、電解装置の設置容量も世界最大だ。さらに、世界の生産能力の約60%を占めるアルカリ型(ALK)電解装置の製造において、中国は世界をリードしている。中国の最新の焦点は、ALKを超えて専門知識を広げ、より柔軟で再生可能エネルギー源と互換性のあるタイプの陽子交換膜(proton exchange membrane、PEM)電解装置技術を習得することだ。
しかし、中国が水素を気候変動対策のみに求めていると想定するのは誤りだ。確かに、クリーン水素技術の推進に向けた中国の取り組みは、自国の排出量削減に貢献すると同時に、世界のエネルギー転換を促進することは間違いない。中国は世界最大の温室効果ガス排出国(the world’s largest emitter of greenhouse gases)であるだけでなく、鉄鋼とセメントという最も炭素集約的な素材の生産量世界一でもある。水素は、新たに導入される排出量に基づく関税制度に適合する、よりクリーンな素材の生産に役立つ可能性がある。しかし、中国は、排出量削減への利用以外にも、クリーン水素を多くの点で重要視している。クリーンな分子である水素は、電力セクターの回復力とエネルギー自立に向けた取り組みにも結びついている。
朗報なのは、競争はまだ終わっていないということだ。アメリカとヨーロッパは、PEM電解装置とその膜などの関連技術の初期の革新者であり、製造者でもある。たとえば、アメリカに拠点を置く化学会社は、PEM 膜の業界標準として広く認識されているものを製造しながら、この分野で技術の進歩を続けている。
しかし、今後の兆候かもしれないが、ヨーロッパは安価な中国製電解装置が国内市場に津波のように押し寄せる可能性に警鐘を鳴らし始めている。ALK型とPEM型の両電解装置技術で世界をリードするイノヴェーターであるヨーロッパは、太陽光やEVバッテリー部門で見られたような製造業の衰退の繰り返しを回避するための取り組みを強化している。ヨーロッパ水素銀行は他の対策に加え、初回の入札で落札者に中国企業が多く含まれていたことを受けて、ヨーロッパ各国国内の電解装置製造を強化するため、入札に厳格な「レジリエンス要件」を導入した。重要な要件の1つは、銀行から補助金を受けるプロジェクトは、電解装置スタック容量の中国製が25パーセント以下であることを保証しなければならないというものだ。
製造業の競争力が重要であるのと同様に、技術革新への継続的な投資が、安定して多様化したサプライチェインに引き続き不可欠であることは言うまでもない。2005年から2020年まで、アメリカ、ドイツ、日本の3カ国で、上位10カ国による電解装置関連の国際特許出願のほぼ3分の2を占めた。この期間中、中国の特許のうち国際特許はわずか3%で、中国の取り組みは巨大な国内市場に集中していた。しかし、状況は急速に変化している。2022年の時点で、中国は水素関連技術、特に水素製造技術において世界最大の特許保有者になったと報じられている。中国はまだ、複雑なスタックの設計とエンジニアリング、またはPEM電解装置用のスタックアセンブリとコンプレッサーの製造を習得していない。しかし、中国が技術革新でも西側諸国を追い抜くのは時間の問題かもしれない。
一方、アメリカの水素経済は転換点にある。インフラ投資・雇用法(the
Infrastructure Investment and Jobs Act、IIJA)に基づく電解槽製造・導入の拡大に向けたインセンティヴ構造、ならびにインフレ抑制法によって促進される堅調なクリーン水素生産エコシステムの見通しは、宙に浮いた状態だ。IIJAが電解槽製造・リサイクルの研究開発・実証・導入に充てた15億ドルの支援(アメリカが世界競争力を維持する上で重要な基盤となった)は、最近のプロジェクト相次ぐ中止の波に直撃された。資金削減に加え、電解ベースの国内水素プロジェクトの見通しが暗いことから、アメリカの電解槽セクターは危険な未来に直面している。
さらに悪いことに、時間はアメリカに味方していない。中国は技術的課題を克服し、2035年までにPEM技術サプライチェインを確立することを目指している。これは中国の「水素産業発展計画(Hydrogen
Industry Development Plan)」における主要目標だ。国営紙『チャイナ・デイリー』紙が2024年8月に報じたところによると、中国は今や「新エネルギー製品分野において、水素電解装置という新たな主要輸出製品の可能性を目前に控えている」という。この記事は、海外需要に対応するため生産能力拡大を進める複数の中国企業の名前を挙げている。北京のPERIC水素技術公司の事例では、電解装置の輸出収益が2021年以降ほぼ毎年倍増している。中国メーカーはアジア、欧州、中南米、中東など複数地域への供給を開始している。
中国との競争力を維持するには、特に水素技術のように初期段階にありながらも有望な分野において、政府による戦略的な役割が求められている。アメリカの水素および電解装置の需要は顕在化に時間がかかるかもしれないが、多くの国が新興バリューチェインに将来の経済・エネルギー機会を見出しているため、世界市場は成長を続けている。
この状況に対応するために、アメリカは二本柱のアプローチをとる必要がある。第一に、石油化学や鉄鋼など、需要が現実的かつ永続的な少数のセクター向けに、クリーンな水素生産を現実的に拡大する必要がある。こうしたアンカープロジェクトを重点的に展開することで、国内の電解装置製造を活性化させると同時に、アメリカの水素供給を拡大し、新たな世界的需要に対応できるようになる。ヨーロッパの需要は、アメリカの現在の消費量に相当する輸出機会を生み出す可能性があり、日本と韓国も2050年までにさらに多くの水素を輸入する計画だ。
第二に、アメリカは、同盟諸国が水素エネルギー利用の野望を追求する際に、技術面でのリーダーとして、そして最適な供給業者としての地位を確立すべきである。これは、最先端のアメリカ製電解装置および関連機器の輸出を目的とした製造能力への重点的な投資を意味する。国際開発金融公社(the International Development Finance Corp、IDF)などの金融機関を活用して新興諸国にアプローチすることは、アメリカの電解装置メーカーにとって世界的な機会を拡大する1つの方法となり得る。アメリカが今年、アラビア半島への高官訪問で示した地政学的機敏性、数兆ドル規模の投資と商業提携を確保に成功したが、今やエネルギー技術の新たなフロンティアにも適用されるべきである。結局のところ、サウジアラビアの世界最大の画期的なグリーン水素プロジェクトであるNEOMに代表されるように、この地域の水素利用の野望を支える電解装置をアメリカ企業が供給しない理由はない。
技術革新を醸成し、国内製造業を奨励し、成長市場での製品の宣伝を行うことによってのみ、アメリカと西側諸国は、クリーン水素によるエネルギー安全保障と排出量削減の両方のメリットを享受しながら、堅牢かつ透明性の高いグローバルサプライチェインを実現できる。
※ジェイン・ナカノ:戦略国際問題研究所(Center for Strategic
and International Studies)エネルギー安全保障・気候変動プログラム上級研究員。
※マシアス・ザカライアス:戦略国際問題研究所(Center for Strategic
and International Studies)エネルギー安全保障・気候変動プログラム研究員。
(貼り付け終わり)
(終わり)
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

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