古村治彦です。

 高市早苗総裁率いる自民党は国会で戦時中の大政翼賛会に迫る議席占有率を達成した。3分の2という議席数は非常に重たい。これで、「野党が邪魔をして、私たちがやりたいことが出来ないんです」という言い訳はできない。最近になって、「自民党内には右から左までいてそう簡単ではない」という主張も出てきているが、そんな泣き言はいらない。国民が高市首相に「国民生活を何とかしてくれ」ということで与えた議席である。是非、国民生活が豊かになるようにしてもらいたい。

 しかし、話はそう簡単ではない。高市政権は2年間の食料品にかかる消費税率をゼロ%にするという話を「検討する」ということにして、この国会では法案を出さない構えである。高市早苗政権がやりたいことは改憲と防衛予算対GDP比引き上げである。これは、宗主国アメリカからの厳命である。事実上の対日担当責任者であるエルブリッジ・コルビー国防次官は、自身の著作では防衛費の対GDP比3%を求めていたが、国防次官になってみると、第二次ドナルド・トランプ政権の意向は3.5%であり、最近では5%となっている。高市政権はこの5%を達成したい。日本のGDPは約600兆円なので、5%は30兆円となる。2025年度の予算約115兆円のうち、社会保障関係が約38兆3000億円で、約33.2%で、分野別としては最大だ。次は防衛関係で約8兆7000億円、約7.5%である。防衛予算が30兆円となれば、4倍弱、20兆円以上の増加となる。

 20兆円も増加するとなれば、他の分野を削ってもなかなか厳しい。現在でもかつかつでやっているのが現状だ。少子高齢社会(少子高齢「化」社会の段階はとうに過ぎている)で社会保障関係は増大していく。そうなれば、国債発行か増税ということになる。日本では、既に、税金と社会保障の負担率が5割に迫っている。その割にその恩恵を感じられていないことに国民間で潜在的な不満が高まっている。しかし、20兆円をどうやってねん出するかとなれば、国債発行か、増税しかない。高市政権を支持した国民にだけ20兆円を負担してもらうということもできない。やはり国民全体で負担を負うしかない。国債発行となれば、インフレや金利上昇のリスクは高まる。増税となれば、国民の不満は増加する。いくら「中国が気に入らない、やっつけろ」と言ってみても、税金でお金を吸い上げられ続けて、手許にお金が残らなければ生活もできない。

 改憲に関しては、ありがたいことに、衆参両院で3分の2以上の賛成で発議され、国民投票という手続きになっている。現在の参議院は、自民維新国民参政保守チーム未来保守などの改憲、憲法9条の条文変更を行うことに進みそうな勢力がギリギリで3分の2という状況だ。これだけのグループであれば意向の違いややる気に濃淡があるので、一気に憲法改正の発議まで進むのは難しいだろう。次の参議院議員選挙は2028年で、ここで憲法改正の発議を阻止できる、護憲勢力を3分の1以上にすることが重要だ。高市政権は20230年の衆議院議員の任期の最後まで総選挙はやらないと考えると、2028年の参議院選挙が重要だ。

 しかし、その前に高市政権が苦境に陥るということも可能性としてある。高市首相がやりたいことをやろうとすれば財政規模は拡大してしまう。何より防衛費が10兆円、20ちょうえんと倍々ゲームで増えていく。増税か、国債発行か、どちらにしても良い結果には結びつかない。円安やインフレが進行する。あれだけ「早苗ちゃん、頑張っている」「何か変えてくれる」と熱狂した国民は、高市早苗真理教の熱心な信者以外は離れていく。「生活が苦しいのは中国のせいだ」とばかりも言っていられなくなる。それで、皆で口を拭って、知らんぷりして「私は最初から高市という人を評価していなかった」と言い出す。高市首相の個人的な人気に支えられた自民党の議席は、決して盤石ではない。高市人気の終焉の時に、逆回転が起きる。そのことが分かっている自民党幹部たちほど、今回の大勝利に浮かれていない。しかし、何とかしようにもなかなか厳しい状況が続く。

(貼り付けはじめ)

高市早苗首相は日本を再び偉大な国にできるか?(Can Sanae Takaichi Make Japan Great Again?

-圧勝したにもかかわらず、高市首相の人気と財政計画には疑問が残る。

ウィリアム・スポサト筆

2026年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/09/japan-sanae-takaichi-election-economy/

高市早苗首相が政権発足直後に総選挙を実施するという賭けは見事に成功し、自民党は歴史的な圧勝を収めた。これにより、高市首相は中国への敵対、ドナルド・トランプ米大統領の要求をのむことで満足させての懐柔、そしてインフレ進行に苦しむ有権者への支援策といった面で、事実上、フリーハンドを手にした。

また、今回の総選挙は、長きにわたり政権を握ってきた自民党にとって新しい段階を与えた。自民党は2024年10月の参院選で連立政権を組む与党と共に衆議院(日本の国会でより強力な下院)の過半数の議席を失った惨敗の後、深刻な危機に瀕していた。右派寄りでテレビ映りの良い新政党の台頭により、過去70年間のうち6期を除く全期間にわたり日本を支配してきた自民党の統治はついに終焉を迎えるかもしれないという噂も広まっていた。

しかし、アメリカの共和党と同様に、新しい自民党は少なくとも今のところは事実上、一人党(a party of one,)だ。日曜日の選挙前、高市氏は57~68%の支持率を誇っていたが、党全体の支持率はわずか30%だった。

高市首相の人気により、自民党は衆議院465議席中316議席を獲得した。最も重要なのは、戦後初めて3分の2の超多数(supermajority)を獲得したことだ。この圧倒的な結果により、自民党は参議院の拒否権(vetoes)を覆すことができる。日本の参議院は独自の選挙日程を持ち、依然として野党が多数派を占めているため、高市首相にとって歯止めとなる可能性がある。

自民党は伝統的に集団指導体制(a system of collective leadership)を採用していて、党の実力者たちや派閥(factions)は権力争いを繰り広げながらも、公の場では統一された姿勢を見せてきた。今回の選挙結果は、高市首相にとって、党をワンマンショー(a one-woman show)へと転換させる稀有な機会となる。しかし、彼女のリーダーシップは不透明だ。高市首相の人気急上昇が持続するかどうか、そして日本の財政にさらなる負担をかけるような歳出拡大計画に金融市場がどのように反応するかについては、依然として疑問が残る。

また、この調査結果は、経済と政治の不確実性の中で、日本の若者たちがますます不安定になり、安易なスケープゴートを求める新政党のポピュリスト的極右路線(the populist, far-right takes of new parties)を支持していることも示している。極右路線が主張する敵役の中には外国人も含まれる。彼らは人口のわずか3%を占めるに過ぎず、日本の長期的な人口減少が続く中で、雇用者からは経済にとってより重要な構成要素とみなされているにもかかわらず、敵役となっている。この点を強調するため、ソーシャルメディアの投稿では、行儀の悪い外国人観光客、特に中国人観光客が取り上げられ、酔っ払った日本人サラリーマンに頻繁に見られる、より見苦しい行動は無視されている。

高市首相は、この支持基盤を自民党に引き戻そうと、「ジャパン・ファースト」アプローチを採用している。昨年秋、党首選、ひいては首相選に立候補した際、奈良公園周辺で外国人が鹿を蹴った事件に対し、憤りを表明した。事件が実際に起きたのか、あるいは数人の外国人観光客の行動が合理的な移民政策とどう関係するのかは不明だ。

高市首相はまた、国会で、中国が台湾に対して何らかの行動を起こす可能性、そしてそれが自衛隊による紛争介入を可能にする可能性について発言し、北京の怒りを買っている。これらの発言は安倍晋三首相や麻生太郎首相といった歴代首相の発言を反映したものではあったが、国会という形式的な場は中国にとって明らかに重大だった。また、これは中国にとって、日本が自国の経済利益を犠牲にしてどこまで踏み込む覚悟があるのか​​を探る機会にもなった。中国は日本にとって最大の輸出市場であり、トランプ大統領による数々の貿易上の脅威に直面して、さらに重要になる可能性がある。

しかし、高市首相の大胆な振る舞いは、長らく政治のブラックホールとなってきた、普段は無関心な若い有権者にとって、魅力の一部となっていることが証明された。これは日曜日の選挙において決定的な要因となり、投票直前の世論調査では、18歳から29歳、特に若い女性の間で高市首相の支持率は90%近くに達していた。

高市首相は反エスタブリッシュメントな姿勢を強調し、首相官邸に初めてスウェットスーツ姿で現れ、韓国の李在明大統領とK-POPのドラムデュエットを披露し、トランプ大統領の支持を獲得した。高市首相は米大統領の支持にきちんと感謝の意を表したが、トランプが、昨年、日本自動車メーカーの輸入を妨害しない見返りに、アメリカによる強制的な投資という形で日本から5500億ドルを搾取したと豪語した人物と同じ人物であるという事実は、都合よく伏せていた。

こうした強気な姿勢はソーシャルメディア上では好意的に受け止められ、主要野党グループとは対照的だった。中道改革連合(Centrist Reform AllianceCRA)という興味関心を引かない名前で急遽結成された合併政党は、名前と同じく興味関心を引かない政策を掲げ、国民が全く望んでいない政策を繰り返し公約していた。

中道改革連合は、26年間自民党と連携してきた公明党の参加から恩恵を受けることができなかった。公明党は高市首相との連携が困難だと判断して連立から離脱した。創価学会の800万人以上の会員を擁する公明党は、日本で最も信頼できる投票率向上団体だった。しかし、高市首相の前では、公明党と中道改革連合のもう一つの加盟政党である立憲民主党は、まるで過去の遺物のように映ってしまった。両党は議席の3分の2以上を失い、最終的に49議席にとどまった。

人口動態(demographics)が明らかに重要な役割を果たした。朝日新聞の出口調査によると、40歳以下の層では中道改革連合の得票率は10%以下となった。

しかし、高市首相への支持はより幅広く、自民党はあらゆる年齢層で、ソーシャルメディアをよく利用する層以外からも支持を得た。大手日本企業の幹部は次のように述べた。「この30年間、変化も進歩もなかった。高市首相は新しいことに挑戦する意欲があるように見える。もしうまくいかなければ、他の方法を試せばいい。しかし、私たちは新しいことに挑戦しなければならない」。

高市首相にとって最大のリスクは、彼女の経済政策だ。数々の素晴らしい成果を約束したことで、就任わずか45日で失脚した英国のリズ・トラス前首相との不名誉な比較が生まれている。トラス前首相は、史上最速の市場崩壊(market rubouts)の一つとなった。

問題は、賃金上昇率を上回る物価上昇(rising prices that are outpacing growth in wages)にどう対処するかだ。高市首相の解決策は、食料品に対する8%の消費税を2年間停止し、インフレ圧力を抑制するためのより痛みを伴う従来の対策ではなく、インフレの副作用の一部を緩和することだ。

財政刺激策は通常、経済を活性化させ、物価上昇のスパイラルを助長するため、これは従来の経済学に反する。多くの経済学者もそれに応じて反応している。

野村総合研究所のエコノミストで、元日本銀行理事の木内登英は、「インフレ対策としての消費税減税には多くの欠点がある。効果は限定的であり、財政健全性を悪化させ、円安と長期金利の上昇を助長する可能性がある。そして、消費税で賄われている社会保障制度への信頼を損ない、長期的な不安を増大させる」と述べている。

木内をはじめとするエコノミストたちが指摘するもう一つの差し迫った問題は、既に巨額となっている日本の対GDP比約240%の債務がさらに増加すれば、債券市場は更なる不安に陥り、円安が進行し、ひいてはインフレが加速するという点だ。日銀が円安を抑制し物価上昇を抑制するために利上げに踏み切れば、政府は自らの借入コストの壊滅的な上昇に直面することになる。市場の急落は、日本だけにとどまらず、はるかに広範な影響を及ぼすだろう。

こうした制約を踏まえ、高市首相は最近、財政健全性(fiscal soundness)への懸念が依然として残ると述べ、消費税減税による約320億ドルの歳入減は追加国債の発行なしに補填できると主張し、計画の規模を軽視している。しかし、その「方法」は完全には明確ではなく、市場を納得させるにはある程度の説得力が必要となるだろう。

ドイツ銀行日本担当チーフエコノミスト小山健太郎は顧客向けメモの中で、「重要なのは、投資家は目先の選挙結果よりも、その後の政治的駆け引きにもっと注目すべきだ。こうしたその後の展開こそが、日本の財政政策と金融政策の最終的な方向性を決定づけることになる」と述べた。

もう一つの大きな不確実性は、高市首相の支持基盤がどれほど持続するかだ。東京の慶応義塾大学経済研究所の政治問題専門家である茂垣正弘は「今回の結果の主な要因は、若い有権者からの強い支持にあるようだ。若者たちの支持は、実質的な政策分析よりも、メディアやソーシャルメディアを通じた印象によって動員されたようだ」と述べた。

しかしながら、現時点では高市首相が明らかに実権を握っており、しかもそれを楽しんでいるようだ。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリスト。2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。ロイター通信と『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙で勤務し、20年以上にわたり日本の政治経済を取材してきた。また、2021年にはカルロス・ゴーン事件とその日本への影響に関する著書を共著で刊行している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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