古村治彦です。

 アメリカとヨーロッパの関係が悪化している。デンマーク領であるグリーンランド領有を目指す発言をドナルド・トランプ大統領や側近たちが行い、ヨーロッパ諸国は不安感を高めている。大西洋を挟み、北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸の各国で構成している北大西洋条約機構(NATO)は旧ソ連と衛星諸国と対峙するために結成され、その後は、対ロシア同盟となっているが、NATOの枠組みにも緊張感が漂っている。アメリカが米軍をグリーンランドに派遣するとなると、デンマークの主権が侵害されることになり、NATOはアメリカと交戦状態になる。こうした事態はだれも望まないが、第二次ドナルド・トランプ政権の「狂人戦略」はヨーロッパをざわつかせている。

 こうした中で、ヨーロッパ諸国の中の大国であるドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、アメリカとヨーロッパとの関係改善を訴えた。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を中核とし、その他の様々な枠組みで重層的につながっている、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)と西側諸国(the West、ジ・ウエスト)の分裂構造に世界はなりつつある。そうした中で、西側諸国の中で分断が起きることは、ヨーロッパ諸国にとって望ましくない。また、トランプ大統領が、ヤルタ2.0体制(米中露)、G2体制(米中)に傾きかねないとなると、ヨーロッパは孤立してしまう可能性がある。

 トランプのヴェネズエラ攻撃とグリーンランド領有希望は、「アメリカ・ファースト外交」に基づくドンロー主義(西半球を影響圏・勢力圏とする)の表れである。アメリカが世界の管理者であることを辞め、西半球を押さえるだけで良いとなり、他は中国(とロシア)に任せるとなれば、ヨーロッパは「捨てられる」ということになる。アメリカと中露を天秤にかけて、アメリカを選ぶということになるだろうが、アメリカは既に世界帝国であるための力を失っている。以下の記事で、メルツ首相は、「中国軍の伸長」に対抗するために、ヨーロッパとアメリカは協力しなければならないと述べている。ここがポイントである。ヨーロッパ連合(EU)とNATOにとって、中国は主敵とはならない。あくまでもロシアである。それでも、ヨーロッパ諸国が国防予算の増額を行い、アジア地域に出てくるというのは、アメリカの意向に沿うための動きである。しかし、トランプはヨーロッパのそうした意向をあっさり無視してしまう。トランプは中国と対立を深刻化させる意向はない。ヨーロッパと日本がトランプと側近たちの意向を「忖度」して、勝手にいきり立っているということになる。

 ヨーロッパの不安感は理解できる。世界構造の転換で自分たちが世界の中心でなくなる時代が再びやってくる。その対処の苦痛を和らげたいということもあるだろう。しかし、世界は大きく動いている。

(貼り付けはじめ)

ドイツ首相フリードリヒ・メルツがアメリカの指導力が「失われた」と発言し関係の修復を求める(German Chancellor Merz says US leadership ‘lost,’ calls for repair of relations

ロウラ・ケリー筆

2026年2月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5737485-us-leadership-challenged-merz/

ドイツ首相フリードリヒ・メルツは金曜日、世界舞台におけるアメリカの指導者としての役割は「失われた(lost)」と発言し、ドナルド・トランプ大統領に対し、中国とロシアの脅威に対抗するため、大西洋関係(the transatlantic relationship)の修復を促した。

「アメリカの指導力の追求は挑戦を受け、おそらくは失われつつある」と、メルツ首相はミュンヘン安全保障会議に集まった各国の首脳、政治家、軍指導者たちに語った。

メルツ首相の演説は、先月スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムで、カナダ首相マーク・カーニーがアメリカ主導の世界秩序の「断絶(rupture)」を指摘した発言と重なるものだった。カーニー首相は、トランプ大統領によるグリーンランド占領の脅し、制裁措置としての関税、そしてNATOへのアメリカの関与に関する疑念をめぐるヨーロッパの不安に訴えた。

しかし、カーニー首相が米中両国による卓越に挑戦するため、新たな中堅国連合(a new coalition of middle powers)の結成を呼びかけている一方で、メルツ首相はトランプ大統領に対し、中国軍の伸長に対する最善の防衛策として、ヨーロッパとの関係修復を訴えた。

メルツ首相は、「大国間競争(great power rivalry)の時代では、アメリカでさえ単独では立ち向かえないだろう」と述べ、ドイツ語から英語に切り替え、ワシントンとアメリカ国民に直接語りかけた。

メルツ首相はアメリカとヨーロッパの関係修復を訴え、NATOへの共通の関与こそが脅威に対する最善の防衛策だと述べた。

メルツ首相は「親愛なる友人の皆さん、NATOに加盟することは、ヨーロッパの競争優位性であるだけでなく、アメリカの競争優位性(competitive advantage)でもある。だからこそ、共に大西洋間の信頼を修復しよう」と述べた。

メルツ首相はまた、アメリカが敵対的になる中でヨーロッパ諸国が連携するよう訴え、「新たな大西洋横断パートナーシップ」を求めた。

メルツ首相は、2025年のミュンヘン安全保障会議におけるJD・ヴァンス副大統領の演説に言及し、大量移民に直面してヨーロッパが報道の自由を抑圧し、歴史的文化を失っていると厳しく批判した。

メルツ首相は、「ヨーロッパとアメリカの間には分断が生まれており、JD・ヴァンス副大統領は1年前のミュンヘン安全保障会議でこのことを非常に率直に述べており、彼の言う通りだった」と述べた。

メルツ首相は「アメリカにおけるMAGAのような文化間の争いは、私たちの問題ではない。言論の自由は、人間の尊厳と私たちの基本法に反する言葉が発せられた時点で終わる」と続けて述べた。

メルツ首相は「私たちは関税や保護主義ではなく、自由貿易を信じている。気候変動に関する協定や世界保健機関(WHO)の方針を堅持するのは、地球規模の課題は共に解決しなければならないと確信しているからだ」と続け、トランプ大統領の政策に言及した。

「私たちのパートナーシップに未来があるのであれば、新たな方法でそれを築き上げ、それを理性的に理解する必要がある」。

マルコ・ルビオ国務長官は今週末、ミュンヘン安全保障会議で演説を行う予定だ。演説の予告として、ルビオ長官は記者団に対し、「私たちが目指すところ、彼らと共に目指すところ」について説明すると述べた。

ルビオ長官は「古い世界は過ぎ去った。率直に言って、私が育った世界は過ぎ去った。私たちは地政学の新たな時代に生きている。私たち全員が、そのあり方、そして私たちの役割とは何かを再検討する必要があるだろう」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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