古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。
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ドナルド・トランプとニコラス・マドゥロ

 2025年9月から南アメリカのヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の空母を派遣し、また、「麻薬密輸船」への攻撃を行っている。これは、現職のニコラス・マドゥロ大統領への軍事的圧力をかけることになっている。ヴェネズエラでは、先代のウゴ・チャヴェス大統領から反米、中露接近の姿勢を取っており、アメリカは、経済制裁などで対抗し、ヴェネズエラは経済的に厳しい状況が続き、数百万人の難民も出ている。ここに来て、軍事的夏力を高めて、マドゥロ大統領を追い落とすかのような姿勢を見せている。
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 トランプ派ヴェネズエラ周辺へのアメリカ軍派遣を「麻薬対策」としている。ヴェネズエラから大量の麻薬がアメリカ国内に入っているという論法だ。しかし、地図を見れば分かるが、アメリカとヴェネズエラは距離こそ近いが、その間にカリブ海があり、多くの島々や国が存在する。それらを乗り越えてアメリカに麻薬を密輸することは大変なことだ。麻薬対策と言うならば、何よりもメキシコに対して厳しく麻薬密輸をしないように要求すべきだし、アメリカ国内の麻薬取扱組織やギャング、マフィアを壊滅する方が重要だ。
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 トランプが大統領就任式の演説で、ウィリアム・マッキンリー(1843-1901年、58歳で没)大統領(在任:1897-1901年、二期目の初めに暗殺)を称賛した。このことは拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム、2025年)で指摘した。マッキンリーはスペインとの戦争を行い、フィリピンやキューバなど、スペインの影響下にあった国や地域をアメリカの保護下に置いた。マッキンリー政権のジョン・ヘイ国務長官が「門戸開放宣言」で中国に対して、アメリカも進出すると宣言したことも知られている。

トランプの外交や国家安全保障の政策において、重要なのは「西半球(Western Hemisphere)」である。アメリカは世界の警察官を辞め、アメリカのテリトリーである西半球(南北アメリカ大陸)に立て籠もるということになる。南米は、アメリカと中国(とロシア)の影響力争いの最前線ということになる。トランプ政権は高関税を武器に、中国に貿易戦争を仕掛ける形になったが、最終的には中国に屈する形になった。トランプも負けてばかりはいられない。嫌がらせの意味もあり、ヴェネズエラを虐めることにしたということもあるだろう。日本の下世話な言い回しを使えば、「江戸の敵を長崎で討つ」だ。

 「麻薬対策」という大義名分の下で、反米路線の代表格であるヴェネズエラを叩き、中国をけん制するということになる。アメリカは手ごわい相手には喧嘩を売らない。自分が勝てそうな相手に強圧的に喧嘩を売る。しかしながら、このやり方も通じなくなっている。ジョージ・W・ブッシュ政権で始まったアフガニスタン戦争とイラク戦争、古くはヴェトナム戦争を考えてみると、アメリカの思い通りにいっていない。アメリカの外国への介入は良い結果を生み出していない。

 下に紹介した論稿は、アメリカの対ヴェネズエラ介入を戒める内容となっている。重要なのは「体制転換(regime change)」という言葉だ。「民主化(democratization)」という言葉と合わせて、私の本の国際関係や世界政治の部分ではよくご紹介している言葉であるが、これらの基盤となっているのは、アメリカの「介入主義(Interventionism)」でる。「世界の国々を全てアメリカの介入によって、民主政治体制、資本主義、法の支配、人権などを備えた国にしてしまえば世界は平和になる(争いはなくなる)」という究極のお花畑思考である。その結果は、下記論稿にある通りだ。世界は不幸になるのだ。

 トランプ大統領は、西半球は「自分の縄張り(テリトリー)だ」と考えており、そのために強硬な姿勢を示す。アメリカ軍派遣もその一環だ。アメリカ軍に被害がないなら、アメリカ軍を派遣する。遠くからミサイルを撃ち込む、戦闘機や爆撃機を使って攻撃するということまではやるだろう。しかし、アメリカ軍を本格的にヴェネズエラに侵入させるかは非常に危険な賭けになる。熱帯雨林やギアナ高地など多様な自然環境を持ち、そこでゲリラ戦を展開されてしまえばアメリカ軍の被害は避けられない。ヴェネズエラの正式名称は「ヴェネズエラ・ボリヴァル共和国(República Bolivariana de VenezuelaBolivarian Republic of Venezuela)」だ。南米の英雄、独立の英雄であるシモン・ボリヴァル(Simón Bolívar、1783-1830年、47歳で没)が生まれ、独立に導き、初代大統領を務めた国だ。その誇り高さを軽視してはいけない。アメリカとしてはミサイル攻撃や空軍による攻撃で、マドゥロ政権を瓦解させたいところだ。しかし、アメリカの思い通りには進まない。トランプ大統領はそのような愚かな判断はしないだろう。

(貼り付けはじめ)

米国主導の政権交代は多くの場合、悲惨な結果をもたらす(U.S.-Led Regime Change Is Usually Disastrous

-イラク戦争を招いた傲慢さが今やヴェネズエラに大惨事をもたらす脅威となっている。

エレン・ニックマイヤー筆

2025年12月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/01/venezuela-iraq-regime-change-trump/

アメリカは体制転換(regime change)において世界をリードしており、過去120年間で35人の外国の首脳を転覆させたという記録もある。これは、比類なき軍事力、多数の敵対勢力、そして幾度となく誤りが証明されてきた自信に満ちたうぬぼれ(a sunny self-confidence)という危険な組み合わせの上に築かれた記録である。

ドナルド・トランプ大統領ほど、世界最強の軍事力と経済力を解き放ち、議論に勝利し、領土を奪い、敵国を叩きのめし、同盟国を脅迫する力に誘惑されている人物はいない。ワシントンは、既にイランとイエメンを攻撃し、ナイジェリア、メキシコ、パナマ、さらにはデンマークとカナダに対しても漠然とした脅迫を発した後、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を標的とした軍事作戦と秘密作戦を拡大させている。

他国の指導者を追い落とすことは、もはや日常的な戦術であり、学者たちの間では「FIRCforeign-imposed regime change、外国が押し付ける体制転換)」という独自の頭字語が使われている。

ジョージ・ワシントン大学の准教授で政治学者、『破滅的な成功:外国による政権交代はなぜ失敗するのか(Catastrophic Success: Why Foreign-Imposed Regime Change Goes Wrong)』の著者でもあるアレクサンダー・ダウンズの集計によると、1816年から2011年の間に世界中で行われた約120件の外国指導者の強制退去のうち、ほぼ3分の1をアメリカが実行したという。

体制転換やその他の強硬手段による介入(interventions)が計画通りに進むことは稀だが、トランプ大統領が脅迫している、武装過激派と民族・宗派間の分裂を抱えるナイジェリアへの「銃撃戦(guns-a-blazing)」のような介入は、明らかに災厄と言えるだろう。しかし、過去の失敗は、傲慢さがいかに破滅的な結果をもたらし得るかを、アメリカ人に思い知らせるはずだ。個人レヴェルでも国家レヴェルでも破滅が及ぶ。

2006年5月、アメリカの対外体制転換第34号、イラク、そして私が記者としてバグダッドに同行した一連の軍事パトロールを例に挙げよう。

大量破壊兵器に関する虚偽の主張に基づき、アメリカがサダム・​​フセインを追放してから3年が経過したが、ジョージ・W・ブッシュ大統領のティームが中東で約束した民主化の波(the wave of democratization)は、全く兆候を見せていなかった。それどころか、私が同行していた当時、第10山岳師団のパトロールは事実上の遺体処理部隊と化していた。彼らは毎晩、他のイラク人がバグダッドの街路や歩道に捨てたイラク人の遺体を回収し、運び去っていた。

犠牲者の多くは若い男性で、中にはショックで両手を宙に掴んだり、犯人に背中にワイヤーを巻かれたりした者もいた。彼らはブッシュ政権が予見していなかった宗派間の内戦の犠牲者たちだった。サダム・サダム政権下のスンニ派を基盤とする政府と治安部隊を打倒することはアメリカ軍にとって容易だった。しかし、その後の治安の空白(the security vacuum)の中で生じた、イランの支援を受けた残忍なイラクのシーア派民兵とスンニ派反乱勢力との間の権力闘争への対処は容易ではなかった。その結果、イランは力をつけ、イスラム国は世界的な脅威となり、アメリカ軍は今日までこの地域に駐留し続けている。

アメリカ軍がサダムを追い出してから長い時間が経った後も、その影響は一般のイラク人に連鎖的に及んでいた。彼らは毎日、拉致、拷問、殺害、自動車爆弾、自爆テロ、その他の攻撃に耐え忍んでいた。

バグダッドでの一夜、アメリカ軍はすでに即席爆発装置による攻撃を受けていた。爆発により若い兵士の何人かは足を引きずったり、意識を失ったりした。近くにいたイラク人運転手の頭が吹き飛び、死亡した。

パトロール隊を率いる23歳のウィル・シールズ少尉は、その夜、バグダッド警察の駐屯地に出向いた。バグダッド警察は、イラクに秩序をもたらすためにアメリカが創設したシーア派主体の治安部隊の1つだ。シールズ少尉は、怯えるシーア派警察官を、アメリカの保護の下、事務所の外に出るよう、説教と交渉(haranguing and bargaining)を交互に繰り返し、アメリカ軍パトロール隊が夜間に遺体を回収するのを手伝うのに十分な時間を与えた。

「これは君たちの仕事だって分かっているのか?」と、苛立ちを募らせるシールズ少尉はその夜、イラク警察に問いかけた。「君たちが何もしないのに、どうしてアメリカ人が何かしてくれると期待できるんだ?」

宗派間の殺害の規模は、イラク人の死者から名前と物語を奪い、兵士たちが遺体を車の荷台に投げ込む際に記録される、入口と出口の傷跡の連続に過ぎなくなった。

ヴェネズエラは、アメリカが長年にわたり地域に介入してきた伝統への回帰(a long U.S. tradition of regional interference)となるだろう。ダウンズの調査によると、アメリカが支援した35件の体制転換のうち、約20件は中南米またはカリブ海地域で起きた。

これらの国々の中には、まるで自動販売機を蹴って正しいキャンディーバーを落とそうとするかのように、アメリカが指導者たちを何度も解任し交代させた国もあった。例えば、1954年だけでも、グアテマラでは3人の指導者たちが相次いで追放されている。

研究者のダウンズによると、世界全体で、強制的な体制転換が起きた国のうち、3分の1の国において、10年以内に内戦が勃発したということだ。

よくある災厄への道筋の1つは、体制が完全に崩壊し、不満を抱えた武装した治安部隊が途方に暮れることだ。もう1つの例は、外国によって引き据えられた新しい指導者が、国民の相反する欲求と、彼を据えた外国勢力の間で「ガムビー(粘土で作れれたキャラクター)のように引きずり回される」ことだとダウンズは述べた。

ダウンズは私に対して、「体制転換に関わる重大な問題は、その後のことを考えないことだ。『一体どんな計画があるのか​​?』と誰もが疑問を持ってしまうことになることだ」と述べた。

ダウンズは続けて次のように述べた。「そして、それがどれほど多く発生しているかは驚くべきことだ。各国はただ体制転換を繰り返し、次に何が起こるかを考えないか、あるいは・・・自分たちには起こらないだろうと考えるかのどちらかだ」。

いくつかの体制転換は大変により良い結果をもたらした。特に第二次世界大戦終結時の日本、ドイツ、その他の西ヨーロッパ諸国については体制転換の結果は顕著なものとなった。もちろん、それらの国々での体制転換は、アメリカが選択した紛争ではなく、強制的に巻き込まれた紛争の結果だった。

数字で見ると、体制転換が民主政治体制の確立に最も成功する確率が高いのは、日本や第二次世界大戦直後のドイツのように、その前に既に民主政治体制の経験があり、経済的に豊かで、人口構成が比較的均質な国である。ダウンズと同僚や他の学者たちがこれらんことを発見した。

こうした基準に当てはまらないケースとしては、アフガニスタンにおけるタリバンの復権や、アメリカとイギリスがイラン国王の政敵を排除するのを支援した後のイスラム共和国の台頭などが挙げられる。20年にわたる殺戮と反乱の後、イラクはある程度の安定に達したが、その影響は、周辺諸国を民主政体実施の実験から遠ざけることにつながっている。専門家たちは、石油産出国家(petrostate)であるヴェネズエラにおける体制転換の試みには警戒すべき兆候があると見ている。ヴェネズエラは、社会主義を標榜する独裁者マドゥロとその前任者であるウゴ・チャヴェスによる失政と国際的な制裁が相まって経済を破綻させ、数百万人の難民を生み出している。

トランプ政権はマドゥロ大統領が麻薬密売組織と結託していると非難しているが、アメリカはヴェネズエラによるアメリカへの麻薬密輸への関与を誇張している。ワシントンは軍備増強の一環として、ヴェネズエラ近海に最大の空母を派遣した。アメリカは証拠もなく麻薬を積んでいると主張する高速艇への攻撃を行い、数十人が死亡した。

トランプ政権は、選挙操作によって権力の座にとどまっているマドゥロ大統領を、武力で追放することを検討しているのか、それとも空爆などのアメリカの行動はヴェネズエラ国民に自らの手で権力を握るよう促すことを目的としているのかなど、計画について曖昧な姿勢を取っている。

トランプ政権の一期目の任期における、アメリカのより平和的なアプローチ、すなわちマドゥロ大統領への圧力を高めるための金融制裁と、権力分担協定の提案によってマドゥロ大統領の権力からの脱却を促したアプローチは、期待されたヴェネズエラの野党勢力の強化にはつながらなかった。トランプ大統領は今回、マドゥロ大統領を脅して権力を譲らせるか、直接追放するために、軍とCIAの派遣に頼ろうとしている。

米海軍大学校で軍事力の政治的影響について教えた経験を持ち、現在は学術誌『インターナショナル・セキュリティ』誌の編集長を務めるジャクリーン・ヘイゼルトンは「このような事態は以前にも見てきた」と述べ、その結果は往々にして派閥間の暴力の応酬(factional violence)に至ると指摘した。

ヴェネズエラには、今年のノーベル平和賞を受賞したマリア・コリーナ・マチャドが率いる、大規模で意欲的な民主的な野党勢力が存在する。しかし、マドゥロ大統領は長年にわたり、国の諸制度に対する支配力を強化し、多様化させてきた。マチャドには、その支配を打ち破り、挑戦者を抑圧する能力が欠けているとヘイゼルトンは指摘する。

ヴェネズエラへのアメリカの介入を支持する人々は、アメリカ主導の体制転換リストの31番目、1990年のパナマでの軍事政権からの転換を成功例として挙げている。この事件では、軍事支配者(military ruler)から民主統治(democratic government)に転換した。

しかし、ダウンズは、パナマはヴェネズエラの面積と人口よりもかなり小さく、パナマには、アメリカ軍が国内に駐留していた(ヴェネズエラ国内には存在しない)と指摘した。

ヴェネズエラへの介入を支持する人々は、こうしたアメリカの疑念を払拭しようと努めている。ヴェネズエラの野党系ライターで、アメリカの介入を支持するある人物は、自国に関しては「体制転換」という言葉自体を否定した。

マドゥロ政権下のヴェネズエラから逃亡し、現在はブエノスアイレスに住むウォルター・モリーナは、マドゥロは麻薬密売犯罪ネットワークの頂点に君臨しているだけなので、打倒すべき政権は存在しないと私に語った。モリーナをはじめとする人々は、ヴェネズエラには選挙で選ばれた政権があり、その政権は、アメリカなどが2024年の大統領選挙で勝利したとしている野党候補によって率いられており、その野党候補はマドゥロによって覆された後、復帰を待っていると主張している。

アメリカのいかなる介入も「ヴぇネズエラ国民の意志を尊重すること」になるのだともリーナは述べた。

そうかもしれない。ヴェネズエラ国内のマドゥロ政権の失政に対する憤りと、国外からの圧倒的な攻撃が相まって、独裁者を追放し、民主政治体制を導入するのに十分な状況になるかもしれない。しかし、それは不確実性が高く、慎重を期す必要がある。世界は以前にも、ディック・チェイニー副大統領(当時)が、アメリカ軍は「解放者」としてイラクにおいて迎え入れられると宣言した時のように、同様の主張を耳にしてきた。

ダウンズは外国の体制転換について、「ただ介入して、『そうだな、結果は以前より悪くなるはずがないか』と言いたくなるだろう。しかし、それは必ずしも真実ではない」と述べた。

※エレン・ニックマイヤー:AP通信元西アフリカ支局長、『ワシントン・ポスト』紙元バグダッド支局長を歴任した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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