古村治彦です。
2026年2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃とイランからイスラエルと湾岸諸国にあるアメリカ軍基地に対する報復攻撃によって戦争状態が発生した。正式な宣戦布告は出されていないが、もう戦争状態と言っていいだろう。アメリカとイスラエルはイラク国内のクルド人勢力に武器を供与し、イラン国内に侵攻させようとしている報道もある。事態は深刻度を増している。
イラン革命防衛隊はホルムズ海峡の船舶航行を差し止める通達を出し、既に数隻の船舶が攻撃を受けている。これによって世界の石油と天然ガスの20%が通過するホルムズ海峡を船舶が航行できなくなった。しかし、既に船舶の積み荷に保険をかけている保険会社がホルムズ海峡を航行しないように差し止めをしているということだ。トランプ大統領は、アメリカがタンカーの護衛や格安に保険を提供すると述べているが、どこまで効果を発揮するかは不透明だ。
船舶が航行できなければ、ペルシア湾岸諸国は石油を輸出できないだけではなく、日用品、食糧の輸入もままならなくなるということになる。大富豪たちが集まる煌びやかな都市ドバイであっても、食料がなければ人々は生活ができない。また、石油が輸出できなければ、富裕な暮らしもできなくなる。パイプラインもあるようだが、船舶で輸送できない分を贈れるほどの余力はないようだ。イランも石油が輸出できなければ外貨獲得ができずに追い込まれてしまうだろうが、国民がアメリカとイスラエルに対する敵愾心を持つことで、しばらくは耐乏生活ができるということになるだろう。
イスラエルはともかく、アメリカはアメリカが正義の鉄槌を振り下ろせば、イラン国民も蜂起して、イラン政府を転覆させると考えていた節がある。しかし、その目論見は外れてしまったようだ。そのように簡単にはいかない。イランはヴェネズエラとは違い(ヴェネズエラには大変失礼な物言いになるが)、軍事力や経済力は大きく、そう簡単に崩れるものではない。戦争状態が数週間続くことで、原油価格は上昇する。先週は60ドル台だった価格が既に76ドルを超えた。日本では円安も進んでおり、エネルギー調達コストは上がっていく。これからしばらくは厳しい状態が続く。年内は影響が続くと見ておくのが妥当であろう。
COMEXの原油価格の推移(1カ月)
(貼り付けはじめ)
〇「トランプ氏、ペルシャ湾航行する船舶に保険を提供 必要なら護衛も」
CNN日本語版 2026.03.04
Wed posted at 16:44 JST
https://www.cnn.co.jp/usa/35244566.html
(CNN) トランプ米大統領は3日、ペルシャ湾を航行する船舶に対して「保険と保証」を提供するよう米国際開発金融公社(DFC)に指示したと明らかにした。また、必要であれば米海軍がホルムズ海峡でタンカーの護衛に当たる考えも示した。
トランプ氏はSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、DFCに対し、ペルシャ湾を航行するエネルギー輸送などの海上貿易の財務的安全性を確保するため、「非常に妥当な価格」で保険と保証を提供するよう命じたと明らかにした。全ての船会社が利用できるとしている。
トランプ氏はさらに、必要であれば、米海軍は可能な限り速やかにホルムズ海峡でタンカーの護衛を開始すると明らかにした。
イランは今週に入り、ホルムズ海峡を航行する船舶への攻撃を示唆しており、すでに一部のタンカーが攻撃を受けている。複数の海上保険会社は、周辺海域での戦争関連の損害について補償を打ち切ったと顧客に通知した。
独立系石油アナリストのトム・クローザ氏はCNNの取材に対し「イランがホルムズ海峡を封鎖することはできないと思うが、保険会社や船舶運航会社なら封鎖できる」と語っていた。
トランプ氏のプログラムは、保険を失った船舶を補償することを目的としている。保険がなければ、攻撃で原油を失った場合の費用を負担することになるからだ。
その結果、海峡は事実上封鎖状態となっている。S&Pグローバルのコモディティーズ・アット・シーのデータによると、2日に同海峡を通過した石油・化学タンカーは2隻にとどまった。通常は1日あたり約60隻が通航し、世界の原油輸送量の約20%を担っている。
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保険会社は船舶のホルムズ海峡航行を制限している(Insurers Are
Keeping Ships Away From the Strait of Hormuz)
-イランからの混乱が広がる中で世界の海運業界は圧力に晒されて苦境に立っている。
エリザベス・ブラウ筆
2026年3月3日
『フォーリン・ポリシー』誌
ホルムズ海峡のすぐ南では、海図を見ると交通渋滞の様相を呈しており、数十隻の船舶が密集している。海峡の向こう、ペルシア湾でも、海上交通の混乱が見られる。世界の石油と天然ガスの20%が通過するホルムズ海峡が、この数十年の中でより危険な状況に陥っているからだ。これは既に原油価格と世界の海運に影響を与えている。たとえ紛争が明日終結したとしても、その波及効果は何年も続くだろう。
世界の海運にとって、ペルシア湾から抜け出す唯一の航路であるホルムズ海峡は、スエズ運河と同じくらい重要であり、スエズ運河を巡る最近の問題は、今後の状況を予感させるものだ。2023年11月、フーシ派の反政府勢力は紅海を航行していたギャラクシー・リーダー号を攻撃し、これをきっかけに一連の攻撃が開始された。2024年2月までに、スエズ運河のコンテナ取扱量は82%も減少しました。スエズ運河は回復を始めたが、イラン戦争による混乱に見舞われた。そして今、同様の運命がイランのすぐそばにあるホルムズ海峡を襲っている。
中東地域で緊張が高まるたびに、海峡の一方にオマーン、もう一方にイランが位置するホルムズ海峡を事実上封鎖するのではないかという懸念が高まる。イランは、自国の石油貿易も船舶の海運に依存しているため、実際に封鎖を試みることはない。しかし、2月28日にアメリカとイスラエルが攻撃を行ってから数時間後、テヘランは船舶に対し、ホルムズ海峡(正確にはイラン側海域)を航行しないよう警告し、航行を試みる船舶を攻撃すると表明した。現在、ホルムズ海峡海域の交通は事実上麻痺状態にあり、少なくとも3隻の船舶がミサイル攻撃を受けた。
しかし実際には、保険業界が声を上げているため、テヘランの行動によって海峡での交通渋滞が引き起こされたという訳ではない。船舶は、特に危険な海域に入るには、保険引受人(underwriters)からの特別な許可が必要となる。武力紛争が勃発するか、勃発する恐れがある場合、保険会社は、たとえ経験豊富な戦争リスク保険会社(war-risk insurers)であっても、危険な海域への進入について、より高額で困難にする特別な条件を課すことになる。
まさにこれがホルムズ海峡の両側で起こっている。3月2日の午前遅く、デンマークの海事専門家ラース・イェンセンはリンクトインに次のように投稿した。「現在、ペルシア湾には4000TEUを超えるコンテナ船が17隻存在し、総積載量は15万6000TEUに上る。さらに、4000TEU未満のコンテナ船が約50隻存在する。つまり、約20万TEUのコンテナ船がペルシア湾内に閉じ込められていることになる」。イェンセンはさらに、ホルムズ海峡周辺に閉じ込められた船舶は「世界第13位の船舶輸送能力に相当し、世界のコンテナ積載能力の約0.6%が利用できない状態にある」と付け加えた。(TEUは通常サイズのコンテナ1個に相当する単位だ。)
ホルムズ海峡の反対側では、同様に多数のタンカーが保険会社の進入許可、あるいは待機継続命令、あるいは他の場所への航行命令を待っている。しかし、待機も賢明な選択肢ではない。コーマック・マクギャリーは次のように述べている。「船舶の戦争リスク保険は、たとえ高額であっても、通常は船舶の航行コストのごく一部に過ぎない。はるかに大きな影響は、船舶が航行を停止した場合だ。ほとんどの船舶とまではいかなくても、多くの船舶が事実上、今後数日間の状況を見守るために停泊している」。
ペルシア湾岸地域に閉じ込められた船舶は、もちろん、数日どころか、紛争終結まで、閉じ込められる可能性が高い。ドナルド・トランプ米大統領は紛争終結まで「4週間から5週間」と述べており、ピート・ヘグゼス国防長官は3月2日に2週間、4週間、あるいは6週間継続する可能性を示唆した。つまり、船員たちは2週間、4週間、5週間、6週間、あるいはそれ以上もの間、ペルシア湾岸で何もせずに(食料があることを祈るしかない)、他の多くの船舶もホルムズ海峡の反対側で、おそらくそれ以上も、何日も、あるいはそれ以上も、何もせずに停泊することになる。
紅海やスエズ運河からは船舶の航路を変更できるが、ホルムズ海峡からは変更できない。それは、石油とガスの産出地であるペルシア湾には、他に出口がないからだ。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、イランと同様にそれぞれ1本の陸上パイプラインを保有しているが、陸上ルートで輸送できるのは海峡輸送量のごく一部に過ぎず、海上輸送から陸上輸送への移行には複雑な物流が伴う。石油とガスの価格が既に大幅に上昇しているのも当然のことだ。(70億バレル以上の原油が陸上および浮体式船舶に貯蔵されているが、ほとんどの国や企業はアクセスで着ない状況だ。)
これらの船舶が停泊している間、航海を完了することも、次の航海を引き受けることもできない。システムへの負担は、特に他の遅延が重なるにつれて、時間とともに蓄積されていく。石油輸送が最も大きな打撃を受けるだろうが、閉じ込められた船舶は、より広範な世界の貨物輸送にとって不可欠な存在だ。
ペルシア湾岸諸国にとって、このほぼ完全な停滞は必需品の到着も困難にすることを意味する。「海峡が数週間にわたってほぼ閉鎖されてしまえば、いずれ食料が不足することになる。砂漠の国々に鉄道や飛行機で運ばれていない物資、つまり、基本的に、あらゆる物資が不足することになる」とマクギャリーは指摘している。確かに物資は空輸できるが、量は限られており、この地域での飛行機輸送は現在明らかに安全ではない。これは、非常に高い生活水準を誇りながらも、生活のほぼ全てを輸入に依存している裕福なペルシア湾岸諸国にとって恐ろしい事態である。
湾岸諸国の生活水準が急落すれば、不満を抱く国民は声を上げ、支配者たちはワシントンにその点を訴えるだろう。しかし、戦争の悪夢を再び箱の中にしまうのは容易なことではない。特に、国家指導者のほとんどが殺害された後はなおさらだ。ホルムズ海峡の安定は、最終的にはイランの何らかの安定にかかっているが、それは非常に遠い先の話になりそうだ。
※エリザベス・ブロウ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。大西洋評議会(Atlantic
Council)上級研究員。著書に『さよならグローバライゼーション(Goodbye Globalization)』がある。Blueskyアカウント:@elisabethbraw.bsky.social
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