古村治彦です。

 アメリカ軍は世界最強の軍隊ということになっている。実際には決してそういうことはなく、ヴェトナム戦争では敗退、アフガニスタン戦争やイラク戦争でも結果としては敗退となっている。相手が弱ければ勝つというのは当たり前のことであるが、「勝てる相手としか喧嘩(戦争)をしない」というのは一つの真理である。勝てるつもりで出ていて、予想外の反撃を受けて泥沼化し、敗退するというのが、アメリカ軍の敗北のパターンだ。アメリカ軍は確かに規模が大きく、人員も多く、アメリカの国防予算は1兆ドル、約150兆円以上であるが、国防予算がアメリカにとっては大きな負担となっている。そのために、同盟諸国に防衛予算の増額を厳命し、日本にも対GDP5%のお達しが来ている。高市早苗首相はのりのりで、前倒しでこの厳命に従う。日本国民はアメリカさまの武器を買う奴隷として存在することになる。

 ドナルド・トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官は、アメリカ軍の粛清・粛軍を進めている。今回ご紹介する、ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルト教授の記事は、この動きに対する懸念を表明する内容になっている。トランプとヘグセスが、個人的な好き嫌いや忠誠心の有無で将官たちの昇進や退役について決定をする、人事介入を行うことは有能な将官たちをアメリカ軍から離れさせることにつながり、アメリカの国益を損ねるというのがその主張だ。軍隊が専門性と政治的中立性を堅持する限り、軍隊は政治にとって脅威にならない。しかし、日本の旧軍を見ても明らかなように、政治に関わるようになればそれは亡国へとつながる。政治(政治家)が軍隊を恣意的に利用することも同じである。

 トランプ個人に忠誠を誓う(選挙で選ばれた米大統領に忠誠を誓うこととは違う)ことで、昇進が早まったり、逆にそれをしなければ処分されたりということになれば、それは私兵である。アメリカ軍は国民の税金によって運営されている。トランプの私兵になることは、国民の税金を詐取していることになる。

 私は常々、アメリカの内戦ということ、それが荒唐無稽な夢物語ではないということも述べてきた。トランプがトランプに反対する一般市民に対して攻撃せよという命令を出すような事態も想像される。現在のアメリカ軍がその命令を拒絶するだけの軍隊であるのかどうか、ここはよくよく見ておかねばならない。しかし、懸念の声は既に存在している。

(貼り付けはじめ)

独裁者を目指す人物の軍隊(The Would-Be Dictator’s Army

-アメリカは非常に憂慮すべき退役軍人の日を迎えようとしている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年11月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/11/11/veterans-day-trump-military-dictator-army/

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ドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人はワシントンDCで行われたアメリカ陸軍の式典の最後に並んで立っている(2025年6月14日)

今日は退役軍人の日(Veterans Day)だ(11月11日)。アメリカ社会における軍隊の役割がどのように悪化しつつあるのかを振り返るには絶好の機会だ。国家のために奉仕し、犠牲を払った人々を称えるこの日に、ドナルド・トランプ政権の制服組(the uniformed services)に対する政策は、軍隊の競争力と能力を損ない、アメリカが長く大切にしてきた軍の専門性と政治的中立(military professionalism and political neutrality)の伝統を終わらせる恐れがある。

先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ピート・ヘグゼス国防長官による制服組の上級幹部の粛清(purge)を継続する取り組みについて長文の記事を掲載した。ヘグセスは、高官たちの業績不振の責任を問うことも、職務遂行能力の低い男女を解雇することもしない。女性や黒人であること、独立心の兆候が見られること、あるいは最悪なことに、ドナルド・トランプ大統領が純粋に個人的な理由で彼らを憎んでいることを理由に、彼らを解雇している。一例を挙げると、トランプ大統領は4人の上級将校の昇進を遅らせたり取り消したりしたが、彼らの唯一の罪状は、トランプ大統領が特別な敵意を抱いている元統合参謀本部議長のマーク・ミリー退役大将と緊密に協力していたことだったようだ。

ヘグセスの動きがなぜそれほどまでに懸念されるのかを知りたいなら、政軍関係に関する重要な2冊の本を読むことをお勧めする。1冊目は、サミュエル・P・ハンティントンの古典『軍人と国家(The Soldier and the State)』だ。この著作は、このテーマについてアメリカ人が書いた本の中で、おそらく最も影響力のある本と言えるだろう。当時、アメリカでは大規模で恒久的な平時軍事組織の構想は依然として議論の的となっていたが、ハンティントンは、軍隊が高度に「専門化(professionalized)」されている限り、つまり軍人たちが自分の使命は軍事技術を習得することであり、政治に介入しないことである(to master the military arts but not to interfere in politics.)と理解している限り、大規模な軍隊は民主政治体制への脅威にはならないと主張した。ハンティントンは、脅威の膨張、過剰な支出、軍事力の有用性を過大評価する傾向など、台頭しつつある「軍産複合体(military-industrial complex)」の間接的でしばしば有害な影響を軽視していたと私は考える。しかし、憲法を遵守することを宣誓し、指導者が主に能力に基づいて選出され昇進する、徹底的に専門化された軍隊こそが、軍事クーデターや、軍隊を使って権力を固めようとする大統領に対する最良の保険(the best insurance)であるという彼の意見は正しかった。

2冊目に読むべき本は、MIT教授ケイトリン・タルマジによる素晴らしい研究書『独裁者の軍隊:権威主義体制における戦場の有効性(The Dictator’s Army: Battlefield Effectiveness in Authoritarian Regimes)』だ。タルマジは、独裁者が主に国内の脅威、特にクーデターによる追放の可能性を懸念している場合、権威主義的な軍隊は戦争において非常に不利になる傾向があると主張している。南ヴェトナムやサダム・フセイン政権下のイラクのような国では、この懸念から、権威主義的な指導者は指揮官の選任と昇進において能力よりも忠誠心(loyalty)を重視し、訓練においては外部の敵ではなく国内の危険に焦点を当て、軍内部に分裂を煽り情報の流れをコントロールすることで、指揮官が独裁者の権力を脅かすことを困難にしている。これらの慣行は全て、戦場でのパフォーマンスに悪影響を及ぼす。対照的に、北ヴェトナムのように国内の敵をそれほど懸念していない権威主義政権は、効果的な軍事組織の構築と軍事力の最大化に注力することができる。タルマジはまた、長期にわたるイランとの戦争中のイラクやナチスドイツが侵攻した際のソ連のように、悲惨な外的危機に直面した独裁者は、敗北を回避するために機能不全な慣行を放棄せざるを得なくなることも示している。

これら2冊を合わせると、ヘグゼスの行動(おそらくトランプ氏の全面的な承認を得ている)がなぜそれほどまでに懸念されるのか、その説明に大いに役立つ。トランプ氏とヘグゼス氏が軍事クーデターを懸念しているとは思えないが、行政府の権力を統合し、数百万人の有権者の権利を剥奪し、権力を無期限に維持しようとする野心的で、かつおそらく違法な取り組みに対する国内の反対は明らかに懸念している。そうでなければ、トランプ氏は軍に対し「内部の敵」に焦点を当てるよう指示するだろうか?202116日に失敗した2020年選挙覆しの試みの再現に反対しない組織、あるいはそのような行動を支援するために利用される可能性のある組織へと、米軍を徐々に変貌させていくことは、アメリカの民主主義にとって潜在的に致命的な脅威である。思い出してほしい。トランプ大統領が、20206月に国内の抗議者に対して軍を使うというトランプ大統領の提案にエスパー国防長官が反対したため、一期目のエスパー国防長官を解任したのだ。また、ミリー国防長官に対するトランプ大統領の怒りも、議事堂襲撃前の同様の意見の相違に一部起因している。

Taken together, these two books go a long way toward explaining why Hegseth’s actions (which presumably have Trump’s full approval) are so worrisome. Although I doubt that Trump and Hegseth are worried about a military coup, they are clearly worried about domestic opposition to their ambitious and arguably illegal efforts to consolidate power in the executive branch, disenfranchise millions of voters, and retain power indefinitely. Why else would Trump direct the military to focus on the “enemy within”? Gradually transforming the U.S. military into an organization that would not oppose a replay of the failed Jan. 6, 2021, attempt to overturn the 2020 election, or even into an organization that could be used to support such an action, is a potentially mortal threat to American democracy. Remember: Trump fired first-term Secretary of Defense Mark Esper because the latter had opposed Trump’s proposal to use the military against domestic protesters in June 2020, and his anger at Milley also stems in part from a similar disagreement before the assault on Capitol Hill.

この傾向が続けば、どのような結果が起こり得るだろうか? 第一に、上級将校を能力ではなく忠誠心で選ぶということは、アメリカの兵士、水兵、パイロットが、必ずしも最も知識豊富で経験豊富、そして有能な指揮官に率いられる訳ではないことを意味する。これは一見して良いことではない。第二に、多くの愛国心のある将校は、ますます政治化され非専門的になる環境での勤務を望まなくなり、中には早期に退役を選択する者もいるだろう。その結果、軍からより優秀なリーダーが奪われ、将校団はさらに党派的な方向に傾くことになる(実際、ヘグゼス長官が目指しているのはまさにこれなのかもしれない)。第三に、軍が国内任務(例えば、危険な犯罪者が蔓延していると誤って描写されているアメリカのブルーステート[民主党優勢州]の都市の街頭パトロールなど)を課せられるようになると、深刻な敵に立ち向かう準備は整わないだろう。非武装の船舶を爆破したり、弱い敵に巡航ミサイルを発射したりするのは1つの方法だが、もし強力で対等な力を持つ競争相手を抑止し、必要であれば打ち負かそうとしているのなら、最も優秀な指揮官の何人かを粛清し、組織を不必要な国内任務に転用することは、自傷行為(a self-inflicted wound)の典型である。

しかし、ちょっと待って欲しい。アメリカの近年の戦績は、軍幹部の刷新がずっと前から必要だったことを示唆していないだろうか? アメリカの指導者たちは世界最強の軍隊を誇示したがるが、潤沢な資金を持つこの軍隊も、イラクとアフガニスタンで屈辱的な敗北を喫し、近年は他にも数々の恥ずべき挫折や事件を経験した。ヘグゼス長官は、見せかけだけの、準備不足のプリマドンナかもしれないが、数人の首を切ることで、他の者たちの士気も上がるかもしれない。

もしそうならいいのだが。もしヘグゼス長官が、第二次世界大戦でジョージ・マーシャルが行ったように、明らかに腐敗した、もしくは無能な指揮官を排除し、その決定の根拠を綿密に説明することで、部隊を粛清していたとしたら、それは全く望ましい説明責任の形態と見なすこともできるだろう。しかし、現状は明らかにそうではない。それどころか、明確な理由もなく将校たちは解任され、昇進が拒否されたり、あるいは、たまたまトランプ大統領とヘグゼス長官が思い描く軍人のあるべき姿や信念のイメージに合わないという理由で、解任されたり昇進が拒否されたりしている。

さらに、近年のアメリカ軍の失敗は、イラクとアフガニスタンにおける実りのない「国家建設(nation-building)」の試み、そしてリビアやソマリアにおける、同様に軽率な政権転覆(regime change)の試みなど、主にアメリカ国家の文民指導者たち(the country’s civilian leaders)からほぼ不可能な任務を課されたことに起因する。アメリカ軍は主要地域における侵略抑止に非常に優れており、第一次湾岸戦争で証明されたように、より弱い軍隊を打ち負かし、通常攻撃を逆転させることにも並外れた効果を発揮することができる。アメリカ軍が苦手とするのは、これまで民主的な統治の歴史を持たない貧しい多民族国家を占領し、変革することだが、この任務を得意とした軍隊はこれまで存在しない。元アメリカ軍指導者の中には、文民の同僚たちに自分たちが無意味な任務に派遣されていることを警告しなかったり、真実ではないと知りながら楽観的な進捗状況の評価を伝えたりしたとして非難される者もいるが、ヘグゼス長官の策略ではこれらの問題はどちらも解決されないだろうし、彼が粛清してきた将軍や提督たちが職務に適任ではなかったという証拠もない。

今年の復員軍人の日、アメリカ社会においてアメリカ軍が果たす重要な役割、そしてそれを党派政治(partisan politics)や現政権による権力統合の試みから可能な限り隔離する必要性について、改めて考えてみることをお勧めしたい。もし今年の復員軍人の日が、アメリカ国民が当然の誇りとすべき軍隊、そして国内の自由を脅かすことのない軍隊を持つ最後の日となれば、それは容易に覆すことのできない悲劇となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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