古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 

 第二次ドナルド・トランプ政権で発表された「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」について、昨日に続いて、再び注目したい。今回は、第二次トランプ政権の「国家安全保障戦略」をアジア諸国の観点から分析するとどうなるかという内容の論稿をご紹介する。日本の外交政策を考える上でも非常に参考になる内容だ。

下記論稿では、第二次トランプ政権の「国家安全保障戦略」について、「従来の延長線上ではなく、第二次大戦後と冷戦後に形成された外交政策の広範なコンセンサスからの劇的な決別」を示しているとしている。

今回の「国家安全保障戦略」では、抑制とナショナリズム、そして普遍主義的使命を伴う国際主義の拒否が混ざり合ったMAGAナショナリズムの感情を明確に反映し、伝統的な政治イデオロギーに基づく戦略ではなく、「アメリカ・ファースト」による実利志向の戦略を志向している。これにより、「アメリカの幅広い卓越性という野望」から「国内再生」に重心を移している。これまでの介入志向の外交政策からの転換が図られることになる。

アジアにとっての良い面には次のようなポイントが挙げられる。第一に、「国家安全保障戦略」がインド太平洋をアメリカ外交の優先事項に据え、オバマ世間のピボットや第一次トランプの「自由で開かれたインド太平洋」、バイデンの戦略との連続性を示していることで、単一勢力によるアジア支配に反対する再表明は地域諸国に歓迎されるだろう。第二に、ヨーロッパに対する厳しい批判とは対照的に、アジアに対して形式的な戦略的敬意を示し、インド太平洋と中東へは限定的・選択的な介入を主張している。アジアは批判の外側に置かれている。第三に、超国家的統治やEUの規制主義への批判がある一方で、地域的制度が弱いアジアは国家主権と取引に基づく協力を重視するトランプ的世界観と相性が良く、リベラル国際主義の規範重視が必ずしも歓迎されなかった多くのアジア政府にとって「アメリカ・ファースト」に基づく主権優先の取引主義は理解しやすい。第四に、多くのアジア諸国はトランプが中国を同等の力を持つ競争国と認めつつ互恵的経済関係構築を呼びかける姿勢を歓迎しており、米中の二者択一を望まない広範な感情や、インドのような非同盟国にとっては地域での大国責任拡大の機会となる点も評価できる。  

悪い点を挙げると以下のようになる。第一に、主権と不介入の重視は歓迎されるが、アジアはアメリカが力を行使する誘惑について理解しており、可能だから介入する、国内支持層が要求するから介入するという力の論理は残るため、宣言的自制だけでは介入衝動を抑えきれないという不安を持つ。第二に、トランプの取引志向は従来の商業的取引主義を超え、同盟諸国に巨額負担や有利条件を要求するなど脅迫的側面を伴い、ASEAN首脳会議での条件付けなどは主権尊重とは無関係に力の非対称性を反映しており、アジア諸国は、取引は歓迎しても強制的重商主義には反発する。第三に、アメリカがルールをベースとする国際秩序を放棄すれば、小国の領土保全や弱者保護が損なわれ、広範かつ予測可能なルールを求めるアジアの現実主義的外務官にとって代償が生じるだけでなく、弾圧下の市民社会や反体制勢力も失望する。第四に、トランプの経済重視は商業利益と安全保障の間のトレードオフを深め、米軍優位の維持が困難になる中で米中間の経済的相互依存が亀裂を生み、同盟国に対する防衛負担要求が一部で核選択肢の再検討など極端な反応を誘発する恐れがある。第五に、台湾に関する文言を巡る激論が示すように、意味論的な論争は実際の危機対応に対する明確な指針を与えず、多くは地域情勢や米国内政治次第で変わるため、戦略的不確実性が増している。  

 アジアは中国と対峙しているので、アメリカの対中政策の影響を受けやすい。アジア諸国はアメリカと中国の2つの要素を考慮しなければならない。何よりも重要なのは、アジア地域における平和である。アメリカは中国と戦争をできる段階にない。経済依存や国力を考えると、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは中国と友好関係を維持し続ける「必要」がある。このことを前提にして戦略を考える必要がある。アジアにおける問題は、日本の高市早苗首相と日本の何の考えもない極右勢力である。この戦争をもてあそぶような考えなしがアジアにおける不安定要因となっていることは日本人として恥ずべき事態だと私は考えている。この状態を是正しなければ、日本が取り残されることになる。いや、既に取り残されているようなものであるが。

(貼り付けはじめ)

2025年「国家安全保障戦略」がアジアにとって持つ意味(What the 2025 National Security Strategy Means for Asia

-アメリカ外交政策におけるMAGA革命は良い面と悪い面の両方をもたらしている。

C・ラジャ・モハン筆

2025年12月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/08/2025-us-national-security-strategy-trump-asia-china-taiwan/

ワシントンでは、新政権が誕生するたびに独自のイデオロギー連合が形成され、必然的にアメリカの国家安全保障政策に関する理念を言語化した文書が生み出される。先週、トランプ政権が発表した最新版の国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)も、まさにその伝統に則ったものだ。しかし、より重要なのは、この文書がこれまでの戦略文書とは大きく異なる点である。これまでの戦略文書は、第二次世界大戦後および冷戦後の外交政策に関する幅広いコンセンサスに若干のヴァリエーションを加えたものに過ぎなかったが、今回の文書は、そのコンセンサスから劇的な決別(rupture)を意味している。

この文書が、ドナルド・トランプ米大統領の今後の行動に関する信頼できる指針となるかどうかは定かではない。しかし、この文書が、アメリカと世界との関係に関する国内での議論の進展における重要なマイルストーン(節目)であることは否定できない。この文書は、MAGA 運動の世界観を捉え、変化しつつあるアメリカの雰囲気(mood)を反映している。アジアにとって、この文書は、トランプ政権がインド太平洋をどのように理解し、アメリカの同盟関係をどのように扱い、中国をどのように評価し、地政学的競争の時代におけるアメリカのリーダーシップをどのように想像しているかを明らかにする窓となっている。

まず、「国家安全保障戦略」は、MAGA ナショナリズムの、今やよく知られる感情、すなわち、抑制、ナショナリズム、そして普遍主義的使命を伴う国際主義的世界観の拒絶が混ざり合った(a blend of restraint, nationalism, and the rejection of the internationalist worldview with its universalist missions)感情を明確に反映している。この文書は、「伝統的な政治的イデオロギーに基づくものではない(not grounded in traditional, political ideology)」戦略を求めている。その代わりに、「何よりも、アメリカにとって効果的なもの、つまり、一言で言えば『アメリカ・ファースト』によって動機づけられている(it is motivated above all by what works for America—or, in two words, ‘America First’)」と述べている。

「国家安全保障戦略」は、アメリカの卓越性という広大な野望から、国内の再生に根ざしたより狭い国益の定義へと方向転換を図ろうとしている。ワシントンの説教じみた言動に長らく憤慨してきた外国の政府にとって、この転換は歓迎すべきイデオロギー的再調整(ideological recalibration)を意味する。

しかし、アジアにとって、新たな国家戦略は良い知らせと悪い知らせの両方をもたらす。

第一に、この文書がアジア、あるいは現代の戦略用語で言うインド太平洋(Indo-Pacific)を、トランプ政権の戦略の中核である西半球以外におけるアメリカの外交政策の最優先事項に位置付けていることがプラス材料となる。アジアへの重点は、バラク・オバマ政権のピボット政策(pivot)、トランプ政権初期の「自由で開かれたインド太平洋(free and open Indo-Pacific)」、そして、ジョー・バイデン政権のインド太平洋戦略との連続性を示すものである。中国の台頭とこの地域の持続的な経済ダイナミズムは、これを不可避的なものにしている。同様に重要なのは、アメリカが単一の勢力によるアジア支配に反対するという姿勢を再確認したこと(reaffirmation that the United States will oppose the domination of Asia by a single power)である。これはアメリカの大戦略における長年のテーマであり、国家戦略におけるこの再表明は、中国の勢力拡大を懸念するアジアの各国首脳にとって歓迎されるだろう。

第二に、トランプ戦略は、ヨーロッパに浴びせられる衝撃的なほど厳しい批判からアジアを免れさせている。「国家安全保障戦略(NSS)」は、ヨーロッパの堕落、依存、そして、リベラリズムの行き過ぎを非難する一方で、アジアに対しては、表面上は戦略的敬意を払っている。「国家安全保障戦略」は、ヨーロッパにおいて、衰退から「西洋文明を救う」(“save Western civilization” from decline)ための強力な行動主義(muscular activism)を約束するのとは対照的に、インド太平洋地域と中東への限定的かつ選択的な介入を主張している。これは、トランプがヨーロッパよりもアジアを好むからではない。むしろ、MAGAをめぐるイデオロギー闘争は、本質的には政治的価値観とリベラリズムの未来をめぐる西側諸国内部の内戦(an internal Western civil war)なのだ。アジアは今のところ、この争いの外側に立っている。

第三に、アジアは超国家的統治に対するアメリカの批判を受けにくい。ヨーロッパ連合(EU)の官僚主義的・規制的権力はMAGAの怒りを買っている。地域的な制度的欠陥(regional institutional deficit)を抱えるアジアは、今や国家主権と取引に基づく協力を中心とするトランプ的な世界観とはるかに相性が良いように見える。人権と社会規範を重視するリベラルで国際主義的な姿勢は、常にアジアのほとんどの政府に受け入れられなかった。中国だけでなく、この地域の民主的でありながら根深い国家主義社会を持つ諸国においても同様だ。彼らにとって、「アメリカ・ファースト」イデオロギーによる国家主権の重視、そして世界を独立国家の共同体と捉える考え方は、極めて理にかなっている。

第四に、一部のアジア諸国政府、とりわけ北京は、冷戦後の「ルールに基づく国際秩序(a rules-based international order)」というレトリックについて、長らく不信感を抱いてきた。この言葉は西側諸国の首都では安心感を与えるように響いたが、アジアの一部の国では、ワシントンが、自らが示したルールを必ずしも遵守しなかったこともあり、強制的あるいは偽善的に聞こえた。トランプ大統領のプラグマティズムと国益重視、つまり「コメルツポリティック(kommerzpolitik、通商政策)」としての外交は広く受け入れられている。規範に関するリベラルなレトリックに疑念を抱くアジア諸国は、取引主義(transactionalism、トランザクショナリズム)には抵抗がない。昨秋のトランプ大統領のアジア歴訪中、アジア諸国がトランプ大統領との取引を競い合ったことは、実に示唆的だった。取引主義的なアメリカは、理解しやすく、関与しやすく、交渉しやすい。

第五に、多くのアジア諸国は、トランプ大統領が中国を同格に近い競争国(a near-peer competitor)と認め、北京との「互恵的な経済関係(mutually advantageous economic relationship)」の構築を呼びかけていることを歓迎している。アジアの大部分は、1980年代以降、米中協調体制から多大な恩恵を受けており、新たな冷戦の到来を深く懸念している。ワシントンと北京のどちらかを選ぶことを望まないという広範な感情は、トランプ大統領が中国を近い仲間として再び関与させる姿勢を見せていることに安堵感を覚える。インドのような非同盟国(non-allies)にとって、主要国に地域におけるより大きな責任を担うよう求めるトランプ大統領の呼びかけは、自国の戦略的プレゼンスを高める機会を生み出すことになる。

しかし、この良い知らせは、「国家安全保障戦略」とトランプ外交政策の運用上のダイナミクスにおける懸念材料によって相殺されている。この地域は、機会、曖昧さ、そしてリスクを等しく抱えている。

第一に、トランプが主権と不介入を重視することは歓迎すべきことであるが、アジアは、ワシントンが他国の内政に干渉しようとする構造的な誘惑を痛感している。これは原則からではなく、力から生じる。大国が介入するのは、それが可能であるからであり、そして、しばしば国内の政治的支持層がそれを要求しているからだ。南アフリカとナイジェリアに対するトランプの脅しは、懲罰と強制を求めるアメリカの根強い衝動を浮き彫りにしている。自制を宣言しても、この衝動は消えないだろう。

第二に、アジアではコメルツポリティックが浸透しているものの、トランプは通常の取引主義をはるかに超えている。日本と韓国に巨額の新規投資を要求したが、その条件は恐喝としか思えない。同様に問題なのは、最近の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議において、マレーシアとカンボジアとの貿易協定に課した条件である。これらの取り決めは主権尊重とはほとんど関係がなく、力の非対称性と圧力を反映している。アジア諸国は取引主義を歓迎するかもしれないが、強制的な重商主義(coercive mercantilism)には反発している。

第三に、アメリカがルールに基づく秩序を放棄したことは、アジア諸国の外務省の現実主義者を喜ばせるかもしれないが、この放棄には代償も伴う。アメリカが各国の領土保全を擁護することを拒否すれば、アジアの弱小国は強国のなすがままになるだろう。アメリカがウクライナに対し、和平合意の一環としてロシアへの領土譲渡を迫っていることは、中国の拡張主義に対抗するアメリカの姿勢について、直ちに懸念を生じさせている。アジアの小国は、広範かつ予測可能なルールを求めている。それは彼らがリベラルな理想主義者だからではなく、ルールが弱者を強者から守るからだ。一方、アメリカがリベラルな価値観から後退すれば、弾圧に直面した際に米国の支援を頼りにしてきた反体制団体や市民社会運動は失望するだろう。

第四に、トランプ大統領が中国との経済関係を重視していることは、商業的利益と安全保障上の関与の間の潜在的なトレードオフに対する不安を生み出している。「国家安全保障戦略」は西太平洋における中国の侵略を抑止する必要性を強調しているが、経済的相互依存と軍事的競争の間の緊張は現実のものであり、高まっている。中国の力が増大するにつれて、アメリカの軍事的優位性を維持することはますます困難になるだろう。北京は、アメリカとアジアのパートナーの間に亀裂を生じさせる能力を高めるだろう。トランプ大統領が同盟諸国に国防費増額を要求することで、一部の国は核兵器オプションの見直しを含む極端な解決策に傾く可能性がある。中国が軍事バランスを着実に自国に有利な方向に傾けているという認識が、この地域の不安を増幅させている。

第五に、「国家安全保障戦略」における台湾に関する文言をめぐる激しい議論は、アジアにおける地政学的な断層線がいかに深刻であるかを浮き彫りにしている。しかし、意味論的な議論は、トランプ大統領をはじめとする米大統領が実際の危機においてどのように行動するかについて、ほとんど指針を与えない。多くのことは、その時々の地域情勢とアメリカの国内政治に左右されるだろう。高市早苗首相が中国の台湾攻撃を日本の安全保障と結びつけて発言したことに対するワシントンの反発は、警告の兆候である。トランプ大統領はアジアの同盟諸国にさらなる要求をする一方で、アメリカが何を提供するのかについては、明確な姿勢を示していない。過去の戦略的曖昧さは、関与ではなく不確実性へと変わりつつある。

全体として、アジアはヨーロッパとは異なり、アメリカの戦略の変化に適応するための時間と余裕が十分にあるかもしれない。しかし、アジアが直面する課題はヨーロッパよりもはるかに大きい。ヨーロッパに比べて、ハードパワーの潜在力が限られているロシアとは異なり、中国はアジアにおいて圧倒的な存在感を放っている。この地域の安全保障は、地政学的な競争と経済的相互依存(geopolitical competition and economic interdependence)を特徴とする北京との複雑な関係を、ワシントンがどのように乗り越えていくかに大きく左右されるだろう。アメリカの対中政策における曖昧さは、インド太平洋地域全体に連鎖的な影響を及ぼす可能性がある。

アジアはこの新たな現実に適応しなければならない。それは、アジアがアメリカの国内政治の軌跡やトランプ主義の戦略的進化に影響を与えるためにできることはほぼないからだ。ヨーロッパ諸国はリベラルな国際主義の復活と大西洋主義の回復を望むかもしれない。しかし、アジアにそのような余裕はない。中国の存在感が大きく、アメリカが国際的な方向性を再定義する中、アジアは自助の戦略(a strategy of self-help)—国家能力の強化、アメリカを超えたパートナーシップの拡大、柔軟な連合の構築—を受け入れねばならない。同時に、「国家安全保障戦略」は、ワシントンが支援する「負担分担ネットワーク(burden-sharing network)」を提唱している。「国家安全保障戦略」は、「商業問題におけるより有利な待遇、技術共有、防衛調達などを通じて、近隣地域の安全保障においてより多くの責任を自発的に引き受ける国々に対し、アメリカは支援の準備を整える」と述べている。アジアはこの提案が提供する可能性について理解すべきである。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ・アメリカ研究所の卓越教授、シンガポール国立大学南アジア研究所客員研究教授、インド国家安全保障諮問委員会元メンバー。Xアカウント:@MohanCRaja

(貼り付け終わり)

(終わり)

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