古村治彦です。
高市早苗首相が通常国会冒頭で衆議院を解散し、総選挙が実施された。2026年2月8日に投開票が行われ、自民党が選挙前よりも118議席増の316議席(小選挙区は249議席、比例代表は67議席)を獲得した。閣外協力の日本維新の会は2議席増の36議席(小選挙区は20議席、比例代表は16議席)となった。与党側は352議席となった。与党側の議席占有率は75.7%となった。戦時中の1942年の衆議院議員選挙(通称は翼賛選挙)では大政翼賛会の推薦候補381名(定数466)が当選し、大政翼賛会の議席占有率は約81.7%となったが、今回の選挙の自民党と日本維新の会はそれに迫る勢いとなった。

選挙前に連立与党から離脱した公明党は、立憲民主党と新党となる中道改革連合を結成した。中道改革連合は123議席減の49議席(小選挙区は7議席、比例代表は42議席)となり、大惨敗を喫した。比例名簿で公明党出身者が上位に来ていたために、小選挙区で敗退した立民系の大物議員たちは比例での復活もできず、議席を失った。公明系は選挙前よりも4議席増えて28議席となった。立憲民主党全体がほぼ消滅(148議席から21議席に)したということになる。
国民民主党は28議席で1議席増となり、善戦したということになる。小選挙区絵8議席は、中道の7議席を上回る成果だ。比例代表の20議席はやや埋没感があったということになるだろうが、中道の大惨敗に比べて大善戦、勝利と言えるだろう。しかし、与党側が圧倒的な議席数を有する中で、独自色を出して戦うということは厳しくなるだろう。昨年に自民党との連立という話があった時に乗っていればどうだったかということも含めて、これから情勢の検討や方針策定が行われるだろう。
参政党とチームみらいは小選挙区での議席獲得はならなかったが、比例代表で二桁の議席、参政党は15議席、チームみらいは11議席の獲得となった。2025年の参議院選挙から続く流れで両党ともに勢力を伸ばしたが、参政党の勢いはスローとなり、チーム未来の勢いは増している。共産党は議席を8議席から半減させて4議席、れいわは選挙前の8議席から1議席に減らした。どちらにとっても厳しい戦いだった。社民党は議席獲得ならずで、党の存在もこれから厳しい状況となる。保守党も議席獲得に届かなかった。減税・ゆうこく連合は1議席獲得となったが、原口一博氏は落選した。
今回の選挙での敗北者は立憲民主党であった。他の二桁議席を獲得している政党は、公明党を含めて議席を伸ばしている。立憲民主党は旧民主党時代から執行部に入っていたような大物議員たちが軒並み小選挙区で落選し、比例代表でも復活できなかった。立憲出身の比例代表復活者たちの多くは自民党の候補者が全員当選した上に議席が余る形で配分された人たちである。立憲民主党が消滅し、他の政党で議席を分け合ったという形になる。
立憲民主党代表を務め、中道改革連合の共同代表を務めた野田佳彦は、旧民主党時代に続いて、二度目の100名を超える同僚議員たちを落選させた指導者となった。私は野球好きであるが、日本のプロ野球史上で最多勝利数を誇り、長く南海ホークスを率いた鶴岡一人氏は「指揮官が無能だと部隊は全滅する」という発言を残している。鶴岡市は戦時中に将校として部隊を率いた経験を持つ。その経験から出た言葉だ。野田佳彦元首相に拳拳服膺して欲しい言葉だ。旧民主党時代に「花斉会」などという、自民党の派閥を真似たおままごとの派閥気取りで党内闘争をもてあそび、「国民の生活が第一」路線を裏切った、蓮舫氏をはじめとする野田佳彦元首相を祀り上げた政治家たちも今回の大惨敗の責任がある。
野田氏と共に中道改革連合成立を主導した安住淳共同幹事長は小選挙区で落選し、比例復活もできなかった。野田氏と共に現実路線・保守路線を走り、左派・リベラルを切り捨てた。野田・安住コンビは自分たちが政界のヴェテランで、政治工作の匠だと増長し、結果として公明党を助け、自分たちは消滅の道を進んだ。公明党の方が一枚も二枚も上手であった。二度の大惨敗の責任を取って、野田・安住コンビは政界から永久に消え去り、自分たちの失敗の日々を思い返しながら、表舞台に一切出てこないでひたすら反省の日々を送ることこそが肝要だ。立憲民主党は立憲主義を捨て去り、「民主党」を復活させて、権力闘争のおままごとに耽溺した。理念を忘れ、現状追認こそが保守の途だとばかりに野田・安住コンビの復活を許したことは、所属した政治家たち全員の責任でもある。
現状の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)によって、議席のスイングが大きくなることは、小泉旋風、民主党大勝でも経験したことであるが、自民党のこれほどの大勝は史上初めてのことだ。自民党だけで衆議院の議席の3分の2以上を占めた。自民党だけで総得票数の3分の2を占めた訳ではない。比例代表で見れば、約36.7%である。小選挙区での得票数を合わせても50%を超えてはいないだろう。
高市早苗首相の「人気」に促されての小選挙区・比例代表での大勝利となった。「高市首相は頑張っている」「高市首相は変えてくれる」という有権者の「期待」が集まった結果ということもできるだろう。しかし、そもそも考えてみれば、この「失われた30年」のほとんどを自民党や与党として過ごした。議席を多く獲得してきた。しかし、結果として、日本は少子高齢社会となり、GDPの成長率は低く、実質賃金も下がるばかりだ。この結果を招いたのは自民党であるのに、自民党に票が集まり、野党が議席を減らされる結果となっている。日本の有権者は現在の衰退状況を野党の責任だと考えている。もちろん、野党の責任もあるだろうが、自民党はずっと与党で、やりたいことをやって来た。消費税を上げることだってできた。思想家の内田樹先生はXのポストで「自民党は“議席が足りない”ので、野党に足を引っ張られてやりたいことが出来ない」という主張をして人々を納得させていると述べている。それに人々が納得しているということだ。今回、自民党だけで3分の2の議席を獲得した。これ以上の議席はない。野党は邪魔のしようがない。是非、やりたいことをやって、衰退状況を改善し、国民生活を少しは良くしてもらいたいものだ。この議席数で、やりたいこともできずに、衰退も止められないのなら、自民党は民主政治体制(デモクラシー)には向かない政党である。解党してしまった方が良い。
このブログでも紹介したが、選挙期間終盤に、アメリカのドナルド・トランプ大統領が高市早苗首相を支持するという内容をSNSに投稿した。これは明確な内政干渉であり、独立国に対しての非礼である。しかし、このことについて起こっている人たちはほぼいなかった。日本人は自分たちがアメリカの属国に住んでいて、アメリカに奉仕することが存在意義である奴隷であるということを芯から理解している人たちということになる。高市早苗首相はさしずめ奴隷頭である。トランプは次のように考えるだろう。「俺の一声で、高市は大変な勝利を収めた。俺はアメリカよりも日本で人気がある。日本がアメリカの51番目の州だったら、大統領選挙で1億票は日本から俺に票が入ったんだが」。
高市首相はトランプからの選挙干渉、内政干渉のお礼を早速SNSにポストした。しかし、さすがにまずいと進言を受けたのか、現在は削除している。何もやましこともなく、まずくもなければ、堂々とポストしたままにすればよいが、さすがに全世界に「内政干渉、選挙干渉をしていただいてありがとうございます」と発信するのは日本の指導者がアホであることがばれるということになったようだ。日本国内だけだったら何も問題視されなかっただろうが。しかし、インターネット時代だ、既に画像は保存されている。加筆します。削除されていなかった。猶更よくない。
選挙期間中の1月28日、アメリカの国防総省ナンバー3のエルブリッジ・コルビー国防次官が訪日し、防衛省を訪問した。コルビー次官の訪日の目的は日本に防衛予算の対GDP比5%とへの引き上げを「要求(と書いて実質は厳命)」することだ。コルビーについては、これまで拙著において詳しく紹介している。彼は著書の中で「3%」を要求していた。国防次官になって「3.5%」を要求し、当時の石破茂政権に拒絶されている。石破政権は恒例の日米の外務大臣・国務長官、防衛大臣・国防長官による「2プラス2会談」をキャンセルした。高市早苗政権は防衛費増額に前向きどころか、前のめりである。2026年は約9兆円、約1.5%であるが、補正予算で更に防衛予算を増加させたいとしている。衆議院議員の任期は4年であり、高市首相はこれ以上の議席数はさすがに望めないだろうから、任期ギリギリまで次の選挙はしないだろうから、その間に防衛予算増額を続けていく。5%ももうすぐだ。倍の倍の倍のファイトだ。3月の訪米時に何らかのシグナルを出すだろう。

防衛予算が対GDP比5%になるということは、30兆円規模になるということだ。社会保障や教育予算を削ると言っても10兆円、20兆円を浮かすということはできない。そうなれば、国債発行か、増税しかない。私たちはこの10兆円、20兆円(その多くはアメリカからの武器、装備品を買うために使われるが)を収めるために働いて、働いて、働いて、働いてまいらねばならない。私は「愛国増税」と呼んでいるが、このアメリカのために奴隷のように働くことは「愛国的行為」となるだろう。日本国民はそのことを選んだのだからどんな増税にも耐え抜く覚悟を持たねばならない。一度増えた予算はなかなか減らすことはできないということも覚えておかねばならない。
予算規模がどんどんと拡大していくということになれば、やはり国債発行は避けられないとなり、インフレと円安は進む。金利も上昇していく。増税だけではなく、円安とインフレ、金利上昇によっても私たちは手許のお金を吸い取られることになる。金利上昇となれば、住宅ローンの返済額も増加する。変動金利で数十年という人たちにとっては頭が痛い問題だ。それに教育費ということものしかかってくる。少子化で学校に入りやすくなっているかと思えばそんなことはなく、教育はまさに「地獄の沙汰も金次第」となっている。高等教育がこのような状態になれば、社会階層の固定化は進む。新しい階級が出現する。それもこれも私たちが選び取ったことである。
最後に、中国が攻めてくる、攻めてくる論であるが、そのようなことはない。日本は攻めるだけの価値もない国だ。奴隷労働に向いている若者の数は減少し、その若者たちは体力がない。老人たちに奴隷労働させようにも、膝が痛い、腰が痛いで働けない。資源はない。そもそも放っておいたら、どんどん毎年100万人ずつ減っていく国だ。こんな国を攻めて何の意味があるだろうか。ただ、怖いのは、日本の暴発だ。実際に戦争をしても、日本は短期間で敗北してしまうだけだが、中国側に被害が出るのが困る。静かに消え去ってくれれば良いが、勝手に国内で不満を貯めて、自分たちが悪いのに、「中国が悪い」と逆切れしている。そんな頭のおかしい連中と関わりたくないが、攻撃してくるならば打ち払うしかないということになる。アメリカに「もう少しちゃんと躾をしてくれないと困るじゃないか」と言うしかない。日本はその程度の国だ。残念なことであるが。
日本国民の多くが「中国が日本をいじめる」「日本に嫌なことをする」という幼稚園のお教室内での子供たちの喧嘩並みのことを言っている。「中国との関係は良くならなくてよい」と答える人も多くいる。戦後日本の国民は太平洋戦争での無残な、悲惨な敗北を受けてもう少し賢かった。今でも多くの賢い国民がいるが、そうではない人たち、考えの足りない極医的な人たちの声と行動力に引きずられている。1956年に当時の経済企画庁が発表した経済白書には「もはや戦後ではない」という有名な言葉が使われた。この言葉は本当は、中野好夫の文章のタイトルだそうだ。私はこの言葉を借りて、「今回の選挙はこうして、これまでの戦後が終わり(もはや戦後ではない)、新しい戦前が始まった」と主張したいと思う。
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』




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