古村治彦です。
2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体
最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
イスラム教徒でウガンダからの移民(インド系)、民主社会主義者を自認し、アメリカの視点からすれば過激な社会再作を訴えたことで注目を浴びた、ゾーラン・マムダニ次期ニューヨーク市長が、ホワイトハウスを訪問し、ドナルド・トランプ大統領と会談を持った。トランプはマムダニを「共産主義者の狂信者」と非難し、マムダニはトランプを「独裁者」と呼んでいて、両者が直接対面したらどのような事態になるか、非難合戦、口論になるだろうという予想が多くなされた。
しかし、実際にはトランプ・マムダニ会談は口論の種になりそうな話題には踏み込まず、友好的な雰囲気で行われた。大統領執務室でトランプが執務机に座りながら、マムダニが隣に立って記者団の取材を受け、両者が握手をしたというのは象徴的であった。もちろん、トランプ大統領がマムダニを再び激しく非難することもあるだろうが、予想外の結果に拍子抜けという感じもあった。
マムダニと対峙しているニューヨーク共和党ははしごを外された形になった。トランプがマムダニと直接会って激しく批判する様子を映像として使おうとしていたところに、それができなくなったどころか、握手までして「素晴らしい市長」と呼んでいるので、マムダニ攻撃、民主党攻撃がしにくい状況になった。
私がこれまでの著作でも述べているように、民主党左派、民主社会主義者グループと、トランプ派は、反エスタブリッシュメント、ポピュリズム(既存の政治やエリートたちに対する一般国民の怒り)から出ているという共通点がある。以前にも紹介したように、馬蹄理論(horseshoe theory)という理論で説明ができる。そう考えると、2人の会談が友好的になったことはおかしなことではない。そして、考えが違っても、友好的な雰囲気で会談ができるという当たり前にあるべき状況が予想外とされるのはやはり問題ということになるだろう。これは現在、民主政治体制を採用している先進諸国に共通の問題と言えるだろう。
(貼り付けはじめ)
不可解なほど前向きな大統領執務室での会合から得られたいくつかの教訓(Takeaways
from a perplexingly positive Oval Office meeting)
ダグラス・E・ショーエン筆
2025年12月1日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/white-house/5625759-trump-mamdani-love-fest/
こんな展開を予想できた人はいただろうか?
ドナルド・トランプ大統領がニューヨーク市次期市長のゾーラン・マムダニを大統領執務室に招待した際、トランプが以前「共産主義者の狂人(communist lunatic)」と嘲笑したマムダニを激しく非難するだろうと予想された。
同様に、マムダニがトランプを「独裁者(despot)」と呼び、「トランプのファシズム(Trump’s fascism)」を打ち破ると約束する中で、トランプとの会談をどう受け止めるかという疑問もあった。
しかし、政治的な殴り合いを期待していた人はひどく失望することになった。会談は非常に和やかなものだったからだ。『ポリティコ』誌は「トランプとマムダニは愛し合う―戦争ではなく(Trump, Mamdani make love — not war)」と表現し、フォックス・ニューズも同様に「愛の祭典(love fest)」と形容した。
確かに、この会談が闘争的なものになるという考えは、決して飛躍的なものではない。トランプは複数の世界の指導者を同じ部屋の中で厳しく叱責し、アメリカ合衆国大統領と34歳の次期ニューヨーク市長という力関係の不均衡は明らかにトランプに有利だった。
会談が喧嘩ではなく友好的なものだったことに党派性の高い人たちは失望したかもしれないが、この「愛の祭典」は、国全体、特にニューヨーク市にとって間違いなくプラスとなった。
実際、この国における激しい非難、分断、そして政治的暴力のレヴェルは、もはや耐え難いものとなり、私たちの国の価値観とは明らかにかけ離れている。
トランプとマムダニは友好的に会談することで、たとえ一時的であっても、これ以上の発言は控え、緊張を和らげることを選んだ。
さらに、マムダニの言葉を借りれば、両者が「生産的な(productive)」関係を築けば、ニューヨーク市、ひいてはアメリカ全体がより良い方向に進むことは否定できない。
同様に、両陣営にとって、個人的かつ政治的に重要な影響がある。
間もなくレームダックとなり、共和党に対する完全な支配力を今でも維持しているかどうかという疑問に直面しているトランプにとって、今回の会談は、彼が依然としてその権力を行使していることを明確に示すものとなった。
同時に、この会談はトランプの最大の盟友の1人であるニューヨーク州選出のエリス・ステファニック連邦下院議員(共和党)にとって確かに困難なものとなった。
ステファニックの知事選キャンペーンの核心は、現職のキャシー・ホックル知事(民主党)をマムダニの極左政策とその危険性に結びつけることであり、マムダニを「ジハード主義者(jihadist)」と呼ぶことさえあった。
トランプがマムダニの政策を繰り返し称賛しながらも、ステファニックのジハード主義に絡めたマムダニ攻撃には同意しなかったため、彼女の主張は著しく困難になっている。 MAGAの有力者であるローラ・ルーマーも同様のことを指摘し、「民主党はエリスを倒すために今日の記者会見の映像を流すだけでいい」とツイートした。
そのため、ステファニクが最も明白な犠牲者となるかもしれないが、中間選挙を前にマムダニを「ブギーマン(boogeyman、訳者註:子供たちを怖がらせる幽霊などのような存在)」に仕立て上げようとした共和党員は、事実上、その計画が頓挫した。
言い換えると、大統領であり共和党のリーダーであるトランプが、自分とマムダニの間には共通点があると発言したばかりなので、民主党を急進的な社会主義者と決めつけることは難しいだろう。
マムダニにとって、今回の会談は民主党内での影響力を高めるものとなり、市長選で当選したマムダニが政治的影響力を発揮し始めた時期と重なった。
マムダニは、次期連邦下院議員選挙において、ブラッド・ランダーを現職のダン・ゴールドマン下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)よりも優位に立たせるべく尽力する一方で、その影響力を利用して、ハキーム・ジェフリーズ議員(ニューヨーク州選出、民主党)に挑む、同じ民主社会主義者の候補者を阻止しようとしている。
マムダニの功績として、彼のアプローチは、トランプが大統領に復帰して以来、多くの民主党員がいかに的外れであるかを浮き彫りにした。
トランプの後ろに立ち、2人とも笑顔を浮かべている様子は、グレッチェン・ウィットマー州知事(ミシガン州、民主党)がトランプとの面会を目撃されるのを避けるために書類の後ろに隠れようとした失敗例と対照的に映る。
同様に、マムダニがトランプとの良好な関係をスタートさせたことで、ニューヨーク市は移民取り締まり、州兵の派遣、連邦政府予算の削減といったトランプの脅しを回避するための余裕を得られた可能性が高い。
しかしながら、ドナルド・トランプに関するあらゆる事柄と同様に、この良好な関係がどれだけ長く続くのかという疑問は当然出てくる。
例えば、マムダニが実際にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の逮捕を試みたり、ニューヨーク市警にICE(米移民関税執行局)への協力を控えるよう指示したりした場合、トランプはどのように反応するだろうか?
同様に、マムダニが公約したより過激な政策のいくつかを可決できた場合、トランプは「小さな共産主義者(little communist)」という侮辱を再び口にするだろうか?
間もなく前連邦下院議員となるマージョリー・テイラー・グリーン(ジョージア州選出、共和党)がよく知っているように、トランプは自身の政治信条にはるかに忠実で同調する人々をほとんど予告なしに攻撃してきた。
マムダニにとって、トランプに浴びせた侮辱を「今も信じている」と主張していることは、非常に短気な大統領の怒りを引き起こすことになるかもしれない。
結局のところ、トランプとマムダニは、様々な違いはあるものの、どちらも熱心なポピュリストであるため、これが政治的な駆け引きだったのか、それとも真の関係の始まりだったのかを判断するのは無意味だ。
しかし重要なのは、大統領執務室での騒動を避けるため、トランプとマムダニ双方が国を第一に考え、党派的な信念を二の次にしているように見えることだ。これは間違いなくプラスだ。
※ダグラス・E・ショーエン:政治コンサルタント、ビル・クリントン大統領の補佐官、2020年の大統領選挙でマイケル・ブルームバーグ陣営の顧問を務めた。著書に『民主政治体制の終焉?:ロシアと中国の台頭とアメリカの後退(The End of Democracy? Russia and China on the Rise and America in
Retreat)』がある。
(貼り付け終わり)
(終わり)
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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