古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は二期目の大統領就任演説で、「製造業国家(manufacturing nation)」を実現すると述べた。これは、トランプの支持基盤である、五大湖周辺州のもともと製鉄や自動車製造の工場に勤務していた、白人の男性労働者たちの製造業の雇用を復活させるということであった。私はもはやアメリカには他国と競争できるほどの良質な製造業に適する労働力となり得る人材が残っているとは考えていないが、トランプの宣言は肯定的に受け止めた。そして、製造業の雇用を増大させるためには、アメリカ製品の輸出を伸ばす必要があり、そのためにはドルの価値を下げる、ドル安を目指すことになるだろうと考えていた。ドル安になれば、輸入品は高くなり、輸出品は安くなる。それで競争力をいくらかでも取り戻せる。しかし、アメリカは輸入大国である。アメリカの一般国民が消費する製品は海外からの安い製品である。彼らの生活を支えるためには、ドルは高い方が良い。ここのバランスをどう取るのかということがトランプ政権の腕の見せ所だと考えていた。

 しかし、この仕事は非常に複雑で、バランスを取ることは非常に困難だ。それでも何とかするだろうと考えていたが、トランプ政権でも手に負えない課題であったようだ。^結局、国内の不満は高まり、トランプ政権は、不満から目を逸らさせるために、アメリカ・ファースト外交、ドンロー主義を採用した。これは、モンロー主義と棍棒外交を混合させたものだ。西半球以外には出て行かないが、西半球内では好き勝手をして、アメリカの利益のためには収奪も厭わないということになった。このような状況になり、アメリカへの信頼は揺らいだ。トランプ政権になって、ドル安も進んでいたが、これに加えて、アメリカへの反発も高まり、ドル離れ、ドルからの逃避も起きている。世界基軸通貨(key currency)であるドルは、国際決済に使われる通貨であるが、その信頼が揺らいでいる。ドル以外での決済を模索する動きが、BRICSを中核とする「西側以外の国々(the Rest)」で起きていることは、これまで、私は著作やこのブログでもご紹介した。

 加えて、地政学リスクの高まりもあり、金をはじめとする実物資産の価格が上昇している。これらが安全資産として評価され、購入されている。値動きが激しくなってきた。それだけ世界情勢やアメリカ情勢、日本情勢が混とんしてきていることを示している。私たちは大きな時代の転換点にいる。そのことを肝に銘じておかねばならない。

kinwonigirishimetamonogakatsu001
『金を握りしめた者が勝つ』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに移動します

(貼り付けはじめ)

結局、ドナルド・トランプはドル安に陥っている(Trump Is Getting His Weaker Dollar After All

-それは良いことではないかもしれない。

キース・ジョンソン筆

2026年1月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/28/us-dollar-index-value-usd-trump-tariffs-economic-policy-currency/

donaldtrumpcabinetmembersworldeconomicforum20260121001
スコット・ベッセント財務長官を含むドナルド・トランプ米大統領政権のメンバーたちがスイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムでトランプ大統領の演説を聞いている(2026年1月21日)

今週、米ドルはほぼ4年ぶりの安値に急落した。これは一部には自業自得の結果であり、ドナルド・トランプ米大統領の思惑通りではあるものの、世界最大の経済大国の健全性(the health)にとって必ずしも最善のことではないだろう。

ドルは火曜日に急落し、1週間続いた下落の頂点に達した。トランプ大統領がドル安は「素晴らしい(great)」と述べたことで、下落は一時悪化した。ドルは、他の通貨、新興国通貨、そしてトランプ大統領就任以来約13%下落しているユーロなどの主要通貨に対して、全般的に弱くなっている。

ドルの低迷は、アメリカの経済政策における数々の激動のさなか、そして部分的にはその結果として発生している。

トランプ政権はNATO加盟国の領土を武力で奪取すると脅し、最大の貿易相手国であるヨーロッパ連合(EU)に高関税を課すと脅した後、突如として撤回したが、それでも世界の信頼を揺るがすには十分だった。

トランプ政権は、連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を試み、議長を脅迫することで、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を損なおうとしてきた。こうした動きは、アメリカの経済運営に対する信頼を揺るがしている。伝統的に通貨の監督も含まれるスコット・ベッセント財務長官の仕事はあまりにも杜撰で、金(ドルの代替通貨)の価格は1オンスあたり5000ドルを超える記録的な高値に達している。

トランプ大統領は先週だけでも、アメリカの自由貿易のパートナー国であるカナダと韓国に対し、理由も不明瞭なまま、新たな関税や追加関税を課すと警告している。ドイツの金融規制当局は水曜日、市場が世界の準備通貨としての米ドルの役割に疑問を抱き始める可能性があると指摘した。

ドルからの逃避(a flight away from the dollar)は、少なくとも歴代米政権のほとんどにとって懸念材料になっていたことだろう。しかし、トランプは選挙運動でこれを訴え、長年積極的に追求してきた。ドル安推進の背後にある考え方(the thinking behind the weak-dollar push)は、切り下げられた通貨(a devalued currency)によってアメリカ企業が他国との海外競争を容易にし、政権や多くのエコノミストが主張する自国通貨を人為的に低く抑えている国々と競争できるようになるということのようだ。しかし、輸出はアメリカのGDPのわずか11%弱を占めているだけに過ぎない。

ドル安は経済の残りの90%にとって良いニューズではない。輸入コストの上昇、インフレの長期化、そして連邦準備制度理事会(FRB)が予定通り年内に利下げを行う余地の縮小を意味するからだ。もし住宅価格の高騰と低金利がトランプの経済目標だとすれば(そして実際そうである)、ドル安は間違った治療法のように思える。

ドル安の理由について、ブルッキングス研究所のロビン・ブルックスによると、1つの合理的な答えは「政策の混乱(policy chaos)」だ。最近ではグリーンランドをめぐるヨーロッパ連合(EU)との争いが原因だが、それだけではない。要するに、不確実な世界の中で新たなパートナーを模索する中で、EUとインドが歴史的な貿易・防衛協定を締結するなど、各国がアメリカに対する地政学的リスクをヘッジしているのとほぼ同様に、外国人投資家たちもドルへの過度なリスクヘッジを行っているのだ。

しかし、確かに、ドル安の唯一のメリットは、アメリカの輸出品が海外で競争力を高めることではないか? ヨーロッパ諸国が1年前は100セントだったアメリカ製品を、今ではたった83セントで買えるのであれば、輸入を抑制しつつもアメリカの輸出を加速させ、トランプ大統領が「国家非常事態(national emergency)」と宣言した根深い貿易赤字の解消に繋がるはずだ。(米連邦最高裁判所は、おそらく来月、この件について判決を下す予定だ。)

理論上は、他の条件が同じであれば、ドル安は輸出にとって好ましい状況だ。しかし、他の条件が全て同じという訳ではない。

アメリカの輸出拡大を阻む、通貨以外の障壁は数多く存在する。消費者の嗜好はよく知られた例の1つで、大型SUVや小型トラックはヨーロッパや日本では高く評価されていない。規制上の制約もその1つで、ヨーロッパ向けであれアジア向けであれ、農産物輸出には多くの制限が設けられている。さらに、地政学的な障壁もある。トランプ大統領が中国との貿易戦争を二度も激化させた結果、巨大なアメリカ農業セクターの主要な輸出先が失われた。アメリカから中国への農産物輸出は、2022年の360億ドルから2025年には160億ドルに減少し、現在も減少傾向にある。

ドル安が輸出増加を促すという期待のもう1つの問題は、物を作るには物が必要であり、その物(製造業の投入財)の3分の1は輸入されているということだ。これらの投入財はドル安と世界のほぼ全ての国が自主的に輸入関税を課していることで値上がりしており、特に医薬品、航空宇宙、自動車、トラック、石油製品などの産業にとっては、見た目ほど利益は出ていない。

さらに、アメリカの貿易収支という難解な計算もある。輸入額は毎年輸出額を1兆ドル上回っている。ドル安になれば、これらの輸入品は全て高価になる。トランプ政権は輸入品が消えてしまえば喜ぶだろうが、多くの輸入品は必要不可欠であり(アメリカの石油産業は輸入されたチューブやパイプを本当に必要としているし、ヨーロッパの医薬品産業にはアメリカに匹敵する製品がまだ存在しない)、放棄することはできない。

したがって、ドルが弱まるほど、比較的低調なインフレ率(3%弱)が再びじりじりと上昇するのではないかという懸念が高まる。ちょうどその頃、連邦準備制度理事会(FRB)は政策面で2026年半ばまでに金利をさらに引き下げることに安心感を抱いていた。もしその時までに独立したFRBがまだ存在していたとしたら(FRB理事会の主要メンバー2人が迫害され、中央銀行が干渉を受けずに運営する能力に対する攻撃が公然と懸念されていることを考えると、これは未解決の問題だが)、それはおそらく利下げを見送ることを意味し、住宅ローンや自動車ローンなどの金利上昇につながるだろう。

結局のところ、ドル安はトランプ政権下のアメリカに対する世界の認識を問う、不完全な国民投票(referendum)の1つに過ぎない。もしアメリカと米ドルが晒されているリスクの拡大が主流の考えであれば、米ドルは需要が高まり、金は安くなり、米国債は安くなるはずだった。しかし、奇妙なことに、現状は全く逆のようだ。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー担当記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める