古村治彦です。
イスラエルとアメリカによるイランへの大規模攻撃について徐々にいろいろなことが分かってきて、イスラエルの意向が強く働いたことが明らかになっている。イスラエルは、イランを弱体化させ、自国が中東地域で覇権を握ることを目標としているが、そのような状況になれば、中東地域は不安定になる。しかし、そんなことはお構いなしである。アメリカが中東から引き揚げてしまう前に、アメリカを利用して獲れるものは獲っておくということになる。
アメリカはイランへの軍事攻撃後の計画やシナリオを持たずに攻撃を行った。これは非常に無責任な態度ということになる。トランプとネタニヤフは攻撃後に、イラン国民に対して蜂起を呼び掛けた。新しい態勢を構築するようにと促した。しかし、アメリカにもイスラエルにもそれを支援する用意は全くない。イスラエルは支援する意図はないし、アメリカは、アフガニスタンやイラクでの失敗からそれが不可能なことが分かっている。そのために、口先で言うだけの無責任な態度ということになる。そのことについて、以下に紹介する論稿では「ポッタリ―バーン・ルール」が無視されているという批判がなされている。
下記論考に出てくる「ポッタリ―バーン・ルール」について説明する。家具や家庭用小物のフランチャイズの店として知られる「ポッタリーバーン」の店舗に貼られている店の方針(ルール)が「万が一商品を壊した場合には、お買い上げいただきます(You break it, you buy it)」というものだ。2003年のイラク戦争の際に、当時のジョージ・W・ブッシュ(子)政権の国務長官だったコリン・パウエルが「ある国や地域に軍事介入して体制を破壊・不安定化させた場合、その介入した国がその後の復興や治安維持の責任を負うという原則」を持ち出して、イラク戦争開戦に反対した際に、「万が一商品を壊した場合には、お買い上げいただきます(You break it, you buy it)」の言葉を使ったことから、「ポッタリーバーン・ルール」という言葉が国際関係論分野で使われるようになった。
アメリカは世界唯一の超大国として、(一応は)責任ある態度を取る、もしくは取ろうとしてきた。しかし、現在はもうそのような態度を取るふりをしようともしていない。アメリカは全く頼りにならない。そのことを毎日世界中に宣伝している。
そもそもが、今回のイラン攻撃は誤解と計算違いによってなされたものだ。トランプ大統領は肥大化した自己顕示欲によって、認知が歪んでしまっている。そして、それをネタニヤフ首相に利用されてしまった。そして、世界を混乱に陥れてしまった。トランプとネタニヤフは、イラン(政府と国民)の意思と強さを完全に見誤ってしまった。そして、事態の長期化によって見方であるペルシア湾岸諸国を苦しめることになり、世界の状況を悪化させる。攻撃をしてしまったことで、自分たちの首を自分たちで絞めるという結果になってしまった。アメリカとイスラエルは世界の混乱の最大のそして最重要の責任者である。アメリカとイスラエルは世界にとって「悪の枢軸」となっている。
(貼り付けはじめ)
「ポッタリーバーン・ルール」が廃止される時が来た(It’s Time to
Retire the Pottery Barn Rule)
-イランとの戦争は、「壊したら、責任は自分で取る」という古い考え方に終止符を打つ。
スザンヌ・ノッセール筆
2026年3月3日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/03/iran-war-us-foreign-intervention-colin-powell-pottery-barn-rule/
2002年、コリン・パウエル米国務長官は、ジョージ・W・ブッシュ大統領に対し、イラクのサダム・フセイン大統領を打倒した場合にブッシュ政権が負うことになる重荷について警告したことで有名だ。パウエルの警告は後に「ポッタリーバーン・ルール」として知られるようになった。「壊したら責任は自分で取る(You break it, you own it)」。家庭用品店の広報担当者が、客が商品を壊しても弁償は求められないと主張したとしても、それは問題にならない。このルールは小売業よりも外交政策において大きな反響を呼び、その後もリビア、シリア、アフガニスタン、そして最近ではヴェネズエラにおける紛争の議論で長年にわたり引き合いに出されることになる。
20年以上が経過し、ポッタリーバーン・ルールは廃止される時が来た。ドナルド・トランプ米大統領と政権は、アメリカが介入した国の運命に責任があるという主張に全く動じていない。これは、イランで現在行われている爆撃作戦で最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害され、地域全体に及ぶ紛争が勃発したことで明らかになった。トランプ大統領にイランに対する計画があるかと問われたリンジー・グラム連邦上院議員は日曜日、「それは彼や私の仕事ではない」と述べた。グラム議員の発言は冷淡に聞こえたが、アメリカ国民も、アメリカが標的とした国々も、ワシントンが外国の領土を徹底的に支配することを望んでいる者はいない。近年のアメリカのそうした試みは、安定をもたらすどころか、数十億ドルもの資金と計り知れないほどの善意を失わせた。
ポッタリーバーン・ルールは抑止力(a deterrent)として意図されていた。長期にわたる外国との係争の可能性は、アメリカの指導者たちを愚かな冒険主義(unwise adventurism)から遠ざけるはずだった。しかし、アメリカがもはや他国を「所有(own)」しようとすべきではないという認識が高まるにつれ、このルールは慎重な力を失った。ポッタリーバーン・ルールは、アメリカ合衆国が唯一の超大国であり、ワシントンが絶大な信頼を勝ち取り、民主政治体制はどこにでも根付くという確固たる信念があった(the United States was the sole superpower, Washington enjoyed
significant credibility, and there was broad faith that democracy could be
seeded just about anywhere)時代を象徴するものだった。より争いが多く、ゼロサムゲームの世界では、民主政体は危機に瀕しており、今もなお適用可能なシンプルなルールはほとんど、あるいは全く存在しない。
ここ数日、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を受けて、専門家の多くが外交政策の原則として、空軍力だけでは体制転換を達成したことはない(airpower alone has never achieved positive regime change)と主張している。これは、トランプ政権は地上部隊を派遣するか、失敗を受け入れるかのどちらかを迫られることを意味する。第二次世界大戦後のドイツと日本の占領を想起させるこの考え方は、社会を安定と友好関係へと回復させるには、マーシャル・プランに倣った、長年にわたる骨の折れる部隊派遣と巨額の投資が必要となる、というものだ。1983年のグレナダと1989年のパナマへのアメリカの介入は、いずれも独裁者を排除するための部隊派遣を伴ったが、選挙とそれに伴う法と秩序(law and order)の確立に必要な、期限付きの地上作戦も伴っていた。
しかし、より最近の事例は、ポッタリーバーン・ルールがいかにして挫折した希望(dashed
hope)につながり得るかを示している。アフガニスタン戦争とイラク戦争は、その長期にわたる戦争、数兆ドル規模の費用、数千人のアメリカ人の犠牲、そして深刻な民間人の犠牲という点で、崩壊した社会の「責任」を負う(taking “ownership”)ことが、それを再建できることを意味しないことを証明した。2000年代半ばには既に世論調査でイラク人の大半がアメリカ軍の撤退を望んでいることが示された。アフガニスタン人は当初、自国におけるアメリカ軍の駐留を支持していたものの、それも次第に減少した。アメリカ国内における2つの戦争の被害は甚大で、政府への不信感を加速させ、分断を深め、心身ともに傷ついた退役軍人の世代を生み出し、国家債務を膨らませた。
一方、介入の論理は変化した。アラブの春において、2010年代初頭のリビア、シリア、エジプト、その他の地域におけるアメリカの関与の程度は様々であったが、安定(stability)や民主化(democratization)とは相関していなかった。
2012年までに政治変革の期待は消え去り、動乱の最中も後も、アメリカ軍の増派が効果的だったと主張する人はほとんどいなかった。近年の高度な監視と標的設定により、より低いコストとリスクで指導者を追放することが可能になった。ヴェネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロは、事実上人目に触れずに国を出た攻撃部隊によって捕らえられ、ハメネイ師とその側近たちは空襲で暗殺された。
国家建設(nation-building)が無益で逆効果であるとの信用を失うにつれ、ポッタリーバーン・ルールは、アメリカの介入の結果、特にワシントンの統制が及ばない現地の情勢などに対する政治的・道徳的責任を重視するパラダイムへと移行すべきである。ハメネイ師の追放が地域規模の全面戦争、世界的なテロ活動、あるいは長期的なエネルギー供給の途絶を引き起こした場合、トランプは政治的代償を払うことになるだろう。一方、イラン国民が攻撃を機に平和的な政権移行を実現できれば、アメリカの介入は好意的に評価されるかもしれない。ワシントンの動機が人権や自由よりも経済、安全保障、そして地政学的な利益に関係しているという事実は、ようやく息ができるようになった息苦しい人々にとっては問題ではないかもしれない。初期の世論調査では、マドゥロ大統領の追放は、ヴェネズエラ国民の間で非常に支持されていることが示唆されている。ただし、マドゥロ大統領の政党は依然として政権を握っている。一方、ハメネイ師の暗殺は、街頭で祝賀ムードに包まれている。
ヴェネズエラとイランへの介入は、自由と安全への夢を打ち砕く結果に終わる可能性が十分に考えられる。しかし、それは必ずしも両国の国民がアメリカを非難することを意味する訳ではない。両国において、残虐な指導者の排除が社会の変革につながるかどうかは、政治指導者、政府・軍当局者、そして市民社会運動が決定権を持つことになるだろう。カラカスの自治体の1つで市長を務め、かつてマドゥロ政権によって投獄されたヴェネズエラの反体制派で民主主義の指導者であるレオポルド・ロペスは、マドゥロ副大統領のデルシー・ロドリゲスを政権に残したままであるにもかかわらず、アメリカのトランプ大統領に恩義を感じている。先週末ニューヨークでロペスは、トランプ大統領が生み出したこの機会を活用し、将来の選挙に勝利するのは、ヴェネズエラ国民と野党運動の責任だと述べた。
ポッタリーバーンの店舗では、「壊したら、責任は自分で取る」というルールに代わる選択肢は、単に壊れた物を帳消しにすることだった。国家の砕けた破片は、簡単に片付けられるものではない。破綻国家(failed states)、統治されていない地域(ungoverned spaces)、そして、長期にわたる紛争(protracted conflicts)は、壊滅的な人々の活動(devastating
human consequences)と波及効果(spillover effects)をもたらし、地域の不安定化、テロリズムの温床となり、病気の蔓延につながる。ポッタリーバーン・ルールの単純さは、アメリカ、標的とする政権下で暮らす人々、地域のアクター、そして世界秩序全体の利益を考慮した、より複雑な計算に取って代わられなければならない。政策立案者や軍事計画立案者たちは、それぞれの利益を綿密に計算し、最善、最悪、そして最も起こり得る結果を検証し、介入の正当性を判断する必要がある。
トランプ政権は介入後の明確な「計画(plan)」を持っていないかもしれないが、激しい戦闘の最中においては、いかに綿密に練られた計画であっても、他者の反応に翻弄され、その反応は完全に予測できるものではない。イラク侵攻後、ブッシュ(子)政権は速やかにジェイ・ガーナー中将を復興活動の指揮官に任命した。しかしガーナーはわずか1カ月で交代させられた。イラク国民の権限拡大と限定的なバース党脱却策を掲げたワシントンの当初の戦略は、より統制のとれた中央集権的なアプローチへと転換されたためである。これは、期待された成果をもたらさなかった一連の戦略転換の最初のものであった。アフガニスタンでは、NATOは当初カブールに限定した安定化部隊の展開を計画していたが、国内全域での暴力と不安定化により、より広範な展開を余儀なくされたため、方針を転換した。
より現実的かつ適切な期待は、戦争に内在する不確実性を認識しつつ、アメリカの政権があらゆるシナリオを策定し、検討することである。ワシントンは、将来起こりうるリスクを冷静に評価し、それらを回避・軽減するための緊急時対応策を講じた上でのみ、前進すべきである。トランプ政権は、そうした広範な先見性を発揮できていない兆候が見られる。中東地域に取り残されたアメリカ国民に対し、(この地域の空域の大部分が封鎖されているにもかかわらず)自宅待機と即時退避の両方を求めるという矛盾したメッセージを送ったことは、信頼を揺るがすものとなった。
ヴェネズエラとイランへの介入がアメリカの安全保障と経済利益に資するだけでなく、長きにわたり抑圧されてきた人々の生活を改善する可能性があると予測するのは、楽観的ではあるが、突飛な予測ではない。しかし、より広い視野で見れば、その結果はさらに不確実になる。マドゥロ大統領の逮捕やカリブ海における麻薬密輸容疑者に対する定期的な致命的な攻撃など、ヴェネズエラに対するアメリカの行動は、自国の敵対勢力を無力化しようとする他の大国によって確実に援用される前例となる。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃はこのパターンを強め、武力行使を禁じる国際規範の現行解釈を著しく損なう結果となった。こうした規範的影響は遠いように思えるかもしれないが、いずれ跳ね返ってくる可能性がある。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ侵攻を開始するにあたり、1999年のコソヴォ支援のための西側諸国の軍事介入、2003年のイラク侵攻、そしてリビアとシリアへのアメリカの攻撃を援用し、主権と国際法に関する西側諸国の主張を覆そうとした。
ポッタリーバーン・ルールは、冷戦に勝利し、アメリカが世界的な正統性を享受していた時代に生まれた。911で大きな衝撃を受けたにもかかわらず、ワシントンは世界中に自由民主主義を広げることに楽観的な見方をし、中東地域にドイツや日本のような民主政治体制を築くことができる、そして築くべきだとさえ考えていた。しかし、そうした時代は遠い記憶となっている。民主政治体制は、かつて西側諸国が想像していたほど必然的なものではなく、はるかに脆弱であることが証明された。アメリカ人は、民主政体を他者に提供できると信じることよりも、自らの力で民主政体を自国内で維持しようと躍起になっている。
トランプとその政府高官たちは、都合の良い時にだけ自由について語る。彼の政権は、自国の国益がそうすることを正当化するならば、不人気で非民主的な敵対勢力を追及する用意は当然ある。しかし、外国介入の結果については、トランプは破片がどこに落ちようとも構わないと思っているようだ。ヴェネズエラでもイランでも、アメリカはどちらの未来も決めることはできない。アメリカの介入によってもたらされる結果が、その潜在的なコストに見合うものかどうかを最もよく判断できるのは、これらの国の国民自身である。
※スザンヌ・ノッセール:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。シカゴ外交評議会アメリカ外国政策・国際秩序担当レッサー・クラウン記念上級研究員。スターリング財団上級顧問。著書に『発言の勇気:全ての人々の言論の自由を守る(Dare to Speak: Defending Free Speech for All)』がある。Xアカウント:@SuzanneNossel
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ドナルド・トランプ大統領はイラン問題で計算違いをしたのか?(Did Trump
Miscalculate on Iran?)
-中東専門家のヴァリ・ナスルによると、ホワイトハウスはイランとイスラエルの痛みに対する耐性が高いことに気づきつつあるという。
ラヴィ・アグラワル筆
2026年3月2日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/02/nasr-trump-iran-israel-strikes-calculation/
中東では激しい戦闘が繰り広げられている。2月28日早朝、イスラエルとアメリカはイラン各地の拠点を攻撃した。その後、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が、自宅の敷地内に爆弾が直撃し、死亡したことが明らかになった。しかし、この報道確認の前後にも、テヘランはイスラエルに向けてミサイルを一斉発射しており、最高指導者の不在下でも機能する指揮統制体制の存在を示唆している。イランは、この地域の他の国々、特にカタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、クウェートといったアメリカ軍基地を抱える湾岸諸国を攻撃している。
戦争はどのように終結するだろうか? イラン、イスラエル、そしてアメリカはそれぞれどのように成功を定義しているのだろうか?
そして、それぞれの痛みの閾値(いきち、thresholds)はどれほど異なるのだろうか? FPライヴの最新エピソードでは、イランと中東の専門家であり、元米国務省上級顧問、ジョンズ・ホプキンス大学教授でもあるヴァリ・ナスルに話を聞いた。チャンネル登録者は、このページ上部のビデオボックスで対談の全編を視聴するか、無料のFPライブポッドキャストをダウンロードできる。以下は、編集・要約したトランスクリプトだ。
ラヴィ・アグラワル(RA):アリ・ハメネイ師は残忍な指導者(a brutal leader)でした。86歳で、30年以上イランを統治した。ヴァリ、彼の死をどのように受け止めているか?
ヴァリ・ナスル(VN):ある意味では、彼の死は予想されていた。高齢というだけでなく、彼を排除することがイスラエルとアメリカ双方の戦争目標の1つだったからだ。これはイランと中東にとって極めて重要な出来事だ。彼は36年間イランを率い、アメリカに対抗し、この地域における反帝国主義に抵抗するというイランの戦略の焦点でもあった。つまり、彼の死はイランにとって転換点(a turning point)となるということだ。
RA:しかし、イランはヴェネズエラとは違う。ヴェネズエラでは、ニコラス・マドゥロ大統領が1日の作戦遂行で副大統領に交代させられた。イランはハメネイ師の死後も報復(to retaliate)を続けている。現在、誰が指揮を執っているのか?
VN:イラン・イスラム共和国は、生き残るために設計されてきた。これは、大統領、首相、そして高官が暗殺された共和国成立初期にまで遡り、イラン・イラク戦争、そしてイスラエルとの12日間戦争にも続いた。つまり、このシステムは一人の人物に依存しないように構築されている(this system is built not to rely on one person)。ハメネイ師はイランで最も重要な指導者であり、国の進路を定め、核合意などの最終決定を下したが、イランは運用上、複数の結節点(multi-nodal)を持つシステムだ。様々な機関と様々な運用指導者が存在する。私たちが見ることが出来る通り、戦争の早い段階でハメネイ師が排除されたとしても、イランの立場には影響はない。イランは計画を実行し、前進し続けている。
彼は、国家安全保障顧問のアリ・ラリジャーニ、国会議長のモハンマド・バゲル・ガリバフ、司法長官、イスラム革命防衛隊司令官といった主要指導者と、その下層に複数の階層が存在するシステムを構築した。大統領の下には国家運営の実権を握る側もあり、これはイランの「ディープステート(deep state)」とでも呼ぶべき、高官、官僚、軍司令官、聖職者で構成されている。このディープステートと彼らが支配する機関が、共同で戦争を管理している。
RA:ハメネイ師の後継者は誰になるだろうか? こうした攻撃が続く現状において、それは本当に重要であろうか?
VN:私たちには分からない。イランがすぐに指導者を指名するとは考えられない。それは主に、ヒズボラのハッサン・ナスララ暗殺の直後の後継者に起きた出来事を既に経験しているからだ。イスラエルはヒズボラのナスララを殺害し、その後、その直後の後継者も殺害した。後継者の任命に向けて動いているが、すぐには実現しない可能性がある。こうした動きは、主に世界、イラン国民、そして地域におけるイラン支持者に対し、憲法に基づき体制が継続するという継続性を示すためです。最高指導者は誕生するだろう。しかし実際には、その人物が実際に実権を握り、権力を強化するまでには、ある程度の時間がかかるだろう。
RA:アメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のような人物がイラン国民に抗議を呼びかけているが、あなたがイランのディープステートについて説明されていることを踏まえると、蜂起の可能性はどの程度あるだろうか?
VN:1月の蜂起につながった人々の怒りは、紛れもなく現実のものだ。そして、デモを鎮圧するために体制が行った血なまぐさい弾圧に対する怒りと悲しみは、今もなお深く残っている。
しかし、現在、蜂起を阻む要因がいくつか存在する。第一に、怒りが高まっているにもかかわらず、イスラム共和国の外には、政治的感情と怒りを組織化し、持続的かつ強靭な方法で目標へと導くための政治運動が存在しない。亡命中の指導者にはそれを提供する能力も、それを管理するための地上戦力もある。第二に、特に首都には、街頭デモを抑止するための治安部隊が多数配置されている。そして第三に、イラン国民は戦争に直面している。彼らは自らの安全を懸念している。そして、戦争がどのように終わるのか、そして生活の糧を失うことになるのかどうかについても懸念している。
騒ぎが収まり、戦争が終息した時、政治的表現(political expression)が見られるようになるだろう。
RA:ヴァリ、あなたはアメリカ政府で働いた経験がある。ホワイトハウスの目的について、今現在どのようなことになっているか、何か考えを持っているか?
ホワイトハウスは何を達成しようとしているのだろうか? そして、ホワイトハウスが任務完了と判断するのはどの時点だと考えるか?
VN:大統領がこの戦争の正当性を決して明確に説明しなかったため、判断は非常に難しい。6月にアメリカがイランの核計画を破壊したことに彼は非常に満足しているように見えた。彼にとって、イラン側と話し合う理由など存在しなかった。ところが突然、イランの体制転換(regime change)を目的とした軍事介入に関心を示し始めた。つまりアメリカの目的は、イランの核計画から体制転換へと変わったのだ。そして抗議運動が鎮圧され、その機会が過ぎ去ると、彼は再び核合意を論拠として使い始めた。その後、戦争を開始し、再びイランの体制転換を要求している。つまり、アメリカがなぜイランとの戦争にこれほどの緊急性を感じたのかは不明だ。戦争が始まり最高指導者が殺害された今、大統領は勝利宣言の準備ができていると思う。現時点で停戦を望まないのはイラン側だ。迅速な停戦(a quick cease-fire)で何の得もないと考えているからだ。そして、拡大する戦争に巻き込まれた大統領は窮地に立たされており、エネルギー価格が上昇し、アメリカの死傷者や資産への損害がさらに拡大する可能性がある。
RA:つまり、この戦争は、ある程度、イランが望む時に終わるということになる。それでは、テヘランはいつまでこの戦争を続けることができるだろうか?
VN:それでは、あなたが述べたことに、イランとイスラエル次第だということを付け加えたいと思う。イスラエルは、自国の戦争目的を達成するまで、この戦争が長引くことを望んでいると思う。イスラエルの場合、その目的ははるかに明確だ。言い換えれば、イスラエルはイスラム共和国を打倒するか、少なくともイランを地域の真のアクターではなくなるまで弱体化させ、さらにイランのミサイルやその他の軍事力をイスラエルにとって脅威ではなくなるまで弱体化させようとしている。イスラエルは、この目的を達成するには、たとえ達成できなくても、近づくためには、はるかに長い期間イランを爆撃する必要があると考えている。
イランはまた、アメリカが大きな犠牲を払わない短期的な戦争は、トランプにイランとの戦争は容易だと思わせるだけだと考えています。そして、彼は再び戦争を始められる。しかし、戦争が長期化し、血なまぐさい事態が起こり、より複雑になれば、将来的にアメリカがイランに対して更なる侵略を行うことに対する抑止力(a deterrence)となるだろう。これは、イランが2025年6月の戦争後に確立できなかった種類の抑止力である。イランは今のところ、湾岸諸国への攻撃を継続し、エネルギー価格を引き上げ、世界市場の懸念を高め、そして徐々にヨーロッパ諸国を戦争に巻き込むだけの体力があると考えている。カタールの液化天然ガス(LNG)ターミナルの閉鎖は、最終的にヨーロッパのエネルギー供給に影響を与える。そして、これらすべてが戦争をますます複雑にし、アメリカは現時点で停戦を要求するよりも、より高い代償を払う必要があると判断するかもしれない。
RA:昨年の12日間の戦争でイランが反撃した際、イランは力を控えたようだ。全力を出し切っていない。事前に警告していた標的を選定し、最大限の被害を与えようとはしていなかった。これが私の評価だ。現在、イランは明らかに昨年の夏よりもエスカレートしている。イランの戦力はどれほど増えたか、分かっているだろうか?
このような状況下で、イランはどれほど多くのカードを切ることができるのだろうか? どれほど悪化する可能性があるだろうか?
VN:あなたに同感だ。イランはこの戦争で徐々にエスカレートしているが、イスラエルとアメリカからの最大の打撃は、最高指導者と30~40人の司令官の殺害、軍事基地の破壊など、戦争の始まりから始まっています。
第一に、イランはイスラエルだけでなく、地域全体でパトリオットミサイル、迎撃ミサイル、THAADミサイルの供給を枯渇させようとしている。言い換えれば、1万ドルから2万ドルもするイランの小型無人機1機を撃墜するには、大量のパトリオットミサイルなどの迎撃ミサイルが必要となる。最終的に彼らは、いずれこれが湾岸諸国、国防総省、そしてイスラエルにとって問題となると見込んでいる。これが彼らの戦略の1つだ。
第二に、彼らは必ずしもペルシア湾岸諸国やイスラエルの標的を攻撃しようとしているのではなく、継続的な圧力をかけようとしている。彼らはイスラエルに一日中ミサイルを発射しているが、大量ではないものの、継続的なパターンで発射しており、湾岸諸国でも同様のことを実施している。目的は、これらの国の防空システムと住民に継続的な圧力をかけることだ。人々が絶えずシェルターに逃げ込まなければならなくなるようになれば、活動を完全に混乱させることができる。そして、防空システムが疲弊した時点で、彼らはより高性能なミサイルと能力へと移行するだろう。つまり、私たちはまだ戦争の最悪の局面を経験していないと私は考えている。
この戦争は今や、持久力のテスト(a test of stamina)となっている。どちらが先にどちらを倒せるか?
イスラエルとアメリカは、イスラム革命防衛隊の背骨を折って、イランのミサイル能力を無力化するのに十分なミサイル、サイロ、そして発射装置を攻撃できるだろうか? 彼らは明らかにそれを達成できていない。それとも、イランはワシントンとテルアビブの思惑を変えるほど長く戦い続けることができるだろうか?
イランは徐々にエスカレートを続け、この戦争をペルシア湾岸諸国とヨーロッパにとって財政的にも物質的にもますます高くつくものにしていくだろう。
RA:あなたが「抵抗の枢軸(the
Axis of Resistance)」と呼ぶ、この地域におけるイランのいわゆる代理勢力(proxy
groups)について、概要を説明してもらえるだろうか? 彼らの現在の能力はどの程度で、どのポイントで戦闘に参戦する可能性があると考えるか?
VN:この戦争に実質的な影響を与える能力が最も高い代理勢力はフーシ派だ。彼らのミサイル火力は健在だからだ。彼らはイスラエルやスエズ運河、紅海の船舶を標的にする可能性がある。また、特定のシナリオでは、ペルシア湾岸諸国との停戦を破棄し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の後方、そしてペルシア湾岸諸国のアメリカ軍基地を攻撃し始める可能性もある。確かに、アメリカ、イスラエル、そしてサウジアラビアは彼らに対抗できるが、それは同時にイエメンへの注意をある程度逸らすことも意味する。
同様に、ヒズボラはイスラエルに真の打撃を与える立場にはないが、空爆やレバノンへの部隊派遣などによって、イスラエルを北の国境に焦点を絞らせるのに十分な注意散漫(a sufficient amount of distraction)を引き起こすことができる。つまり、イランの戦略は、これらのうちどれか1つがイスラエルとアメリカに大きな変化をもたらすということではなく、アメリカとイスラエルが想定していたよりもはるかに広大な戦場でのこの組み合わせが、状況を変えることができるということだ。
イスラエルとアメリカは、イランとの戦闘を2つの回廊(corridors)に沿って計画している。1つは空中回廊(the air corridor)における攻防、もう1つはイランと地域内のアメリカ軍基地間の回廊(the corridor between Iran and U.S. bases in the region)だ。イランはこれを湾岸地域内の民間人居住地域だけでなく、より広範な地域にも拡大しようとしている。そのため、より広範な地域で低速で戦闘を繰り広げ、より長く戦闘を継続することが、イランにとって有利に働く。
RA:ここでの主要三国、イラン、イスラエル、アメリカは、民間人の損失、インフラの損害、そして軍事的損害に関して、それぞれどの程度の痛みに耐えられるかという許容度(a different pain tolerance)が異なり、それを超えると計算が劇的に変わる可能性があるように思う。あなたの説明からすると、イランの痛みの許容度が驚くほど高いように思われる。最高指導者を失い、依然として代理勢力を使って軍事的に手控えている。これらの計算が変わるまでに、イランはあとどれだけの痛みに耐えられると考えるか?
VN:イランは痛みに耐えられるだろう。問題は、彼らの能力がいつ弱まるかだ。彼らは、イスラム共和国、革命、そして国家さえも生き残る唯一の方法は、この戦いに粘り強く取り組むことだと決断した。特に、この一連の暗殺事件は、指導者たちに、自分たちの誰かが、あるいは全員が、いつ殺されるか分からないという確信を与えている。つまり、彼らはこの戦いに全力を注いでいる(o, they’re all in on this fight)。
イスラエルはまた、痛みに関して高い閾値を持つ。今やイランとその代理勢力を打倒することを自らの使命とし、国民の決意と支持も得ている。しかし、それがどのポイントで変化する可能性があるかは予測できる。イスラエルには世論があり、政府が実際に対応しなければならない場合もあるからだ。イランには、特に1月の弾圧以降、このような世論がない。
アメリカはアキレス腱(the Achilles heel)だ。特にトランプ自身が厄介な軍事紛争に神経質になっているためだ。彼の支持基盤はこれを好ましく思っておらず、トランプ自身も支持基盤やアメリカ国民に対して戦争の必要性を訴えていない。ガソリン価格の高騰や、アメリカ国内で悪評を招くような甚大な被害に、トランプは最も反発するだろう。イランがこの脆弱性を突くのは当然のことであり、まさにトランプにとって試練の時だ。
ここでの危険の1つは、イランが2025年6月の戦争終結時の状況に戻りたくないと思っていることだ。イランにとって、これは最後の戦い(the last battle)だ。彼らは完全に敗北して敗走するか、今後のゲームのルールを変えることができるか、つまり、今後しばらくはアメリカやイスラエルとの戦争は起こらないかのどちらかだ。つまり、彼らの計算はトランプのそれとは大きく異なる。
RA:あなたの発言から敷衍して、ホワイトハウスはイランに関して十分な助言を得ているという印象を持つか?
彼らはイランの「痛みの閾値(pain threshold)」をきちんと計算しているだろうか?
VN:そのようには考えていない。アメリカ特使スティーヴ・ウィトコフが、大統領はイランが屈服しないことに苛立ちを感じていると述べたが、それはイラン側の計算を完全に誤解しているというだけのことだ。彼らは戦場の状況評価を見て、事態が自分たちの考えとは異なっていること、そしてハメネイ師殺害にもかかわらずイラン側がまだ降伏する準備ができていないことを理解しているはずだ。
これは、敵対国の考え方を読み間違えた、トランプの大きな誤算だったと私たちは見なすことになるかもしれない。
RA:アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビア、オマーン、バーレーンといった多くのペルシア湾岸諸国は、イランからの攻撃に直面している。民間人の犠牲やインフラへの被害が出ている。これらの国々は一枚岩(a monolith)ではないため、それぞれ異なる反応を示すことを私は認識しているが、どのような反応を示す可能性があるのか、大まかな考えを教えていただけるだろうか?
VN:ペルシア湾岸諸国は大きなジレンマに直面している。それは、イランを攻撃するため、あるいはイランの攻撃から守るためにアメリカ軍基地を受け入れているということだ。しかし、実際には、これらの基地は湾岸諸国を守ることができていない。
イランもまた、湾岸諸国を攻撃することを決断した。それは、彼らがアメリカを支持しているからではなく(それが口実ではあるが)、湾岸諸国の経済とエネルギー供給に打撃を与えることが世界経済に悪影響を与えるからだ。つまり、イランは世界経済を混乱させ、影響を与えることでトランプ大統領に圧力をかけようとしている。つまり、湾岸諸国にある程度のリスクを与えると同時に、湾岸諸国の経済はイランとの戦争とは無縁で、潤沢に成長し、収益を上げ、世界の経済的繁栄の源泉となり得るという誤った考えを世界に払拭する必要があるということだ。イランは湾岸諸国を戦争に巻き込むことで、自国に有利なように世界経済全体に圧力をかけている。
現在、湾岸諸国が抱える問題は、もし彼らがアメリカとの戦いに加わった場合―軍事バランスが実際に変わる訳ではないが―イランの政権が生き残った場合、数十年にわたってイランの攻撃を受けるリスクに晒されるということだ。そうなれば、彼らの経済は破綻するだろう。もし彼らがアメリカとの戦いに加わらず、イランの政権が生き残った場合、イランからのリスクは消えない。
RA:今回のアメリカとイランの協議で主要な仲介役を務めたオマーンの外務大臣は先週アメリカを訪れ、アメリカ側が公に述べていたよりも協議は順調に進んでいたとメディアに語った。彼は、イランは核開発計画の放棄に実質的に同意したと述べた。なぜオマーンは、アメリカの見解とは異なる見解を公然と表明したのだろうか?
VN:私は、これは実に興味深く、同時に懸念も抱かせた。なぜなら、彼がそうした時、私はそれが窮余の策だったと感じたからだ。トランプ大統領に適切な説明がなされていない、あるいはアメリカ全体がジュネーブでの成果を理解していないという確信があったのだろう。彼がここに来て、その成果を直接伝える最後の行動だった。彼は明らかに国王の支持を得ており、オマーンも合意は達成されたが、それが損なわれていると主張してトランプ大統領に対抗する価値があると判断したのだろう。
RA:これから1カ月、2カ月、3カ月、あるいは6カ月後に、どのような中東情勢が生まれると考えるか?
VN:中東地域はしばらくの間、不安定な状態が続くだろう。それはこの戦争だけでなく、2023年10月7日以降に起こったあらゆる出来事が、約40年間この地域で支配的だった力の均衡(the balance of power that was dominant in the region for about four
decades)を崩したためだ。そこには勝者と敗者がおり、新たな均衡は構築されていない。
この戦争は、イランを殲滅させ、この地域におけるイスラエルの立場を強めることで、その均衡を確立するための一環となっている。従って、この戦争の後も、その結末次第ではあるが、中東はしばらくの間、新たな均衡を模索し続けることになるだろう。私が懸念しているのは、アメリカ政権がこうした視点を全く持っていないことだ。アメリカにとって中東における最適な均衡とは何か、そしてそれをどのように達成するかというヴィジョンを全く持たずに、取引的にこの地域に対処しているのだ。
※ラヴィ・アグラウワル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。Xアカウント:@RaviReports
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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