古村治彦です。
2026年2月28日に開始されたアメリカとイスラエルによるイランに対する空爆とミサイル攻撃は収束を見せていない。イラン側からはイスラエルや湾岸諸国にあるアメリカ軍基地や関連施設に対する報復攻撃やホルムズ海峡封鎖通告もあり、世界経済への悪影響が懸念される。何よりもイラン国内では民間人の使者が出ており、アメリカ軍にも死者が出ている。湾岸諸国は厳しい状態になっている。
イランの核開発に関しては、バラク・オバマ政権時代に、アメリカとイランの間で核兵器開発は行わないという合意に達していた。しかし、その後、第一次ドナルド・トランプ政権時代にこの合意はアメリカ側によって一方的に破棄された。続くジョー・バイデン政権では、核開発に関する合意に向けた動きもあったが合意には至らなかった。第二次トランプ政権下では交渉が行われていた。そうした中で、トランプ大統領は、そして、トランプ政権はどうしてイランへの大規模攻撃を決断したのか。
端的にまとめれば、今回のイラン攻撃の基にある論理構成は、「イスラエルはイランのミサイル開発や核開発を存亡にかかわる脅威と捉え、イランの最高指導部を弱体化し、イラン政府の転覆を図るために攻撃を決意した。その決意を覆すことは難しい。イスラエルがイラン攻撃を実行すれば、中東地域にあるアメリカ軍基地も攻撃を受けて大きな被害が出る。その被害を避けるために、イスラエルと一緒になって攻撃をイランへの攻撃を行う」というものだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がドナルド・トランプ大統領に積極的な働きかけを行い(一種の暗示をかけて[洗脳をして])、アメリカ軍によるイランへの大規模攻撃が決定された。アメリカ軍制服組トップの統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は、リスクが高いという進言を行い、間接的に反対を表明した。また、J・D・ヴァンス副大統領(高校卒業後に海兵隊に入隊しイラクへの派遣経験あり)は作戦を行うならば「大規模にかつ迅速に(go big and go fast)」行うようにと述べたとされている。これは作戦が長引くことを避けるために(泥沼[quagmire]にはまるを避けるために)、このように述べたようだ。
イランはアメリカにとって存亡にかかわる差し迫った脅威(existential
threat)ではない。従って、大規模攻撃を行って、イランの政府転覆から体制転換を行う必要は、少なくとも緊急的にはなかった。結局、イスラエルに乗せられて戦争を始めてしまったということになる。ネタニヤフ首相は汚職の疑惑に直面し、首相の座を降りれば、家族も一緒に訴追されるという危険な状態にある。ネタニヤフ首相が個人的な利益のためにこのような戦争を始めたとするならば(その可能性が高い)、これは人類に対する大いなる犯罪行為ということになる。そして、トランプ大統領は、有権者の期待(アイソレイショニズムとアメリカ・ファースト)を裏切ってこのような校に加担した共犯者ということになる。彼らの罪は「万死に値する」ものである。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領はどのようにして開戦を決意したか(How Trump
Decided to Go to War)
-トランプ大統領がイランへの軍事行動を支持したのは、外交交渉の終結を決意したイスラエルのある指導者の行動がきっかけだった。大統領の補佐官のなかでこれにきちんと反対したのはほぼいなかった。
マーク・マゼッティ、ジュリアン・E・バーンズ、タイラー・ペイジャー、エドワード・ウォン、エリック・シュミット、ローネン・バーグマン筆(記者たちは数十年にわたりワシントンと海外でアメリカのこれまでの戦争を協力して取材してきた)
2026年3月2日
『ニューヨーク・タイムズ』紙
https://www.nytimes.com/2026/03/02/us/politics/trump-war-iran-israel.html
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2026年2月11日の朝、米大統領執務室に入り、アメリカ大統領を戦争への道へと進ませる決意を固めていた。
数週間にわたり、アメリカとイスラエルはイランに対する軍事攻撃について秘密裏に協議を続けてきた。しかし、トランプ政権当局者たちは最近、イランの核開発計画の将来について交渉を開始しており、イスラエルのネタニヤフ首相は、新たな外交努力が計画に支障をきたさないよう万全を期したいと考えていた。
約3時間にわたり、両首脳は戦争の可能性、さらには攻撃の可能性のある日時、そしてトランプ大統領がイランと合意に至る可能性(可能性は低いものの)について協議した。
数日後、トランプ大統領は外交ルートに懐疑的な姿勢を公に表明し、イランとの交渉の歴史は長年にわたる「話し合い、話し合い、そして話し合い(talking and talking and talking)」に過ぎないと一蹴した。
トランプは、イランの体制転換(regime change)を望むかとの記者団の質問に対し、「それが起こり得る最良のことのように思える(“seems like that would be the best thing that could happen)」と答えた。
2週間後、大統領はアメリカを戦争へと導いた。イスラエルと連携した大規模な軍事爆撃を承認した。この爆撃により、イランの最高指導者は瞬く間に殺害され、イランの民間施設や軍事核施設が壊滅的な被害を受けた。イランは混乱に陥り、中東地域全体で暴力が発生し、これまでにアメリカ兵6人とイラン民間人数十名が死亡した。トランプは、数週間に及ぶ可能性のある攻撃に備え、アメリカ軍の犠牲者が増える可能性が高いと述べている。
公の場では、トランプは軍事行動への道筋を迂回しているように見え、イラン政府との合意を望むと言いながら、同時にイラン政府を打倒したいと言い続けた。アメリカ国民に今こそ戦争が必要だと納得させようとはほとんど努力しなかった。トランプと側近たちが主張した根拠は限定的で、イランがアメリカにもたらす脅威の緊迫さの度合いに関する虚偽の主張も含まれていた。
しかし、水面下では、トランプ大統領の戦争への動きは容赦なく強まっていた。その原動力となったのは、ネタニヤフ首相をはじめとする同盟者たちであり、彼らは大統領にイランの神権政治体制(Iran’s theocratic government;)に対する決定的な打撃を与えるよう圧力をかけていた。また、1月にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を打倒したアメリカによる作戦成功を受け、トランプ大統領自身も自信を深めていた。
トランプ大統領がイランへの持続的な攻撃を開始する決断を下した経緯を再現する本稿は、協議内容を直接知る関係者たちに加え、地域の外交官、イスラエルとアメリカの政権関係者、大統領のアドヴァイザーたち、連邦議会の議員たち、国防・情報当局者など、あらゆる立場の関係者の証言に基づいている。ほぼ全員が匿名を条件に、デリケートな議論や作戦の詳細について語ってくれた。
アメリカがイランを攻撃する決定を下したことは、弱体化した体制を攻撃すべきだと主張し、数カ月間トランプ氏に働きかけてきたネタニヤフにとっての勝利であった。昨年12月にトランプの別荘マール・ア・ラーゴで行われた会談で、ネタニヤフは今後数カ月以内にイスラエルがイランのミサイル基地を攻撃することについて大統領の承認を求めていた。
2カ月後、彼はさらに素晴らしいものを手に入れた。イラン指導部を打倒するための戦争における完全なパートナーを得た。
ホワイトハウスのキャロライン・リーヴィット報道官は月曜日の声明で、トランプ大統領は歴代大統領が立ち向かおうとしなかった脅威に立ち向かうという「勇気ある決断(courageous decision)」をしたと述べた。
大統領の側近の中で軍事行動に反対する者はほぼいなかった。中東地域におけるアメリカの軍事介入(military interventions)に長年懐疑的だったJ・D・ヴァンス副大統領でさえ、ホワイトハウスのシチュエーションルームでの会合で、もしアメリカがイランを攻撃するのであれば「大規模かつ迅速に行うべきだ(go big and go fast)」と主張したとヴァンスの発言を知る関係者は語っている。
同じ会合で、トランプの首席軍事補佐官である統合参謀本部議長ダン・ケイン将軍は、戦争はアメリカ軍に多大な犠牲をもたらす可能性があると大統領に伝えた。数日後、トランプは国民に対し、軍事補佐官がはるかに安心感を与えてくれたと語った。彼はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、ケイン将軍がイランに対するいかなる軍事行動も「容易に勝利できる(something easily won)」だと述べたと述べている。
他の政権当局者も、連邦議員との非公開会合で同様に誤解を招く発言をした。2月24日に行われたいわゆる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」(連邦上下両院の民主共和両党指導部と連邦上下両院情報諜報委員会の指導部)との会合で、マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ政権が体制転換を検討していることに一切言及しなかったと発言に詳しい関係者は述べている。
3日後、トランプ大統領は、テキサス州コーパスクリスティでのイヴェントに出席するため大統領専用機エアフォースワンに搭乗中、イランの最高指導者の殺害をはじめとして、継続的な攻撃を命じた。
「“壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)“を承認する」とトランプ大統領は述べた。「中止は認めない。幸運を祈る」。
ホワイトハウスは、イランとの外交交渉は単なる芝居ではないと主張していた。しかし、この1カ月で、トランプ大統領、ネタニヤフ首相、そしてイランの指導者たちを一度に満足させるような合意、あるいは戦争を数カ月以上先送りできるような合意など、到底あり得ないことが明らかになった。
交渉は何も成果をもたらさなかったが、トランプ大統領にとっては別の目的があった。それは、中東地域におけるこの世代で最大規模のアメリカ軍増強を完了させ、トランプ大統領の言葉を借りれば「圧倒的な力と破壊力(overwhelming strength and devastating force)」による戦争を遂行するための時間を確保することだった。
日曜日のニューヨーク・タイムズ紙のインタヴューで、トランプ大統領は、イランが自分の望むものを決して与えないと確信したと述べた。
「交渉の終盤で、私は彼らがそこにたどり着くことはないと悟った」とトランプは語った。 「『とにかくやってみよう』と私は述べた」。
●急速な戦力増強(A Rapid Buildup)
2026年1月中旬、トランプ大統領がイランを揺るがす反政府デモへの支援としてイランへの攻撃を初めて警告した当時、国防総省は中東地域で長期戦を遂行できる状況になかった。
当時、中東地域に米空母は存在せず、戦闘機部隊はヨーロッパとアメリカに駐留していた。また、中東各地に点在する約4万人のアメリカ軍部隊が駐留する基地は、予想されるイランの報復から身を守るための防空システムが不足していた。
イスラエルもまた、2025年12月のマール・ア・ラーゴでの会談でネタニヤフ首相がトランプ大統領と協議した軍事作戦の準備が整っていなかった。ミサイル迎撃ミサイルの供給を強化し、イスラエル全土に防空高射砲台を配備するには、より多くの時間が必要だった。
2026年1月14日、ネタニヤフ首相はトランプ大統領に電話をかけ、イスラエルの防衛準備が完了する月末まで軍事攻撃を延期するよう要請した。トランプは待つことに同意した。
両首脳はその後数週間にわたり数回会談した。ネタニヤフ首相はヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、そしてホワイトハウスの対イラン交渉担当責任者であるスティーヴ・ウィトコフ特使とも協議した。イスラエルの軍と情報諜報機関の高官たちはワシントンに飛び、イスラエル国防軍参謀総長のエヤル・ザミール中将はアメリカ中央軍のブラッド・クーパー大将と定期的に連絡を取った。
2026年1月下旬までに、イランの抗議活動は容赦なく鎮圧されたが、戦争計画は順調に進んでいた。アメリカ軍はトランプ大統領に対し、イラン国内の施設への空襲実施のためにアメリカ軍を派遣するなど、幅広い選択肢を提示した。
2隻の空母と12隻の支援艦艇が中東地域に向けて出航し、国防総省は戦闘機、爆撃機、空中給油機、防空砲台を派遣した。
2月中旬までに、国防総省は数週間にわたる軍事作戦を遂行できる戦力を配置した。
その頃、ウィトコフと大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーは、トランプ大統領の指示に従い、イランと間接的な核協議を行っていた。
しかし、トランプ政権が警戒している兆候もあった。
ルビオ国務長官は2月16日、ブダペスト訪問中に記者団に対し、次のように述べた。「イランは最終的にはシーア派聖職者、それも過激なシーア派聖職者によって統治され、その決定はシーア派聖職者によって行われていることを理解する必要がある。彼らは純粋な神学(theology)に基づいて政策決定を下す。そういうやり方で意思決定をする。だから、イランと合意するのは難しい」。
メッセージは明白だった。協議はイランの核開発計画の解体に関するものだったが、その目的はイランの指導層の排除にある可能性があった。
ウィトコフが2月21日、フォックスニューズのインタヴューで、トランプがイランが「ゼロ濃縮(zero enrichment)」、つまり核燃料生産能力の解体に難色を示していることに触れた時、その意味が明らかになった。
「トランプは、なぜイランが降伏しないのか、つまり『降伏した(capitulated)』という言葉は使いたくないが、なぜ降伏しないのかを知りたいようだ」とウィトコフ氏は述べた。
さらに、「なぜ、これほどの圧力を受け、我々があちらで保有する海軍力の規模を考えれば、彼らは私たちに『私たちは、核兵器は欲しくないと主張する。だから、我々が用意しているのはこれだ』と言ってくれないのか?」と付け加えた。
「しかし、彼らをその立場に追い込むのは容易ではない」とウィトコフは述べた。
大統領の補佐官たちにとって、大統領が何らかの軍事攻勢を強く検討していることは明らかだった。問題は、その軍事作戦の規模と、それが具体的に何を達成しようとしているのかということだった。
●複数の選択肢の評価(Assessing the Options)
2026年2月18日、季節外れの暖かさが続くワシントンで、ヴァンス、ルビオ、ジョン・ラトクリフCIA長官、そしてホワイトハウス大統領首席補佐官スージー・ワイルズは、トランプ大統領と共にシチュエーションルームに集まり、軍事計画について協議した。
会議中、ケイン大将は様々な選択肢について議論した。その中には、アメリカ軍がイランを交渉に押し込むための限定的な攻撃を行うか、あるいはイラン政府転覆を目的としたより大規模な作戦を行うかが含まれていた。特に後者の選択肢は、アメリカ軍の死傷リスクが高く、中東地域の安定を揺るがし、アメリカ軍の兵器備蓄を大幅に枯渇させる可能性があるとケイン将軍は述べた。
ケイン大将は、検討中の選択肢はどれも、ヴェネズエラのマドゥロ大統領の拘束に成功するよりもはるかに困難であると強調した。大統領は、この作戦について、イランにおけるアメリカの成功の兆しと見ていた。
ケイン将軍の報道官ジョー・ホルステッドは、大統領と国防長官に提示された「選択肢と検討事項(options and considerations)」は機密事項であるとしてコメントを控えた。
一方、個人的には軍事攻撃に反対の姿勢を示しているとみられるヴァンス副大統領は、限定的な攻撃は誤りだったと主張した。アメリカがイランを攻撃するのであれば、「大規模かつ迅速に(go big and go fast)」行うべきだとヴァンスは出席者たちに語った。
ヴァンス副大統領の報道官はコメントを拒絶した。
会議の前、トランプはまず小規模な攻撃を行い、イランが核濃縮を放棄しない場合は大規模な攻撃を行うという戦略に傾倒していたように見えた。しかし、ヴァンス副大統領の主張は反響を呼んだようだ。そしてその後数日間で、アメリカとイスラエルはイランのミサイル・核開発計画だけでなく、指導部自体も一緒に攻撃すべきだという考えに傾く当局者が増えていった。
CIAは、イランの最高指導者(supreme
leader)であるアリ・ハメネイ師が攻撃で殺害された場合に起こり得るシナリオをいくつか作成した。多くの変数(variables)があるため、CIAが確信を持って何が起こるかを判断するのは困難だったため、複数のシナリオを提示した。
1つのシナリオは、ハメネイ師に代わる強硬派の聖職者、ひょっとすると核兵器取得にさらに傾倒する指導者が登場するというものだ。別のシナリオは、政府に対する反乱を予測するものだったが、イランの反体制派の弱体化を考えると、情報当局者の多くは反乱の可能性は低いと考えていた。
複数のトランプ政権の高官は、第三のシナリオを予測した。それは、強硬派聖職者よりも現実的なイスラム革命防衛隊(the Islamic Revolutionary Guard Corps、IRG)の1つの派閥が権力を握るというものだ。名目上は聖職者が引き続き権力を握る可能性が高いものの、実際にはイスラム革命防衛隊の指導者たちが国を率いることになるというものだ。
このような動きは、40年にわたり強硬な反米姿勢を貫き、イランの聖職者指導部と深く結びついてきた将校団(an officer corps)にとって、劇的な転換となるだろう。
しかし、CIAの分析によると、アメリカがこの派閥の経済活動、例えば石油産業への影響力に干渉しない限り、一部の将校はアメリカに対して融和的な姿勢を示す可能性がある。彼らはイランの核開発計画を放棄したり、イランの代理勢力によるアメリカへの攻撃を阻止したりするかもしれない。
CIAはコメントを拒絶した。
軍事行動に反対するロビー活動はほとんどなかった。唯一の例外は、右派のポッドキャスターであり、大統領に近い同盟者でもあるタッカー・カールソンだ。彼は過去1カ月間に3回、大統領執務室で大統領と面会し、攻撃に反対する主張を展開した。
カールソンは、アメリカがイランと戦争に突入した場合、アメリカの軍人、エネルギー価格、そして地域におけるアラブ諸国へのリスクを説明した。カールソンは大統領に対し、イスラエルによってアメリカが窮地に陥るべきではないと述べ、アメリカが攻撃を検討しているのはイスラエルがイランを攻撃したいという願望があるからに他ならないと主張した。また、トランプ大統領に対しネタニヤフ首相を牽制するよう促した。
トランプ大統領は攻撃のリスクを理解していると述べたものの、カールソンにはイスラエルが始める攻撃に参加する以外に選択肢はないと伝えた。
カールソンは2月23日正午、ホワイトハウスを去った後、トランプは軍事行動に傾いていると考えていると関係者たちに語った。
●外交の最終段階(One Last Round of Diplomacy)
ホワイトハウスは、トランプ大統領に対し対イラン作戦開始にあたり連邦議会の同意を得るよう求める一部議員の要請を無視し、連邦議会で戦争の必要性を訴える努力もほとんどしなかった。
しかし2月24日、トランプ大統領の一般教書演説の数時間前、いわゆる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」と呼ばれる議員たちが議事堂内の厳重な会議室に集まり、ルビオ国務長官とラトクリフとヴィデオ会議で協議した。両者はペンシルヴァニア通りを少し下ったホワイトハウスにいたが、大統領演説の警備体制の都合上、2マイル(約3.2キロメートル)の移動は困難を極めた。
ルビオとラトクリフは、今回の攻撃の背景にある情報、攻撃のタイミング、そしてイランが今後の協議で核濃縮を放棄した場合の「出口(offramp)」の可能性について話し合った。
しかし、ルビオは政権が政権転覆作戦を検討していることには一切言及しなかった。
ルビオ国務長官はブリーフィングで、イスラエルとアメリカのどちらが先に攻撃したとしても、イランはアメリカ軍基地や大使館に対し強力な武器の集中攻撃で反撃すると主張した。いずれにせよアメリカは巻き込まれることになるため、アメリカがイスラエルと協力して行動するのは理にかなっているとルビオは述べた。そしてイスラエルは行動する決意をしているとルビオは述べた。
この論理は民主党員の一部の耳には心地よくなかった。彼らは、トランプ政権がネタニヤフ首相にアメリカの政策を左右させ、アメリカの軍備増強がイランの攻撃を誘発する可能性があるため、アメリカは攻撃せざるを得ないという循環論法(a circular argument)を展開していると考えていたのだ。
一般教書演説の2日後の木曜日、ウィトコフとクシュナーはジュネーブを訪れ、英語を話し、アメリカについて詳しいイランのアッバス・アラグチ外相と再び交渉を行った。
イラン側はアメリカに対し、将来の核濃縮レヴェルを示唆する7ページにわたる計画を提示したが、その数値がウィトコフとクシュナーを警戒させた。
アメリカ側は依然としてイランに対し濃縮ゼロを約束するよう求め、民生用核開発計画のための核燃料の無償提供を提案したが、イラン側は拒否したと、あるアメリカ政府当局者は述べた。協議終了後、ウィトコフとクシュナーはトランプに対し、合意に至る可能性は低いと伝えた。
その日、トランプは大統領執務室に共和党所属の連邦上院議員4名を招き、自身の立法議題について協議した。会話は最終的にイラン問題へと移った。
サウスカロライナ州選出の共和党議員で、イラン攻撃を声高に支持するリンジー・グラム連邦上院議員は、大統領は苛立ち、イラン側が合意に関心を示していないと考えていると述べた。
グラム議員はインタヴューで、「トランプ大統領は外交を追求する必要があると強く感じていたと思う。外交を追求することを望んでおり、軍事的選択肢は最後の手段だと思っていた」と述べた。グラム議員はトランプ大統領に対し、イラン側が交渉を長引かせるだろうが、そうさせるべきではないと伝えたということだ。
「彼(トランプ)は自分が試みたことに非常に満足していた」とグラム議員は述べた。
一方で、外交は単なるパントマイムであり、必ず失敗する運命にあると考える者もいる。
ジョー・バイデン政権で国務次官補として中東政策を担当した元外交官のバーバラ・リーフは、トランプが軍事行動へと向かうことは避けられないことは明らかだと述べ、協議の最中に2つ目の空母打撃群をこの地域に派遣したことを指摘した。
リーフは次のように述べた。「あれは戦争計画(war planning)の証拠だった。外交でより有利になるために、そんなものは必要ない。彼が軍事攻撃に出るだろうということを、私は全く疑っていなかった」。
●情報諜報機関によるクーデター(An Intelligence Coup)
実際、アメリカとイスラエルは、ジュネーブでの会談前日の水曜日に既に攻撃の可能性について協議していた。ホワイトハウスは、イランに核濃縮への野望を諦めさせる最後のチャンスを与えるため、攻撃時期を木曜日の夜に延期した。その後、夜間に紛れてテヘランを攻撃するという案で、攻撃時期は金曜日まで延期されました。
この時期は、最終的に驚くべき諜報活動によって決定された。
ハメネイ師の動向を綿密に追跡していたCIAは、最高指導者が土曜日の朝、テヘラン中心部の自宅敷地内に滞在する予定であることを掴んだ。イランの文民および軍の高官たちも、同じ場所で同時刻に会合を開く予定だった。
CIAはこの情報をイスラエルの情報諜報機関に渡し、両国の指導者は、日中に大胆な「斬首(decapitation)」攻撃で戦争を開始することを決定した。
トランプは金曜午後、エネルギーに関する演説を行うためにテキサス州のコーパスクリスティに飛び立つ際、正式なゴーサインを出した。
地上に降り立った大統領は、外交の行き詰まりを示唆し、記者団に対し「交渉に満足していない」と述べた。イランは何十年もの間、「我が国の国民の足、顔、腕を吹き飛ばしてきた。彼らは我が国の船舶を次々と攻撃し、毎月何かを起越している」と述べた。
イラン当局者4名によると、アメリカが攻撃を準備しているという兆候は十分にあったものの、イラン側は日中に攻撃が行われる可能性は低いと考えていたという。
それはイランの週明けの土曜日の朝で、子供たちは学校へ、大人たちは仕事へ向かっていた。
最高国家安全保障会議(the Supreme National Security
Council)の会合に出席した人々は、アメリカやイスラエルのスパイに知られていない可能性のある地下バンカーやその他の秘密の場所で会合を開く必要性を感じていなかった。
複数の当局者によると、ハメネイ師は側近に対し、戦争が勃発した場合、身を潜めた指導者として歴史に裁かれるよりも、その場に留まり殉教者(a martyr)となることを望むと語ったという。
高官たちが会議のために集まっている間、彼は敷地内の別の場所にある執務室にいた。会議終了後、説明を求めていた。
ミサイルは会議開始直後に着弾した。
※ヘレーネ・クーパー、ファーナズ・ファシヒ、ゾルラン・カンノ=ヤングス、デイヴィッド・E・サンガー、マイケル・クロウリーが本稿の作成に貢献した。
※マーク・マゼッティ:ワシントンDCを拠点とする、国家安全保障、情報諜報、外交問題を専門とする調査報道記者。CIAに関する著作がある。
※ジュリアン・E・バーンズ:『ニューヨーク・タイムズ』紙アメリカの情報諜報機関と国際安全保障問題担当記者。20年以上にわたり安全保障問題について書いてきた。
※テイラー・ペイジャー:『ニューヨーク・タイムズ』紙ホワイトハウス担当記者。トランプ大統領とトランプ政権を担当している。
※エドワード・ウォン:『ニューヨーク・タイムズ』紙記者。国際問題、アメリカ外交政策、国務省を担当。
※エリック・シュミット:『ニューヨーク・タイムズ』紙国家安全保障担当記者。30年以上にわたりアメリカの軍事問題とテロ対策を取材。
※ローネン・バーグマン:テルアヴィヴを拠点とする『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌スタッフライター。
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連邦議員たち:イスラエルのイラン攻撃計画がトランプ大統領の攻撃決定を決定づけた
アレクサンダー・ボルトン筆
2026年3月2日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5764030-trump-administration-iran-strikes-israel/
民主、共和両党の有力議員たちは月曜日、トランプ政権が今週末、イラン全土への爆撃とミサイル攻撃を開始する決定を行ったが、この決定は、アメリカの支援の有無にかかわらず、イスラエルがイランを攻撃する計画に大きく左右されたと述べた。
複数のトランプ政権高官は、議会で行われた機密ブリーフィングで、民主、共和両党の議員たちに対し、イスラエルのイラン攻撃計画は、アメリカが中東各地の基地に駐留するアメリカ軍兵士を守るため、先制行動(preemptive action)を取らざるを得ない状況に追い込んだと述べた。国防総省は、これらの兵士たちが報復攻撃(retaliatory strikes)の標的になると考えていた。
連邦上院情報諜報委員会の副委員長を務めるマーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ブリーフィングに出席し、同盟国(イスラエル)からの圧力を受けて他国(イラン)への大規模軍事攻撃を開始する決定は、アメリカを「未知の領域(“uncharted” territory)」に陥れたと述べた。
ワーナー議員は、「これは依然として選択的な戦争であり、他国からも認められているように、イスラエルの目標とタイムラインによって決定づけられたものだ」とブリーフィングで記者団に語った。
マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグゼス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長は月曜日の午後、連邦議員たちにブリーフィングを行った。
ワーナー議員はイスラエルを支持すると述べたものの、差し迫った脅威(an
imminent threat)がアメリカ自身ではなく同盟国に向けられている可能性があるにもかかわらず、アメリカ人の命を危険に晒すという決定には疑問を呈した。
ワーナー議員は「イスラエルはアメリカの偉大な同盟国だ。私はイスラエルを断固として支持する。しかし、結局のところ、アメリカ兵を危険に晒すこと、そしてアメリカ人の犠牲者やさらなる犠牲者が出ると予想される状況においては、アメリカの利益に対する差し迫った脅威の証拠が必要だと考えている。私は依然としてその基準を満たしていないと考えている」と述べた。
ワーナー議員は、もしイランに対する軍事作戦が「アメリカに対するイランからの差し迫った安全保障上の脅威によって推進されていたのであれば、私たちはより適切な計画を立てていたはずだ」と主張した。
マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)はブリーフィング後に記者団に対し、イスラエルがアメリカの支援なしでも軍事作戦を開始し、中東地域に駐留するアメリカ軍が危険に晒されることが明らかになったため、トランプ大統領はイランへの攻撃を命じるという、難しい決断に直面したと述べた。
ジョンソン議長は、「イスラエルは、アメリカの支援の有無にかかわらず、自国の防衛のために行動する決意を固めていた。それは何故か?
それは、イスラエルが存亡にかかわる脅威(an existential threat)と見なす脅威に直面していたからだ。イランは急速にミサイルを製造しており、中東地域の同盟諸国はそれに対応できないほどになっていた」と述べた。
ジョンソン議長はさらに、「イスラエルがアメリカの支援の有無にかかわらず行動する決意を固めていたので、私たちの最高司令官、政権、そして閣僚は非常に難しい決断を迫られた。彼らは、アメリカ、私たちの軍隊、私たちの施設、そしてこの地域とそれ以外の地域にある私たちの資産に対する脅威を評価する必要があった」と語った。
ジョンソン議長は、トランプ政権の高官たちは「もしイスラエルがイランの兵器庫を破壊するために攻撃すれば」、イランは「即座にアメリカ軍の人員と資産に対して報復するだろう」と判断していたと述べた。
「もし私たちがそうした事態が起こるまで待っていたら、私たちの不作為(inactions)の結果は壊滅的なものになっていただろう」とジョンソン議長は主張した。
「もしイランが短距離・中距離ミサイルを含む全てのミサイル兵器を我が国の人員、資産、施設に向けて発射し始めていたならば、私たちは甚大な損失を被っていただろう」とジョンソン議長は語った。
「もし私たちが先に行動を起こす前に対応を待っていたら、私たちが行ったような行動をとった場合よりもはるかに大きな損失になっていただろう」とジョンソン議長は付け加えて述べた。
ルビオ国務長官はブリーフィング前に記者団に対し、イスラエルの攻撃に対するイランによるアメリカ軍への報復の脅威が、イラン全土へのアメリカ軍による攻撃開始の決定の原動力となったと述べた。
「私が受けた2つ目の質問は、『なぜ今なのか?』だ。攻撃開始が今である理由は2つある。1つ目は、イランがアメリカであれイスラエルであれ、あるいは誰であれ攻撃を受けた場合、イランはアメリカに対して報復措置を取ることは明白だった」とルビオ国務長官は述べた。
ルビオ長官は、イランによるアメリカ軍とアメリカ軍施設への報復命令は、イスラエルとアメリカが週末の攻撃を開始するずっと前に、現場の指揮官に任されていたと述べた。
ルビオ長官は「もし私たち(アメリカ)が攻撃を仕掛ける前に、彼ら(イスラエル)の攻撃をただじっと待っていたら、はるかに大きな犠牲を生み出していたことだろう」と述べた。
ルビオは次のように主張した。「大統領は非常に賢明な決断を下した。イスラエルの行動は必ず起こると分かっていたし、それがアメリカ軍への攻撃を誘発することも分かっていた。そして、イスラエルが攻撃を開始する前に先制攻撃をしなければ、より多くの犠牲者が出ることも分かっていた」。
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〇「米国のイラン攻撃、イスラエルの策略か? トランプ派内で対立激しく」
日本経済新聞 2026年3月4日 5:51
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0401G0U6A300C2000000/
【ワシントン=飛田臨太郎】トランプ米政権のイラン攻撃を巡り、イスラエルに迫られて決断したか否かを巡り政権支持層内で論争が始まり、対立が鮮明になってきた。ルビオ国務長官がイスラエルの軍事計画が攻撃の引き金となったと説明して波紋を呼ぶ。トランプ米大統領は3日、火消しに追われた。
ルビオ氏は2日、記者団に米国が攻撃を決断した背景には、イスラエルがイランに対して米国への報復につながる軍事行動を計画していたためだと説明した。
「明らかに我々はイスラエルの意図を把握しており、それが我々にとって何を意味するかを理解していた。その結果として行動する準備が必要だった」と触れた。
発言後、「MAGA」と呼ばれるトランプ氏を支持する層からは軍事作戦そのものの正当性を疑うような声が噴出した。
MAGAはもともと戦争を嫌い、近年の中東への軍事関与は米国の国益のためではなく、イスラエルが政策決定に影で影響を与えてきたためだと考える人がいる。
MAGA系の著名インフルエンサーのマイク・サーノビッチ氏は「ルビオ氏の発言はレコードの針が飛んだ瞬間だ。多くの人が推測していた事実を口にした」と説き、軍事作戦のとりやめを求める声が増えるだろうと強調した。
トランプ氏は3日、支持層の反発を踏まえて、あくまで自身の判断だと強調した。イスラエルが米国を戦争に巻き込んだのかと問われ「むしろ、私がイスラエルに決断を迫ったと言えるかもしれない」と語った。
トランプ支持層の中でも、イスラエルとの関係を重視する人々はルビオ氏の発言が曲解されていると主張する。極右運動家のローラ・ルーマー氏は「『イスラエルに操られている』との虚偽の物語が流布している」と反論した。
米紙ニューヨーク・タイムズによるとイスラエルのネタニヤフ首相は、数カ月間にわたりトランプ氏にイラン攻撃を働きかけてきた。2025年12月に米国で会談した際には、トランプ氏に数カ月以内にイスラエルがイランのミサイル基地に攻撃するのを承認するよう求めた。
米国とイスラエルは歴史的に強い協力関係を築いてきた。一方、近年になってから親イスラエルの国民感情は揺らぎつつある。
米ピュー・リサーチ・センターが2025年10月に発表した世論調査によると、イスラエル政府に否定的な意見を持っている米国人は59%で24年調査と比べて8ポイント増加した。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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