古村治彦です。

  2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 2025年6月22日に、ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカ軍の戦闘機をイラン上空に派遣し、複数の核開発関連施設を空爆した。バラク・オバマ政権で、アメリカとイランは核開発をめぐり、イランの核兵器開発を制限する代わりに、経済制裁を解除するという内容の「イラン核合意」が結ばれた。イランの核兵器開発・保持は中東地域のパワーバランスを崩す重大な事案となるため、オバマ政権はイランの核兵器保持を阻止するという動きに出た。しかし、続く第一次ドナルド・トランプ政権では合意は破棄された。イランは、核開発を続行するという決定を下した。ジョー・バイデン政権下では、イランとの関係は好転しなかった。そして、第二次ドナルド・トランプ政権が発足し、イランに対して、実力行使に出た。これは、イスラエル支援の一環であることは当然であるが、中国の仲介によってサウジアラビアとの関係改善を進めたイランを攻撃することで、中国をけん制するということでもある。
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 トランプが決定を下したイラン空爆はどれほどの効果があったのかということについては、アメリカとイスラエルは当然のことながら、「効果があった」「素晴らしい、歴史的な瞬間」と称賛した。イスラエルは、イラン政府の中枢に諜報網を持っており(ハマス幹部の爆殺などで証明されている)、空爆の効果について、情報を持っていると考えられる。もちろん、どれほどの効果があったかということについて、イスラエル側が発表することはない。かなりの効果があったということは認められる。しかし、完全に消滅したということまでは述べていない。これはつまり、核開発能力は残っており、プログラムを再開することが可能だということになる。中国は、核兵器を保有するインドとパキスタンと国境を接している。これら両国をけん制する意味で、イランの核開発を支援する可能性がある。

 イランは、トランプのイラン爆撃の効果が不透明であることを利用することもできる。致命的なダメージを受けていたとしても、それを隠して、「効果は軽微」という態度を保持しながら、国際的な交渉に臨むことも可能だ。「あれは、アメリカのイスラエルに対する義理立ての、パフォーマンスが先に立つ空爆だった」ということをアピールして、中東地域におけるアメリカとイスラエルの影響力を削ぐことも可能だ。イランが核開発能力をそこまで喪失していないとなれば、核開発プログラムは継続される。アメリカの空爆が「演劇的」であったということになれば、アメリカの国際的な立場は弱体化していくことになる。そうなれば、イスラエルもまた中東地域において、生き残りのために、戦略の転換を迫られることになるだろう。過激な極右勢力は「死なばもろとも」ということを考えるだろうが、ユダヤ人全体がそこまで愚かであるとは思えない。

(貼り付けはじめ)

アメリカの攻撃が施設破壊に失敗したためイランは核開発に進む(Iran Is on Course for a Bomb After U.S. Strikes Fail to Destroy Facilities

-衛星画像は、イランの能力が壊滅したのではなく、弱体化していることを裏付けている。

ジェフリー・ルイス筆

2025年6月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/27/iran-us-israel-strikes-dia-bomb-facilities/

ここ数日、私は疑り深い記者たちにこう伝えてきた。イスラエルによるイランへの爆撃作戦は、たとえアメリカの支援があったとしても、効果は微々たるもので、イランの核開発計画はせいぜい数カ月、運が良ければ1年遅れる程度だろうと私は。

現在、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ロイター、そして、トランプ政権支援を続けているフォックス・ニューズまでもが、アメリカ国防情報局(the United States’ Defense Intelligence AgencyDIA)が作成した5ページに及ぶ攻撃に関する機密評価報告書の結論を報じている。どうやら私は、この爆撃作戦の効果を過大評価していたようだ。報告書によると、今回の攻撃によってイランの核開発計画は、短くても1、2カ月、長くても1年未満遅れたという。(破壊された施設の再建にはイランが「何年も」かかるというCIAの見積もりは的外れだ。イランが何年もかけるなどとは誰も考えない。)

DIAの評価は、衛星画像と信号諜報の両方に基づいている。私のようなオープンソース情報を扱う人間は、イランの通話を盗聴することはできないが、衛星画像を見ることはできる。そして、私は情報当局と同じものを見ることができる。

イスラエルがイランへの爆撃作戦を開始した際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、わざわざ放射能物質について強調し、「イランは原子爆弾9個分、いや、9個分に相当する高濃縮ウランを生産している」と述べた。この物質こそが、この悲劇におけるマクガフィン(MacGuffin、訳者註:映画や小説などの物語で、登場人物たちの行動を促し物語を動かすための「きっかけ」となるアイテムや情報、目標のこと)となる。イランはこの物質を兵器級にまで濃縮する必要があるが、フォードウ燃料濃縮工場で約3週間という短期間で実現できたはずだ。

核物質は今どこにあるのか?アメリカの情報機関の評価によると、イランは紛争初期に核物質を移動させ、おそらく秘密の場所へ移動させたという。ちなみに、これはイラン側が国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)のラファエル・グロッシ事務局長に伝えた事実と全く同じだ。物質の行方が分からなかったことに恥辱を感じたアメリカ政府当局者たちは、数々の馬鹿げた説明を試みた。JD・ヴァンス副大統領は、埋められたと主張した。マルコ・ルビオ国務長官は、イラン国内をトラックで移動すれば、イスラエルの攻撃対象になると主張した。しかし、施設に到着するトラックを捉えた衛星画像や、その後もさらに多くのトラックが入り口を土で覆う画像が多数あるにもかかわらずだ。アメリカ国防情報局 (Defense Intelligence AgencyDIA)は、その物質が逃走中(on the lam)だと考えていることが、今や明らかになった。

イランが核開発に突き進むならば、核物質をさらに濃縮し、最終的には現在のガス状態から、爆弾に組み立てられる金属の半球へと変換する必要がある。これらの工程は転換と鋳造と呼ばれる。ヴァンスをはじめとするアメリカ政府高官たちは、イスラエルとアメリカがイランのウラン濃縮能力と金属ウラン製造能力を完全に排除したと主張することで、行方不明の核物質の危険性を軽視しようとしてきた。

最新のアメリカ国防情報局の評価以前からこれは誤りであり、イランはウラン濃縮プログラムを再開する相当な能力を保持していることは明らかだった。

爆撃作戦開始直前の6月12日、IAEA理事会は物議を醸す会合を開き、そこからいくつかの重要な情報が明らかになった。この会合は、爆撃作戦後の慌ただしい出来事の中でほとんど忘れ去られている。現在では、爆撃作戦は長らく計画されていたが、ドナルド・トランプ米大統領がイランに与えたと主張した60日間の猶予期間が満了するまで保留されていたことが分かっている。

グロッシは会合で、IAEAが「遠心分離機、ローター、ベローズの生産と現在の在庫に関する知識の連続性を失った。・・・回復は不可能だろう」と示唆した。これは実質的に、IAEAが、イランが備蓄している遠心分離機の数や保管場所を把握できなくなったことを意味する。イランは保管中の遠心分離機を、破壊された遠心分離機の交換や新たな遠心分離施設の建設に利用できる可能性がある。

イランは既に保有している遠心分離機に加え、さらに遠心分離機を製造することも可能である。近年、イランはナタンズ近郊、絵のように美しい「つるはし山 [Pickaxe Mountain](クー・エ・コラン・ガズ・ラ[Kuh-e Kolang Gaz La)])」の地下に巨大な地下施設を建設した。2021年にイスラエルが近くの遠心分離機製造工場を攻撃した後、イランは製造設備をここに移設した。イスラエルとアメリカはつるはし山のこの地下工場を攻撃しなかったが、イスラエルは他の場所にある、かつて機械が置かれていた空きビルを攻撃した。もしかしたらタイムマシンを使ったのかもしれない。

イランはこれらの遠心分離機をどこに設置するだろうか? 評価報告書によると、イランは「攻撃の標的とならず、稼働を継続している秘密の核施設を維持している」とのことだ。FOXニューズのジェニファー・グリフィン(厳しい質問をする優秀な記者)によると、その1つがいわゆる第三の濃縮施設だ。

そうなのだ、アメリカが攻撃したフォルドゥとナタンズの他に、第三の濃縮施設が存在する。IAEA理事会がイランによる保障措置協定違反を認定した後、イランは「安全な場所(secure location)」に新たな遠心分離施設の建設を完了し、そこに遠心分離機の設置を開始する準備が整ったと発表した。イランはIAEAに施設の査察を要請したが、その後爆撃が起こった。

この遠心分離施設の場所は公表されていないが、グロッシはイスファハン近郊にあると述べている。私の知る限り、イスラエルもアメリカもこの施設への攻撃を試みていない。イランはいつでもそこに遠心分離機を設置し始める可能性がある。

イランは歴史的に、週に1、2基の遠心分離機カスケードを設置できる能力を持っていた。カスケードとは、通常約170基の遠心分離機を並べた装置である。イランは、フォルドゥと同等規模の代替施設を3カ月以内に設置できる。最初の爆弾に相当する量の核物質は、それから2、3日後には利用可能になるだろう。

イランは他にも濃縮施設の候補地があるかもしれない。2010年、イランがフォルドゥの核濃縮施設を明らかにした際、同様の施設を10カ所建設する計画も発表した。当時のアメリカ政府当局者たちはこれを大げさだと考えていたが、数カ月後、イランは翌年、さらに2カ所の地下深くに建設を開始する計画を示唆した。イランの新しい施設はこの時期に建設されたものの、現在まで稼働していなかった可能性が高い。

驚くべきことに、イランの選択肢の1つは、フォルドゥに遠心分離機を再設置することだ。アメリカ国防情報局の報告書は、攻撃によって電気系統が損傷し、入口トンネルが崩壊した一方で、地下の濃縮施設は無傷だったと結論付けている。これは、他の地下施設が攻撃されなかった理由を説明するのに役立つ。これらの施設はフォルドウよりもさらに深い場所にある。アメリカはより大規模な大型貫通爆弾(Massive Ordnance PenetratorMOP)が必要になるだろう。

イランがこの物質をどこで爆弾に転用するのかは不明だ。ウラン転換施設の地上建物は破壊されたが、近隣のトンネルは無傷のようだ。イランはテヘラン郊外に、シャヒド・ボロジェルディ・プロジェクトと呼ばれる大規模な地下施設を有しており、パルチンと呼ばれる軍事施設に隣接している。この複雑なトンネルは、もともと六フッ化ウランを金属に変換し、核兵器用の金属半球を鋳造するために建設された。イランはこの施設を稼働させたことはなかったが、今後状況が変わる可能性がある。イスラエルはパルチン軍事施設の他の部分を攻撃したが、シャヒド・ボロジェルディ・トンネルは他の地下施設と同様に無傷のままだ。

全体として、イランはIAEAが生産したと述べた900ポンドの高濃縮ウランと、遠心分離機の製造、ウランのさらなる濃縮、そして必要に応じて小規模な核兵器備蓄への組み立てを行うための広範な地下施設ネットワークを保持している可能性が高い。 アメリカ国防情報局がこのプログラムはそれほど遅れていないと考えているのも不思議ではない。

たった1、2カ月! イスラエル人の一部が主張するように、たとえ計画が2、3年遅れたとしても、悪評高い2015年の包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPOA)はイランの計画をその何倍も遅らせた。外交的解決に反対する人々は、その条項の多くが10年か15年で失効すると不満を漏らした。(しかし、この主張自体が誤解を招くものだった。なぜなら、他の多くの重要な条項は永久に有効となるはずだったからだ。)

しかし、10年か15年では合意には短すぎると不満を漏らしていた同じ人々が、今では爆撃によるわずか数カ月の遅延を喜んでいる。しかも、この遅延をどう使うかは全く計画がなく、ネタニヤフの支持率が下落し始めたらまた同じことを繰り返すだけだ。彼らを責めるつもりはない。彼らは外交的解決など望んでおらず、ただ体制転換(regime change)を望んでいるだけだ。しかし、どうして彼らがそれを許されているのか理解できない。私たちは、人間が交わす合意はどれも完璧であるかのように、条約には不可能なほど厳格な基準を適用するが、一方で軍事作戦には点数をつける。

多くの専門家たちが包括的共同行動計画の制限イランが保有できる遠心分離機の数、種類、そして濃縮ウランの量に注目する一方で、私は一貫して、その真の価値は秘密施設の探知能力をいかに向上させたかにあると主張してきた。これには、ウラン採掘の瞬間から始まる揺りかごから墓場まで続く保障措置、遠心分離機の製造に使用される機械の監視、イランがウラン濃縮できる場所を制限する措置、そしてIAEAが周辺を調査する特別な権利などが含まれる。

これらの措置は完璧ではなかったが、私たちは今、それらがなければいかに盲目だったかを痛感している。そして最も重要なのは、これらの措置によって、イランがフォルドウのような地下施設を使ってウランを濃縮することを長年にわたり効果的に阻止できたことだ。これは、大型貫通爆弾では不可能なことであることが、今では分かっている。

爆撃の限定的な影響と、轟音を響かせるミサイルと轟く爆発音を伴う爆撃作戦の壮観な様相を結びつけるのは、おそらく難しいことだろう。歴史上最も印象的な空軍力の誇示の1つが、イランの核開発計画にほとんど打撃を与えなかったという事実は、多くのことを物語っている。だからこそ、私はこの作戦開始当初、イラン政権の崩壊のみがこの攻撃の成功につながる可能性が高いと明言したのだ。

空軍力使用による体制転換は常に絶望的に実現可能性が低いと思われていたが、イランのような大規模で分散し、深く埋もれた核開発計画の消滅よりも、どういう訳か実現可能性が高かった。イスラエルもそれを理解していたと思う。ネタニヤフ首相は、革命前のイランの国家の象徴にちなんで、この作戦を「ライジング・ライオン」と名付けた。イスラエルの国家の象徴はガゼルなのだ。

ワシントンが本当に望んでいたのは、体制転換だったのだろうか? 少なくとも、イランを非核化に留めておくことがワシントンの目標だったとしたらどうだろうか? 結局のところ、イランは20年近くもの間、核兵器開発から数カ月しか離れていない。イランを阻んでいたのは、主に技術的な問題ではなく、常に政治的な問題だった。抑圧的で干渉好きなイスラム共和国には私が嫌悪感を抱く点がたくさんあるが、少なくとも核兵器開発には消極的だった。

イランの最高指導者は2003年、いまだに理由は明らかにされていないものの、核兵器開発計画を一時停止した。アメリカの情報機関によると、この計画はイスラエルが爆撃を開始する直前まで停止されていたという。かつて、アヤトラ・アリ・ハメネイ師とその補佐官たちが兵器開発計画について議論した際、どのような発言をしたのかは分からない。しかし、何かが彼の手を止めたのだ。

イラン政府当局がIAEAへの協力を渋ったり、交渉担当者たちが交渉を拒否したりした時でさえ、イランは常に何らかの外交的解決策を模索しているように見えた。トランプ政権は、イランに教訓を与えたと確信している。トランプ政権高官たちは、イランは爆撃によって懲り、交渉に復帰するだろうと述べている。もちろん、イラン人の中には他にも学んだ教訓があるかもしれない。

いずれにせよ、イラン国内で避けられない内部協議は、交渉のテーブルに多くの新たな顔ぶれが加わるという点も含め、これまでとは異なる様相を呈するだろう。アメリカとイスラエルは、ある意味ではイランの体制を変えた。ただ、彼らが望んだような形ではないかもしれない。

※ジェフリー・ルイス:ミドルベリー大学国際研究所教授。Xアカウント:@ArmsControlWonk

(貼り付け終わり)

(終わり)
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