古村治彦です。

 世の中では新しい言葉が次々と生まれる。2026年も新しい言葉が多く出てくることだろう。年齢を重ねると、新しい言葉についていくのはなかなか大変なことだが、何とかついていけるように努力していきたい。2025年に地政学(Geopolitics)の分野で生まれた、新語・流行語についての記事を紹介する。

 やはり最初に来るのは「TACO」だ。最初は何のことだが分からなかったが(アメリカではタコスのチェイン店で「TACO BELL」というのがあるのでTACOという言葉自体になじみはあった)、「トランプは最後にはビビッて引く」という意味であることを知って、「色々とよく考えるな」という印象であった。トランプの高関税政策は2025年に発動されたが、その後にどんどんと関税率を引き下げることになった。中国との貿易戦争では、アメリカ側のふりを悟ったようで、かなり宥和的な態度を取っている。この融通無碍さがトランプの真骨頂である。

 「多極化」は2025年の新語ということではない。私は既に2021年の段階で多極化(アメリカ一極支配世界の崩壊)について取り上げた。是非、これまでの著作をお読みいただきたい。その後は「西側世界(the West、ジ・ウエスト)対西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」という概念も重要性を増している。アメリカ一極支配世界の崩壊は、世界基軸通貨ドルの力の衰退や金などの実物資産の価値上昇につながっている。

 本年もこの大きな流れは変わらない。アメリカは抵抗するだろうが、アメリカの衰退は変わらない。私は、この大きな流れを前提にしての世界分析をこれからも提供していく。

(貼り付けはじめ)

2025年に学んだ新しい地政学用語(New Geopolitical Words We Learned in 2025

タコタイム(TACO time)になると、誰も頑なに反対したくなくなる.

エリザベス・ブロウ筆

2025年12月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/23/new-words-geopolitical-taco-drone-wall-multipolarization-narcoterrorism-asylum-fatigue/

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ケンブリッジ英語辞典の今年の言葉は「parasocial(パラソーシャル)」で、「面識な知識のない、有名人、書籍、映画、テレビシリーズの登場人物、あるいは人工知能と自分との間に繋がりを感じること、あるいはそれに関連する(involving or relating to a connection that someone feels between themselves and a famous person they do not know, a character in a book, film, TV series, etc., or an artificial intelligence)」という意味です。急激に流行した言葉をモニタリングしているコリンズ英語辞典では、今年の受賞語の中に「clanker(クランカー)」が選ばれました。この言葉を知らない人のために説明すると、「AIチャットボットやプラットフォームに対する人々の不満や不信感(people’s frustrations with, and distrust of, AI chatbots and platforms)」を表現するために使用される。ドイツの有名なランゲンシャイトドイツ語辞典は、「das crazy(ダス・クレイジー)」を若者向けの言葉に選んだ。これは名詞ではなくフレーズなので、その意味は各自で判断して欲しい。Dictionary.comの今年の言葉「67」にはコメントをしたくない。辞書業界に期待できるのは、たとえ特定の数字が子供たちの間でめちゃくちゃ流行っていたとしても、文字と数字を区別する能力くらいは持って欲しいということだ(訳者註:意味不明の言葉で、若者たちの間で67と言って笑い合うという現象があった)。

幸いなことに、地政学(geopolitics)の世界では、チャットボットとの関係やそれに類する厄介な問題について深く考える必要はない。その代わりに、2025年を象徴する新しい(あるいは最近関心を集めた)地政学用語をご紹介する機会をいただく光栄を得ることになった。

(1)(1)  TACO(タコ)

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このリストがアメリカのドナルド・トランプ大統領に関連した言葉で始まらなければ、2025年は2025年ではない。トランプ大統領は今年1年を通して、特に軽蔑的な言葉や用語を多く使用している。しかし、絶対に使っていないのがTACO(タコ)だ2025年現在、このメキシコ料理の全大文字ヴァージョンは食べ物とはまったく関係がなく、関税を課してその後撤回するトランプ大統領の癖と完全に関係している。この頭字語は「Trump Always Chickens Out(トランプは常に最後は怖気づいて引き下がる)」の頭文字をとったもので、『ファイナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストであるロバート・アームストロングが作った造語で、「アメリカ政権は市場や経済への圧力に対する耐性があまり高くなく、関税が痛みを伴う場合はすぐに引き下がる」と説明している。最近のケースでは、ブラジルに関し、トランプ大統領は今年初めに40%の追加関税を課し、合計税率は50%になった。その結果、アメリカではコーヒー、牛肉、果物の価格が非常に高くなったため、トランプ大統領は11月にコーヒー、牛肉、果物、その他の主食に対する40%の関税引き上げを撤廃した。

(2)ドローンの壁(Drone wall

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ドローンについてはこれまでも考え、議論してきたが、今年初めまでドローンの壁について議論したことはなかったと思われる。実際、ドローンの壁が地政学上の重要な用語になったのは、今秋にロシアのドローンがポーランドとルーマニアに侵入し、その直後には未確認ドローンがヨーロッパの主要空港周辺の空域を侵犯した事件が起きたからだ。こうした妨害行為はコストがかかり危険であるため、複数のヨーロッパ各国の首脳が、不審なドローンを検知・無効化する技術を組み合わせた「ドローンの壁」構想を提唱した。ドローンの壁はベルリンの壁ほど突破不可能ではないため、この構想は今後も多くの白熱した議論の的となるだろう

(3)多極化(Multipolarization

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2024年、私は『さよならグローバライゼイション:分断された世界の帰還(Goodbye Globalization: The Return of a Divided World)』を出版した。この本は、グローバライゼイション(globalization)の興亡と、世界が様々な貿易圏へと分裂していく様を描いている。当時、2、3の教授は私の見解は誤りで、グローバライゼイションは既に好調なのだと主張した。しかし、グローバライゼイションの実践者である企業幹部たちは、事態の悪化を予見していた。それ以来、世界は経済・政治の様々なブロックに分裂し、ますます分断を強めている。ロシアは自らをリーダーとするグループの構築を試みており、一方、断続的に友好関係にある中国は、自らの勢力圏を構築しようとしている。サウジアラビアとアラブ首長国連邦が主導する野心的な中東諸国も同様だ。そして、アメリカと西側同盟諸国間の関係も分断している。こうした状況から、「多極化(multipolarization)」という言葉は、2025年の地政学用語として栄誉ある地位を獲得したと言えるだろう。このような取り決めが 2026年にどのような秩序、あるいは無秩序を生み出すのかは、推測することしかできない。

(4)麻薬テロリズム(Narcoterrorism

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麻薬テロは長年存在してきた。「麻薬密売へのテロ組織や反乱グループの関与は、国際的な影響を及ぼす問題となっている」とFBI法執行機関速報は1987年にこの問題に関する記事で指摘した。この短い一文は、数十年前のこの用語がなぜ2025年の地政学用語と呼ばれるにふさわしいのかを浮き彫りにしている。かつて、麻薬テロは麻薬密売に携わる伝統的なテロ組織を指すことが最も多かった。「最近の2つの事件、1つは暫定アイルランド共和軍(Provisional Irish Republican Army)と既知の密売人が関与した事件、もう1つは暗殺未遂の資金を調達するための麻薬販売に関する事件は、各グループが互いの犯罪ネットワークを自らの特定の目的を達成するためにどのように利用したかを示している」とFBI法執行機関速報は説明した。しかし今年、トランプ政権はこの用語の異なる用法を採用し、麻薬ギャングのテロ的な活動に焦点を当てている。トランプ政権は今、特定の麻薬組織をテロ組織に指定することを決定した。これは、既存の法的見解に反して、アメリカ政府が軍事力を用いてこれらの組織と戦うことを認めるものだ。ヴェネズエラ沖で発生した麻薬密売船への攻撃がその具体例だ。

(5)亡命疲れ(Asylum Fatigue

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「小型船で到着したり、ヴィザを超過して滞在したりする人々は、定住するまで30年も待たされる可能性がある」とイギリスのシャバナ・マフムード内務大臣は11月にXに投稿した。マフムード内務大臣は、イギリスに到着する亡命希望者の数を減らすことに尽力している。なぜなら、それが有権者の希望であることを政府は知っているからだ。「難民もいれば、亡命制度を利用し、悪用しようとする経済移民もいる。・・・費用を負担するイギリス国民にとって、この制度は制御不能で不公平だと感じている」とマフムード内務大臣は内務省のウェブサイトで述べた。亡命疲れを経験しているのはイギリスだけではない。それどころか、今年、亡命疲れは西側諸国全体に広がっている。これは新しい概念でもなく、ここ数十年の世界で何度か繰り返されてきた。2015年の現象であるWillkommenskulturWelcoming Culture、歓迎文化)が亡命疲れにつながるのは避けられなかったのだろうか? 決定するのはあなただ。

(6)一貫した反対国(Persistent Objector

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一貫した反対国とは、兵役に執拗に反対する人のことだと思うかもしれない。しかし、そうではない。この言葉は馴染みのない響きかもしれないが、それが示す行動は今年、極めて重要になっている。国際法において、一貫した反対国とは、「慣習国際法の規定の形成段階において、その規定に執拗に反対する国は、その規定が制定された後もその規定に拘束されない」という考え方を指す。今年、アメリカは国連海洋法条約(UNCLOS)に違反し、アメリカに拠点を置く企業に国際水域での海底採掘の権利を与える大統領令を発令した。アメリカはUNCLOSを批准していないが、この条約の主要原則は慣習国際法である。アメリカは一貫した反対国なのか? いずれにせよ、この言葉はこれまで以上に重要な意味を持つようになった。

(7)サプライチェイン主権(Supply Chain Sovereignty

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サプライチェインは、私たち一般市民がかつては気にも留めなかった、グローバル化という歯車の中の退屈な​​歯車のようなものだった。ところが、新型コロナウイルスの流行と、中国が西側諸国への個人用防護具(PPE)輸出を大幅に削減するという決定を下した。一部の国は輸出が途絶える一方で、セルビアなど一部の優遇措置を受けた国は、切望されていた物資を受け取ることができた。そして、問題はPPEだけではなかった。中国のゼロコロナ政策は工場の混乱を引き起こし、それが世界のサプライチェインにも混乱をもたらした。今日、各国がサプライチェインを武器にして他国に危害を加えるリスクは現実のものとなり、サプライチェイン主権は単なるオタク的な言葉から政治的優先事項へと変化した。

それでは、2026年が素晴らしい年になりますように。今後12カ月で、どのような地政学的な言葉が地政学用語に加わるのか、想像するだけで、そして恐れずにはいられない。

※エリザベス・ブロウ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。大西洋評議会上級研究員。著書に『さよならグローバライゼイション:分断された世界の帰還(Goodbye Globalization: The Return of a Divided World)』がある。Blueskyアカウント:@elisabethbraw.bsky.social

(貼り付け終わり)

(終わり)

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